周回する人生を愉しむ余裕なんて   作:大気圏突破

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2本目


ルビーちゃん失恋するの巻

「(星野アクアマリンって何だよ!)」

 

 宮崎の地で父親知らずのアイドルの息子として産まれた彼は転生者である。いや転生し過ぎた男である。二次創作のように現代日本で育ち不慮の事故で死んだ彼は異世界に転生し勇者となり世界を救ったが病気を患って他界してしまう。次に目覚めると賢者になっていたので持てる知識を使って国の生活を豊かにさせたが同業者に背中から刺されてしまった

 

 終わりのない転生を繰り返し精神が段々と荒んでいく無実の罪でギロチン台にて処刑されると次は魔王と手を組んで世界を破滅に追い込んだこともある。オマケで4人いた魔王の妻たちを全員寝取ると激昂してきた魔王を素手だけでボコボコにして男の大事なブツをロウソクの火で長時間炙り続けた

 

「(絶対に名前で虐められるよな)」

 

 自分から喧嘩を吹っ掛けることはないがやられたらやり返すが基本だ!そのやるが『殺』になっているだけである。手加減をするのは相手にとって失礼だから全力を尽くす

 

 

「ルビーちゃんどうしたの?お腹が空いたのかな」

 

 自身の傍で泣き叫ぶ双子の妹をあやすのは母の所属する事務所の社長夫人の斉藤ミヤコである。未成年アイドルが双子の赤ちゃんを出産というだけでスキャンダルだ、その事実を隠蔽するために彼女が自分たちの面倒を見ているが慣れない育児に隈が出来てしまい疲労の色が見える

 

「(五月蠅い)」

 

 妹は常に泣きわめき睡眠の邪魔をする。アクアは過去に覚えた魔法やスキル・能力を持ちこして転生していたので音を消す魔法を使うことも出来る

 

 

「(ダブルオーの2ndシーズンやるじゃん、教育テレビでモンタナ・ジョーンズとYAT安心!宇宙旅行も録画してもらおう)」

 

 赤ちゃんの体だと娯楽はテレビぐらいしかない、変身魔法で大人になって遊びに行くことも可能だが燃費が悪い、現代日本では空気中に魔力が無いので使用するには自己生成しなければならないが粉ミルクの栄養だけでは足りない

 

 

「えっ!飛んでる?」

「(喋っただと?)」

 

 フローリングの上で疲れて倒れているミヤコの傍で未だに騒ぐ妹を黙らせる為にアクアは舌打ちをすると、浮遊魔法を発動させて彼女を宙に浮かせた。上下左右平行縦横無尽に動かすとルビーの素っ頓狂な声が聞こえる

 

「(なんで0歳児が!こいつもまさか)」

 

 彼の思考は1つの答えを導き出そうとしていたが

 

「ルッッ!ルビーちゃんが飛んでる!」

 

 ミヤコが起きてしまい空を飛んでいる妹を目撃してしまった。再び眠らせようとしたが彼女は育児ノイローゼによる疲労もあり幻覚を見ているのだと勘違いしていた!

 

 

「おい!なんで喋れる?」

「喋ってなんかないよ!」

 

 汗をダラダラ流して白を切る姿を見て1発でこいつは真正のアホだと分かった。今さっき喋ったことを指摘するとムンクの叫びのように”しまった”という顔をして驚愕している

 

「ねぇさっきのアレって?」

「俺の魔法だ!」

「魔法使いッ!本当なの?だって杖や黒い帽子を被ってないじゃん」

 

 どうやらステレオタイプの魔法使いを想像していたみたいだ、ルビーはキラキラとした目で見つめ他の魔法を見せてほしいと頼んでくるので溜息を吐きながらベッドの近くで並んでいる

 

 

「凄い!ねぇ遠くの人を見る魔法って出来る?」

「なんだ母さんの姿を見たいのか?」

 

 その言葉に否定の意思を示す

 

「あのね、ゴローせんせのことが見たいの」

「誰?」

「宮崎の病院にいた雨宮吾郎先生のこと忘れたの?」

「こんな顔の人?」

 

 顔だけを変身魔法へ変化させると顔を真っ赤にさせて頷いたがアクアは出来ないと語った

 

「なんで!魔法使いなんでしょ」

「雨宮先生の視ているモノを映し出すのは出来るけど、その人を映し出すのは他の協力者が必要なんだよ」

「どういうこと?」

 

 簡単に説明すると現在の雨宮先生を画面やスクリーンに投映するには別の目が必要で、協力者(人・動物)を操って視線を動かさなければならない、アニメや漫画と違って準備無しで俯瞰する風景を水晶玉に映すのは出来ない、なお遠見をする際は対象人物に触れて『マーク』をつけなければならない

 

 

「そうなんだ!」

「その先生とは前世の知り合いか?」

「乙女の過去を詮索するのってデリカシーが無いわね」

「じゃあデリカシーの無い兄は寝ますよ!5時になったら起こしてガンダム見るから」

 

 売り言葉に買い言葉でブランケットに包まって寝てしまうアクアは目を閉じる前に疑問符を浮かべてしまう

 

「(雨宮?確かネームプレートには上籠(うえごもり)って書かれていたよな?いくらアホでも2つの漢字を間違えるなんてあり得ない、ってことはルビーが転生するまでの間に名字が変わった!野郎ってことは奥さんの籍に入ったのか)」

 

 試しに雨宮吾郎と呼ばれていた人物の視野を自身に共有させるとリビングで医学書を読んでいるのが分かった

 

「(視野共有だけだと音が聞こえないのがネックなんだよな)」

 

 自身の魔法についてボヤいていると彼の視線が大きく動く、柱の陰から女性が現れ雨宮吾郎に抱きついていた。彼も腕を背中に回し熱い抱擁を交わしている。互いに見つめ合い顔を接近させると熱烈な口づけを長く愉しむように満喫する。どうやら彼女か奥さんだろう仮にルビーが成長して告白しても30歳以上の歳の差になってしまう

 

「(ご愁傷様)」

 

 妹の初恋が見事に砕け散ったことに手を合わせたアクアは視野共有を解くとガンダムが始まるまでお昼寝をするのであった。なおチャンネルは妹に奪われてしまい母親の出演する音楽番組を強制的に視聴する結末は物語のお約束だった

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