雷神の系譜~鹿紫雲一の末裔に転生したので、原作の悲劇を打ち壊す~ 作:メンチカツ
時間が経つのは早いもの。
呪霊と戦ったり、呪詛師と戦ったり、悟と組手したり、津美紀とデートしたり、硝子とデートしたり、真依とデートしたり、ウザ絡みする直哉をボコったり、真希とデートしたり、恵と一緒に仕事したり、またウザ絡みする直哉をまたボコったりしているうちに、あっという間に2016年も終わりに近づいた。
12月、俺が
「
「なんですか、そのテンション」
「元気いいなぁ」
俺たちを出迎えたのは五条悟。一年生の担任教師となった彼が、こんなことを言い出した。
「今年の一年が良い感じに仕上がってきたからね。君らと会わせたかったんだよ」
そう言いつつ悟が俺たちを案内するのは教室ではなくて校庭だった。
「そいつらが五条さんの言っていた術師か? 本当にまだガキなんだな」
ニヤリと笑いながら歩み寄ってきたのは呪術高専一年生の
ごつい体格に金髪、見るからに柄の悪いギャンブラー気質の男だ。金髪でないことに違和感があったがあれは確か停学となったあとに髪を染めたんだったか。
「みんな、格好いいね~。特別一級術師だなんて凄い!」
そんな秤の隣に立っているもう一人の一年生、
「俺は等級ないですけどね」
「俺が特別1級術師です」
「そう、彼が最年少の特別1級術師の鹿紫雲龍蓮くんとそれに勝るとも劣らない実力者である伏黒恵です!」
「……
恵に続いて俺も挨拶をする。
「初めまして、
「ハイ! ということでこの二人も数年後には高専へ入学する。だから龍蓮と恵には秤たちを仲間として、ライバルとして、これから先は苦楽を共にして、切磋琢磨していくためにお互いを知って欲しい!」
そして、と悟はビシッと秤たちを指差した。
「だいぶ育ってきた君たちは高次へと成長して欲しい!」
秤は胡乱げに悟を見る。
「それで、具体的に何すんだよ?」
「何をする? 君たちは呪術師なんだよ。お互いを知るためにやることと言えば、そんなのは一つ! バトルしようぜ!!」
レッツゴー! と拳を高く掲げて悟は言った。
「殺し以外ならなんでもあり模擬戦闘だ!」
◆◇◆
「まさか来て早々に戦わされるだなんて、相変わらず無茶苦茶だ」
「俺は悪くない方法だと思うぞ。殴り合いも互いを知ることができる手っ取り早いコミュニケーションだ」
恵は困惑しているけれども、秤はやる気だし、綺羅羅も難色は示していない。
一般家庭出身の秤たちも高専に入学して数ヶ月。呪術の扱いにも慣れてきた頃だろう。
「この中で一番強いのは龍蓮だから、君は術式なしね」
「え、俺だけハンディキャップマッチ?」
「だって、普通にやったらつまんないでしょ?」
まあ、確かに。
「……へぇ、コイツそんなに強いのか?」
「強いよ。まだ呪術高専に入学してないけれど特別1級術師に認められているし、実力は日下部さんや御三家含めても1級最強だ」
「はっはぁ、面白え」
悟が煽るようなことを言ったことで、秤は好戦的な笑みを浮かべて、彼の双眸には、ギラギラとした士気が宿っていた。
秤が俺の前に立つと自然と恵と綺羅羅が離れていく。
「最初は俺がやらせてもらう。やろうぜ鹿紫雲」
「ウッス」
「……一瞬で距離感チューニングしてきたな。まあ、いいけどよ」
秤ならばこのくらいのノリでもいいかなって。
「五条さんは術式を使うなって言っていたが、俺には使ってもいいぜ。その上で俺が勝つけどな」
秤の表情にも声にも、苛烈の気があふれた。
秤はそう言うが俺は元から術式を使うつもりはない。幻獣琥珀は手加減が難しいからな。ある程度のダメージならば反転術式で癒せるけど、うっかりすると取り返しがつかないかもしれない。
「手加減が難しいからな、俺は最初から術式を使う気はないさ」
「へぇ……」
「それとも術式を使ってもらえたほうが、負けたときの言い訳が出来て嬉しいですか?」
「……煽るじゃねえか。いいなぁ! 熱いじゃねえか。気に入ったぜ! ぶっ飛ばしてやるよ!」
俺も秤もやる気満々。そうして俺たちは相対し───
「始め!」
悟の宣言。
俺は即座に動いた。呪力による肉体強化だけでなく足裏で呪力を爆発させることで加速する。
秤の顔面狙いの上段突き。瞠目する秤は眼前に迫る拳に意識が回る。咄嗟に顔を庇うため手が動く。なかなか反応が良い。
「っ゙、がぁ……!?」
だけど同時の中段突きはノーガードの腹にぶち当たる。呪力でのガードも両手よりも薄いことが不味かったな。秤は息を吐き、身体が折れ曲がる。俺の呪力で感電もするからな、さぞや効くだろう。
ちょうど掴みやすいところまで首を垂れる秤。首を押さえ込んで顔面に膝蹴りを叩き込む。
「せりゃっ!」
制服を掴み、秤を頭上まで担ぎ上げ、地面に向かって逆さに叩きつけながら頭を蹴り上げる。
「ぐぁっ……クッソォ……!」
「うわぁぁぁ、金ちゃぁぁんっ!?」
蹴り上げられてボールのように天高く吹き飛ぶ秤。蹴った感触からして、なかなか良いダメージが入ったね。
綺羅羅は悲鳴を上げるが俺にはわかる。あんたはこれで終わるタマじゃないだろう?
上空で苦悶の表情を浮かべる秤は、両手で弁財天印を結んだ。
「───領域展開ィッ!」
瞬間、景色が歪む。
「
空間が瞬く間に塗り替えられる。目が痛くなるほどの極彩色の光と喧噪の異界に俺は引き摺り込まれることになる。
出たな、ギャンカス術式!
頭の中へ強制的にゴミのような情報が流れ込む。なるほどこれは酷い。
もしも保守派の老人たちが領域に巻き込まれたら憤死するかもしれない。
「スタートだ」
そんなことを考えていると演出が始まる。
「先輩、大当たりを引けるといいな」
「どうした? 大当たりを引く前に倒そうとしないのか」
「せっかくだから大当たりを引いた先輩を倒したほうが面白いだろ」
「ははははっ! 言うじゃねえか!」
流石と言うべきか、秤は大当たりを引いた。
「景気いいじゃねぇの」
「俺はな。お前はどうかな?」
「心が躍るぞ。楽しもうぜ」
領域が陽炎のように消え失せる。演習場へ戻って来た。
「
演習場に軽快なパチンコのフィーバー音楽が鳴り響く。始まったな、大当たりを引いた直後の4分11秒の無敵モード。
呪力の制限が解除され、フルオートで身体に反転術式がかかる。現に俺が今まで与えたダメージは既に癒えている。
秤の攻勢をいなして4分11秒を過ぎれば領域展開を行う前に仕留めれば楽に勝てるだろう。
だが、それは雑魚の思考だ。
俺は鹿紫雲だ。秤を相手にそんな戦いはできないよなぁ!
バリバリバリーーーッ!!
放出された呪力によって空気が一瞬で加熱され、爆発的に膨張して超音速の衝撃波を生み出す。眩い紫電が鋭く激しい破裂音を発して周囲の者の耳に直接届く。
「音量上げろ!! 生前葬だ!!」
4分11秒の間に不死身の秤を倒してみせる!
「熱いじゃねぇか、鹿紫雲ぉ!!」
脚が崩壊するも瞬く間に治す呪力強化と反転術式の同時並行による、圧倒的な速力で迫ってくる秤の右ストレート。秤の突きを捌いた手で、そのまま裏拳を当てる。首に腕を回そうとするが秤に逃げられる。追撃しようと思ったが、カウンターのブローを貰った。さらにノーモーションから放つ強烈な突きを喰らってしまう。
衝撃が全身に浸透する。いいパンチだな。そして秤の呪力特性で殴られた箇所がひりつくように痛む。ま、こんなもの無視してしまえばいい。
「……いいじゃん」
ノーモーションのパンチ。上半身をうまく利用したいいパンチだな。自壊しても構わないとばかりの渾身の力がこもっているので結構効くなぁ。
しかも連続で同じ威力のパンチをしてくるのも凄い。だが俺は大気を蹴って大跳躍して避ける。
「!?」
秤は驚愕するが、これはメジャーな技術ではないから驚くのも無理はない。大気を蹴る、呪力を爆発させれば虚空を立体的に移動できる。
秤には
パリッ!
秤の右脚が爆ぜる。太ももが爆ぜて脛から下が演習場に転がる。しかし無限の呪力によって壊れたそばから脚が復元されていく。だが治るまでに体幹を崩す秤に着地と同時に追撃を加える。
パリッ!
秤の左腕が爆ぜ飛ぶ。二の腕が爆砕して左腕も飛んでいく。
俺の呪力特性も、痛みも無視して突撃できる男だ。動きを封じるならば感電させるだけでは生温い。機動力を封じて片腕を吹っ飛ばす! 治すまでの間は行動制限を強いらせる。
足裏で呪力を爆発させて加速する。間髪を入れず、腕を秤の首元へと絡みつける。これはただのチョークスリーパーではない。腕全体を使った強力な絞め技に、凄まじい回転の遠心力が加算される。
「終わりだな!!」
秤の視界は歪んでいることだろう。猛烈なGが秤の全身の血液を足元へと引き剥がすように押し下げた。
───脳貧血。強烈な負荷に耐えきれず、脳へと送られる酸素が急激に断たれる。反転術式は頭で回す。いかに強力な反転術式使いでも頭部破壊されれば死に至る。
今回は殺しまでしないが意識を刈り取り、反転術式を中断させる。
秤の瞳孔が開き、すぐに失神した。それはわずかコンマ1秒の出来事。
軽快に鳴り響いていたパチンコのフィーバー音楽が、不意にプツリと途切れた。
次回更新は9月下旬予定
主人公と真希のCPは……
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それは、アリだ
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乙骨との原作CPを尊重したい