雷神の系譜~鹿紫雲一の末裔に転生したので、原作の悲劇を打ち壊す~ 作:メンチカツ
創作の励みになります。
関東某所にあるゴーストタウン。1970年代はベッドタウンとして人気を集めていたが現在では、住民の高齢化や若い世代の都心回帰による世代交代の失敗でゴーストタウンと化してしまった。住民も人数が少なく老人たちが細々と暮らしている。
そんな街の既に閉鎖された医療センターは安く売り出されていたので、羂索は買い取りセンターをセーフハウスにしていた。
センターの地下には男女合わせて6人の遺体が安置されていた。彼らは羂索の呪術的実験の犠牲者たち。
彼らはサラリーマンだったり、学生だったり、と経歴は様々だった。
遺体には布を被せられている。使わなくなった家具のように布を被せ、食器を片づけるかのようにぞんざいに扱っている。
この殺人に特別な意味はなく、ただの作業だった。彼女は長年蒐集していた呪物の器としての適性がある者、手を加えれば器足りえる者。羂索が選別した者たちの脳を術師の形に整える呪術的加工を施した過程で、彼らは耐え切れず絶命した。
「結局のところ、急遽集めたから品質にこだわれなかったんだ。もっと器の適性が高い者を厳選することができれば良かったんだけどね……まあ、用意できたものは及第点だ」
胸元がV字に深く開いたトップスからは、女らしい身体のラインがはっきりと浮き出ていた。白衣を着用している羂索が妖しく笑いながら、白魚のような指先で呪物を弄びながら話す。
保管している呪物の中でもかなり腕の立つ術師の魂を切り分け封印した呪物である。
「受肉タイプも覚醒タイプも一人一人加工するのは流石に面倒だ。肉体が持たないで死亡する個体もある。器を殺さず、もっと一括で改変を行える方法を考えるべきだな。これも課題か」
羂索は妖艶な笑みを口元に湛え、艶やかな黒髪を揺らすと部屋にいる自分以外の生者へ視線を向ける。
「ええと……君の名前、なんだっけ? まあ、いいか。君に言っても何のことか分からないよね。ごめんね、長く生きると駄弁が増えてしまうんだ」
怯えた顔で羂索を見るのは裸形の若い女性。銀座のホステスである彼女は羂索に拉致された虜囚の一人であり改造が成功した唯一の人。
同僚の女性や黒服の男性も一緒に拉致されていたが二人は死亡してしまい、その凄惨な最期を見た彼女は心が折れてしまい、拘束されていなくても羂索から逃げることができなくなっていた。
「死滅回游に使いたかった大駒だけれども、彼の相手をさせるには
コツ、コツ、とヒールの音を響かせて羂索は被害者に歩み寄り、無理矢理に口を開かせて呪物を呑み込ませようとする。
「んんっ、んむうっ……うむむっ……ああっ、ああんっ……」
酷薄な表情で羂索はもがき苦しむ女性の様子を観察しながら、呪物の受肉を確認した。
その日、藤氏直属暗殺部隊"
◇◆◇
吹き飛ばされ、追撃してきた女と組み合う。袖も襟もない裸形だと掴みづらい。突き手は空間をぐにゃりと曲げられて、俺の拳が俺自身の頬へ当たる。
俺の眼前で対峙する裸形の女。胸や股間は透明になって隠されている。
「私の術式はね、空間を面として捉えるの」
女は空間を
「こんな風に、ね」
掴んだ空間を、女は布を引っ張れるように動かすことで、レンズの歪みのように空間を歪めてしまう。
術式の開示。自分から術式を教えることで術式の効果を上げる。だが、俺はそれよりも別の衝撃を受けた。
この術師は烏鷺亨子か!? いや、その名前は器となった女性の名前で術師の名前は違うんだったか。
うちの先祖の名前が鹿紫雲一になっているせいで、そこら辺がイマイチ自信ないなぁ。
先程組み合ったときに魂が二つあったことを感じ取ったから、恐らく烏鷺───正確には烏鷺じゃないが……面倒くさいから烏鷺でいいや。烏鷺の末裔が術式を継承していることも考えていたが、これはもしかすると……?
「あなた、相当強いな。これほどの実力者だ。是非とも名前を教えて欲しい」
烏鷺は不愉快そうに美しい顔を顰める。
「……汚名に等しい名は捨てた。今の私に名はない」
ああ、やっぱり烏鷺だな。彼女は生前に滅私奉公を強いられ名を持つことも許されず闇で生きるしかなかったが、主君の藤原氏が犯した同族殺しの罪を押し付けるために名前を与えられて、処刑された悲惨な境遇を持つ。名前を訊かれたことが地雷を踏む行為となったのか。
つまり羂索は死滅回游の
外見が原作とまったく違うのは器となった人間が違うからか。器を前世の姿へ変えていたのは宿儺や万くらいだった。より正確に言えば万は伏黒津美紀の顔だけを残して変身は途中で拒否終了させてた。
烏鷺やレジィなどはほかの術師は器の姿のままだったのは、宿儺のように受肉復活や完全受肉などが技術的にできなかったのだろう。
「そうか。悪かったな。あなたも俺を殺すように雇われたのか?」
「私がわざわざ話す必要がある?」
「……いや、ないな」
素直には話さないか。だが羂索に刺客として利用されているのだろう。呪物になるときに、羂索の命令を遵守するみたいな縛りをつけていたのかもしれない。あまり羂索に有利過ぎるのは難しいだろうがそこは命令一つだけと限っているのかも。
そして本来は死滅回游への参加を命令するつもりが俺を殺せと命じていたのだろう。
「残念だもっと話をしたいのだがな!」
「あんたに恨みはないが、私の第二のための生贄となれ!」
呪力強化だけでなく、足裏で呪力を爆発させて一足飛びで烏鷺との距離を縮める。突きは空間を歪められて俺へ返される。首を逸らせて避ける。そこから肘打ちを放てば咄嗟に烏鷺は両手で防ぐ。今ならば彼女は術式を使えない!
「うっ、ぐぅ……!」
俺の
凄い呪力出力だ。防御力も半端ではないな! だが攻勢は維持し続ける。そしてその間に探す。彼女の
「離れろっ、クソ野郎がぁ!」
地面に墜落した烏鷺は受け身を取りながらも、彼女は地面の空間を歪ませて地殻を津波のように起こさせる。
俺の電撃も湾曲した地面が壁となって烏鷺へ届かなかった。不味い、彼女を見失った。
「くたばりやがれ!」
俺の死角から烏鷺が湾曲した地面を低空飛行で迫って来た。掌打を打ちつければ空間をまるで薄氷を叩くことで生じた衝撃を俺はまともに受ける。
「……っ!?」
烏鷺は逆立ち状態になり、両脚で俺の顔を捕らえる。一瞬で景色が逆転したと思えば一回転して脳天を地面へ激突させようとする。
「させるか!」
「るせぇっ!」
脳天から地面への激突を防いで起き上がると、烏鷺が足で組み付いた状態のまま頭突きをしてくる。
「痛ぇじゃねぇか!」
密着状態からの解放。間髪入れず、烏鷺は真上から両手で掌打を繰り出して、迎え撃つ!
烏鷺は飛燕のように身を翻し、俺の真上から呪力を乗せた両手での掌打を容赦なく叩き下ろした。空気が裂けて俺へ目掛けて掌打が殺到する。
俺はその猛威を逃げることなく真正面から迎え撃つ。直前で跳躍し、迫り来る掌打の軌道へと真っ直ぐに飛び込む。
両者の手が交錯する。俺は片手で烏鷺の両掌を力任せに押さえ込み、その凄まじい衝撃を受け止める。そして、その強烈な押し合いの反動と支えを足がかりにしてさらなる推進力を生み出すと、空中で体を鮮やかに回転させた。
開いたもう片方の手で、隙だらけとなった烏鷺の懐へと鋭い突きを繰り出す。
それが、烏鷺へと深々と突き刺さった。
バチィィィィィィッ!!!!
空間が激しく歪み、呪力が爆ぜて黒い火花となって激しくバチバチと飛び散った。
───黒閃。打撃との誤差0.000001秒以内の呪力衝突が生み出す、極限まで極まる呪力。凄絶な打撃。
それの一撃が
「くそっ」
地を転げて悶絶する烏鷺。一番大きなダメージを入れられたようだな。呪物と魂と器の結合が危うい段階までに追い込んだ。宿儺みたいに何度も入れないと効き目がないとならなくて良かった。
「私に……何をした……?」
「ホイッと!」
未知のダメージに困惑する烏鷺を投げ技で廃ビルの中へ放り込む。追い討ちをかけるように俺もビルへ突入する。
巾着から呪具を取り出す。禪院真依に
俺と烏鷺を囲うように鎖が浮遊する。この呪具の特性は特定事象を封じる。
「なんだこの鎖は?」
「別に害はないよ。ただ俺達を外界から認識されないようにしただけだ。人の目にも、術式で視界共有された式神の認知から完全に対象を隔離した」
烏鷺は俺へ胡乱げな視線を向ける。俺にさっきまでの殺気も闘気もないので違和感があったのだろう。
「どういうつもり?」
「言っただろう。俺はもっとあなたと話したくてね。あなたは呪物の受肉体なのだろう? この世に復活させた呪詛師がいる」
「何故そのことを……!?」
「わかるさ、あなたの身体に魂が二つあることを知覚していたからこそ、魂の境界を剥離させようと干渉すれば覿面に効いていたからね。これで確定した」
「それで、だから何? 謎解きして披露したかったわけじゃあないでしょう」
「ああ、率直に言って俺の仲間にならないか?」
「……は?」
「仲間にならないかと言ったんだ。あなたを受肉させた術師は俺を殺せたら自由の身だとでも言ったのか? だがその術師は信用できるのか?」
羂索への信頼など皆無だろうと思っての発言だったが、予想通りに烏鷺の表情が強張る。
あいつは長年蒐集していた過去の術師たちを計画に利用する道具という感情しかない。そして平安時代から羂索を知っている烏鷺はあの術師の冷酷さも熟知しているのかもしれない。
「道具として利用されるだけでいいのか? あなたが望めば私は自分のために生きる人生を用意することができる!」
「そんな、ことが!」
「信じられないか? だができる」
瞠目する烏鷺へ俺はさらに畳み掛ける。
「俺ならば器を活かしたまま呪物と引きはがして受肉を解除することができる。そして新しい器を用意して再び受肉させよう」
器ごと殺してしまえば呪物が再度受肉できるか可能性は低くなるから、受肉を解除させて呪物を回収できるように考える。
今の烏鷺の器は非術師の可能性があるし、何か羂索の仕込みがあるかもしれない。だからこちらで器は用意しよう。呪詛師を器として利用しつつ、呪術規定7条については対処するため根回しも必要だな。
「……何故私にそこまでしようとする?」
烏鷺は猜疑心を漲らせた鋭利な眼光を俺に向ける。かなり骨を折って助けようとしている俺の真意がわからないという様子。襲撃してきた者への無償の善意。そんなものを信じるわけがない。
「殺すには惜しい術師だと思ったからだ。素晴らしい術式。洗練された呪力操作。武技の冴え。生きることへの餓え。どれも素晴らしい。殺すよりも生かしたい。いっそ俺の部下にならないか? うちはいつでも優秀な術師を募集しているんだ」
「自分を殺しに来た術師をスカウトするだなんて正気?」
「しっかり正気だよ。それに誰に対してスカウトするわけじゃない。さあ、どうする?」
「───私を倒せてみせたらお前に仕えよう。私に勝てるくらいの実力がなければ私を納得させられないと思え!」
「いいね! 話が分かりやすくなった!」
俺は空間を元通りに戻して鎖を巾着に戻した。実力を示せというのは話がシンプルでいいな。
「ははは、剛毅だね。そういう男は嫌いじゃない」
烏鷺は短く笑うと、両手のひらを自分の体側に向けて胸の前でクロスさせる。
「領域展開!」
俺は胸の前で両手を交差させ、小指を絡めて、人差し指を立てる。過去・現在・未来の"三世"、三毒、あらゆる悪や煩悩を打ち破り、降伏させる降三世印を結ぶ。
「領域展開!」
呪力が迸り、二人の領域がぶつかり合い、その余波で廃ビルは崩壊する。領域の押し合いが空間を歪ませ、ついに領域のキャパシティを超え───。
パァンッ!!!!!
ガラスが砕け散るような甲高い破裂音とともに二つの領域が崩壊した。
俺たち互いの生得術式が、領域展開の行使により同時に焼き切れた瞬間だった。
術式が使えない。だが、俺には術式を使わない戦闘は慣れている。
領域が砕け散る中で、二つの影が同時に地を蹴って駆け出した。
術式が焼き切れ、烏鷺も完全な裸形となっても構わずに、呪力による純粋な徒手空拳で勝負に出る。
俺は烏鷺の攻撃を避け、魂の境界へ打撃を当てる。紫電の呪力が受肉体としての結合へ致命的な一撃を与える。とどめとばかりに彼女の背面に回り込んで逆さまに担ぎ上げ、頭から地面に叩きつけた。
脳を揺らす凄まじい衝撃。投げ技の威力をまともに受けた烏鷺は受肉体特攻のダメージも嵩み、彼女の意識はその瞬間にプツリと完全に狩り取られた。
烏鷺の身体が糸の切れた人形のように崩れ落ちた。
◆◇◆
遠方から観察していた羂索は微苦笑を浮かべながら撤退することを決断した。彼女が身に纏う外套は呪具であり、気配の遮断ができて、残穢や臭いなども残さないことができる。その代わりに常に呪力を外套へ注ぎ続けなければならず、呪力強化での高速移動もすることができない。
「鹿紫雲くんは五条悟に次ぐ現代の異能。当代雷神と認めざるを得ないな」
そう呟く羂索は嘆息を吐いているが、口元の笑みは愉快げだ。
羂索は今の身体では自力で鹿紫雲龍蓮を排除することが不可能と判断した。自分の差し向けた凶手たちは、ただ彼に経験値を与えただけで成長の糧とされてしまったのは痛恨事だ。
「あぁ、獄門彊が2個有ればなぁ。……まあ、1分留めるのが無理なんだけど」
困ったものだ。そう言いつつも未知の混沌を見せてくれるかもしれない希望を見出した彼女は鼻歌を歌いながら足取りを軽くした。
刺客の女の正体は烏鷺亨子(烏鷺じゃない)でした。そして彼女が仲間入りとなって第2の生を楽しんでもらいます。
器となる呪詛師の見た目を決めたいので皆さんにはアンケートのご協力をお願いします!
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次回更新は10月下旬更新予定。
烏鷺亨子の器の姿はどれが良いと思いますか?
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褐色美人(褐色枠足りないよね)
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ショートカット美人(モデルは姫川杏子)
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菅田真奈美(夏油、激おこ)