雷神の系譜~鹿紫雲一の末裔に転生したので、原作の悲劇を打ち壊す~ 作:メンチカツ
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北陸地方の海岸で大規模な水蒸気爆発が起きた。その原因は俺にあった。
悟の領域から海中に放り出されるという原作リスペクトな展開で俺は海へ落ちた。
電気と同じ性質を持つ俺の呪力は海中などの電気を通しやすい環境に放り込まれると勝手に呪力が流出してしまう為、海中に一度流れれば空になるまで止まらない。
術式が焼き切れた悟を塩素ガスで攻めて海中に沈めて、殴り合いするというまんま鹿紫雲一と
ならばと考えて水蒸気爆発を起こして五条悟に少しでもダメージを与えてやろうと思ったのだ。術式が回復するまでの僅かな時間がチャンスだと思った。
俺は漏出を抑えずに呪力を一気に解き放つ。呪力が海水に伝わる前に熱エネルギーとなり水蒸気爆発を引き起こす。
このシチュエーションは原作で
これは俺があとで聞いた話だ。まずは水蒸気爆発の規模がヤバかった。
俺の呪力が数万トンの海水を一瞬で沸点に到達させたことで海面を突き抜けて高さ数キロメートルに達する爆発の柱が発生した。それだけでなく電気分解で生じた大量の水素ガスが、爆発の衝撃で大気中の酸素と混ざり、二次的な巨大爆発、燃料気体爆発を引き超すことになった。
鹿紫雲一の被害規模は
不幸中の幸いだったのは海中に落される前に俺はかつてないほどに呪力を消費していたため、被害規模は十全な呪力総量のときと比べたら減少していたことだろう。
減らしていなければ国家的大災害になっていたかもしれない。
「いやあ、電気ならば海へ落とせば無力化できるかなぁと思ったけど、とんでもないことになっちゃったね。参った参った」
「……領域を使えと挑発した俺も悪いけどお前が呑気して言えるのかよ。悟も共犯だろ?」
呪力が尽きて疲労困憊となった俺を掴んで海岸まで引っ張って来た悟があっけらかんと言うものだから、疲れている状態でも突っ込んでしまった。
領域展開をされて
悟本人も術式が焼き切れて海に落ちて、電気分解による塩素ガスに侵される事になった。
さらに船舶は破損して、広域の魚類が死滅させるほどの衝撃波に襲われたのだが、五条悟はずぶ濡れになっただけで平然としている。熱水に浸かっていたのに軽度の火傷も負っていない。
マジかよ……流石にショックだ。
「いや、これでも火傷は負ったよ? 反転術式ですぐに治しただけ。熱水に衝撃波はマジにヒヤッとしたよ。術式を使わないと危なかったかもねー」
サングラス無くした、と顔を撫でながら舌打ちする悟。
「お前、身体を治しながら呪力強化して殴って来ただろう? 通常の呪力操作と正の呪力操作を同時並行でやるだなんて器用なことをするよな。普通に感動したわ」
原作知識で通常の呪力操作と正の呪力操作を同時にできることは知っているが、実際に見ると精緻な呪力コントロールには感動する。
「それで言ったら呪力の特性と操作だけでよくやるよ。術式が実質的な死に札だとしても、これだけ戦えるならば並大抵の呪術師では返り討ちだろう。術式使われなくてよかった~」
「嘘つけ。幻獣琥珀と何処までバトれるかと想像してワクテカしてんだろ?」
「はは! バレバレか」
悟は笑っている様子はついさっきまで戦っていた相手とは思えない気楽さだ・
「術式を使うことは自身の死へ繋がるのが明確な弱点……。電位差を用いた攻撃はまず打撃によって相手に電荷を溜めるプロセスが必要だからすぐに使える攻撃ではないから、短期決戦が得意なタイプには使い難い場面もあるだろうね。反面、呪力そのものが電気に似た性質を帯びているから、数回殴られるだけでも感電して動けなくなる術師や呪霊もいるのが強いよ」
「俺の課題は幻獣琥珀への新しいアプローチを考えることだな。相伝術式と言えど参考となりそうなマニュアルが残ってないんだよ。まあ、悟との組手でヒントみたいのは得られたのは嬉しいよ。いい経験になった」
俺は素直な気持ちを伝えた。急遽行われた戦いのあとに行われる感想戦。あとで俺も悟も詰められそうなくらい、かなり酷いことに周りはなっている。それでもまだまだ悟と話していたいという思いは尽きなかった。
「幻獣琥珀を死なないで使えるようになったら教えてね。戦えるならば
「先祖の無念を晴らすだなんて、心にもないことを言うなよ。まあ、うちの始祖様がやんちゃしていたって話は聞いているからな。あんたも術式にも興味があるのは納得だ」
鹿紫雲家の始祖たる呪術師・鹿紫雲一。彼は戦国時代から江戸時代の過渡期に生きていた強大な呪術師。そして原作の彼と同じく、バトルマニアだった。
鹿紫雲はあろうことか御三家と対立して当時の当主たちと戦い殺してしまったのだ。当然、御三家は激怒。報復のため戦力を出すが悉く返り討ちにしたと当時の記録が残っている。
「始祖様が襲撃したのは慶長の御前試合のあとだったらしくて、六眼と無下限を持つ五条家当主と
「君には悪いけどおたくの始祖ってイカレているよね~」
それはそう。殺しておいてガッカリとか酷いなんてもんじゃない。御三家からの刺客が派遣されても悉く返り討ちするので、結局のところ仇討ちは中止となって以来、鹿紫雲家と御三家は仲が悪くなっている。
感想戦からお互いの実家の話になってしまったが、悟との戦いから得るものが多かったという、感慨深さが余韻となって残っている。
領域展開。
簡易領域。
負と正の呪力の同時操作。
原作知識で知っていても実際に見ることで得られるものも多くて、五条悟が行った技術は今後自分にも活かせそうな気がする。あとで練習をしよう。
それに宿儺や日車が披露していた呪力を利用して空気を面として捉える技術も、悟との戦闘中に即興だがやってみて習得しかけたこと、領域対策の彌虚葛籠を完成できたことも収穫だ。
「あーあ、この爆発による影響。誤魔化すのは大変だな。……ま、なんとかなるでしょう」
「───」
あ、これは何とかならない展開だな。伊地知が結構な無茶ぶりをされたり、夜蛾学長が頭を抱えたりすることになりそう。
「君の呪力総量は半端ないね。僕よりも多いよね。呪力の総量はまるで油田のようだ。並の1級術師は君に比べれば呪力量はポリタンクみたいなものでしょう」
「……六眼持ちを前に自慢はできないな」
「ま、僕は六眼で呪力のロスは限りなくゼロにできるからね!」
「いけしゃあしゃあと……」
それにしても悪目立ちしてしまった。呪術総監部を通じて羂索の注意が俺に多少なりとも向いてしまったかもしれない。
……今の時点で
……ま、五条悟ほどの警戒心を持たれるわけがないし、プランも原作通りのままだろうな!
自惚れは良くないな。慎むべし、慎むべし。
「あ、そうだコレからどうすんの? 特別1級術師を目指すの? おすすめはやっぱ同年代と呪術を学ぶために呪術高専へ行く事だけど!」
「術師として働くつもりだし、呪術高専にも興味があるから将来的には行きたいかな」
「お、マジぃ? 言質取ったー!」
「
しばらく海岸で話している間に月乃と伊地知がやってきて、俺と悟はそれぞれ帰ることになった。ついでに連絡先も交換した。
じゃあな、悟。この出会いには感謝しか俺には思い浮かばない。
◇◆◇
五条悟と組手をしたときの話は鹿紫雲家中で広まり、俺の支持率も上がっていた。元々俺の支持層は現代の雷神だなんて大層なあだ名で呼んでいたが、そういう声がますます大きくなっている。反対派の勢いは衰えたが、生意気な
反対派は住む屋敷も外へ移されてしまっているし、家業からも外されたり、分家等の当主は強制的な引退をさせられたりする者もいる。
月乃の両親は俺の派閥として受け入れらたため、不遇な扱いからは免れていた。俺が彼らを許すと決断したときには、月乃の術式について一切秘匿することを縛りにした取引をした。
記憶を読む術式が存在すると知ってる者は少ないほうが都合がいいからだ。特に呪術総監部には知られたくない。
兎に角、未だにドロドロとした内部事情がある鹿紫雲家だけど俺は、そういう声はノイズとして気にせず生活をしていた。普通に小学校へ通いつつ、呪術の鍛錬をして、呪霊を祓う生活を続けている。
今は反転術式を覚えるための鍛錬を続けている。通常は負のエネルギーである呪力に呪力を掛け合わせることで正のエネルギーを生成することで、人間には不可能な超高速再生が可能になる。これを実現出来れば生存率や継戦能力も向上させることができる。
そしてこの反転術式を自分以外の対象へアウトプットすることができれば、仲間の治療をすることができるし、負のエネルギーの塊である呪霊の存在を崩壊させる攻撃手段にもなる。
原作知識と呪術師としての鍛錬と文献を読むことで勉強を続けているが、習得するには苦戦していた。
「……悟や硝子たちのような反転術式の才能は、あまりないのかも」
しかし、五条悟が反転術式を使う様子を見て何か掴めた気がしている。手元に集中する呪力を俺は凝視していた。
カフェラテを作るようにコーヒーと牛乳が混ざり、溶け合う姿をイメージしながら呪力を操作しているのだが、どうも負のエネルギーが混ざり合っていないようである。
できないことが多く、やりたいこともたくさんあるのに、時間が足りないと考えてしまう。
「鍛錬の邪魔をしてごめんなさい、龍蓮。差し入れを持ってきたのだけれども……休憩にしない?」
「ああ! ありがとうございます」
屋敷の裏山で鍛錬の最中だった俺に、涼子が差し入れを持って来た。手に持つ箱とともに魔法瓶を持ってきていた。
「わあ、美味しそうなショートケーキですね! 特別な非でもないのにいいんですか?」
「ふふふ、あなたが頑張っている日は、いつだって特別よ。一緒に食べましょう」
微笑みながら紙の皿を用意する涼子。俺も魔法瓶に入れてある紅茶を紙コップに注いで涼子へ渡す。
何度か買ってきてもらっているお店のケーキなので、俺は楽しみなのでさっそくショートケーキを食べる。
「がはっ!」
「ど、どうしたの龍蓮!?」
突如として眩暈を起こし、激しい頭痛と吐き気が起きる。身体に感じた異変で咄嗟にケーキを吐きだそうとするが身体が痙攣を起こしながら倒れる。
「うぅ……」
俺を介抱しようとしていた涼子が呻きながら倒れた。彼女にも突如として体調不良になってしまった。
「お、まえたち、は……?」
龍蓮は苦痛に苦しみながら音する方向を見れば茂みをかき分けて術師たちが出て来た。
「
俺の父親である当主
「悪かったな。涼子のケーキにこっそり毒を混ぜさせてもらった。呪霊になることがないように龍蓮、お前たちは呪力で殺す」
そうだ俊継は俺を次期当主とするには反対派閥の人だった……。一度は反省して恭順する姿勢を見せていたのに!
涼子は震えながら何とか立ち上がった。それでも呪力を扱うことは満足にできていない。特別準1級術師を実力をこれでは発揮できない……。
「ふざけないで! そんなこと───」
「うるせぇ!」
武器を携帯していない涼子は徒手空拳で俊継たちへ迫る。そしてそれを庇う息子たち。
男───俊継の三男が振るう白刃の側面を涼子は裏拳で弾き、懐に入って右脇腹を水平肘打ちする。
「おい、何やっている!」
長男が末弟を叱り飛ばし、涼子を迎え撃つ。
「さっさと死ね!」
俊継の長男による粗暴な態度で涼子を殴りつけて吹き飛ばす、涼子はそのまま崖下へ転落した。
「毒も利いていたのにしぶとい奴だったな」
「母様……なんてことを……! なぜ、このようなことをする?」
俺は母親が深い谷底へ落ちていくところをただ眺めているだけしかできなくて、情けなくてしょうがない。
「……『なぜ』だと? 決まっている。お前の存在が間違いだからだ!
そうか同じ
だが俊継が持つ術式は鹿紫雲や禪院の相伝術式を持っていない。
「……俊継叔父さん、勘違いをするなよ。鹿紫雲の利益にならないのは、相伝の術式を持たず、父様が自分よりも強いことを妬み、現実を見ようとしない。身内を、身勝手な理由で間引こうとするあんた自身だ!」
迸る雷光。バチバチと耳をつんざく呪力によって熱されて膨張する大気の音。母親を殺し、俺を害する俊継への怒りが呪力となって迸る。
「てめぇ、ブッ殺してやる……!!」
眩暈も頭痛もなくなり、俺は立ち上がる。胸中に渦巻く怒りと憎悪で俺の語彙が無くなってしまい、シンプルな罵倒になってしまった。だが、知ったことではない。
「反転術式!? まさか、使えたのか!」
俊継の息子たちの困惑もわかる。反転術式は今初めて成功したからな。そして反転術式使いの弱点として脳を一撃で破壊されることと並ぶ、毒を使われたのにそれを解毒したのだから驚くのも無理はない。
「そ、そんな、毒を解毒したのか……?」
「俺のちゃちな反転術式も馬鹿にできないもんだろう」
単純な肉体の再生とは異なり毒に侵された場合は、原因物質の特定に除去とより高度な反転術式の運用が求められるからだ。そこを俺は毒物の特定除去を無意識下で行えた。
もっと早くに会得していればこんな無様は晒さなかっただろうに……。
「お、おい! そいつを止めろ!」
俊継の息子たちに抵抗させる暇もなく、二人へ攻撃する。飛び膝蹴りで顔面を潰し、もう一方は回転肘打ちをする。
呪力が電気のような性質を持つ俺は帯電しているようなもの。呪力防御では感電は防げず男たちは倒れた。
「貴様! 術式か───ッ!」
生得術式を起動させようとする俊継。だが俺のほうが行動は速い。そして今ならばアレを出せる確信がある!
軸足で踏み込みから
その瞬間───黒い稲妻が迸る。
打撃との誤差0.000001秒以内に呪力が衝突した時にのみ起こる現象。
その現象により空間は歪み、呪力は黒く、眩く、光る。
───黒閃。
渾身の一撃を食らった俊継は術式を使う前に吹き飛ばされた。
衝撃音。山の木々をへし折り、俊継の身体はスーパーボールのように跳躍しながら転がっていった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
後方から悲鳴が聞こえる。そういえば俊継の息子はあと一人いたな。
振り返れば俺は瞠目した。女の姿をした呪霊が現れたのだ。その美貌は憤怒の血涙に歪み、見る影もない鬼相と化していた。だが、その呪霊の姿には見知った女性の面影があった。
「母様……!」
そうだ、涼子は殴られて転落した。そうか呪力を纏わせた拳打ではなく墜落死が死因であれば、呪力を用いて術師の涼子を殺していないことになる。
そして術師が呪力をもって殺害しなければ、術師は死後に呪霊へ転じる。
呪霊となった涼子がその身にまとう漆黒の色が、まるで墨汁を垂らした染みのように、大気へ広がっている。
なんてことだ。ごめん。ごめんな、母様。俺が未熟で迂闊だったばかりにこんなことになるだなんて。
俊継の息子は俺を無視して横切り遁走する。呪力強化して全力疾走している。恐らく過去最高の速力を発揮しているのではないか?
呪霊への注意を欠かすことがないよう、前を向けば呪霊涼子は俺を横切り俊継の息子に襲い掛かる。
「く、来るなぁ!」
「わ、やめてくれ!」
俺と男の物理的な距離が近くなるも、呪霊涼子は俺ではなく男のほうを攻撃してくる。
「■■■■■■■■■■■───ッ!」
呪霊涼子から放たれる怨念に穢れた咆哮で空気を震わせた。剃刀のように鋭利な十の爪を男へ振るう。
「もしかして……」
呪霊涼子は俺を守ろうとしているのか? 俺を守ろうとした末期の念が呪霊としての本能になっているのか。
「■■■■■■■■■■■■■ッ!!」
「いけない!」
禍々しいその叫びとともに振るわれる爪撃から俺は男を庇う。俺にとって俊継の息子の命なんて道端に落ちたティッシュペーパーほどの価値もない。だけど、例え呪霊であっても涼子に人を殺して欲しくなかった。
「もう、いいんだよ。母様」
俺は躊躇いなく彼女を抱き締めた。呪力を抑制して帯電した呪力で彼女を必要以上に傷つけることを避けるためだ。
「ryuuuuu……」
「ごめんなさい、母様」
生成した正のエネルギーを抱き締めた涼子へ注ぐ。実体を
「……」
呪霊涼子の消失した後の空間をしばらく眺めていた。まさか覚えたての反転術式のアウトプットが、母親を祓うために行うことになるとは思いもしなかった。
ハリポタのボガートみたいな呪霊がいたら、龍蓮には毒入りのケーキに化けることになります。