雷神の系譜~鹿紫雲一の末裔に転生したので、原作の悲劇を打ち壊す~   作:メンチカツ

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青の残滓と箱の行方

 俺はほぼ毎週、週末や、たまに平日には五条(ごじょう)(さとる)伏黒(ふしぐろ)(めぐみ)と一緒に荷物のような扱いで連れていかれて、呪霊との戦いに駆り出されるのが日課のようになっていた。俺は鹿紫雲の仕事もあるのでその程度の頻度だけれども、恵はどうも俺以上の頻度で連れ出されているらしい。

 

 どうやら恵が8歳にして十種影法術(とくさのかげぼうじゅつ)の10ある式神のうち一体である鵺の調伏に成功していることが悟には予想外であったらしく、それが呪術師としての教育方針の転換となったきっかけのようだ。さらに言えば影の拡張性を会得したことから、悟の判断にも影響しているようだ。

 

 悟は多忙を極める中、合間を縫って時間を作り、俺や恵を教育するのが楽しくなっているらしい。

 

「デジモン育ててるみたいで楽しいな……二人はマグナガルルモンくらい進化してね~」

 

 とは、悟からのコメント。……そのデジモンを名指しということは特級呪術師になれってことかな。

 

「暗黒進化はしちゃダメだよ」

 

 悟がそれを言うと洒落にならないなぁ。

 

 そんなこんなで恵への期待なのか呪術的好奇心からなのか、恵は頻繁に連れ出されるため帰りも遅くなりがちだと、津美紀に相談されることもあった。だから予め恵の帰りが遅くなるとわかった日、俺は津美紀と一緒に結構遅くまで二人で恵の帰りを待っていた。

 

 二人でスーパーマーケットへ買い物をして夕食を作り、宿題をしたり、一緒に映画を観たり、デュエリストとして津美紀(ビギナー)を沼に沈めたりして恵の帰りを待っていた。23時近くになって恵は帰ってきた。こんなに遅い時間だし、家の前まで悟が連れて来たのだろう。

 

「「おかえりなさい!」」

 

 津美紀と俺で恵を出迎えると、恵は瞠目していた。ドサ……とランドセルが落ちた。

 

「……ぁ……え……ぁっ?」

 

 恵が宇宙空間にいる猫みたいな顔になっている……。

 

 

 

 

 あれから悟に連れ出されて恵の働きは目覚ましく、夜遅くまで時間がかかることは殆どなくなったらしい。

 

 らしい、というのは悟から訊いたことだからだ。並々ならぬ執念で呪霊を追い詰め祓っているのだと。何が彼をそこまで駆り立てるのだろうか?

 

「僕は恵の潜在能力(ポテンシャル)は君にも匹敵すると思っているんだよね。あとは本気の出し方を知らなかったんだよね」

 

 これは悟が未来で恵に言うことに似ているな。虎杖に実力で追い抜かれたと思った、呪術高専京都校との交流仕合後に行った、五条悟との組手での一幕を俺は思い出した。

 

「だけど龍蓮、君と一緒に呪術師として鍛えることになって、恵は急速に成長していっている」

「俺? なんでさ」

「同じ年で既に高次へ到っている君に、負けたくない、置いてかれまいとすることで本気の出し方を覚えつつあるのさ」

 

 恵の原作以上には速い成長と原作にはない変化。それが俺という変数が加わったことによる理由だったのか……?

 

「今の恵は本気でやってもっともっとと欲張っている」

 

 呪術師の成長曲線は必ずしも緩やかではない。

 

「確かな土壌、一握りのセンスと想像力。あとは些細なきっかけで人は変わるものさ」

「……そうか、それは楽しみだな」

 

 楽しみというのは心からそう思う。鹿紫雲の家でも恵ほど高い潜在能力(ポテンシャル),呪術の素養を持つ者はそうそういない。

 

「そういえば、領域対策を学べって言ったらしいね」

「そうだよ。もっと言えば領域展開と反転術式も会得しろと思っているけど」

 

 反転術式については恵が円鹿(まどか)を調伏できれば優先順位を下げてもいいが、影絵を作るための手を欠損した場合は、手を復元できるレベルの反転術式を覚えたほうがいいと思うけど。

 

「うっわぁ、僕よりスパルタじゃん! ウケる~」

「俺に匹敵する潜在能力(ポテンシャル)なんだろう? それくらいやれないと困る」

「そうか、それもそうだね! 高専で最強のコンビを見れることを楽しみにしているよ」

 

 悟の言葉には、いつも通りの軽薄そうな声音には、深い寂寞が含まれているようだった。

 

 

 俺には鹿紫雲(かしも)(あきら)という兄がいる。本人は術師として生きる人生に見切りをつけて、金融や運輸企業を経営して、呪術高専の窓のように情報収集だけでなく移動の手配、資金の融通、事件の事後処理等を行う幕僚団のような役割を担うようになっていた。

 

 その朗に頼み、彼のツテを利用して海外ブローカーに特級呪具獄門疆(ごくもんきょう)の買付を依頼したことがあった。

 

 勿論、費用は俺が出している。親父の俊朗(としろう)から回された呪霊討滅や呪詛師狩りの報酬や懸賞金で結構な金があるし、それを元手にした投資でさらに財布が重くなっている。だから金がかかっても呪具や呪物の蒐集をすることが可能だった。

 

 原作知識で海外に獄門疆が存在すると当たりをつけて調べてもらったら闇市場に出て来たことを見つけてもらい、購入してもらおうとした。

 

 9歳の子供が欲しがるような玩具じゃないだろと思われるだろうが、俺が呪具を蒐集しているのは鹿紫雲家には周知のことなので、特に何も言われなかった。

 

 だが、結局は獄門疆を入手することは出来なかった。結局、海外の好事家が購入したらしい。ブローカーはその好事家に交渉を持ち掛けようとしたが、受け取ったその日のうちに好事家の自宅が火災になり、好事家は死亡。獄門疆も自宅から見つからなかった。

 

 ……これ、羂索(けんじゃく)の仕込みじゃないか?

 

 人を使って獄門疆を入手した、用無しとなって自分の痕跡を消したと予想できる。

 

 もっとも、これは羂索が原作の数々の事象の黒幕だったことを知っているから、「奴の仕込みに違いない」と蓋然性を高く見積もっているだけで、証拠となるものは何もない。

 

 本当に偶然で、このあと紆余曲折を経て羂索が獄門疆を入手するだけかもしれないし、この好事家の死に関して言えば、羂索は完全に"シロ"なのかもしれない。

 

 つまり、どちらもありうる……そんだけだ。




■鹿紫雲龍蓮
好きなデジモン:シューツモン(性癖の開示)
原作の悲劇を回避のために悪戦苦闘中。悟、伏黒姉弟とはだいぶフランクに付き合えて癒しになっている。

■伏黒恵
好きなデジモン:ベルゼブモン
姉と友人が楽しそうにしていると脳が軋むようになった。

■伏黒津美紀
龍蓮の影響で遊戯王はアニメも視聴。ベクターに騙される。


伏黒姉弟以外にも救いたい!となるキャラクターがいる(例:真希真依、七海)のでどうやって主人公を関わらせるか悩み中ですね。


次回更新は6月下旬頃に更新予定です。
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