ソード・アート・オンライン―ノットゲーマーズ― 作:厚別チルノ
「むがう」とも。何か有るか、何もない、の意
作為がなく自然なこと。また、そのような境地。
大辞林 第三版より引用
無何有(むかう)の世界~
--起--
2011年11月
MMORPGソードアートオンラインが日本で配信開始され、
国内ではゲームの中に入り込んで遊べると熱狂的になっていた。
その度合いを例えるなら・・・
80年代登場したドラクエ
90年代に登場したポケモン
00年代登場したモンハン
に比例するのではないのか?と言わんばかりの大騒動で、
メディア、新聞、ラジオ、インターネット等の情報機関は、
まるで不倫騒動で騒がせた芸能人を連日連夜取り上げて放送している状況に近いと言ったそんな状況下であった。
そんな熱狂的になっているのなら、みんな買えば良いじゃないの話になるのだが、
そうは問屋は卸してくれないのが現実で、
販売本数が限定1万本、
その内にテストプレイで2千本なので一般ユーザーが買えるのは8千本、
単純に計算すればそんなところか?難しい事は省いての話だが・・・
そんな状況なのでゲームをやりたい人間にとってはもう戦争である。
そんな中、この物語の語り手になるであろう『私』はそんな戦争とは無縁の場所である自宅の一室で目の前の機械式ヘルメット《ナーヴギア》を眺めていた。
それは先程説明したゲームをプレイするために必要な機械である。
なぜそれを持っているか軽く説明するなら、
気分で応募したテストプレイヤーの抽選に当選して手に入れたからである。
ゲームした感想は一言で言うならば、
あー・・・テレビゲームに戻れないよこれは・・・って言うのが正直な答えである。
話を戻して、
現在の時刻は13時05分で配信開始の時刻が過ぎていた。
現実のやる事(主に洗濯、昼食の後片付け、掃除)を終わらしたしゲームの世界に行きますかと思い、
私はナーブギアを
頭に被せ
仰向けなり
目を瞑り
『リンクスタート』
と呟いてゲームの世界へと意識を飛ばした。
ゲームの世界にたどり着いた私は語りかけてくるアナウンスと目の前に出てくる
[プレイヤーネームを決めてください]
それに対し、私はタッチパネルのような操作キーで
『sei《セイ》』
と入力し、その後はアバターを引き継ぎますか?と言うアナウンスに対して
「はい」
と答え、完全にゲームの世界へと足を踏み入れたのだった。
--承--
足を踏み入れたゲームの世界、
私の目の前に広がる光景は中世ヨーロッパの町並みを再現したような風景だった。
言い方悪くするならRPGの王道たるどこかの国の城下町の広場とでも言っておこうか・・・
「久々に来たなあ~」
そう呟きながら体を伸ばしたり屈伸したりして体の感覚を確かめていると、
後ろから少女?少年?性別がわからない人からクスリと笑いながら
「君、こんな広いところで準備体操していると目立つよ」
と声を掛けられた。
私は「ん?おお」と戸惑いながら返事を返すと、
「ねえ、君がセイ君でしょ?」
と両手を後ろに組みながら上目遣いで私に聞いてきたので、
「ああ・・・そだよ?」
となぜか疑問系で答えながら目を逸らして答えた。すると
「わあ!!やっぱり!!ここで話すのあれだし、ちょっと場所を変えない?」と聞かれたので、
「そうだねぇ~そのほうが良いな~」と私は返すと、
「よかった!!」と笑顔で答え私を誘導した。
道中に私は誘導してくれている人物に
「なあ、なんて呼べばいい?」と聞くと、
「ん?忘れたの?シブンだよ!!」と答えてくれたので、
私はシブンに「ああ、すまない初めてだ」と言うと、
シブンは「まあ~今はそう言う事にしとくね」とニコリとしながら私に答えてくれた。
『shibun《シブン》』
テストプレイヤーの時に出会った少女アバターで周囲が攻略に勤しんでいる最中、
私は攻略などせず町やらフィールドを探索して時間を忘れていた時に出会った。
私が最初にそっけない態度したのが気に食わなかったのか、プンスカと怒られたのがきっかけでその後は押しかけ女房みたいにテストプレイの最後まで私と共に過ごしていた。
性格は控えめなのだが引かない所は引かない芯の強さがあるって所か?
声は女性声優が少年役やっているような感じだし。
上の空の状態で軽くシブンの事を思い出していると、
シブンが「ついたよ」と私に言うので、
「宿屋か・・・金はあるのか?」とシブンに聞くと
「一応ね」とまたニコリとしながら答え、私は「そうか」と軽く返事をした。
二人で宿の一室に入ると、
私は部屋にある椅子にどっかりと腰掛けてシブンは簡易ベッドにちょこんと座った。
数分なのか、数秒なのかわからないが、
外はお祭り騒ぎの状態の中、部屋はしんと静まり返った空気に包まれていて、
何処かもどかしい気分になった私は口を開いた
「んで・・話はなんだ?」とシブンに聞くと、
シブンは「その前に謝って・・・」とぼそぼそとした口調で言うので、
私は「何を?」と聞くと、
「僕を忘れていたこと!!謝ってよ!!」と涙目で訴えるように言うので、
ああ、めんどくさいな~と思いつつも「忘れててすまない」とシブンに申し訳なさそうに謝ると、
その言葉を聞いたシブンは満足とした表情で「周りがビギナーだったしね、ここでベータだったら何言われるかわからなかったもんね」と私に言ってきた。
それに対し私は「そうだな」と軽く返事を返した。
シブンの機嫌が治ったのは良いとして、本題に触れていないのでは?と思った私は
「シブン・・・それで話はなんだ?」
と聞くと、シブンは忘れていたという表情で、私に
「セイはこれからどうするの?」
と聞いてきたので、
「ん~取り合えず『あの人』を探すかな?んで、その先はまだ決めていない。」
と答えると、
「じゃあ、僕はセイと一緒に行動するよ!!一人で探すより、二人で探したほうが早いかもよ?」
と一緒に行動したいと言う顔と声で私に意見と提案を述べたので、
「わかった、またよろしくな」
何か知らないけど好かれているで良いんだよな?と疑問に感じつつも、私は二つ返事で返した。
その後私はシブンと探索と情報収集をするため街を歩き回っていた。
NPC《ノンプレイヤーキャラ》から得た情報では、
「ここは第一層『はじまりの街』だよ」や
「フィールドで倒れたら復活ポイントのある『黒鉄宮《こくてつきゅう》』に送られる」に
「お店は複数存在しますので買い物はじっくり考えてからした方がよいですよ」と言われた後に
「路地裏に珍しい武器のお店がありますよ」と説明をされたり、美男美女のプレイヤーキャラ達に話を聞いたりして時間が過ぎて行った。
そして私達はスタート地点であるはじまりの街の中央広場にいた。
「そこそこ歩き回ったが『あの人』に関する情報は一切無しか・・・」と私は呟くと、
「もしかしたら、まだインされていないんじゃないのかな?一回出て確認してみたら?現実《リアル》なら連絡取れるしさ」
とシブンから提案され私は
「んだな、ちょうど煙草が吸いたかったし一旦ログアウトしてみるわ」とメニュー画面を開いて『ログアウト』を探し始めたのだが、その項目が見つからず困惑をした表情を見せているとシブンが
「どうしたの?顔色悪いよ?」
と聞いてきたので、私は
「ログアウトの項目が無いんだ・・・」
と青ざめた顔で答えると、シブンは「ええ~まさか~」と声を出しながら半信半疑な表情でメニュー画面を開くと、シブンも青ざめた顔になりながら
「ログアウトが・・・無い・・・」と私に呟いた。
二人して青ざめた顔でいたその時に街にある鐘の音が「ゴーン、ゴーン」と鳴り響く中で私のいる中央広場では青白い光が次々と出始め、光の中から美男美女のプレイヤー達が次々と姿を見せるその光景に、
私は「なぁ・・・なんか変じゃないか?」とシブンに聞くと、
「そうだね、驚かせるにも少しやり過ぎだと思うよ。なんかログアウトが出来ない上に強制的に集められているからね。」
と心配そうな表情で答えるシブン。
更に黄昏色に染まっていた空が周囲の不安と焦りを彩るように赤黒く染まっていきどこかに隙間があるのだろうか?赤黒い液体が宙に流れ溜まってはそこから赤いローブに包まれた何かが登場した。
--転――
「プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ」
「私の名前は茅場昌彦《かやばあきひこ》。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ」
「これはゲームではなく現実だ。」
茅場は広場にいるプレイヤー達に向けそう伝えると、プレイヤー達は茅場に対して怒号を発していたが、茅場はお構い無しに説明を続けていた。
「ーーログアウトが出来ないのは仕様ーー」
「ーー213人かが強制ログアウトをしたが、死亡したーー」
「ーーこの世界から出るには100層をクリアしなくてはいけないーー」
「ーー一度死ねば、現実でも死ぬーー」
「ーーこれにより《ソードアートオンライン》の正式サービスのチュートリアルを終了する。」
と言い終えると、最後に茅場からの贈り物としてアイテム欄に『手鏡』が追加され、そこで本当にチュートリアルが終わったのであろう空が黄昏色に戻っていた。
「ふぅ~、気分が悪くなるもの見ちまったなシブン」
とシブンに一声かけると、
「ひゃっ!!」
と驚く声が聞こえたので振り向くと、そこには驚いた顔した人が立っていた。
姿形を見回す限り、髪は茶髪混じりのショートカットに顔は幼さが残るも大人びた顔に肌白く、体つきはもやし?のように腕や足が細く、胸の膨らみも確認取れる事から、間違い無く女の子だ。
そう見ているとその女の子から
「え?もしかして、セイ?」
と私に恐る恐る聞いてきたので、私は
「ああ、そうだが、誰だ?」
と答えた。
すると女の子は
「僕?何言っているの?シブンだよ!!さっきまで一緒にここにいたじゃない!!」
とあわてて答えたので、私は
「シブン!?いや、その、姿形が変わりすぎて誰かと思ったぞ!!」
と彼女の両肩を両手で掴みながら答えると、彼女は
「セイこそなんか恐いよ・・・厳ついし・・・それに肩が痛い・・・」
と涙目で私に言うので、私ははっとした顔をして彼女に「すまない」
と謝った。
次に私の取った行動は周囲を見回して見る事にした。
さっきまで美男美女で溢れかえっていた広場だったのだが、今では現実世界とは何の変わりもない状態になっていた。いや、少し変わっているのは女装している男性が多々いるって所か?
そんな状況下で私の腕を掴みながら
「ねぇ・・・さっき渡された手鏡でも見ない?」
とシブンはウインドウのアイテム欄に表示されている『手鏡』に指差しながら提案をしたので、私は
「わぁーた、とりあえず見てみよう」
と手鏡を取り出し見てみるとそこには写し出された私の顔は、髪がパーマかかったオールバックで、顔つきは渋く目付きが鋭い状態になっていて、まるで取り立て屋みたいな顔をしていたのでびっくりした。
「あー、シブン?すまなんだがこれは俺の現実の顔だわ」
とシブンに言うと、彼女は
「僕も現実の顔になっている・・・」
と答えると私は一つの核心を得た。
周囲のプレイヤーの姿は『アバター』のものでは無く、『現実』のものであると言うことでゲームではなく現実であることを視差させたのであろう。
そして、そうなってしまったと言うことは現実で見慣れている『あの人』をより見つけ易くなったと言うである。
ただそれは、相手がログインされている上にまだ『生きている』事が絶対条件なのだが・・・。
そんな事を考えていると、シブンから
「これからどうする?」
と声をかけられたので、私は
「『あの人』を見つけるために確かめたい事がある。」
と答えると、シブンは
「そっか・・・『あの人』この世界にいると良いね・・・」
と物悲しそうに言うので、
「まぁな、いなければいないでなんとかするしかないが、とりあえずは出来る限りの事をさせてもらうさ。」
と言い、更に
「そういえば、シブンはどうするんだ?こんな状況下だ、何か確かめたい事があるなら優先した方が良いぞ?」
と提案を促すと、シブンは決意を秘めた表情で
「僕はテストプレイヤーだからね、とりあえずこの状況で何をして良いかわからないビギナーがいるはず・・・だから・・・その・・・」
と言葉がつまるシブンに対し、私は
「わかったよ水先案内人をやるんだな、するととりあえずは別行動になるって決まった事だし生きていたらまた会おうぜ」
と私は歩き出そうとした時、後ろからシブンが
「待って」
と声を出して私に
「この街から出るときに次に向かう場所は『トールバーナー』を目指して。後途中にある『ホルンカ』の集落によって行くと良いよ。」
とアドバイスをくれたので、私は
「サンキュー、行けそうなら行ってみるよ。」
とシブンに礼を言い、更に一言
「シブン・・・お前なら水先案内人やれるよ」
と添えて私は黒鉄宮に向かって歩いて行った。
--結--
「さて、黒鉄宮についたし探索探索っと」
黒鉄宮に到着した私はまずテストプレイの時に使われていた復活ポイントに向かって歩いていた。
黒鉄宮とは私なりの解釈になってしまうが、復活ポイントやPK《プレイヤーキラー》やら犯罪プレイヤーを入れる牢獄がある場所で主にそれ以外で足を運ぶ事はない場所である。
そこに足を運んだ私は一つの確認を取るためにある場所へと向かっている。それは
「見つけた・・・」
そう、復活ポイントである。
復活ポイントを見ているとそこにはテストプレイの時にはなかった黒い石碑があり、よく霊園とか災害現場にある慰霊碑をイメージするような大きさで、そこに刻まれている文字はプレイヤーの名前が彫られている。
更によく見てみるとプレイヤーの名前の上に横線が引かれている箇所が所々あり、これは本当に『ゲームオーバー』になったプレイヤーにつけられるのであろう。
そう調べている内に次々と横線が刻まれて行くのが確認できる。
「なるほど本当に現実になっているわけか・・・」
と一人呟きながら石碑を眺めていると、後ろから
「セイ?」
と声をかけられたので、後ろを振り向くとそこには一人の男が立っていた。私は
「あなたでしたか」
と一言発すると、男は
「ああ、ようやく会えたか兄弟」
と一言言っては私の前に姿を現した。
その姿は髪はパーマかかっており、顔は渋く目は穏やかなもので、体つきは中肉で背丈は私より10㎝程高い男性である。悟りを開いたような口調で渋い声をしている。
「ようやく会えましたね、それでここでは何と呼べば良いですか?」
と私は聞くと、男は
「そうだな・・・ここでは・・・
『Shin《シン》』
と呼んでくれ」
と答えたので、私は
「シン、これから何をしますか?」
と聞くと、彼は
「俺は街を出て冒険に出るよ」
と答えたので、
「では、装備を整えてからで良いですか?」
と私は確認を取ると、シンは
「ああ、かまわない。」
と答えたので、私達は装備を整えるために黒鉄宮を後にした。
『Shin《シン》』
現実世界《リアル》で一緒に仕事をしている相方で応募型の懸賞が趣味
ソードアートオンラインのテストプレイヤーになりたいから、私を誘い一緒に応募したところ見事二人とも当選した事で今回の騒動に巻き込まれる要因になってしまった。
テストプレイヤーの時には仕事が忙しく前線行っていたプレイヤーとは程遠いプレイをしていて、主にサブクエストばかりやっていた。クリア出来ない時は私やシブンを呼び出してクリアしたりと自由気ままに遊んでいた。
性格は穏やかだが怒らせると恐い。遊び心を忘れない一面もある。
街で装備を整えながら、私はシンの事を思い出していると、シンが
「さて、どこを目指せば良いんだ?」
と私に聞いてきたので、私は先ほどシブンに言われた事をシンに伝えると、シンは
「お前は本当に出来た弟分だなぁ~」
と言うので、私はデレデレしつも
「テレるぜ」
と答え、街を出た二人はトールバーナーへ続く途中の村ホルンカへ向かうのであった。
ホルンカへの道中、狼のようなモンスターが私達の目の前に姿を現し、私は『片手斧』をシンは『片手剣』を出し、狼と対峙した。
私もシンも狼と間合いを取りいつ攻撃するか様子を伺うと
、狼の方から攻撃を仕掛けたので、シンが剣で狼の攻撃をカウンターして、相手が怯んだ隙に私が斧で連続攻撃を畳み掛けると、狼がポリゴン状に散り私に経験値と金が入って戦闘終了した。
こうして戦闘を繰り返しながら、私達はホルンカを経てトールバーナーへと目指していた。
それから一ヶ月、噂では犠牲者が増える中まだ第1層はクリアされていないと言う。
続く
第1話考察
テーマ1-シブンの立ち位置-
冒頭からチュートリアル終了にまで登場したシブンですが、彼女の役割はセイにこのアインクラッドの案内人としてオリジナルキャラクターとして登場させました。原作ではキリトがクラインに対して案内をしたように、セイにしてはクラインの立ち位置で案内されています。
これは、SAOの世界観を知らない読者に向けての説明をセイを通じて受けるように取り上げています。
テーマ2-セイの行動原理―
セイははじまりの街で人を探しをしています。これはこの話の終盤に登場するシンの事を指しているのですが、これはセイ自身がプレイを望んだものではく、誰かに誘われてプレイをしたゲームであることを指しています。
私たち社会生活を送るにも、まず自身が望んだ場所に対してなら次に何かのアクションを起こしますが、誘われた、もしくは指示をされた場所なら何をして良いかわからない状態に陥る事が多々あります。
それと同じようにセイもシンに誘われていたことから、まずはシンを探し出さないと、次に何をするべきか見通せなかったのだと思います。
テーマ3―渡されたバトン―
茅場のチュートリアル終了後にとった行動ですが、シブンはセイにこの街から目指すべき場所を伝えています。
セイもテストプレイヤーならわかるのでは?と思う読者はいるはずですが、彼は作中に次のような事を言っています「周囲が攻略に勤しんでいる最中、私は攻略などせず町やらフィールドを探索して時間を忘れていた時」
と言っていたことからはじまりの街の周辺の事しか知らない状態を差しているのです。(その時にシブンと出会ったのでシブンは攻略していたりしていた)
その後、シンを探したしたセイはシブンに言われた通りのルートで先に進める事を彼に伝えることで、それに同意してようやく街でやるべき事を終えて先へ進めれる事となるのです。