魔防隊の天狗さん   作:カフェ・オーレ

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 筆は乗るけど、集中力が続かない!不覚ッ!!


七番組、出撃

 

 京香が寮に戻った後、七番組全員と居候隊員が食卓を囲んだ。

 

「ん〜〜!管理人さんの料理、美味しいーーっ」

 

「食にこだわりはないが、栄養バランスがとれているのはいいな」

 

「寧にも料理教えて下さいっ」

 

「……お、おかわりしてあげる」

 

 その反応に、優希はじぃ〜んと思わず顔に出るくらいに感激していた。

 

(なんだかんだ、早速仲間の輪にとけ込んでいるじゃねェか)

 

 朱々からの称賛の声、京香の賛同、寧の教えを求む声、日万凛もちょっぴり恥ずかしげにおかわり要求。清治はその光景に微笑みながら、自身も優希の料理を口に運ぶ。

 

「どうですか?兄貴」

 

「…ああ、美味いぞ、優希後輩。俺も料理はするが、ここまでの技術はない。こりゃ、俺も寧と一緒に教えてもらう必要がある。早速後輩から一本取られちまったな、ハハハッ!」

 

「いや〜…!」

 

「この調子で皿洗いや温泉の掃除も頼むぞ」

 

「空き部屋の掃除もね」

 

「はいっ!(…って違う!!俺はモテたいのに、これじゃただの便利君だぞ!?)」

 

(オイオイ……、早速良いように使われてるな。言ってる内容があんまりパシリと変わらねぇぞ…。あ、いや…、奴隷だからパシリとあんま変わらないのか?)

 

 調子の良いように仕事を押し付けられても、張り切って良い返事をする優希。だが、本来自分の目標を思い出したのか、違う違うと頭を抱える。

 

「あのぅ……京香さん?俺は醜鬼根絶の協力ができるって話だったんですけど、これだと完全に家事がメインの気が……」

 

「奴らは一時間と間を置かず出る時もあれば、一週間以上出現しない時もある。疑うのなら清治に聞けばいい」

 

「えっ?本当ですか?」

 

 京香に話の内容を振られたことに、清治は同意と頷く。

 

「そうだな。七番組(ここ)二番組(ウチ)は鬼門と裏鬼門の位置にあるから、頻繁に醜鬼が出てくるが…。それでも発生する波が不安定であるのは確かだな」

 

「だから、次の出撃まで家事に専念してて構わないぞ」

 

 いや…、と優希が食い下がろうとするも、横から日万凛が瞬時に腕を剣に変化させ、優希の首元に充てがった。

 

「まさか組長の言う事に、文句があるわけじゃないわよね」

 

 向けられた剣先と圧に、優希は冷や汗を流した。

 

(腕が武器に…!)

 

(……刃物系の展開が、前回より速くなっているな。専門分野が京香と被っているから少し複雑だが、兄貴分としては妹分が成長している事は喜ばしい事だな)

 

 京香は徒手空拳と剣術、双方の技術が高く、醜鬼を素手で討伐できる強さを持つ。

 そういう清治も京香と同じ師を持ち、剣術は独学(呼吸方)ではあるものの、その技術は桃の恩恵を持つ相手にも十分に渡り合えている。素手の強さは今や京香とほぼ互角。二番組組長のメインが素手であるために、自然と技術が磨かれていったのだ。

 

 しみじみと思っていると、圧を放つ日万凛の肩を落ち着けとばかりに京香が手を乗せる。

 

「女子しかいない寮だ。男の管理人を快く思わない者もいるだろう。だが家事の腕は立つし、私の能力にも必要だ。そこは皆に受け入れてもらう。何か不始末をやらかしたら――」

 

 注目する全員の前で、京香はギギリと思いきり右手で握り潰す動作をする。

 

 

「主である私が優希をねじ切る。それでいいな?」

 

 

「「「はい」」」

 

 先程の日万凛以上の圧を放つ京香に、七番組全員が頷いた。

 

(ねじ切る……!?耳慣れない言葉なんですけど)

 

(手の仕草が首を絞めるのと男の急所を潰す二重の意味でやってるよな、アレ。ウチの組長は怒らせると目茶苦茶怖ェが、京香もやっぱ怖ェわ…)

 

 男陣が京香に畏れの視線を向けていると、寧が何かを感じ取ったかの様に固まる。

 

「あっ」

 

「何か視えたか、寧」

 

「?」

 

 寧の様子と京香の言っている事に、優希は理解出来ていない様子だった。そこに朱々からの補足が入る。

 

「ねいっちは千里眼もってるんだ。レアで凄い能力なんだよ」

 

(千里眼!?また凄い能力だな!でも……)

 

 寧の能力『きっと見つける(プロミス)』は、異変が起きれば自動感知し、集中すればその場所を見ることが出来る。ただ、その肝心の寧はうーん…、あー…、とまるで顔洗った後にタオルを捜しているようにしか見えない。それもすぐに治まり、寧の情報整理が終わった。

 

「南に五キロ、門が出現しています!」

 

「出撃だ!乗り物は三台でいく」

 

 京香の出撃命令に、優希もついに…!と、自分の出番が来たとばかりに興奮を隠しきれないでいた。

 

「俺は待機の方がいいか?」

 

「数はあればあるほどいい。清治も来てくれると心強い」

 

「はいよ。全く、飯もゆっくり食わせてくれないとか、迷惑な奴らだこと…」

 

 そんな減らず口を言う清治の口元は、まるで獲物を見つけた狩人の笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 先に日万凛、朱々、寧が車とバイクで先行し、優希は自分がまさかの三台目であることに少なからず驚愕していた。

 

「三台目って、俺だったとは……」

 

 すると、後ろから制服に着替えた京香と初対面の学帽を被り、制服の上に羽織を纏い、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()姿の清治が出てきた。

 

「準備できたな。我らも征くぞ」

 

「優希後輩。お前の奴隷としての強さ。俺に見せてくれ」

 

「はい!えっと…、兄貴、その仮面は?」

 

 優希は、何故清治が天狗の仮面をしているのかが気になっていた。

 

「ん?なんかホラ、装着したら力が湧いてくる的な?まあ大した理由はないと思ってくれ」

 

「は、はぁ…」

 

 ケラケラと笑う清治に困惑する優希。その空気に京香が活を入れる。

 

「話は帰って来てからにしろ。優希」

 

「は、はい!(いよいよだ。活躍してヒーローになる。隊の皆に惚れられるぐらいやってやるぜ!!……そして、褒美も……)」 

 

 

 

 

 

 ドクン!!

 

 

 

 

「おぉおおおお!!!!!」

 

 優希が京香の指先に口付けをし、激しく脈動しながら巨大な体躯を持つ『無窮の鎖(スレイブ)』状態へと変身した。

 

「こりゃスゲェな。此方も負けてられないな」

 

 同じ男として勝負心を浮かべながら深く息を吸い始め、肺へと空気を送り込み、身体全体の筋肉を膨張させる。

 

「それでは行こうか」

 

「ああ」

 

 

 

 

「「鬼狩り/屈服の時間だ」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 先行する三人の横を、優希に乗った京香、呼吸により脚力と瞬発力を上げた清治が追い越す。

 

「先に向かってるぞ」

 

「安全運転で来いよ」

 

 砂埃を撒き散らしながら、今度は後方にいた三人が先に駆け抜けていった。

 

「あれが優希さんの……凄いですね」

 

「清治さんは相変わらずだけど…、あっちはただのケダモノって感じだわ」

 

 

 

 

 

「此処らへんだな」

 

「敵はどこだぁぁぁ!」

 

「落ち着け。今回私達の任務は、アレが消えるまで見守ることだ」

 

 三人の到着した場所にあったのは、周りに岩を浮かべた奇妙な空間が浮かんでいた。

 

「……ブラックホール!?」

 

「突発的に現れるタイプの門だ、現世と魔都繋ぐな。現世側から人間が迷い込むケースもあれば、醜鬼が現世側に行ってしまうケースもある。大抵は数時間経てば消える。それまでここで番をする」

 

「優希後輩のケースは前者だな」

 

 優希は京香の言い方が気になった。

 

「現世って言い方、なんだかここがあの世みたいですね」

 

「地獄のような場所ではあるだろう。数十年前現れたこの空間は何なのか。何故、女性だけに能力を与える桃があるのか。謎は全く解明されていない」

 

「数十年…、長い期間だなホント。そして、その極めつけが…」

 

 ――こちらへと向かってくる無数の醜鬼の大群。

 

「あの醜鬼共だって事だ。迷惑な隣人が出来ちまったよ…」

 

「あいつらも生態系は謎だ。だが確実に人に害を及ぼす」

 

「いきましょう。京香さん、兄貴」

 

 やってやると掌に拳を打ち付ける優希、それを京香は手で制する。

 

「……待て。日万凛達が向かった。あっちは任せて、私達はここで門の番だ」

 

 そうしていると、近くから醜鬼が数体地面から這い出てきた。

それを三人で次々と屠っていく。

 

「お前ら…!現世には行かせるかよ!」

 

 絶好調な勢いで次々と醜鬼を殴り倒していく優希。その姿に、京香と清治の顔は何処か満足気だった。

 

「うむ、やはり私が見込んだとおりだ」

 

「へぇ、やるじゃないか優希後輩!」

 

 その間にも京香は近くの醜鬼を斬り伏せ、清治も素早く醜鬼の首を撥ねる。

 優希が次に心配のは前線組だが、日万凛は寧を守りながら『青雲の志(ラーニング)』で機関銃で醜鬼達をハチの巣に、朱々は『玉体革命(パラダイムシフト)』で巨大化し、醜鬼達を地面を踏んで生み出した衝撃波で吹き飛ばしていく。

 

(……あれ?俺がいなくても十分すぎるほど強くね?)

 

 早くも、自分の必要性が問われそうな優希。

 

 暫くすると門も消滅し、残りの醜鬼を倒し終えた前線組はいち早く七番組寮へと戻って行く。

 見送った後に残ったのは、変身の解けた優希、京香、清治の三人。優希と京香は褒美という名の代償のため。清治はというと、近くでその褒美の内容が知りたくてわざと残った。

 

(さて……、ご褒美の、時間だぜ)

 

(『無窮の鎖(スレイブ)』の能力の代償。普通の醜鬼だと豚肉を与えるだけだったが…、人間の男には何を与えるんだ…?)

 

 その今回の褒美は――

 

 

 

「よく頑張ったな」

 

(あれ?)

 

(……え?)

 

 

 ――頭なでなで、そして…

 

 

「引き続き励め」

 

((え?これだけ?))

 

 

 ――手渡された飴だった。

 

 

 褒美を与え終え、寮へと戻る京香の姿に呆然とする優希だったが、そこに清治が思い当たる節を言ってみた。

 

「…優希後輩?もしかして、()()()()()()()()()()()その褒美のグレードも上がるんじゃないか?」

 

「あっ…!(そういえば、『主として奴隷が働いた分に見合った褒美を、任務が終わるたびに与える義務がある』って言ってたっけ?数匹倒したぐらいだと、この程度なのか……!!)」

 

「…その様子だと、心当たりがあったようだな」

 

「はい…。あああ…、なのに変身後の疲労はすげぇ……」

 

(褒美のグレード関係なく、疲労感は感じるんだな。これからどうなることやら……)

 

 フラフラヨロヨロと情けなく歩く後輩の背を追い、これからの生活がちょっぴり心配になった清治なのであった。

 

 

 





 魔都のユニアリ、既存情報でも集めたくなりますね、アレ。
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