雷神の系譜~鹿紫雲一の末裔に転生したので、原作の悲劇を打ち壊す~   作:メンチカツ

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呪術廻戦四期PVの鹿紫雲一が格好良くて最高です!秤のギャンカス術式も楽しみです。


呪術師の会①

 2014年。秋。俺、呪術師鹿紫雲(かしも)龍蓮(りゅうれん)は11歳。

 その年に御三家である五条、加茂、禪院だけでなく鹿紫雲のような名門から総監部や野良の術師も参加する呪術師の会合が開催された。

 

 呪術界の安定と現状報告。懸賞金のかけられた呪詛師や呪霊について情報共有等を目的とした親睦の場であるが、それも表向きの理由だ。裏側では権力闘争の火種が絶えず燻る、実質的な縄張り争いの場でもあった。

 

 今回の会場となったのは、関西の山深き森にひっそりと佇む、かつて旧華族が所有していたという広大な近代和風建築の邸宅だ。鬱蒼とした木々に遮られ、一般人の目が届かないその空間は、呪術界の排他的な性質をそのまま体現したかのような重苦しさに満ちている。

 

 立食形式で行われているメイン会場の大広間は、格式高い着物や高級スーツに身を包んだ術師たちで溢れ返っている。グラスを片手に笑顔を張り付かせ、互いの腹を探り合う大人たちの姿は、呪霊の巣窟とはまた異なり闇が深い。

 

 そんな喧騒から逃れるように俺たち3人は廊下の奥にある来賓用の休憩室へと退避していた。どっしりとした革張りのソファに深く腰掛け、大きく息を吐き出した。前世で『呪術廻戦』の読者だった俺から見ても、この呪術界特有の殺伐とした空気は気が滅入るものだった。

 鹿紫雲家当主である俺の父親俊朗が今もあの面倒くさい付き合いを続けているのは本当に大変だ。当主という仕事も大変だな。

 

 俺も原作の悲劇を回避するため、俺の直属の部下となる術師が欲しいところだが野良の術師も没落寸前の家系も鹿紫雲の門下となりたがるので俺が囲い込むのは難しそうだ。

 

 そう判断して俺は早々にエスケープし、皿には寿司や肉料理など食べたい料理を集め、烏龍茶も確保したのでここで食事をするつもりだ。

 こちとら育ち盛り、美人とのお話でもなければこんな会合は会話よりも食事のほうが楽しい。

 

 じっくり火の通った極上のローストビーフに、ソースと絡んでふっくらとした食感が楽しめる白身魚のポワレ。さらには濃厚なソースが絡んだオマール海老のローストまである。さすが名門の集まる会合、飯のクオリティだけは最高だ。さらにこれでもかと乗せた寿司も職人が目の前で握った高級ネタだ。俺がそれらを至福の面持ちで口へ運んでいると、隣の白髪の男が溜息を()いた。

 

「……相変わらず、この会合は空気が悪いねえ」

 

 隣のソファに長身を折り曲げるようにして座った五条悟が、サングラスのブリッジをくいと上げて退屈そうにつぶやく。

 

 いや、お前は五条家当主だろ。ここで皿に大量に持ったケーキを食べていていいのか?

 

「いいんだよ。僕の仕事はもう終わって、あとは五条家(うち)の人間がやってくれるからね」

「うわー適当ー」

「酷いな、ちゃんと考えて行動してるよ? それよりもほら、今は恵をフォローしてあげなよ。あいつ、完全に魂が抜けた顔してるし」

 

 五条がひょいと視線を向けた先では、伏黒(ふしぐろ)(めぐみ)がソファの端で、見るからに不機嫌そうな顔で死んだ目をしていた。

 

「どうした? 機嫌悪そうだな。お腹空いたのか? ステーキ食べるか?」

 

 一口大にカットされ、ソースを絡めた牛フィレ肉のステーキが小山になっている皿と紙ナプキンに包まれたフォークを渡すと、恵は「……食べる」と呟いてフォークを受け取り、口に運んだ。

 そして恵は、食べながら話し始める。

 

「……俺は最初から来たくないって言いました。なんでわざわざこんな、呪いの気配より人間の悪意の方が濃い場所に……」

「君が鵺と脱兎を調伏しているという噂が、禪院家の耳に入っちまったからな。直毘人のジジイがお前に会いたがって、僕に頼み込んで来たんだよ」

「それで過干渉されたくないから、一度顔見せくらいはしようって思ったと?」

 

 俺が推量すると、悟は「当たり~!」と笑った。

 禪院家26代目当主禪院直毘人は豪快に酒を飲みながら好奇心に輝く目で恵を見て、彼と言葉を交わしていた。もっとも恵は呪術師の会合として威圧感のある直毘人に委縮していたけれど。

 

 それにしても同席していた禪院扇はドロッとした情念が滾ってそうな眼差しで恵を見ていたのは印象的だ。あのおっさん、いつも怒っているんだなぁ。

 『呪術廻戦』において炎使い第3位の実力者なのに情けない。

 

「ねえ、本命の仕事は終わったって言ったけど、実はもう一つ”ついで”があってさ。せっかくの機会だし、恵には龍蓮以外の同世代の術師友達を作ってあげようと思って。ついでに君も交友関係を広げてみなよ。人数は少ないけど君達以外にも術師の子供が来ているんだ。加茂や禪院からもね」

「友達?」

 

 悟の言葉に俺は得心がいった。

 この規模の会合ならば御三家からもあの原作キャラクターたちが来ているのだろう。

 

 加茂家の出身で、表向きは嫡流とされる加茂憲紀

 

 禪院家出身で現当主直毘人の姪にあたり、扇の娘である禪院真希禪院真依

 

「それにさぁ、もうそろそろいつものが来そうなんだよね。キッズたちには見せたくないなぁ」

 

 え? と胡乱げな目で悟を見る恵。俺は何となく予想がついた。

 

五条家当主()はまだ独身だからねぇ。術師たちによる露骨な妻の押し付けもあり得るけど、それよりありそうなのは自分の娘や妹を紹介して、後日、屋敷でお茶や食事でも、といったところかな」

「うわぁ……」

「大変だよねー」

「何言っているんだか。龍蓮だってあと数年すればこういう話がどんどん来るよ」

「やっぱり、そういうのはあるか……まあ、あるよね。父様たちもそんな感じだし」

「いや、あと数年って俺たちはまだ中学生だろ?」

 

 術師であっても、一般家庭育ちの恵からすれば不思議なのだろう。まあ、そりゃそうだ。

 

「うちは子供作るのは早いからなぁ。うちの親父は12歳には既に子供いたしな」

 

 末弟の俺が7歳の頃に長兄が27歳と、親子ほども年齢差があったのは一般家庭では異端だろう。

 ちなみに14代目当主(高祖父)もやっぱり13歳くらいでは既に子供がいたとか。ちなみに15代目当主(曾祖父)は末っ子らしい。

 

「えぇ……」

「養育するためのリソースを完備している家だからこそできることだよねぇ。一般家庭では異端なのは当然」

「有力な術師の家系だと英才教育のために家には養育機関を作っているところはあるんだよね。僕も高専へ行くまでは勉強はすべて五条家(うち)だったし」

「ちなみにうちの鹿紫雲家では、有能な術師の血を絶やさないための側室も認められているからね。まあ、それはうちだけじゃなくても他でも取り入れられているシステムだけどね」

「は? それって法律的に不味いんじゃないのか?」

 

 怒濤の異文化知識で困惑する恵。実に新鮮な反応だ。悟は恵の疑問へ答える。

 

「呪術師は稀少な人材だからね。呪霊や呪詛師への抑止力が増えるならば国は何も言わないんだよ」

「……!」

 

 真理だよなぁ。国としても術師が増える実利があるし、術師の家も術師ガチャを回して、SSRの術師とSSRの術式の抱き合わせが欲しいから、数打てば当たるの精神で母数を増やしたいと思う。ここに術師と国で利害の一致がある。五条悟のようなSSRを超えたURの術師とURの術式の抱き合わせが誕生すればその一族にとって上々だ。

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 五条家の術師がやって来て「当主様、お願いですから……」と懇願されて、悟は仕方ないと休憩室を退室した。話していたように、自分の娘や妹を紹介しようという術師が来たのかもしれない。

 原作ではマジで五条家って悟以外は存在感なくて、五条家の術師や五条家の仕事をする悟を見るだけで何か貴重な経験をした気分になる。

 

 それにしても人外魔境新宿決戦でも五条家がちっとも出てこないだなんて思わなかった。

 黒幕も無関係に勝手に滅んだ禪院、黒幕に乗っ取られた加茂は兎も角、当主以外は全然出ない五条はどうなのか。

 

 原作キャラクターを探しに恵と通路を歩いていると、壁に写真や絵が貼り付けてあるのが目についた。

 

「なんだこれは」

「懸賞金がついている呪詛師の写真や呪霊の絵だな。術師も呪霊も被害が大きい、危険度が高いほど高額になるんだよね。……うわ、黒沐死(くろうるし)だ」

 

 思わず顔を顰める。絵の中にはカオナシのような起伏がない黒い体に、虫のような不気味な姿が描かれていた。ゴキブリへの恐怖や嫌悪から生まれた特級呪霊。黒沐死(くろうるし)

 

 原作だと羂索が呪霊操術の支配下から解放して、死滅回游の泳者(プレイヤー)として仙台結界(コロニー)へ投入された呪霊だった。

 夏油が呪霊をすべて消費したあとに彼の遺体を窃取した羂索は、黒沐死たち呪霊を補給したのだと思われるが、懸賞金がかけられているこの黒沐死は羂索が捕まえて契約することで貯蔵されるのだろうか? あるいはこの黒沐死は羂索が封じていた個体とは別個体の可能性もある? ……ゴキブリへの恐怖や嫌悪など際限なく湧いてきそうだし、黒沐死の子を作る特性も考えると、気軽にポップしてきそうな気がしてきた。

 

「……黒沐死(コイツ)を狙っているのか?」

「いやぁ、Gはキモイし、パス! ここら辺の一級呪霊たちやこの呪詛師を狙うよ」

 

 恵に訊かれるが俺は即否定した。乙骨に大ダメージを与える物理攻撃力は凄いけれども、それよりも圧倒的な数の虫を隷属、強化する物量攻撃が嫌だ。大量の虫ってのが気持ち悪い。一瞬で川を埋め尽くし、マンション一棟をも覆い尽くす程の夥しい数のゴキブリは見たくない。

 

「メグミンもどれか狙ってみるか? 呪詛師は悟がまだ許してくれないかもだが、呪霊ならほどほどなのを狙っとけば? もう二級くらいはいけるだろ」

「そうだなぁ……」

「鹿紫雲家次期当主と御三家の者が在野の術師のように金銭目当てに働くのか?」

 

 俺と恵が話していると少年が声をかけてきた。思っていたより声音が高いけれども声変わりをする前か。

 

「こんにちは、加茂(かも)憲紀(のりとし)君」

 

 俺の目の前には着物を着た、長い黒髪を持つ糸目の少年が立っていた。原作の初登場時にはつけていたおしぼりみたいな髪飾りがついていない。やっぱりあの髪飾りは要らないな。




加茂と真希真依を登場させるつもりが意外と長くなったので今回はここまで

捏造設定もりもりでした

側室制度
呪術師という人材を確保するならば血縁を増やして術師の人口を増やすのが必要だから、有力な呪術師の家系にはありそうな制度だし、側室の子である憲紀や兄がたくさんいる直哉(直毘人に妻が一人とは言われていない)からすると、妻一人ではなく何人かと子供を作るということはありそうだな……と考えた結果こうなった。

長兄と末弟(龍蓮)の年齢差
深く考えずに長兄の年齢設定をしたために一般社会の常識から考えられないくらい早いうちに後継を作り始める家になった。



次回投稿は7月中旬予定です。
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