ドロウィッチ〜泥棒魔女さまと勇者クン♡〜   作:リューレ

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その2 少年、性癖破壊される

 

 

 

 それは赤い記憶。

 幼少期、惨劇の中。

 

 ぼくはもう死ぬんだってわかってた。

 お父さんもお母さんも、村長さんも仲が良かった友だちも……みんな、野盗に殺されてしまった。

 ぼくは、必死に村はずれに隠れたおかげでまだ見つかっていないけれど……村の家という家に奴らは火をつけたらしい。

 じきに焼けて死ぬか、煙に耐えられずに外に出て殺されるか。

 ……()()()死神の手から逃れてしまったら、焼け跡の中でひとりぼっちで餓死するか。

 

 煙が沁みて涙が止まらなかった。

 恐怖のあまりパンツがぐっしょり濡れている。

 ぼくは家族の仇を取ろうと立ち上がる勇気もなくて、ただ……長いこと使っていない納屋の中で震えながらうずくまっていた。

 

 それからどれくらい経っただろう、妙に外が静かなことに気づいた。

 さっきまで野盗どもが村の真ん中あたりに戦利品を積み上げて大騒ぎして、ごくたまに見つかってしまった生存者らしき人間の悲鳴が聞こえてきて、耳をふさいでも聞きたくないものばかり聞こえていたのに……。

 

 今は、静かだ。

 気のせいか煙のにおいも薄くなっている気がして、ぼくは気づくとさっきまでの恐怖も忘れて外に飛び出していた。

 

 最初はこわごわと。

 でも、誰にも見つからなかったから。

 少しずつ大きく踏み出して。

 足音を立てないように歩いて、早歩きになって、そして、後ろから背中を蹴っ飛ばされたように駆け出して!

 

 走る。

 走る、走る。

 焼けて灰になった熱い地面を駆け抜ける。

 やっぱり、雨でもないのに炎がすっかり消えている!

 

 走る、走る、走る、そして見つける。

 村の広場に、重なり合うように倒れた野盗の死体の山。

 服装が村人と違うから、野盗どもで間違いない。

 奴らは全員、死んでいるらしかった。

 死体の山には火がつけられていて、だけど不思議なことに肉の焼けるようなにおいはしなかった。

 それどころか火からは熱さも感じない。

 不思議な炎は音もなく、不自然なほど真っ赤な炎が死体を灰に変えていく。

 

 ()()()()()だ。

 

 呆然と見ていると、轟音を立てて死体の山が崩れて、ぼくの足元に野党のちぎれた手首が転がってきて、べちゃりと音を立てた……悲鳴は出なかった。

 むしろ。こいつらに両親が殺されて、知っている人たちが殺されて、……きっと報いを受けて死んだんだ!

 「ざまぁみろ!」と思って、焼けた手の甲を思いっきり踏んずけてやった。

 

 その時。

 

「アアン、今日は大漁だわぁ〜♪」

 

 楽しそうな何かが聞こえた。

 惨劇の場所に似つかわしくない、……歌ってるみたいな、声?

 

 顔をあげて見回すと死体の山の前には長い髪の女がいて、手には長い杖を持っていたから彼女が「魔女」だとすぐに分かった。

 炎から吹き上げる風に煽られて、黒い髪が蛇のようにくねくねと揺れている。

 

「あらァ♡」

 

 魔女は、ぼくに気づくと振り返る。

 炎を背にした逆光を背負って、彼女がゆっくりと近づいてくる。

 ぼくは、煙のせいで目が痛いのも、喉がカラカラなのも、パンツが冷たくて気持ち悪いのも、目の前で両親が死んだショックも……その時ばかりはすべて忘れて「魔女」にくぎ付けになっていた。

 

 魔女は、魔女らしく黒くて長いスカートを履いていて、長いマントをつけていた。

 だけどもその胸元だけはまるで見せびらかすようにものすごい露出の、下着のような薄着で、歩くたびに豊満なおっぱいがゆさゆさと揺れている。

 谷間の近くにあるホクロが、歩くたびにぽよぽよと弾んでいる。

 

「うっふ〜ん♡ アタシは泥棒ウィッチ、略してドロウィッチよぉん♡ じゃあさっそく、あなたの魔法も頂戴ィン♡」

 

 彼女の言葉を一言一句覚えている。

 しなやかな手つきで石像のように固まっているぼくを抱き寄せ、その分厚い唇でむっちゅりとキスをしてくれたのを覚えている。

 ……ただし、唇ではなく、頬に。

 

 むにゅり♡

 

 ぼくの身体の形に大きな胸が変形して、信じられないほどのやわらかさに包まれる。

 おっぱいの中に顔が埋まって、まともに息ができないのに……天にも昇るいい気持ちになって、ぼくはずっとこうしていたいと思った。

 

 気づくと放心していて、そして、それはぼくが少し大人になった瞬間だった。

 べっちょりとさらに濡れて身体にべったりと張り付いたパンツ。

 下半身の大きな解放感は、その気持ち悪さを忘れさせるくらい爽快だった。

 

 ハグされただけで。恐怖も怒りも悲しみも全部全部全部抜き取られて、ぼくは目の前の神様みたいな魔女に夢中になった。

 

「……解析完了♡ まだボウヤだから初級魔法ばっかりねェん♡ 野盗からはなかなかそのあたりの町の人間からは見ない珍しい魔法が盗れたけどぉ♡ ボウヤの魔法はいらないわねぇ♡」

 

 もし、彼女が同じことを……焼かれている「幸せ者」たちにしていたなら。

 野盗どもの死に顔が見れたなら、さぞかしだらしなくて溶けたみたいな顔つきだったに違いない。

 ただ、彼女を前にしているぼくも、きっと同じような顔をしていただろうけれど。

 

「代わりにちょっとだけ魔力を搾っちゃおうっかなぁ♡ さぁ、身体のチカラを抜いて……ウフフッ♡」

 

 耳にふぅっと吹き込まれた甘ったるい息。

 めまいしたみたいにくらくらする。

 世界のすべてがおっぱいの大きい魔女だけになっていたように思った。

 白くてしなやかな指がぼくの頬を下からスルリと撫でて、そのまままぶたにたどり着くとそっと目をつぶらせる。

 

 むぎゅりとやわらかな胸に、さらに強く顔を押し付けられて息が詰まるのが、しあわせで、意識がどんどん遠くなっていって……。

 

 なんだか、いいにおいがする。

 それはきっと魔女の、髪のにおい。

 甘酸っぱくて、鼻を埋めて嗅いでいたい、くせになるにおい……。

 

「いち、にい、さん……ハァイ♡ うふふ、ずいぶん期待させちゃったわねぇ♡ ちっちゃなボウヤから搾り取ったりしないわよォ♡」

 

 だけど彼女はぼくに何もせずに、「転移魔法」を使っただけだった。

 

 見るも無惨に焼けた村から一転、そこは石造りの建物が立ち並ぶ都会に変わっていて……初めて見る「王都」の景色にぼくはしりもちをつくほど驚いた。

 そんなぼくを見下ろしている魔女はころころと笑って、……そのたびにおおきなおっぱいがたゆんたゆんと揺れている……かがみこむと、ぼくに耳打ちした。

 

「あの村を襲ったのは野盗でしょお?♡ でもあの状況だとアタシが犯人だって思われちゃう♡ だからぁ♡ 村を焼いたのはあくまで野盗、そこから救ってくれたのはドロウィッチよ〜ん♡ 保護してくれたオトナにそう言っておいてね、ボ・ウ・ヤ♡」

 

 そう言い残して、彼女はスッと指を振った。

 長くて白い指を思わず目で追った瞬間、彼女がニンマリ笑ったのがわかった。

 

 途端、ものすごい眠気が襲ってきて……次に目を覚ました時、ぼくは成人するまで過ごすことになる「孤児院」で目を覚ますことになったのだった。




もうもどれないねえ
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