座覇さんの口調…、合ってますかねコレ…?
「優希後輩…、俺の眼は潰れてないか…?京香が思いっきり目潰ししたから涙が止まらんし上手く周りが見えん…」
「め、眼ですか?はい…、血は出てないし、眼が黒くなってるだけ――兄貴眼が黒くなってますよ!?大丈夫なんですか!?」
「放っておけ優希。清治の自業自得だ。それにその状態のそいつなら既に視界は見えている筈だ。…お前もいつまでも悶絶しているフリはやめろ。優希を誂うんじゃない」
「フ、フリ…?」
悶絶しながら顔を覆い、優希に自分の状況を確認させるもいつの間にか制服を着替え終えていた京香からの一言で、先程まで悶絶していた清治がピタッと止まり何事も無かったように立ち上がった。
「すぐにバラすなんて酷いぞ京香。もうちょっと優希後輩に意地悪していても良かったじゃないか」
「話が進まないからだ、馬鹿者」
「えっ?でも兄貴の目は……」
優希が見ている清治の眼は、――間違いなく黒色。その中に金色の瞳孔が浮かんでいて何処か不気味な感じだ。
「コレか?醜鬼を食った後はこれが普通なんだ。副作用的な?」
優希の顔が青褪める。――今なんて言った?
「醜鬼を食べた!?兄貴、体は何ともないんですか?」
「おう、こんな風に何ともないぞ」
ムン!っと腕に力瘤が浮かび、サムズアップを返す。本当に何ともなさそうなその姿に優希はホッと安堵する。
「でも、それなら何でそんな眼に…?」
優希からの疑問に、清治は京香に「説明していいか?」と確認し、了承を得て自分の特異体質について説明する。
「――『
懐から出したのは、門を防衛をしている時に着けていたあの
「現世で門に遭遇する度に、これを着けて醜鬼を倒す姿からつけられた異名が――『
彼の口から出た単語に、優希は思わず驚愕した。
「お、鬼狩り天狗!?兄貴が、一時期醜鬼を倒し歩いていたっていう、あの鬼狩り天狗だったんですか!!?」
――鬼狩り天狗。当時、故郷を離れた清治が門に遭遇する際に天狗の仮面を着け醜鬼を倒す姿からつけられた異名。
風の中を舞うようにして次々と醜鬼の首を落とす。天狗の仮面を顔につけ、羽織に風を纏いながら醜鬼を倒す正体不明の人物。その姿は正に現代に現れた天狗そのもの。一時期はニュースや新聞に取り上げられる程に有名だった。
魔防隊なのか?それともヒーローの真似をする一般人なのか?色々な噂が飛び回っていた。
「その後は、醜鬼を追っているうちに優希後輩と同じように魔都に迷い込んで、醜鬼を狩っていくうちに魔防隊に捕縛されたって感じだな」
遠い目で語る清治、京香もその時の事を鮮明に覚えている。
「あの時のお前は、何処か殺伐としていたな」
「…家族を殺した醜鬼への憎しみで周りが見えていなかった。特に宛もなく彷徨いながら醜鬼へと刀を振るい、倒し終えたらまた門を探す。それを繰り返した末に魔都へと流れ着いた。我ながら恥ずかしい過去だな…、コレは」
頬をかきながら恥ずかしげに語った暗い過去。今の清治を見ていても、絶望の中にいた清治の姿を優希は想像がつかなかった。
「魔都を放浪としていた所を捕縛…確保された後に組長会議にかけられて、その能力を魔防隊に活かすならと言われ、特例で魔防隊に配属されたんだ。全く、強さを求めるなら何でも取り込むとんでも婆さんだよ、あの人は…」
「組長会議?とんでも婆さん?」
「組長会議にはもしかしたら優希後輩も行くかもしれん。俺に似たケースだからな。婆さんに関しては、日万凛を通して会うだろうな」
「?」
「――話が逸れたな。兎に角だ、俺は醜鬼にはならないし、ずっと優希後輩の兄貴分だ。それだけは覚えておいてくれ」
「――はい!」
よしと頷くと、今度は京香へと視線を向ける。
「俺ばかりに話させておいて、自分の話はしていないのか?」
「いきなり話し始めたのはお前だろうが」
「それは悪かったな。じゃあ交代だ」
バトンタッチとばかりに、語り手は京香に移った。
彼女の口から語られるのも、また悲惨な過去。
――月山大井沢事件。
それは大規模な門から現れた醜鬼による大虐殺。彼女を除いた村の住民800人が死亡といわれる大惨事の事件。彼女はそのただ一人の生き残り。
「魔都の桃や醜鬼を資源だの研究対象だの言っている連中もいるが、私は違う。こんな奴らのために人が苦しむなど、あってはならない。――速やかに潰す。それを実現させるためにも力が必要なんだ」
決意の籠った眼。その眼に優希は眼が離せなかった。
「……それに。――お前相手ならば、不思議と嫌悪が少ない。能力を十分引き出せているし、相性がいいのだろうな」
「京香さん…」
そういう京香は、何処か照れた微笑みを優希に向けた。その後に考える素振りをし、何を言ったかと思えば…。
「まぁ色々と言ったが、犬や猫と風呂に入るのに照れる奴はいないだろ?」
(犬…)
(まさかのペット扱いかよ…)
ペットの犬扱いである。
「奴隷とああするぐらい…うん。大したことはない」
先程のディープなキスをペットとの戯れだと思える精神、流石京香である。
「あ、そういや京香。お前の知らないうちに日万凛の優希後輩への扱いが酷いから、そっちの方で配慮してもらうと優希後輩が助かる」
(…!兄貴!)
「そうか。ならばこれからは配慮しよう。仕事ばかりではいざという時、潰れるからな」
「(!!)――ありがとうございます!」
ウンウンと頷く清治。そうする彼の端末から着信音が鳴った。
「――ウチの組長様からの帰還命令だ。俺はここで別れるとしよう」
「そうか…。美羅にもよろしく言っておいてくれ」
「へいへい。といっても、お前からの返事に素直に返すとは思えないがな」
「フッ…、違いない」
「兄貴…」
立ち去ろうとする清治に、何処か寂し気に目を向ける優希。そんな彼に清治は言葉をかける。
「優希後輩」
「!」
立ち去る背中越しの言葉に、耳を傾けた。
「京香を…、七番組を、よろしく頼むよ」
「っ!はいっ!」
――二番組。裏鬼門に位置する七番組寮と正反対の場所、鬼門に位置する醜鬼が多く出現する寮である。
そこに、七番組に居候という放浪をしていた副組長が帰還した。寮内に彼の姿が見えた瞬間、二番組組員である座覇めぐみが駆け寄ってくる。
「戻りましたか、清治さん」
「おう。俺の留守中、代理を引き受けてありがとな、座覇」
「そんな、美羅さんのお側にいられただけでも感激ものですから!!」
キラキラと目を輝かせるめぐみ。そんな彼女にそれじゃあ…と試しに提案をしてみた。
「じゃあ俺の変わりに副組長を――「美羅さんは清治さんを指名しました。自分も既に清治さんに負けているので、清治さんの舎弟ッス」――そうかい…(相変わらず組長に心酔してるな…)」
そんな会話してる間に、組長室まで到着した。めぐみがノックし、中から声が返ってくる。
「組長、副組長が帰還しました」
『おう、入れてくれ』
「はい。――では」
「ああ、ありがとよ」
組長室のドアノブを捻り、清治は中へと入室した。
そこにいたのは――
「おう、また随分と長い放浪だったようだな。腕は訛ってねーよナ?清治」
「あっちでも鍛錬積んでましたよ…。意地悪言うのはやめてくださいよ。美羅組長」
――二番組組長
――二番組副組長
この寮のツートップが、数週間ぶりにこの場に対面した。
やっと美羅さん出せた〜!