雷神の系譜~鹿紫雲一の末裔に転生したので、原作の悲劇を打ち壊す~   作:メンチカツ

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白い影

 龍蓮が兄たちに襲撃されてそれを返り討ちにした情報は、瞬く間に鹿紫雲家中に知れ渡った。

 特別1級呪術師と特別準1級呪術師。そして実働部隊の術師たち。それを7歳の子供が返り討ちにして、さらには黒閃を発現してみせた。

 それはあまりに信じ難い話だったが生き延びた───龍蓮が殺すまでもないととどめを刺さずに放置していた───術師数人の記憶を解析してその記憶が捏造や幻覚に侵されていないことも判明した。

 

「まさか赳雄(たけお)祐吉(ゆうきち)が、あんな子供ごときに………!?特別1級術師と特別準1級術師なんだぞ!? なぜ……なぜあんな、側室の生んだ薄汚い儒子(こぞう)によって殺されるなど……!」

「……馬鹿な。赳雄が……相伝ではないとはいえ、あの術式を持った赳雄(たけお)が、手も足も出ずに……!?」

「幻獣琥珀は死に札だ……呪力操作だけを使い、黒閃を放つなどあり得ない……鹿紫雲(我ら)の秩序を奴は拳ですべて砕いてしまった……」

 

 と、支持者たちは驚愕し、動揺していた。

 

 長兄を支持して彼を次期当主と主張する者たちには、特別1級呪術師と特別準1級呪術師が10歳に満たなない子供に返り討ちとなる。それは力の序列が末弟によって粉砕されてしまった。呪力特性を操り黒閃を使う龍蓮を見て彼らは、次期当主どころか逆らえば邪魔者として消す魔王を見出しているようだった。

 

 長兄の派閥は今まで龍蓮を始祖と同じ術式を持っているだけの生意気な子供と思っていた。始祖の術式であると『幻獣琥珀』は鹿紫雲家では神格化されている。しかしながら長兄たちの派閥は、術式は使いこなしてこそ価値があると主張している。敬いつつも、一度使えば死ぬという代償から欠陥品である。そんなものを継承したところで、一生使う機会などない死に札。実質、術式がないのと同じだと侮っていた。

 

 だから正妻の子で相伝ではないが術式を持ち、特別1級術師である長兄のほうが相応しいと、当主周辺や有力な親戚筋が長兄派閥として支持層を形成していた。赳雄と婚姻関係や利権で結ばれており、今更側室の子である龍蓮が実権を握ることは、自分たちの実権を失う恐怖で団結していた。

 

 それなのに自分たちが神輿として担いでいた長兄を亡くしたのだ。動揺して揺れてしまうのも無理ないことだった。

 

 対して龍蓮を支持していた派閥はこの事態を大いに喜んでた。龍蓮が側室の子であっても、鹿紫雲家に現れた現代の雷神、生ける伝説として崇拝する者。

 旧体制への報復と下剋上を望む声も大きくなった。龍蓮を支持して派閥をなすのは龍蓮の母親の一族や本家から冷遇され、危険な任務を押し付けれることも多かった分家筋や庶流で形成されていた派閥だったが。旧態依然とした老人たちのやり方に嫌気がさし、力こそが全てと感じる若手の実力派たちも龍蓮を当主へ押し上げようとする派閥に集まってきた。

 

「見たか、あの正妻(季世恵)め……! 特別1級? 笑わせるな! 我が血族から生まれた龍蓮が宿した始祖の雷霆の前では、そんなものは土くれだ!」

「これこそが我ら鹿紫雲が数百年待ち望んだ真の輝きだ! 7歳で黒い火花に愛された麒麟児……! 血統など関係ない、まことの強者がこの伝統ある鹿紫雲家を統べて未来へ繁栄をもたらすのだ!」

 

 などと、龍蓮の支持者は表面的には長兄と次兄の死を悼みつつも、同胞の間では喜びと未来への期待を共有していた。

 

 当主を務める龍蓮の父親である俊朗は末息子の処遇について、家中での会議を行っていた。息子を殺された赳雄(たけお)祐吉(ゆうきち)の母親たちは死罪を望み、死とまではいかなくとも幽閉することを望む意見もあった。逆に龍蓮を庇い、彼に罪はないと主張する声もあった。

 

 そうして当主は龍蓮を罪に問わないと結論を出した。罰するべきだ、報復するべきだと声にも俊朗はそれを一蹴した。

 

「処刑などと愚かなことを。………宝石一個の価値は、一万の土くれを積み上げても天秤は釣り合わないのだ。赳雄(たけお)祐吉(ゆうきち)もただの土くれであったに過ぎない。」

 

 俊朗は冷酷にもそう言った。愕然とする正妻たちに続けて言う。

 

「あの子ならば現代最強(五条悟)レベルにすら到達するかもしれん。かつて五条悟(あの男)を見たときのような衝撃だ。赳雄も祐吉も確かに優秀だった。だが、あいつらは代わりが利く。龍蓮を害することは絶対に許さん」

 

 季世恵は涙に濡れた顔で震える声で言う。

 

「旦那様、お願いでございます! あの子供を……あの怪物を今すぐ処刑してください! 赳雄は、あなたの血を引く長子ですよ!? それを、あの忌まわしい側室の子が、手にかけるなど……兄弟殺しは万死に値する。もしも兄弟殺しを許せば、鹿紫雲の秩序は崩壊致します! 母として、愛する息子の無念を晴らすためには……!」

 

 季世恵の熱の籠った説得にも、俊朗の態度は冷ややかである。正妻には目も合わせていない。

 

「愛、か。お前の口から出ると、ひどく薄っぺらい響きだな。季世恵よ。お前が鈴子と結託して我が子らを唆し、まだ7歳の龍蓮を殺しに奔らせたのは息子のためではない。次期当主の母という地位を死守したかっただけだろう?」

 

 季世恵も、彼女の影に隠れる鈴子も絶句する。顔色を失い、言葉に詰まる。

 

「それは……私はただ、家の正統なる血筋を守ろうと……」

「黙れ。お前はただ自分の野心のために我が子を利用したのだ。あいつは龍蓮のもとで働かせることで役割をまっとうできた。それは祐吉も同じことだったのだ。それこそがあいつらには相応の分だったのだ。お前の見る眼のなさが、あの子らを死に至らしめたのだ」

「……っ………!」

 

 季世恵はもう言葉が出ず、絶望の沼に沈み沈黙していた。

 

「龍蓮は無罪とする。それは覆すことのない決定事項だ」

 

 俊朗の決定は硬く、覆すことはできなかった。

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 俺は兄たちの襲撃事件のあとは本家にある自室に引きこもっていた。鹿紫雲では当主一家は本家の敷地内にある塀に囲まれた武家屋敷のような住宅に住み、分家、遠い親戚筋、庶流は敷地外に住むことが通例になっている。だから俺が自室にいるのはおかしなことじゃない。特に拘束されているわけでもないし、見張りもいない。呼べば使用人が来てくれるし、トイレにだって行ける。

 

 そんな中で俺は取り寄せた資料を読んで、一族で開いている会議が終わり、父親からは無罪放免と言い渡された。それにはホッとしたものの子供を殺された正妻や側室の一人も納得できずに抗議をしたというのは当然だろうなと思った。

 

 俺はたとえ兄であっても、俺を嫌い、殺そうとした奴らを大事にすることはできない。それでも子供を亡くした怒りを母親にぶつけられるというのは流石にしんどかった。

 

 俊朗が話す内容からすると、当主の母となって家中で成り上がりたいという欲求から、息子を唆していたようだった。それを知ってしまうと俺は何とも言えない気持ちになった。兄たちには憐れさも感じてしまった。もっとも兄たちも俺に憐れまれても余計なお世話だろうが。

 

 俊朗は正妻を療養と称して鹿紫雲家の別邸に住まわせて、本家にいる俺と距離を取らせた。あくまでも俊朗は次期当主の俺を守るというスタンスだ。

 

「ありがとうございます。父様」

「気にすることはない。お前ほどの才能の原石を棄てさせるようなことは、絶対に許すつもりはない」

 

 子供を殺されたことよりも、俺の呪術師としての才能を貴び大事にするという当主としての判断は、いかにも呪術師という感じだ。術式や実力を重視する鹿紫雲の家風としてそれは正しいことなのだろう。

 

「涼子が会いたがっている。会ってやれ」

「わかりました。俺も会いたいです」

 

 涼子、とは俺の母親のことだ。当主にとっては妻の一人である側室だ。特別準1級術師で鹿紫雲の庶流出身のため正室、側室の中では最も家格が低いので家中では軽んじられることが多かった。

 

 禪院家ほどではないが女性というだけで扱いは低い。呪力を持ち、さらに術式があってもまだまだ低い。高専資格相当の等級と実績を持たなければ一人前とはならない。

 もしも術式を持たない子供が生まれたら、一族や一門の術師、使用人にすら冷遇される、さながら罪人のように扱われる。

 

 本人自身が特別準一級術師であるので他の女性よりか地位はマシだったが、庶流出身だったため家格も低く、当主の側室でも序列は最下位だった。

 

 しかし、涼子の人生は俺を生んだことで一変した。俺に相伝術式が、それも始祖と同じ幻獣琥珀。鹿紫雲一門では神格化されている術式があるとわかった瞬間、涼子の扱いは変わった。

 昨日までは冷笑され、見下されていたのが、次の日には”奥方様”と呼ばれ敬われるようになっていた。

 

 俊朗が一度部屋の扉を開けて外へ顔出して何かを言うと、母親───涼子が入って来る。

 雅な着物を着て、長い髪はきっちり結われていて、いつもは顔には化粧が薄く整えられているが今は涙で崩れている。

 

「……! ああ、よかった、本当に良かった……。怪我はないと訊いていますが本当に大丈夫ですか? どこも痛むところはない?」

「ええ、大丈夫ですよ。ありがとうございます、母様」

 

 襲撃事件が起きてから母親とは会っていなかったのだ。怒濤の展開で会うタイミングがなかったので、俺と母親はようやく会うことができなかった。

 

「赳雄さんや祐吉さんにあんな……恐ろしい目に遭わされて、貴方がどうにかなってしまったらと、私は生きた心地もしなくて……」

 

 7歳の息子が特別1級術師と特別準1級術師たちに襲撃されたと知って母親は激しく動揺してしまったようだ。思い切り抱き締められてなんだか照れくさい。

 

 涼子は鹿紫雲の家風から考えられないくらい、優しく気性の性格で俺の才幹も関係なく無事を喜んでくれた。

 

「……泣かないで、ほら、どこも痛くないし、怪我だって一つもしてない。俺は大丈夫です」

「よかった、本当に……。誰が何を言おうと、貴方がこうして無事でいてくれる。私にとっては、それだけでいい……それだけで、もう充分なの」

 

 涼子の震える肩や涙、抱き締められて伝わる体温。

 

 俺に前世があって本当によかったと思った。この普通の愛というのがいかに尊いかちゃんと理解できたのだから。

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 今日は晩飯を部屋で取るつもりだったが、普段のように女中が持ってくるのではなく、涼子が持ってきてくれた。

 簡単に食べれるものがいいと頼んでいたが、おにぎりが二つ、カワハギのみりん干しが一尾、さらに味噌汁と漬物もついている晩飯だった。

 

 お礼を言って受け取る。涼子が去ったあとに誰が見ているともなく「いただきます」と手を合わせて呟いたあとに味噌汁を飲んだ。身体は7歳だけど、中身は大人だからなのか味噌汁が美味しくて染み入るような気分になる。今日は色々あったから尚更美味しさを殊更に感じてしまう。

 

 さて、おにぎりを食べようか、それともみりん干しを食べようかと考えていると、部屋から俊朗の声がする。

 俺が答えると俊朗が入ってきた。どうやら赳雄の妻とその両親が俺へ詫びに来たらしい。

 

 訪問相手が相手なので女中だけで対応させて話をつけるわけにはいかないのだろうが、当主が色々と渡りをつけるの大変だな……。

 

「別に断ってもいいぞ。味噌汁も冷めてしまうからな」

 

 親父、気にするところはそこなのか。

 

「冷めてしまうのは大変ですけど、いいですよ。会わせてください」

 

 俊朗が女中に部屋に通すよう指示をする。入って来たのは赳雄の妻であった月乃(つきの)とその両親が入って来た。

 月乃は数日前に見た通り美しい女性だった。年齢で言えばまだ少女と言える年頃か。艶やかで長い黒髪、今にも折れてしまいそうな細い首、名工が描いたような美しい顔が印象的だ。

 

 だがそんな美人も表情は暗い。前回の顔合わせでもそうだったがまるでもう何もかも諦めたように、表情は暗く、心の殻で自分を覆っているように見えた。

 

 月乃の両親は俺の前で平伏すると、月乃もそれに倣う。彼らの目的は既にわかっている。彼らの目的は謝罪ではなく、自分たちの保身である。長兄派閥としてけじめをつけられる者としては赳雄の妻である月乃とその両親は上がって来る。

 

 よくある謝罪の言葉に続いて自分たちはあくまでも陰謀に巻き込まれてしまって、それに抗えなかったのだという。

 だからどうか許して欲しい。俺の口利きで許してくれるように取りなして欲しいとお願いだった。どれも良そうしていた内容ほぼそのままである。

 

「この娘も赳雄に唆されただけです! いかようにも好きになさってください!」

「ご所望であれば欲しければ、娘を今すぐ貴方様に差し上げます!」

「──」

 

 床に額を擦り付ける月乃の両親たち。彼らの物言いに月乃は黙するだけである。今の状況も自分の境遇も、彼女にとってどうでもいいのだろう

 

 俺はさっきまで読んでいた資料を思い出した。月乃は実は生得術式を持っていて、一年前に呪術高専東京校へ進学したいと願い出ていた。しかし、両親からの反対で望みは叶わなかった。

 今朝起きた俺の暗殺未遂事件を調べるため生き残りの記憶を調べたのは他ならぬ月乃だった。長兄派閥だったが月乃は正直に報告していた。当主である俊朗や側近たちの監視下にいるので月乃にプレッシャーをかけることもできなかった。

 

「この娘も術式は柔弱ですが呪力量だけは無駄にございます! 貴方様の優れた種を宿す『苗床』として、どうぞ自在に使ってやってくださいませ!」

「……もういい、少し黙れ。実の娘を『道具』のように差し出そうとするような者とかわす言葉を俺は持たない」

 

 俺も未熟だな。呪力が僅かに揺らいで周囲の空気が瞬時に熱せられて膨張して、バチッと音を立ててしまった。

 俊朗の視線が痛いと思いつつ、俺の呪力に竦んでいる二人を無視して月乃に話しかける。

 

 なるべく、優しさを意識して語りかける。

 

「……月乃、君は誰の所有物でもない。……俺と一緒に、この家を変えてみないか? 呪術師として俺に協力してくれ」

 

 顔を上げた月乃は困惑したようで、微かに無表情が揺れていた。

 

「月乃。君が術師への道を絶たれたこと……俺は惜しいと思っている」

 

 月乃の肩が、びくりと跳ねる。確実に俺の言葉は彼女へ届いていると確信を得た。

 

「俺は君を兄の残した『道具』とも、兄のおさがりの『道具』とも扱うつもりはない。……俺は、一人の呪術師としての君が欲しい。俺の隣に立ち、その力を活かして欲しいんだ」

 

「……っ、あ、あの父は……私の術式を……卑劣な術式だと……」

 

 月乃の掠れた声に、俺は力強く首を振る。そんなものは術式に火力しか求めていない猪武者な男の偏見だ。

 

「それは間違っている。情報は力だ。生得術式そのものに戦闘力がなくとも優れた、強い術師がいることも知っている」

 

 生得術式が非殺傷であっても呪力操作とゴリラ力を極めたら充分に強者となるのだ。肝心なのはゴリラだ。

 

「父様、彼女に呪術師となるため鍛錬を課したいのですがいいですよね?」

「……どの程度まで鍛えるつもりだ?」

「少なくとも特別1級呪術師になるくらい」

「ふふふ、少なくとも、か」

「あ」

「いや、気にするな。いいだろう」

 

 ただし、面倒はちゃんと見ろよ。などとまるで拾って来た犬を飼うことを許すようなこと言う俊朗。鹿紫雲家の当主にとって息子の嫁と言えど関心はその程度なのだろうか。

 

 俺と当主と月乃のやり取りを呆気に取られて眺めてばかりいる月乃の両親。彼らはもはやこの空間では部外者である。

 

「そんなわけだ。選んでくれ月乃。今まで通り、誰かの言うとおりに生きるのか呪術師として自分の意志で生きるのか」

 

「…………っ、あああああぁぁ!!」

 月乃の喉から、今まで抑圧していた思いが声となって漏れ出す。

 

「……わかりました。……貴方のために、そして私の望みのために、鋭意努めさせて頂きます」

 

 その日、俺は鹿紫雲家において仲間が増えた。

 

 そして味噌汁はやっぱり冷えてしまったので温めなおしてもらったのだった。

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 旧い名家からの依頼で俺は北陸地方へやって来た。この土地はかつて非常に貧しく、飢饉のたびに口減らし(赤子殺し)が行われていたらしい。

 

 海に返す儀式として、赤ん坊を岩に叩きつけて殺し、遺体を海へ投げ棄てていたという。さらには村を訪れた放浪者や巡礼者等の異人がやってきた際は、彼らを殺害して金品を奪い、その遺体も海へ投棄していた。

 

 そして殺した者の霊が戻ってこないよう、社が作られていたがその社の目的は供養ではなく、封印するためのものだった。そうして海を漂い返って来た魂は折り重なり、土地に澱のようによどむ邪念との化合により呪霊となった。最近になって社が壊されて呪霊の被害が出始めたらしい。

 

 俺がたたずむ海岸には巨大な呪霊が倒れている。全身が水死体のように白くふやけ、ぶよぶよとした肉質をしている呪霊が崩れて肉片も霧散していく。

 

 つい先ほど、俺が祓った呪霊だった。原作でもほとんど登場していない1級呪霊なのでどれだけ脅威なのかと思い、戦いに臨んだのだが思いの外簡単に戦いは終わつた。

 

 実家の宝物庫にある棍型の特級呪具神珍鉄(しんちんてつ)を持ってきていた。死滅回游で鹿紫雲が持っていた棍型武器の如意のようにこの神珍鉄(しんちんてつ)を使いこなせるよう慣れておきたいと思っていたのでもう少し歯ごたえのある呪霊が相手のほうがちょうどよかったが残念だ。

 

「人的被害が抑えられたのだから、それでよしとするか……」

 

 独り言を呟きながら、神珍鉄を瞬く間にバンクルへ形状を変えて俺の腕に装着される。

 この呪具はバンクル型に形状を変えてしまうと重量もかなり軽くなる。携行するにはかなり便利な呪具で気に入っているんだ。

 

「へぇ、被害を気にするなんて殊勝じゃないか」

 

 俺しかいないはずの場所で、不意に声をかけられた。呪力感知の反応が遅れてしまった!

 

 しかし、この声に覚えがある。俺は声の方向を向いた。

 

 そこには白い影があった。

 

 白雪のような髪、190センチの均整の取れた長身は刀工によって鍛え上げられた刀身のような強靭さがあるサングラスをかけた青年。

 

「こんにちは君が鹿紫雲龍蓮君だね。僕は五条(ごじょう)(さとる)

「……ああ、よく知っているぜ」

 

 あんたは、推しキャラだったからな。

 

「君とは一度会ってみたくてね~~‬。うん、君は強いね。……何処までやれんの?‬」

「反転術式はまだ使えないな。‬‬結界術は勉強中っすわ。簡易領域は一度くらい見れば再現できると思うんだけどね。まだまだアンタには遠く及ばないよ」

 

 だけど、いつかはあっち側へたどり着きたいよね。それを諦めるつもりはない。

 

「いやぁ。会えて良かった。‬僕を超えようとする強い子がいるって……最高だね」

「買い被り過ぎだ……」

「なあ、ちょっと僕と戦ってみない? 手加減で領域は使わないであげるからさ」

 

 子供相手に戦おうぜ! となれるのはほんと五条悟だな!

 

 悟にそんなことを持ち掛けられたら、本当なら動揺したり、怯えたりするほうが正常なのかもしれないが、俺はどうも正常ではないらしい。

 

 五条悟の挑戦を前にして、不安よりも期待による高揚感を覚えた。呪力が迸りその呪力に熱せられた空気は、急速な膨張して周囲の空気を強く押し出すことでバリバリと大きな音を立てる。

 

「おい、あんまワクワクさせんなよ」




やっと五条悟を出せた!
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