雷神の系譜~鹿紫雲一の末裔に転生したので、原作の悲劇を打ち壊す~ 作:メンチカツ
創作の励みになります。
いやぁ強敵だったなぁ。特級叛霊悪路王大嶽!
伸縮自在な間合い。強大な呪力量。苛烈な呪力出力が脅威の極ノ番
そして切り札である領域展開
これを瞬殺した高羽ヤバいな! 羂索が手持ちの札として残しておいた気持ちがよくわかる。
兎に角、焼き切れた術式を回復させなければ……。
ガンッ! と金属音が響いた。気づけば近くに禍々しい黒い鉄杭が打ちつけられていた。
ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! 杭が飛んできてどんどん俺の周囲に打ちつけられていく。
「これは……!?」
まるで大気に重さがついたように身体全体に重圧がかかってきた。これは鉄杭による効果か?
瞠目する俺の視界の端に映るのはバスケットボールほどの大きさの青白い炎の玉。火の尾を揺らしながら宙を舞うその様は、少しだけロケット花火にも似ていた。
次の瞬間、閃光と同時に巨大な爆炎が弾けた。やばい、
◇◆◇
ズドォォォォォンッ!!
閃光と同時に
「よし、着弾!」
ホスト風の優男が喜色を滲ませて笑う。廃ビルの屋上から燃え盛り、土煙を上げている爆心地を見下ろしている。
「俺と
「……まだ死体は確認出来ていない。油断はするな」
年の頃は二十代前半。端正で中性的な雰囲気をもつ美男子で、線が細く柔和な容貌で、大学生くらいに見える。彼の手には禍々しさと神秘的な雰囲気を併せ持つカンテラが握られていた。黒を基調とした金属フレームで精緻な彫刻が施されたアンティークかつゴシックな装飾。そのカンテラには怪しげに明滅する青白い炎が灯っていた。
カンテラの存在を除けば只人のようである。しかし見る人が見れば、彼の瞳には若々しさとは不相応な、昏い光が宿っていた。御陵は幕末の頃には既に呪詛師としてこの国の闇の中で呼吸していた。他者の命を奪い生き永らえてきた魔人である。
呪術総監部は秘密裏に子飼いの呪詛師を抱えていたが、御陵は総監部に隷属することなく独自の距離感を保ちつつ、総監部の最高戦力と言える術師だった。
だがそのような強力な呪詛師を羂索は傀儡にしている総監部の者を介して、鹿紫雲龍蓮への凶手として差し向けた。
呪霊との交戦で勝利した龍蓮を辛皮が術式で標的を拘束して、協働する呪詛師が遠距離から大火力で吹き飛ばす戦術を取ったのだった。
標的である龍蓮を殺すため呪詛師たちの元々の計画では、特級叛霊の悪路王大嶽と交戦して意識が呪霊に集中しているところを奇襲し、龍蓮を絶命させるつもりだった。
しかし、彼らの予想は完全に外れてしまった。甚大苛烈な呪力出力の激突、龍蓮の黒閃、ついには悪路王大嶽によって領域展開され、直後に塗り潰すように龍蓮が領域展開をしてしまった。
不意討ちする間隙がまったく見つけられなかったのだった。
少壮気鋭な特別1級術師と特級叛霊の死闘に戦慄していたものの、それでも好機であると思い直した。
呪術の極致である領域展開を使用すれば術式は焼き切れて、術式の使用は困難になる。現代の雷神などという大層な綽名を持つ
「総監部の爺め、あれほどの術師を殺すのには通常価格とは割りに合わなんだ。さあ、辛皮よ。土煙がそろそろ晴れる。死亡確認をするぞ」
御陵は見た目の若々しさに似合わない、熱のない冷徹な視線を向けている。
「いかに鹿紫雲の天才といえども、領域展開を使用するほどの甚大な呪力消費。術式の焼き切れは免れぬ。呪力も著しく消耗すれば、領域を解いた瞬間でのあの奇襲ならば万に一つもあるまいが……」
「心配性だなぁ御陵さん」
ニヤニヤと下卑た笑顔の辛皮。自分たちの作戦の成功を疑いもしない様子。
「まあ、依頼人のために首でも切って回収します?」
首が残っていればですけどね、と言って自分の言葉で辛皮が笑う。御陵は無視して彼をともない爆心地へ近づく。
「待ってくださいよぉ。みさ───」
辛皮が御陵の名を呼ぶ前に。風切り音が響き渡る。
「へ?」
それが辛皮の最期の言語活動だった。胸部と腹部に禍々しい鉄杭たちが深々と突き刺さり、即死したのである。血煙を立てて倒れる遺体に御陵は瞠目する。
それだけではない、御陵の眼前であり得ないことが起きた。
炎と煙を突き破り、龍蓮が飛来して御陵との距離を縮めてきた。
「な、何故だ……!? 術式が何故使える!」
もっともな、だが個性を欠く疑問と驚愕の叫びが御陵の口から発せられた。
術式が焼き切れて、術式の行使が困難になっているはず。そう考えていたからこそ御陵たちは余裕を持っていたのだった。
猛禽のような敏捷さと身軽さで龍蓮が廃ビルの屋上に着地した。凶手を見つけた龍蓮は肉食獣の笑みを浮かべている。
「見立て通り、術式は焼き切れた。だが、呪力は枯渇していないし、杭による拘束も呪力を封じるわけではなかった。ならば簡易領域は使えるし、呪力操作で磁力を扱うくらいはできる」
簡易領域によって火炎の威力と刺穿落を和らげ、重圧が弱まった隙に磁力で杭を引き抜き、投げつけたのだった。
莫大な呪力を持つ龍蓮は身に纏うことで火炎の威力を最低限まで防ぎつつ、反転術式で怪我を治癒させる。
さらに呪力操作によって磁力を操ることで、まるで見えざるウィンチのように辛皮を貫いた杭に自分を引き寄せたのだ。
御陵は5mほど距離を置いて肉食獣のような笑みを浮かべる龍蓮を見つめながら、戦慄に似た気分が背中を上下するのを覚えた。
長い人生の中でも見たこともないほど莫大な呪力。そして呪力の流れは水のように一切の澱みがなくスムーズ。精緻な呪力操作に無駄がないことを理解せざる得ない。
しかし
逃げ切れないと判断した御陵は窮地を脱するため、大技を使うために龍蓮から距離を取る。
「
カンテラを掲げて術式を行使する。灯っている鬼火の勢いが増してカンテラから溢れ出す。
この鬼火こそが御陵が今までの人生で他者から窃取して取り込んできた生命である。
生命を奪い、自らの糧とすることで不老となり寿命も伸ばすことができる。しかし、他者へ生命を分け与えたり、生命を呪力に変換して出力したりする媒介として御陵はカンテラを利用していた。
「消費生命300人! ───
カンテラから放たれ鬼火が虚空で円を描く。残像が見えるほどに鬼火は高速で回転して燃え盛り円環を作る。円の中央から大出力の放射熱線が発射された。直撃を受ければ鉄筋コンクリートの建築物は、爆発する間すら与えられずに融解し、崩れ落ちていく。
しかし御陵にとって不運にも既に龍蓮の術式は回復していた。彼は力ある呪詞を紡ぎ始める。
「
砂鉄や鉄片を磁力で集約して電熱で溶解。砲弾として成形する。二つの仮想電磁極を作り出して砲弾を装填する。
幻獣琥珀による
熱線と実弾が衝突する。瞬間、純白の閃光に闇は照らされる。熱線の光柱にレールガン実弾が正面から迎え撃ったのだ。弾丸が熱で溶け落ちるよりも前に、その速度で熱線を真っ二つに切り裂き通り過ぎる。
白熱した弾丸が熱線の源流へと迫る。御陵は実弾の直撃を受けて、上半身が粉砕されて下半身だけが血と泥のなかに倒れた。
◇◆◇
「あなた、とても強いのね」
仮想電磁極を解除したとき、死角から女性の声が聞こえた。緊張は光の速さで俺の精神回路をみたした。
咄嗟に振り返れば、
拙いなぁ。呪霊が囮で矢継ぎ早に襲撃してきた呪詛師たちが羂索の本命かと思っていたせいで、本来ならば防げた凡策だった。
それは両面宿儺ですら陥る策。勝利を確信した者への急襲。
世界が歪み、硝子のように割れ砕ける。
世界が震え、暗転する。
■レールガン
幻獣琥珀で発現させた龍蓮の技。領域や極ノ番とは異なる大技が欲しい龍蓮が考えた結果作り出した。
もしかして→御坂美琴
■悪路王大嶽
強敵だった。
もしかして→錆白兵
■
幕末から活動している呪詛師。1級術師相当の実力者。
自分の術式によって20代の身体を維持している。奪った生命によって常に若さを保ち、致命傷を負っても生命を消費することで肉体を瞬く間に再生できる。しかし、上半身を消し飛ばすほどのダメージを受ければ再生はできない。
秘密裏に他人に生命を譲渡することで延命させたり、怪我を治すことをビジネスにしている。呪術総監部や呪術師の名門にも彼の顧客がいる。
御陵の死後、彼が使っていたカンテラに術式が宿り呪具化した。
○奪命操術
他者から命を奪い、自らの糧とすることで不老となり長命となる。他者に命を分け与えて不老、若返り、延命等を施すことができる。命は呪力に変換できる。
拡張術式:鬼灯滅葬
命を変換した呪力を鬼火としてカンテラに宿らせており、鬼火で攻撃することができる。カンテラは、術者が生命を「外へ正確に出力・変換するため」の愛用の道具にすぎない。
■
ホスト風の優男の呪詛師。今回が御陵との初仕事だった。
龍蓮はシン陰流に入門していないという事前情報通り、簡易領域は使えないと思い込んで油断していた。
○刺穿落
禍々しい黒い鉄杭を具現化してそれを投げつけて相手の周囲を打ちつける。そうして行動を封じる力場を作る。
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次回更新は10月中旬更新予定。