魔防隊の天狗さん   作:カフェ・オーレ

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戦闘まで、行けなかった…!


兄貴の役職

 

 翌日。京香は、優希が魔都で寮の管理人をするという承認手続を得る為に優希が通っていた高校へ出向いた。

 

 その優希はというと、早速寮の掃除に取り掛かっていた。せっせと洗濯、掃除、玄関前の箒掃き。無駄無くキビキビと粉していく。行方不明になった姉に小さい頃から散々扱かれていたので、家事に関してはプロレベルと言ってもいい。

 

「もう管理人としての自覚が出ちゃってるな、優希後輩。昨日の今日でよくそこまで適応して働けるモンだ」

 

「京香さんの奴隷として戦う他に、今の俺ではコレぐらいしか出来ませんから。……それよりも兄貴こそ重くないんですか?その()()()()

 

 優希が疑問ながらに指を指したのは、筋トレで見かける最大サイズのバーベル。それを、ブォンブォンと刀の様に一定方向に振るいながら汗を垂らす清治の姿。まるでゲームやテレビアニメの中でしか見かけない光景だった。

 

「コレぐらいッ!軽く振れないとッ!自分の得物を手足の様に使えないんだよ。俺も男だから、桃の恩恵なんてない。精々特異体質を持っているだけ。それで所属している組の足を引っ張る訳にもいかないし、なッ!」

 

 そんなものなのか…、と優希が清治を見ながら思っていると、昨日京香から説明されたことから気になる部分を清治に質問してみた。

 

「そういえば、定期的に七番組に居候しているって京香さんから聞きましたけど、兄貴は七番組じゃないんですか?」

 

「そうだぞ。優希後輩は魔都をどうやって取り締まっているかを知っているか?」

 

「いえ、全然。昨日はいっぱいいっぱいで聞くのを忘れてました……」

 

「昨日は案内された後にいきなり家事させられたんだよな…。不憫でしょうがねぇ――寧〜!優希後輩に魔都の説明をしてやれ〜!」

 

「了解です!上司として任せて下さい!」

 

(うわっ!寧ちゃん、いつの間にそこにいたの!?)

 

 いつの間にか2人の近くにいた私服姿の寧がわかりやすく優希に魔都の説明を始める。

 

 

 

 七番組が裏鬼門の位置にあり、魔都の中では醜鬼が大量に発生する事。

 

 魔都が東京都ほぼ同じ面積である事。

 

 魔都は八つの方角に区分され、四を除く十番まで存在しそれぞれ担当の魔防隊が配置されている事。

 

 

 

 丁寧に説明してくれている寧に優希は感謝して、説明し終わったタイミングで清治が口を挟んだ。

 

「因みに、俺が所属しているのは二番隊だ。役職は仮の副組長みたいなトコだ。七番組と正反対の方角にある鬼門に位置している魔防隊だな。此処と大差ないぐらいの醜鬼がウジャウジャいるぜ?」

 

 タオルで汗を拭きながらクククッ、と悪い顔で笑う兄貴分に優希はドン引きだった。――勿論、その中にとんでもない単語があった事も忘れてない。

 

「うわぁ…、なんというか…、……ん?ふ、副組長ッ!?兄貴、副組長だったんですか!?そんな役職に就いているのに大丈夫なんですか?七番組に来ちゃったりして、怒られません?」

 

「一発殴られるかもな。それにあくまで副組長クラスっていう片書きだけだ、正式な副組長じゃない。アッチは組長を崇拝している奴等が多くてな。その中でも心酔してるヤツを代理にしてきた。頼んだ本人も喜んでいたけどな。別に俺が二番組を離れていても優秀な奴がいる。組長のアイツと戦っても十分鍛錬にはなるんだが、やっぱりタイプの違う相手と戦うのも経験を積みやすいし、効率良く強くなれるんだよ」

 

「へぇ……!……あ、でもやっぱり男には厳しいじゃないんですか?」

 

 優希がそういうのも無理はない。昨日の顔合わせ時、七番組の面子と性格からして、日万凛からの反応が良くなかったのだろう。

 

「そうだぞ。俺の時も当たりがキツくてな。どうしても男というレッテルが貼られている以上、上から見られるのも少なく無かったよ」 

 

「じゃあ、どうやって副組長クラスまで上り詰めたんですか?」

 

「そりゃもう、努力に実力と功績だ。男だからという理由で馬鹿にされないためにも、自分の持っている力だけで醜鬼を倒して功績をあげながら、次いでに突っかかってくる組員達も捩じ伏せた。お蔭で組長の次に慕われている始末だ。…お前等、俺を下に見てたんじゃねェのかってくらいにな」

 

(す、すげえ……!本当に兄貴してるんだ!)

 

「で、何故か組長との一対一(タイマン)勝負。得物あり、能力ありの一騎打ちだ」

 

「ハァッ!?組長とタイマン!?一体何がどうなってそういう展開になるんですか!」

 

 いきなりの組長との一騎打ち。どう見ても、明らかに能力の有無で圧倒的に清治の方が不利の場面が想像出来る。当の本人である清治も何処か懐かしげに語った。

 

「組の殆どを伸したからなのか、俺の鼻っ柱を折るつもりだったのかもな…。恐らく、自分で俺の実力を測りたかったんだろう。何かと面倒見の良い姉貴分だからな。自分の舎弟がやられたを黙って見てるわけにもいかなかったんだろうさ。で、結果は僅かに俺が先に気絶。治療されて目が覚めた時には、組長直々に副組長に任命されたけどな。……仮のな」

 

「舎弟って…、まるでヤンキーみたいな人ですね。兄貴の組長さんは」

 

「みたい、じゃなくて本物の()()()()()()をしてたんだからな。喧嘩上等!タイマン上等!の不良娘だったらしいぞ」

 

「エェ……」

 

 優希の脳内にはバイクに跨ったレディース軍団の姿が浮かび上がった。優希が何を想像してるのか、理解した清治はまた悪い顔をして優希に小声で耳打ちをする。

 

「……ここだけの話。京香とウチの組長は組長に就いたのがほぼ一緒でな。京香に素手で負けたらしくて、ライバル視してるんだよ。やたら好戦的でな、何かと京香に突っかかる。俺が七番組寮に行くって言った時も、凄く不服そうな顔で圧をかまして睨んで見送ってきたんだからなアイツ。まあ、オレの側を離れるんじゃねえ!とか、俺が京香の所に行くのを何かと引き留めてくるんだよな」

 

「……(何かサラッて言ってるけど…。その人、もしかして兄貴の事を?)」

 

 ハハハと清治が笑い流している分、優希は二番組組長の隠れた心情を少々理解した。そんな中、清治が所持していた端末のアラームが鳴った。送り主は――二番組から。どうやら簡易なメールらしく、その中身を見た瞬間、清治は汗を垂らしながら口角をヒクヒクと引き攣らせた。何やら尋常じゃない内容だったらしい。

 気になった優希は、覗き見てすいませんと、内心で清治に謝りながら開いたメールの中身を覗いた。

 

 

 

 

 

 

 

 戻って来い。今すぐに……ッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 ――数文字の筈なのに、物凄い気迫が感じられる文章だった。

 

 

 

(コレ、兄貴の所の組長さんだよな?絶対に途轍もなくブチギレてるよな?……いや怖いって!?ただのメールがこんなに怖いなんて思った事ないんだけどッ!!??)

 

 優希が内心恐怖で震える中、いつの間にか復活した清治は冷静に返信を送り、画面を閉じた。

 

「あ、兄貴?どう返信したんですか?」

 

「ん?『後輩が出来たから、色々教えてから戻る』って返信しただけだが?」

 

(俺を理由に出さないで!?会った時に睨まれるからァ!?)

 

「コラ。何をくっちゃべってるのよ、和倉優希」

 

 俺、終わったなぁ……と、しみじみ泣く優希の元に、私服の日万凛が寧と交代で寮内から出てきた。

 

「ご飯の支度をしなさい。もうすぐ戻ってくる組長の分もキチンと作るのよ」

 

「管理人ってご飯まで作るもんだっけ?」

 

「魔都ではそうなのよ。という感謝しなさい」

 

 疑問形な優希に、日万凛はビシビシと指摘し始めた。

 

「男のあんたが、自分達と同じ場所で、同じ物を食べるのを許可されているんだから、組長の慈悲でね」

 

(俺の立場、低っ…)

 

 次々と指摘される優希を清治が援護した。

 

「そう言うな、日万凛。優希後輩もこれから仲間なんだ。意地悪するもんじゃない」

 

「清治さんはシャワーを浴びて来てください。汗臭いですよ」

 

「ハイ、スイマセン……」

 

 言いたい事を言いきった日万凛は2人を残して、寮に戻っていった。その姿を見送った後、清治は優希へと苦笑する。

 

「難しい年頃なんでね。自分の壁にぶつかっているんだ。悪くしないでくれ」

 

「だ、大丈夫です!兄貴も汗を流してきて下さい。ご飯の方は俺の方で用意しますんで」

 

「優希後輩の料理、楽しみにしてるぞ」

 

 そう言って、清治は温泉、優希は食事を作りに台所へと向かっていった。

 

 

 

 




 
 東の家系って、歪んでいるけど何かとエッチいよね。
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