ーシュアッ!!!
光を纏う巨人が、巨大な獣と激突する
ーガルルァァァァァァッ!!!
咆哮する巨獣ーフロストーンの苛立つような咆哮と共に、あたりに凍てつく冷気が振り撒かれる
冷気に怯みながらも、巨人はフロストーンと相対し、手にした剣の柄にあたる部分を回転させる
ーシュアァァッ!!!
振るわれた剣から放たれた白い光線がフロストーンを貫く
バチバチとフロストーンにエネルギーがスパークし、その巨体が爆散する
フロストーンを撃破した巨人は、その身を縮小していき、人間の姿となった
荒く吐き出す息が白くなるほどの冷気に覆われた街に降り立ったその人物は、呆然と凍りついた街を見渡す
吹き飛んだフロストーンから噴き出した紫の光が集まり、その手元に一枚のカードを作り出す。「創」の漢字が描かれ、手をかざすような姿のウルトラマンーウルトラマンネクサスが描かれている
それを腰のケースにしまい、フラフラと立ち上がり、街だった中を走る
街中は、様々な形の氷像が並んでいた
まるで生きた人間だったかのような、否そうだったそれを見て目を伏せながら彷徨う中で、一人、倒れていた少女を見つけて駆け寄る
体はとても冷たくなっていた。でも、確かに息をしていた。心臓が動いている
「…………よかった…」
巨人だったその人物は、少女を愛おしげに抱きしめた
ー………私は、守れなかった……
ーもっと、強く…強くならないと……
凍りついた世界の中、少女とそれを抱きしめる一人の命の灯だけが、あまりにも弱々しく揺らめいていた
◆◆◆
「ふぁ〜……っと…」
昔ながらの銭湯・
そこから大きなあくびを上げながら金髪のジャージ姿の女性が姿を現す
手にしていた牛乳を開栓して豪快に飲み干し、ぷはーっ!と声を上げていると、ふと視界に何か入る
「ん〜……?」
近くのクラブ前。その看板の側にハンチング帽を顔に乗せて倒れ込んでいる長身の人物がいたのだ
「んぃッ!?」
あまりに突飛なことに女性が素っ頓狂な声を上げ、倒れている人に駆け寄る
「あわわわわわ!?!?警察!?いや、先に救急車か!?!?」
一人慌てた様子の女性の声に気づいたのか、長身の人物がぴくりと肩を動かし、ハンチング帽を取って顔を出す
「……ぁあ、朝か……」
のっそりと立ち上がったその人はくぁ、とあくびを一つ漏らし、ジーンズのお尻をはらう
「あ、だ、大丈夫なんか?体調悪かったりとかせんか?」
「ん…?あ、あぁ、ごめん。紛らわしいとこに寝ちゃってたね」
ガクッとジャージの女性がずっこけるような仕草を見せる
「紛らわしい…なんか病気なんかと思ったわ」
はぁー……とジャージの女性が息を吐く
すぐに顔を上げてニッと笑い、長身の青年の腕を叩く
「元気ならよかった!安心、安心」
青年が女性の明るさに呆気に取られていると、ぐぅ……と気の抜けるような音が響き、青年は顔を赤くする
「あぁ…そういえば……昨日はほとんど何も食べてなかった…」
「いや一大事じゃろそれ!!!」
女性が銭湯の方に戻り、2階に登る階段に手をかける
「ほら、こっち来な!少ししか作れんけど…なんか作ったげる」
「いや、そこまでしてもらうのは…」
「気にせんでいい。あたしの好きでやってることだからさ」
あ、と女性が声を上げる
「あたし、
青年はハンチング帽を取って微笑んで答える
「ー俺は、
◆◆◆
銭湯の2階に上げられたクレハは、客間らしい座敷のスペースの座布団の上に腰掛けていた
2階は銭湯の上にあるとは思えない雑多な空間と化していた
いくつものモニターとコードが繋がるパソコンが備えつけてあるデスクが3個固めてあり、何やら機械のようなものが詰め込まれたダンボールが何個か転がっていたり、棚には日本人形やら狼のマスコットやら、おどろおどろしいような可愛いような物品が並んでいた
「散らかっとるけど、気にせんで!こっちの活動とかもあってさ」
「活動…?」
おにぎりと味噌汁、たくあんを持ってきたキララが壁に貼り付けてあった旗を指差す
そこにはSHPとアルファベットを並べたシンボルマークがあった
「SHP。サムシングヘルプピープル!困っている誰かを助けたり、世を騒がす不思議を調べたりする何でも屋ってヤツ」
「何でも屋…なるほど」
クレハが「いただきます」と手を合わせておにぎりを食べる
「ー美味しい」
「よかったぁ〜塩むすびでごめんなぁ…今具とか丁度切らしてて」
「大丈夫。そこまで世話になったら、申し訳ないし」
ちゃぶ台を挟んでキララも座る
「鎧咲…さんって、旅人なんか」
「クレハで構わないよ。まぁ、そんなところ。この辺りには初めてくるから、まだ土地勘が無くてね」
味噌汁を啜ってたくあんをぱりぱりかじりながら、クレハが答える
「そのせいもあってか、連れとはぐれちゃってね。昨日は探し回って、そのまま眠ってしまってたらしい」
「そんな行き倒れるまで!?大事な人なんか?」
クレハが微笑んで照れ臭そうに頬を掻く
その右手の輝石のブレスレットを眺めながら、紅葉が応える
「そう。俺の、一番大事な人なんだ」
「まぁ、俺みたいにどこかで行き倒れるような人じゃないから、そこは心配してないけど。きっと、寂しがってるだろうから」
◆◆◆
噴水公園にて、人々が行き交う中でベンチに1人ハンチング帽を被った女性が腰掛けてため息をつく
「はぁ……クレハ、どこに行ったのぉ……?」
呆然と向こうを見て頬杖をついていると、目の前で小さな女の子が泣いているのを見つけ、立ち上がる
「どうしたの?」
「わ、わたしの、リボンが…」
「さ、サブさんもうちょい…右…いや左…」
「り、りょーかいッス…っとと!?」
ふと前を見ると、金髪の青年が小柄な女性を肩車し、女性が木に向けて手を伸ばしていた
「ふぬぬ……とど、かないぃ……」
女性が伸ばす手の先、枝に赤いリボンが引っかかっていた
「…待っててね」
ハンチング帽の女性が少女の頭を撫でながら立ち上がる
「あの!ここは任せてください!」
「へ?」
「え?」
「とうっ!」と可愛らしい掛け声とは裏腹に、軽やかにジャンプして木の枝に引っかかっていたリボンを優しく取る
「っとと、ぶい!」
ふわり、とハンチング帽が落ちて薄い茶髪のツインテールが見える
着地してピースを見せた女性が少女にリボンを渡す
「ありがとう、お姉ちゃん!あと、SHPのお兄ちゃんたち!」
「どういたしまして」
「どういたしまし…おわぁ!?」
「って、うきゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」
手を振ろうとした拍子に青年が派手にすっ転び、女性が青年のお腹の上に盛大に尻餅をつく
「ぐげぶっ!?」
「あ、あわ、あわわわごめんなさいぃ…」
「いやぁ…助かったッス…オレの身長がもうちょい高かったら…」
ベンチに腰掛け並んだ中で青年が先に口を開く
金髪でどこかチャラそうな雰囲気はあるが、喋り口調から見ても人の良さがよく見える
「オレ、
その隣で背に隠れるようにしていた女性がおずおずと手を挙げる
分厚いレンズの眼鏡をかけ、黒髪を三つ編みにした大人しそうな女性だ
「わ、わたし……
「あだ名はオトメって言うんス!可愛いでしょ〜」
「さ、サブさんッ!?!?」
顔を真っ赤にしたオトメがサブの背をぽかぽかと叩く
「あはは〜面白い人たちなんですね。私はルカ、ルカ・エステリアって言います!よろしく!」
一房だけ白くなっていた前髪を直しながら、ルカがにこやかに2人の手を取る
「ルカさん…外国の方なんスか?日本語上手いッスね!」
「生まれは違うけど、育ちはこの星なの。ここら辺はつい最近来たんだけど…」
「星……?」
自己紹介すると、ルカははぁと思い出したようにため息をつく
「おかげで土地勘とか無くて…一緒だった紅葉もはぐれちゃったし…」
「あれ?誰かとはぐれちゃったんスか?」
「うん……」
左手に巻いた輝石のブレスレットを撫でながら、少し頬を染めてルカが微笑む
「私の……とっても大切な人!」
目を輝かせながらルカが応える
「そう、さすらいの太陽みたいな!カッコよくてアツくて、めっちゃくちゃ素敵な人なんだぁ〜!」
ルカの話を聞いていたサブとオトメの2人が頷く
「それなら!オレたちが力になるッス!」
「そ、それが、SHP…さ、サムシングヘルプピープルですッ、から…」
「サムシングヘルプピープル…?」
「簡単に言うと、人助けとかをしてる何でも屋ッス!」
「あと、不思議な現象も……一緒に……」
ルカがぱちくりと目を瞬かせる
「何でも屋さん…へぇ!すごいことしてるのね!」
「もちろん!人探しも仕事の一つッス!」
3人が立ち上がり、サブが先導する
「ひとまず、オレたちのオフィスに行きましょ〜!姐御にも話さないといけないし」
サブと、共に頷くオトメを見て、ルカも楽しそうに頷いた
◆◆◆
「人探しとか色々あるじゃろうけど、ひとまずひとっ風呂浴びていかん?」
「お風呂……か?」
キララが手招きしてクレハと一緒に一階に降りて、のれんをかけて入り口を開ける
「うち、銭湯経営しとるんよ。今日はなんかの縁ってことで、代金はサービスしとくから、入ってき!」
キララの言葉と夢河湯ののれんを見比べ、クレハが頷く
「なら、お言葉に甘えて。入らせてもらおうかな」
とクレハが促されるままに入っていこうとすると、キララが慌てて制止する
「ちょちょ、そっちは女湯なんじゃけど!?」
「え、あー………」
クレハが手を打って頷く
「その……勘違いしてるようなら、すまない…」
「……俺、女なんだ」
ーかっぽーん……
「本当にッ!ごめんなさいッッッッ!!!」
キララが土下座する
バスタオル姿になったクレハが慌てた様子でしゃがんでなだめる
服を着ていると分かりづらかったが、確かにクレハは女性だった
胸が目立たなかったのもサラシを巻いていたかららしい
「いや、大丈夫だから…よくあることなんだ」
「いやいや、でもそんな勘違い…申し訳ないじゃろ…」
はぁ…と申し訳なさそうに頭を抱えながらキララが立ち上がる
「…ふふっ、優しい人なんだね。キララさん」
「さん付けはいらんよ。なんか…その名前にさんとか付くとくすぐったい感じじゃし」
「じゃあ…キララ?」
うんうんと頷き、キララが番頭台の中に戻る
「じゃあ、ゆっくり浸かってき!クレハ!」
キララに促され、クレハが浴場に入る
富士山が描かれることが多い風呂奥の壁面には、星空に照らされた森のような絵画がタイルで描かれたものになっていた
「綺麗な絵だな……」
ほう、と感嘆を漏らしたクレハはきちんとかけ湯をし、体や髪を洗ってから風呂に浸かる
バスタオルの下の肌には、いくつかの大きな古傷が見えた
「ほぅ……」
ちょうどいい暑さのお湯と、ほのかに香る柚子の香りが、深くリラックスを促してくる
「……気持ちいい、湯だな…」
「お湯加減、どんな感じー?」
浴場外からキララの元気な声が響いてくる
「最高だよ。いいお湯加減だ」
「よかった。牛乳も一本サービスしとくから、のんびりしてってな〜!」
クレハは湯船の中で軽く伸びをし、心地よく脱力をした
「早速、いい場所を見つけたな……」
フンフン、と小さな声で鼻歌を歌いながら、さすらいの客人は銭湯を満喫していた
「あ、姐御ー!」
「ん?おお、サブ!オトメ!」
夢河湯に入ってきたサブの声とそれについてきたオトメに反応し、番頭台で腰掛けていたキララが立ち上がる
「おはようさん。今日はまだ目ぼしい依頼来てないし、風呂入ってくかひとまず?安くしとくぞ〜」
「あ、実は姐御、その依頼のことなんだけどー」
ん?とキララが眉を顰めてすんすん、と鼻を動かす
それに何か察知したのか、オトメが踵を返して去ろうとするが、ついて入ってきたルカに塞がれて逃げそびれる
「………オトメ」
「は、ひゃい!?」
底冷えするようなキララの声にオトメが素っ頓狂な声を上げて固まる
「お前また風呂サボったな……?」
「さ、さささ、サボってないです!!ち、ちょっとだけ、大学のレポートとか、オカルト調査に忙して一週間入ってないだけで……」
「連行」
「びゃぁあぁあぁあぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」
キララに肩を引っ掴まれたオトメが聞いたこともない壮絶な悲鳴と共に女湯に引っ張り込まれていく
「な、何があったのオトメさん?」
「あーあれはその…オトメ、あんな可愛いめな女の子なのに、お風呂苦手でサボりがちなんスよ…」
「あー、それで…」
「姐御、銭湯の一人娘だけあってそういうの黙ってないから…」
引きずりこまれつつあるオトメの悲鳴が響く中、女湯からTシャツとズボンをゆるく着た長身の人物が、牛乳片手に顔を出す
「キララ、なんかすごい声聞こえたけど……」
と、現れた顔を見てルカが目を丸くする
「クレハ!!!!」
驚いた声に反応したクレハも目を丸くする
「ルカ……!!」
2人の反応を見て、キララとサブが固まった
「へ?」
「あれ?」
「はぁ……気持ちいい〜」
ルカが湯船に浸かって伸びをし、蕩けた様子を見せる
「無事でよかった…まさか、ルカもSHPの人に助けてもらっていたなんてね」
「すごい偶然!クレハに会えなくてどうしようかと思ってたけど、よかった…やっぱりすごい人たちね、SHP!」
隣でぐったりと湯船に浸かって、否浸からせられていたオトメがえへへ、と照れ笑いする
「……お、お二人はその……失礼でなかったら聞きたいんですが……どんな関係、なんですか……?姉妹……って感じも、無いし……」
オトメの問いかけにクレハが少し思案する
「それは…なんと言ったらいいかな…」
隣のルカはクレハの腕を掴んで引き寄せ、すかさずその頬にキスをした
「ふぇあっ!?」とオトメが声を上げ、クレハが目を丸くする
「私たちは…大切な、パートナーなの!ね、クレハ!」
「ああ、そうだね。とても……大切な人だ」
クレハもルカの額にキスを返す
オトメははわわとより一層顔を赤くしながら、顔を隠すようにしながらもガッツリと2人の幸せそうな様子を堪能していた
◆◆◆
「………ええもん見せてもらいました…」
なんだかツヤツヤした様子で2階のオフィスに戻ってきたオトメが、どこか悟りを開いたような穏やかな様子でデスクに座ってフルーツ牛乳を飲む
「お、オトメ…?何があったんスか???」
「サブさん……今日も世界は美しいみたいです」
「うん…うん???」
隣のデスクに座るサブを置いてけぼりに、オトメがものすごい速さでパソコン業務に取り掛かっていく
「ごちそうさまでした!お風呂に、ご飯まで!ありがとうございます!」
座敷の座布団に座ったクレハとルカが揃って頭を下げる
「ええよ、ええよ。しっかし、偶然もあるもんじゃな…サブとオトメと出会ったのが、クレハの探しとった大事な人とは…」
うんうんと頷き、からからと笑ってキララが続ける
「依頼にはならんかったのが、あたしらとしては残念じゃけどまぁよしよし。2人とも出会えたならオールオッケーってヤツじゃ」
「いや、依頼料は払うよ。俺としても、他にも色々世話になったから」
「そんなわけにはいかんわ!正式な形で受けたワケじゃない、あたしらの親切じゃし、金とかなんか取れへんよ」
でも…と言いかけたクレハをルカが制する
「じゃあ、こんなのでどうですか?」
あー、あーと声を出し、マイクを握るように手を作ってルカが口を開く
ルカの喉から、可憐な歌声が響いてきた
可愛らしい歌声ながら、力強いそのメロディは、悠久の時を生きて答えを探していく1人の戦士の戦いと出会いの歌を勇壮に、そして優美に歌い切った
それに耳を傾けたクレハが心地良さそうに体を揺らし、SHPの3人も聞き入っている
歌い終えてぺこり、と頭を下げるルカを4人の拍手が迎える
「めっちゃいい歌…」
「すっご…」
「綺麗…です…」
「えへへ、ありがとうございます!」
ルカの頭を撫でながら、クレハも笑う
「ここらではまだまだ無名だけど、ルカは歌姫として頑張ってるから。中々本気で歌う機会が無いけどね……」
へぇ〜と頷くSHPの3人
「そういや、お二人はここら辺には何しに来たんスか?」
「ああ、それは……ちょっと探しているものがあってね」
「探し物……」
それを聞いたキララが手を打つ
「そんじゃ、その探し物をあたしらが手伝うわ!」
「名案ッスねぇ姐御!!」
オトメもサブの隣でうんうんと頷く
「………いや、これは大丈夫。俺たちの仕事だから」
クレハが静かな声でキララの提案を断る
「へ?いやでも、困っとるんなら放っとけんしー」
「ーダメだ」
穏やかだったクレハの冷たい拒絶の言葉に、キララたちが固まる
一部始終を見ていたルカはクレハの腕を掴み、あははと笑ってみせる
「ごめんなさい、キララ!クレハの言う通り、これは私たちの問題で、巻き込むワケにはいかないから…色々とありがとうございました!」
と去っていこうとする2人に手を伸ばしたキララが何か言いかけた
その時だった
ードォォォォォォォォォォォォォォォォォォ………
突如、奇怪な音が街中に響き始めた
◆◆◆
オフィスから道に飛び出した5人が辺りを見渡す
「なんじゃこの…なんか不安になる音…?どこから響いて…」
「……アポカリプティック・サウンド…!」
オトメが呟いて、リュックからタブレットを取り出して何かを探し出す
「あぽ…なんじゃそれ?」
タブレットで開いた動画サイトの動画をキララたちに見せる
「せ、世界中で確認されている、奇怪な音の報告です…!出所も、原理も不明で……笛や楽器の音に似てるから、世界の終末を告げる演奏なんて、話も…!!」
「な、なんかわからんけど……」
「めっちゃ不吉ッスね、世界の終末て……」
オトメの話にうーむと2人が唸る中、クレハとルカは顔を見合わせる
「これって……」
「…ああ、間違いない」
不気味な音が響く中、クレハが街の中央部を見据える
「ー来る!」
クレハがそう叫ぶと共に、大地が割れ、大きな揺れを伴いながら何かが這い出してくる
それは、黒い体に金の装飾を施された古代の土偶のような巨像
その胸の中央には紫のクリスタルが怪しく光り輝いている
目のような構造を薄く開き、目を紫に輝かせたそれは街を睥睨し始めた
ーグォォォォ……
「な、今度はなんじゃあ!?!?」
「でっかい…土偶の怪物!?!?」
驚くSHPの3人の隣で、ルカを庇い立ちながらクレハが土偶の怪物を睨み上げる
「トーンクリスタルがあるということは、間違いない……
ーグォォォォォォォォォォォォ…!!
土偶の怪物ー土ノ魔唱獣ドグラトーンは突然その目を見開くと、街に向けて紫のレーザーを放つ
レーザーが通った軌道に、岩石のトゲのようなものが乱立し、街並みを大きく破壊していく
ーきゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!
ーうわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?
事態を静観していた人々が異常事態に気づき、蜘蛛の子を散らすように逃げ出していく
「おわぁ!?!?」
驚いて抱き合うSHPのメンバーを庇いながらクレハが告げる
「キララたちは逃げて!危ないから、絶対にヤツには近づくな!」
「逃げてって、あんたらは!?」
キララの言葉よりも早く、逃げる人々とは真反対に2人はドグラトーンに向けて走り出す
「ちょ、ちょっと!?!?」
慌てて声をかけるが、2人の姿はすぐに見えなくなってしまう
「姐御、どうするッスか!?」
「……んなもん、決まっとるじゃろ!」
怯えるオトメの背を叩き、サブの肩を掴み、キララが声を張る
「ひとまず、周りの逃げ遅れを助けんと!サムシング・ヘルプ・ピープル!!出動じゃ!!!」
「「ラジャー!!」」
3人が散開して逃げ遅れた人などに肩を貸したりするなどして避難を誘導していく
「早く!こっちッス!!」
サブが誘導していると、座り込んで泣いている子供を見つけ、そこに向けてドグラトーンが再びビームをレーザーを放とうとしていた
「!!オトメちゃん!!!」
「え、あっ!?」
サブの呼びかけに気づいたオトメも事態に気づき、駆け出す
遅れて気づいたキララが唇を噛む
「ッ、バカ!!」
◆◆◆
3人と別れて路地の方に入り込んだ2人はドグラトーンを見上げる
「下がってて、ルカ」
「うん。気をつけて、クレハ」
と、その目線の先で座り込む子供を助けようとするSHPと、その辺りに向けてレーザーを放とうとするドグラトーンを見つける
「ッ、あの人たちなんて無茶を!」
クレハが懐からリングが付いた短剣のようなデバイスーオールトリングライザーを取り出し、前方に突き出しながらトリガーを引き絞る
クレハの体が眩い光に包まれる
「ネクサスさん!」
《ウルトラマンネクサス》
ーシャアッ!!
「オーブさん!」
《ウルトラマンオーブ》
ーシュワッ!!
オールトリングライザーのリングにカードを通すと、ウルトラマンネクサス、ウルトラマンオーブの2人が実体化してクレハを挟んで並び立つ
「奏でましょう、絆のハーモニー!!!」
クレハがオールトリングライザーを前方に突き出し、リング部分を押し込む
《ハーモニックアップ!》
《ウルトラマンオールト シュトロムスプリーム》
ドグラトーンのレーザーが地面を薙ぎ払い、少女の側のビルを崩す
「間に合わない…ッ!!」
サブとオトメが女の子を抱えて目を瞑る
キララも思わず顔を庇う
が、ビルは落ちてこなかった
「……え?」
砕けたビルは、巨人が支えていたからだ
白銀のアーマーを赤・青・黒のラインが入る体に纏う光の巨人
両腕のアーマーからは、鋭い刃のようなものが伸びていた
ーシュウァ……
巨人は側にビルを下ろし、サブたちを庇うかのように立ち上がり、ドグラトーンを見据える
「なんなの…今度は…」
「光の、巨人……?」
見上げていたオトメが思わず声を漏らす
「巨人、ウルトラマン……!!ほんとに、いたんだ…!!」
巨人はドグラトーンを見据えて構えを取る
『俺の名前はオールト…!』
『ー光を重ねて、闇を祓う!!!』
ーシュウワッ!!!
ーグォォォォォォォォォ……!!
ドグラトーンが単射レーザーを放つ
巨人ーオールトはそれをチョップで弾きながら駆け出し、ドグラトーンに拳を打ち込む
オールトの一撃にドグラトーンが怯み、そこへすかさずキックを打ち込む
反撃のラリアットを打ち込むドグラトーン。だが、オールトもそれを抱えるようにして押し込んでいく
ーグォォォォォォォォ……!!
ドグラトーンは負けじと目からのレーザーを至近距離で放って拘束を振り解き、オールトを吹き飛ばす
ーシュウァッ!?
怪しく目とクリスタルを輝かせ、ドグラトーンが体の各所に巻き付いたパイプ構造を震わせる
ードォォォォォォォォォォォォォォォォォ……!!!
出現する直前に響いていたのと同じ音が辺りに響き、大地や建物が鳴動する
油断なく構えていたオールトだが、振動していた大地が突如砂のように波打ち、沼のようになってオールトの脚を飲み込んだ
ーシュウァッ!?
たちまちオールトの半身が地面に沈み込み、身動きを封じる
辺りのビルもいくつか軟体化した地面に沈み込む中、ドグラトーンはしっかりと地面を踏みしめてオールトに向き直った
「あの音…音の振動波で、地面の結合を緩めて液状化を引き起こしている…!?」
女の子を支えてキララ、サブと共に逃げる中でオトメが分析する
「なんじゃそれ…あの土偶のバケモノ、そんな器用なこともできるんか!?」
「…これなら、いきなり地面から現れたのも説明がつきます…!」
ドグラトーンは目を大きく見開き、目にエネルギーを集めだす
オールトはなんとか抜け出そうともがくが、まるで底無し沼のようになった地面はオールトを逃してくれない
「クレハ…!!」
無事だったビルからオールトとドグラトーンとの対峙を見ていたルカが悲痛な声を漏らす
ドグラトーンを睨み、ルカは懐からオールトリングライザーに似たデバイスーオールトリングマイクを取り出し、持ち手部分に取り出したカードを装填する
《ゴモラ》
すぅーーーーっと息を吸い込むルカに合わせ、オールトリングマイクのリング部分が光の脈動を強くしていく
「ー超振動ぉーーーーシャウトォォォォォ!!!」
ーグァァァオォォォォォォォォン!!!
ルカのマイクを通したシャウトがゴモラの咆哮と共に増幅され、振動の波となってドグラトーンに直撃
ドグラトーンがゆらり、と体勢を崩す
その隙を見たオールトが地面から飛び立って離脱する
空からルカを見下ろしたオールトが頷き、ルカもグッと親指を突き出す
ーグォォォォォォォォ……!!
見開いた目にエネルギーを蓄えたドグラトーンがオールトを見上げ、必殺のレーザーを放たんとする
オールトは腕を前方に下す形でクロスし、そこに雷光のようなエネルギーをスパークさせながら腕を広げる。オールトの目前にエネルギーのリングが出来上がる
『ークロスオリジレイシュトローム!!!』
ーシュウァァァァッ!!!
オールトが腕をクロスし、白銀の光線を放つ
ドグラトーンも最大出力のレーザーで迎え撃つ。一時拮抗したもののそのままレーザーを押し込まれて顔面から光線が直撃し、爆発を起こす
粉々に粉砕されたドグラトーンの前に一時降り立ったオールトは、ドグラトーンの撃破を見届けると、空へ向かって飛翔していった
ーシュウァッ!!!
◆◆◆
ドグラトーンから吹き飛ばされた紫のクリスタルの側に来たクレハがオールトリングライザーを構えて引き金を引く
リングが持ち手から飛び出し、そこに紫のクリスタルが光となって吸い込まれて一枚のカードとなる
「弩」の文字が描かれたウルトラマンーウルトラマンダイナのカードがクレハの手に収まる
「ドグラトーンを封じてたのはダイナさんだったんですね。お疲れ様でした。これから、力をお貸しください」
カードを額に当て、敬意を示すように頭を下げると、腰のホルダーを開いてダイナのカードをしまう
「お疲れ様、クレハ!」
ルカがクレハの背に勢いよく抱きつく
「ああ。ただいま、ルカ」
ぽん、ぽんとその頭を撫でる
「やっぱり…地球にいるんだね、魔唱獣たち」
「ああ…そうだな。必ず、全員倒さないとな」
クレハの顔が険しくなる
一瞬、その目が憂うような目になったが、ルカもうんと頷く
「今日はどうしようか…宿とか…よりも家探したいよね」
「そうしたいけど…今は手持ちが心許ないからなぁ…今日はどこかに泊まって、明日ゆっくり考えようか」
「うん!」
2人並んで歩き出す
と、ルカがふと立ち止まる
「……SHPの人たちに、ちゃんとお別れできなかったね」
「…まぁ、そのうちきっとまた会えるさ。この星は丸いんだから」
ルカと、クレハも少しだけ寂しい表情を見せたが、そのまま歩き出してどこかへ去っていった
赤く輝くリングへと、ドグラトーンだった粒子が飲み込まれ、そこから「土」の文字が記されたドグラトーンのカードが吐き出されてくる
それを手にしたのは、白い髪を束ねて片側に垂らした赤い目の謎の女だった
手にしたドグラトーンのカードを空へ翳し、邪悪な笑みを浮かべる
「……ありがとう♪ウルトラマンオールト」
ドグラトーンのカードを口元に当て、女は影のように姿を消した
街を照らす美しき光
光陣の中から現れたのは美ノ魔唱獣!
SHPはアレを調べるだって…?無茶なことを…
危ないことは避けてほしいんだけどな
魂奪う魔唱獣を前に、オールトが立ち向かう!
次回ウルトラマンオールト
「絶美の降臨」
光を重ねて、闇を祓う!!!