「……んぅ」
薄暗い漫画喫茶の部屋の中、ルカがみじろぎをし、目を擦る
「……ごめん、起こしちゃった?」
その体の下から声がする
ルカは抱きしめられるようにしてクレハの胸の中で眠っていた
「……ううん、大丈夫」
くぁとあくびを一つこぼすルカの顔を見て微笑んでいたクレハも大きなあくびを漏らす
「まだ早いみたいだし…もう少し休んでていいかな?」
「いいね。もう少しだけのんびりして行こっか」
ルカの頭を撫で、クレハが「おやすみ」と呟いて目を閉じる
すぅ、とすぐに寝息を上げはじめるクレハの目元ー涙のあとのようなものをルカは優しく撫でる
「…………クレハ…」
クレハの顔を愛おしげに見つめ、その頬にキスをすると、ルカも目を閉じて眠りについた
◆◆◆
「キララちゃん、いい湯だったよ〜!」
「まいどー!また入りに来てな〜!」
常連のおじさんを見送ったキララは番頭台に頬杖をついてはぁとため息をこぼす
「………なんか、嵐みたいな出来事やったなぁ…」
先日襲来したドグラトーンの被害だが、一週間もすると対怪獣防衛組織ウイング隊の技術力によって既にほとんどの修復が終わっていた
怪獣による災害は日本も含めた世界中で散見されている
そのため、日本にもいくつかウイング隊の支部ができていたのだが、怪獣災害は数ヶ月に一度程度だったりしたこともあり、開店休業状態だったが、この度久々の怪獣災害にウイング隊も新たな活躍が期待されている
そんなふうにバタバタしていた中で、いつの間にかクレハとルカの2人は姿を消していた
『ーダメだ』
拒絶する……というよりは、何かを恐れるかのように強い口調で言ったクレハの言葉が、未だに脳裏に残っていた
「…………」
腕を組んで考え込みながら、キララが頭を掻きむしった
「なんか…モヤモヤするんよな……」
難しい顔をしながら唸っていたキララのところに、簡素な制服を着た青年が近寄る
「おーい、キララ。大丈夫か???」
「ん〜……あ?兄貴???」
現れたのは
「なんじゃ昼間っから?仕事増えたんじゃないんか?」
「それはこっちのセリフじゃ…営業中なのにボーっとすんな」
ぶっきらぼうな言い方で告げるゴロウの言葉にキララが頬を膨らませる
「おれは昼休みに寄っただけ。ひとっぷろ浴びたかったからなぁ…サービスしといてくれよ」
「5000円になりまーーーーーーーす」
「おい待て!?10倍も要求すんな!!!」
「身内だったらむしろ払え!!というか嫁さんとか家族も連れて来いよクソ兄貴ぃ!!!」
ちなみにゴロウの苗字が違うのは婿養子になった故である
しっしっ!と追い払うようにして兄を男湯に押し込んだキララが番頭台に戻ると、新たに2人連れのお客さんが来て2人分の代金を置いていた
「あ、どうもごゆっくりー」
「やっほ、キララ。またお風呂入りに来ちゃった」
陽気に挨拶してきたルカと、その隣でひらひらと手を振るクレハの顔を見てキララが笑顔のまま固まった
◆◆◆
「ほぅ……やっぱりいいお湯だ」
「うーん…気持ちいい〜」
並んで湯船に浸かる2人を、掃除用のデッキブラシに顎を乗せたキララが見つめる
「2人とも急にいなくなるし…どこ行っとったん?」
「挨拶も無しに去ったのはすまなかった…」
申し訳無さそうに頭を下げるクレハを、まだ不満げにキララが見つめる
「謝るとかはええんよ…あたしがただモヤモヤしとるだけじゃし」
キララが改めて問いかける
「……探しもんは見つかったんか?」
「手がかりは見つかったよ。まだまだ一歩目だけどさ」
「よかった。けど、住む場所とかはどうしとるん?一歩目ってことはまだまだ先は長いんじゃろ?じゃあやっぱあたしがー」
「ー大丈夫。俺たちだけでできるから」
また、クレハはキララの提案をすっぱりと断った
「……あたしらだって、素人とはいえ色々なことやってきとる。ただ危険じゃからって無視はできんわ」
「いや、だからってキミたちを巻き込むことはしたくない」
深刻な顔をしてクレハが立ち上がる
「……これは、俺のすべきことだから」
浴室から出ていくクレハはぐぬぬぬぬ…と睨むキララ
クレハの様子を、ルカも心配そうに見ていた
「姐御!!不思議現象だよ姐御ぉーーー!!!」
サブの元気そうな声が響く
「何女湯覗いとんじゃドアホォォォ!!!!」
女湯の方に顔を出そうとしたサブの額をキララがぶん投げた木製の風呂桶が撃ち抜く
「おべぇッ!?」
バスタオル姿でコーヒー牛乳を飲んでいたクレハが目を丸くしながら頬を引き攣らせる
「ナイス、ショット……」
◆◆◆
「サブぅ…番頭台にあたしがおらん時は待っとけって何遍言わすんじゃぁあん…???」
「いや、その…つい、勢い余ったというか……」
キララが風呂桶を振りかぶる
「すいませんオレが悪かったです許してください」
2階のオフィスに移って、説教が繰り広げられている一部始終をゴロウやクレハ、ルカも眺めていた
「……なんか、寒気が…おれも他人事じゃねぇな……」
吾郎がくわばらくわばら、とフルーツ牛乳をあおる
「……で?何があったんよサブ」
「あ、そうそう、そのことでー」
「正座はそのままで」
「はい」
姿勢を正してサブがタブレットから動画を再生する
「あの土偶みたいな怪物の後に、こんな風な現象がネットに上がり始めたんです」
動画は、どこからから空高くを写したものだった
天高く見上げた一点、眩いばかりの光が輝く場所があり、虹の輪ができていた
「……なんじゃこれ?太陽写したん?」
「それが…太陽はこっちにあるンスよね」
サブが指差す画面端に確かに太陽と思われる光源があった
「ほんまじゃ。じゃあこれ…何…?」
首を捻るキララの後ろからゴロウとクレハ、ルカも動画を覗き見る
「…なんかそういや、妙な通報とか案件は最近多いな」
「どんなん?」
ゴロウが顎を撫でながら答える
「なんか……『あの方が降臨する姿を見ないと、焼き付けないと』とか言って、いきなり暴れだすヤツらがいるんだ。おれも何人か対処したが、どいつもこいつもなんかやつれてて怖かったぜ……」
ゴロウの話を聞いてキララがサブに声をかける
「サブ!車の用意!あとオトメの発明品を……そういやオトメ今日おらんけど何あったん?」
「あー、なんか調べものがあるとか、言ってましたよ」
「そうか…まぁええわ。ひとまずあたしら2人でまずは動きますか!」
準備を始めようとするキララの前にクレハが立ち塞がる
「危ないことはやめた方がいい」
「危なくても、やらないかんから動くんじゃ」
「これは遊びとかそういうのじゃないんだから」
ぶちッとキララの中で何かがキレる音がした
「遊びじゃと…!?遊びなワケあるか!!!あたしらの活動は、あたしらなりの誠意と信念持ってやっとんねん!!!」
キララの怒声にクレハが一瞬怯む
立ち尽くすクレハをどかして、リュックを引っ掴んだキララとそれに続くサブがオフィスから飛び出していく
「……気持ちはわかる。正直、おれも無理してほしくない。あんなんでも、大切な妹で家族だからな」
はぁ、とゴロウがため息を吐きながら、クレハに並ぶ
「あいつはあいつで、信念があるのはマジなのよ。それに向かってくと、折れてくれないから、どうしてもヤバかったら止めるけどさ」
目を伏せるクレハと、それを見つめていたルカを見て、ゴロウは自重気味に笑う
「なんか……これはおれの勘だけどさ、あんたらはわかってやれそうな気するよ。あいつのこと」
◆◆◆
「クレハのヤツ……ぁあ!ムカつく!!」
ハンドルを握りながらイラつくキララをどうどうとサブが宥める
「まぁまぁ、悪気はなかったんスから…」
「……わかっとるよ、そんなこと」
キララは前を見ながら、少しだけ目を伏せる
「……なんかでも、あいつの態度はなんかこう…あーーーーーーわからん!!!なんかわからん!!!!」
ぐぬー!!!と唇を噛むキララの隣で、サブはオトメと電話していた
「あ、わかったッス。ならそちらに向けて合流するッス」
スマホを切ってキララに伝える
「オトメ、実家の書庫にいたらしいッス。探し物を見つけたのと、それをオレたちにも見て欲しいから、近くの喫茶店で待ってるって」
「わかった。なら、行こうか。オトメ、人混みに酔いやすいからはよ拾ってあげんとな」
その頃のオトメは、実家から持ち出した古臭い書物を何冊かリュックに詰めて喫茶店に向かっていた
「あの土偶の怪物…なんか見覚えがあると思ってたけどやっぱり……じゃあ、もしかして他にも同じようなモノが……」
と、どこからか気の抜けたラッパの音が響いてくる
ふと視線を横にやると、路上で大きなトランクを置いてボールやバトンをジャグリングしている女性が目に止まった
ラッパを咥えた女性はオトメの視線に気づくと、大きな赤い目でウインクを一つしてみせる
ジャグリングを終えてポーズを決めると、道具をトランクに戻して女性がオトメに近づく
「いやぁ〜ドーモ、ドーモ!本日のファースト・ジャグリングを堪能できるなんて、オネーサンは幸運だねぇ」
「は、はぁ……」
銀色、というよりは色素が抜けたような白い髪を一つに束ねたその女はニヤニヤと笑いながら慇懃に一礼する
「そんな幸運なオネーサンは、近々もーっと面白いショウタイムを見ることができると思うよ」
いつの間にかオトメの背後に回っていた女がオトメの肩に手を置き、耳元で囁く
「ー世界の破滅……って言う、ね」
思わずオトメが後ずさると、それを愉快そうに眺めて女は黒手袋をはめた細く妖艶な手をひらひらと振る
「じゃあね。クレハってヤツによろしく」
すたすたとどこかに去っていく女を呆然と見送り、その姿が消えたのを確認すると、はぁと息を吐き出す
「な、なんだったんでしょう…今の人…」
喫茶店の中でコーヒーを啜りながら縮こまっていたオトメにキララとサブが合流し、SHPの車に3人で乗り込む
「で、オトメは何見つけたん?」
「は、はい…コレを……」
オトメはリュックから古ぼけた書を取り出した
「なんかボロっちい本ッスね」
「うちの書庫に眠ってたんですけど……太平風土記って書物の写しらしいんです。そこの……このページなんですけど……」
オトメが開いたページをキララとサブが覗き込む
「これ…!」
「こ、この前の!!」
そこに書いてあった絵は、先日現れた土ノ魔唱獣ドグラトーンととても似ていた
「この本には…『大地揺るがす巨偶・
「……ここまでそのまんまじゃと、無関係には見えんな…」
「…というかコレ、過去にもアレが現れたならどうやって対処したんスかね…」
サブの問いにオトメは最初のページを開いて見せる
「『天より来る光人、地より出でる魔唱獣を封印せしめん』この書物にはそう書かれています」
見開きで、渦巻く巨大な闇のようなものに向かっていたのは、光り輝く巨人のような姿
そう、まるでオールトのような姿だった
「やっぱ、あの巨人がキーなんじゃな…」
「オトメはあの巨人のことウルトラマン…とか言ってたけど、アレってなんなんスか?」
「宇宙飛行士の人とかの語る伝説として聞いた話なんです。星の彼方から飛んでくる、光の巨人。私たちを見守る不思議な隣人」
はわぁ…とオトメが頬を綻ばせる
「まさか本当に出会えるなんて…」
はっ、とオトメが気を取り直してページを新たにめくる
「その話だけじゃないんです。最近発見されてる謎の現象……それに近いのもここに…」
オトメが開いたページには、黄金に輝く鳥のような姿が描かれていた
『
『魔性の輝きもちて、人々の魂を奪わん』
「これ、今巷で噂の光源ほぼそのまんまじゃないッスか!?」
「こいつのせいだとしたら…光を見た人らは……」
ーぁあ゛ぁぁぁぁあぁぁぁぁッ!!!
突然響いてきた獣のような絶叫に3人がびくりと身を震わせる
気を取り直して車外に出ると、半狂乱になった中年の男が暴れていた
「ぁあぁぁぁぁ足りない足りない足りないひかりひかりひかりがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
意味不明なことを叫ぶ男が周りの見物人に紛れていた男の子に飛びかからんとしたところをキララが素早く押さえ込んで地面に叩きつける
「なんしよるんじゃドアホ!!!落ち着け!!!」
「ひかりぃぃいいいいいひかりが、ひかりがたりないあのひかりが、あの美しさがないと生きてる意味がないないんだぁあぁぁぁぁ!!!」
キララの下にサブとオトメが駆け付けても男はバタバタと狂ったように暴れるのをやめない
「なんじゃコイツ…イカれとるんか…!?」
「光…ってまさか…」
ーキュオォォォォォォォォン……
突如響き渡る静謐な咆哮に、あたりの騒ぎが静まりかえる
「きた、きたきたきたきたきたきたきてくださったたたた!!!」
押さえ込んでいた男が狂ったように泡を吹きながら笑って、尋常ならざる力でキララを振り切って立ち上がる
男に釣られて空を見上げようとしたキララにオトメが咄嗟に取り出したサングラスをかける
「あ、」
見上げた男は、恍惚とした顔のまま
光となって蒸発した
「ーは」
呆けた声を漏らすキララが空を見上げる
ーキュオォォォォォォォォン……
黄金に輝く翼人のような怪獣ー
「あっはははははは!!いいねぇ!!!正に美の顕現!!!美しい光景だね〜」
近くの屋上からサングラスをかけてそれを見ていたあの白髪の女は愉快そうに笑っていた
「ーまぁ、こーんな美しいのは人間には猛毒だろうけどね」
にま、と口を三日月に歪めながら女は赤い目を見開く
「どうするークレハぁー?キミの大好きな人がぁ、たーくさん死んじゃうよ〜?早く倒さなきゃねぇ」
「ーウルトラマンオールト」
◆◆◆
「ぁあ…キレイ…」
「最高だ……」
「わたしもつれてって……」
ティファレトーンが体から放つ光を見た人々はふらふらとティファレトーンへと近づいていこうとする
「なんかヤバい…というか、あのまま行ったらさっきの男の人みたいになってまう!!」
キララが立ち上がり、同じくサングラスをかけたサブとオトメに目配せをする
「あたしらで、できる限りの人は引き戻すぞ!!!サムシング・ヘルプ・ピープル、出動じゃ!!!」
「「了解(ッス)!!」」
サブとオトメに次いで走り出そうとする中でキララがスマホの着信に気づき立ち止まる
『キララ!今どこじゃ!?』
「兄貴!!怪獣の目の前!!!」
『はぁ!?はよ逃げろ!!!』
「無理じゃ!!怪獣の光見たヤツらがおかしくなっとるからはよ引っ張ってでも避難させな!!あ、あの怪獣の光見たらおかしくなるけん、それウイング隊にも伝えてやって!!じゃ!!」
「じゃっ、て……もしもし!?あのバカ……」
夢河湯からゴロウがスマホ片手に飛び出す
それに続いてクレハとルカも飛び出して、状況を聞く
「ゴロウさん、キララたちに何かあったのか?」
「今怪獣の目の前にいるらしい…避難させるってまた無茶を…!キミたちも早く避難してくれ!おれも行かないと…ッ!」
走り去るゴロウを見送り、クレハがルカの方を向く
「ルカ、キララたちのことお願いできる?」
「うん!まっかせて!!」
グッとサムズアップしてルカがサングラスを装備する
それを見たクレハが頷き、2人が駆け出していく
街中をただ佇むティファレトーンに3機の戦闘機ージェットウイングが飛来する
『怪獣の放つ光を直視しないように!遮光バイザーを忘れるな!』
「了解!」
ティファレトーンに向けてジェットウイング編隊から攻撃が放たれるが、両の翼をひとあおぎして光のヴェールを体の周囲に張り巡らせてそれを弾く
ーキュオォォォォン……
ティファレトーンの咆哮と共にその背に後光のような光輪が三重に広がり、そこに沿う形で光点が多数煌めき、全方位に向けてレーザーが放たれる
「回避ィ!!!」
ジェットウイング編隊が編成を崩し、レーザーを回避する
ーキュフフフフフ……
まるでジェットウイングを嘲笑うかのような鳴き声を漏らし、ティファレトーンは変わらず悠然と屹立し続ける
「美ノ魔唱獣か…でも、その美は俺には効かないよ」
オールトライザーをクレハが掲げて光を纏う
「ネクサスさん!」
《ウルトラマンネクサス》
ーシャアッ!!
「オーブさん!」
《ウルトラマンオーブ》
ーシュワッ!!
「奏でましょう、絆のハーモニー!!!」
《ハーモニックアップ!》
《ウルトラマンオールト シュトロムスプリーム》
ーシュウァッ!!!
ティファレトーンの前にオールトが立ちはだかる
『俺の名前はオールト!光を重ねて、闇を祓う!!』
「ウルトラマン…!!」
魅入られた人を引きずりながらキララが声を上げる
「キララ!みんな!!!」
そこにルカが駆けつけてきた
「みんな、ここは危険だから早く逃げないと!」
「この人らをおいてはいけん!」
ルカの呼びかけにキララは首を振る
サブもオトメも押さえていたが、まだまだ多くの人々がティファレトーンへと向かっている
「……ッ」
ルカはたくさん見てきた
クレハと出会って、クレハに追いつくためにあの輪から光をもらって
それでも、たくさんの人を助けられなかった
ルカにはわかっていた
今、ティファレトーンに魅入られている人たちを引きずって助けることはほとんど不可能なことであると
でも、キララたちもわかった上で命をかけていることも分かっていた
よく似た顔を、隣でいつも見てきたから
あはは、と朗らかに笑ってオールトリングマイクと怪獣カードを取り出す
「キララーーー!!みんなーーーー!!!耳塞いで!!!」
ルカの呼びかけに思わずキララたちが耳を塞ぐ
《アリゲラ》
「高周波エコォォォォォーーーー!!!!」
アリゲラの力を解放した高周波による音の爆弾が辺りに響き渡る
耳を塞いでいたキララたちもあわあわと混乱していたが、直接聞くことになってしまった人々は脳を揺らされ、その場に倒れ込む
呆けていたキララの下に歩み寄り、ルカが笑顔で助け起こす
「さ、今のうちに皆を運ぼう!」
「お、おう…」
よくわからない様子だがキララも他2人も立ち上がり、倒れた人々をひとまず安全な屋内へと運び込んでいく
ーシュウァッ!!!
オールトがティファレトーンへと迫るが、ティファレトーンは自身の輝きを強めてオールトに光を浴びせる
その光を浴びたオールトが頭を押さえて苦しみだす
『くッ…そ…ッ、なんて強い魅了効果だ…ッ』
ティファレトーンの放つ光の魅了効果に、オールトの意識が揺らぐ
ーキュオォォォォォォォォ…!!
そこを逃さずにティファレトーンがレーザーを放つ
頭を振って魅了効果を振り切り、オールトがレーザーをバリアで防ぐ
『オーブフェザー!!』
ーシュウァッ!!
返す刀で光弾を放つが、ティファレトーンは光のカーテンでそれを防ぐ
レーザーを回避して転がり、オーブフェザーで牽制を続けるがティファレトーンもそれに合わせてオールトに正対し続け、レーザーの照射を繰り返す
『光線がダメなら…オールトライザーソード!』
オールトがその手にオールトライザーを持ち、刀身部を伸ばしてソードモードにして構えて疾走して斬りかかる
ーキュオォォォォァァァッ…
が、ティファレトーンは瞬間移動でそれを回避。オールトの背後へ回ると自身の翼を大きく広げる
ティファレトーンの後光が更に輝きを増してその姿が揺らぐと、オールトを取り囲むように8体ものティファレトーンが出現した
「げぇっ!?分身したぁ!?」
離れて車内から見守っていたキララが思わず声を上げる
ーキュフフフフフ……
分身したティファレトーンに何度か切りつけるが、その剣閃は何度も空を切り、放たれるレーザーにオールトが押されていく
胸のOの字型のクリスタルが赤く点滅を始める
ーシュウァァ……ッ
よろめくオールトの体からゆらりと、ウルトラマンネクサスとウルトラマンオーブの姿がブレて見える
「あの胸の…もしかして、危険信号…なのかな…」
「だとしたら大ピンチなんじゃ…!?」
固唾を飲んで手を祈るように組むルカの隣で、運転席からオールトとティファレトーンの戦いを睨んでいたキララがギリ、と唇を噛む
「なんか…なんかないんか……」
キララが頭を押さえて考え込む
「……無茶はダメだよ。私たちができることなんて…」
「ーでも、やらんのはもっとムリじゃ!!!」
キララの言葉にルカがハッと顔を上げる
「確かに、ウルトラマンってのはすごい。とんでもない。あたしらじゃ届かんとこにおる…」
キララが見下ろした手をギュッと握る
「だから助けんのは、それは違うじゃろ!!そこで戦ってくれとるあいつに任せきりで…あいつだってギリギリな中を、なんもせんのは……あたし自身が許せん!!!」
「たとえ微力だろうとも……どんなやつだろうとも……!助けんといかん誰かのために手を伸ばして、駆けずり回るために…あたしはこのチームを作ったんじゃ!!!」
キララの言葉を聞いたルカはぱちくりと目を瞬かせる
キララの言葉を共に聞いていたオトメが書物のページをめくる
「……!!ここ…あの怪獣だとしたら…コレ弱点かも……」
オトメが広げたページ
そこには、帝波蓮乃音の背にある紫の結晶が示されていた
『魔唱獣の光、背の玉より放たれん』
「これ、アイツの背中に光の源があるってことか!!」
「なんとかウルトラマンに伝えないと…」
助手席に座っていたルカが胸を叩く
「任せて!」
分身に翻弄され、じりじりと追い詰められるオールト
「くれ…っとと…オールトォーーーーーーー!!!」
地上から響いてきたルカの声にオールトが視線を向ける
「その魔唱獣の弱点は、背中だよぉーーーーーー!!」
「せ、背中に光を放つ結晶があるんです!!」
オトメの指し示す図と、ルカたちを見比べオールトが頷きティファレトーンに向き直る
無数の分身体を視力を研ぎ澄まして分析していく
だが、地上に並ぶティファレトーンの中に実体は見当たらない
『なるほど、そこか…!!』
オールトが腕を前に突き出してクロスさせる
『ースプリームムーブ!!!』
ーシュウァッ!!
オールトの体が光り輝き、瞬間的に加速。ティファレトーンの包囲を掻き分ける
ーキュオォォォォ…?
姿を見失い途方に暮れる
上空に佇んでいた本体の背に、加速したオールトが踊りでた
ーシュウァッ!!
オールトの蹴りがティファレトーンの背の結晶を割り砕く
ーキュオォォォォァァァッ!?!?
苦悶の声を上げ、ティファレトーンが墜落
同時に分身も光がなくなったことで揺らいで消滅する
ーギィイィィィィィィィィッ!!!
光を失ったことで体色が黄金から淀んだ漆黒に変じたティファレトーンは閉じていた口を開き、数多の牙を剥き出しに悍ましい咆哮を上げて翼手から巨大な鉤爪を伸ばす
鉤爪を振り回して襲いくるティファレトーンを受け流し、オールトが蹴りをかまして吹き飛ばし、手に光刃を伸ばしてその翼を切り裂く
ーギュウァァァァァァァァァッ!?
黒い羽を散らしながら苦悶し、よろめくティファレトーンに向き直り、オールトは胸のプロテクターの赤いクリスタルをなぞる
クリスタルが発光し、その前に腕を伸ばすと、光は弓となって腕に装着され、オールトはそれをティファレトーンに向けて引き絞る
『ーオリジレイ・アロー!!!』
ーシュウァッ!!
弓の形そのものを矢として放たれた一撃は、オールトの背後に光の輪を作りながら直進し、ティファレトーンを縦一文字に両断
左右に分かれながら倒れたティファレトーンの体が黄金のオーロラを放ちながら爆発する
「よっしゃぁ!!!」
我がことのように喜ぶキララ
サブ、オトメと順にハイタッチすると、ルカにも手のひらを向けてくる
「ほい、ハイタッチじゃ」
「え、私……も?」
「とーぜん。ルカのおかげで助けられたからな」
にひひ、と笑うキララの顔と手のひらを見比べ、ルカは気恥ずかしそうに手を合わせた
ティファレトーンから弾け飛んだ紫のトーンクリスタルにオールトライザーを向け、分解。そこから飛んできた光を集めて新たなウルトラマンのカードができあがる
「あいつを封印していたのは、タイガさんでしたか。お疲れ様です。コレから、よろしくお願いします」
「三」の文字が書かれたウルトラマンタイガのカードを腰のホルダーにしまい込む
それを見下ろしながら、怪しげな女ークラン・クインはティファレトーンのカードを口元に当てながら笑う
「さてさて、乙女の眠りを覚ますキッスには…あと3枚ほど足りないなぁ…頑張ってね、クレハ」
◆◆◆
「ルカって…宇宙人じゃったんか!?」
夢河湯に戻ってきた3人がルカの告白を聞いて目を丸くする
「はい!といっても…私の星の惑星エステリアは幼い頃にもう滅んでしまって…ほとんど地球育ちなのですが」
「ちょちょちょ、待った」
ルカを戻ってきたクレハが制止する
「……いいの?話しても」
「…うん。この人たちなら大丈夫そうだから。それに…この人たちの前でこの力使っちゃって……」
オールトリングマイクを見せながらゴメンと手を合わせるルカ
2人のコソコソ話にキララが眉根を寄せている中、オトメが手を挙げる
「も、もしかして…クレハさんも…?」
ばつが悪そうに頭をかきながら頷く
「まぁ、そんなところ」
それを聞いていたキララがぱちんと手を叩く
「よし!そんならこのことはあたしらだけのトップシークレットで。兄貴にも口外禁止!!」
はーいと賛同するサブの隣でスマホを取り出そうとしていたオトメが「あっ…」と呟きながらも素早くスマホをしまってぶんぶんと頷く
「……驚かないのか?」
「驚いとるわ!?でも、悪いヤツには見えんし…それどころかルカにもクレハにも助けてもらっとるしな。兄貴からさっき聞いたけど、あのピカピカしたのにやられとった人らもみんな無事やったし」
よかった…とルカが安堵のため息を漏らす
あ!とキララが大声を上げる
「代わりに、交換条件がある!」
クレハとルカがゴクリと唾を飲む
「ー困っとるんなら、正直にあたしらを頼ること!」
「……え?」
呆けた顔をするクレハたちを見てキララがニッと笑う
「やっとスッキリしたわ。あんたら、なんか色々危なっかしいというか…抱え込みそう、いや抱え込んでそうで放っとけんのよ」
キララの言葉を聞いてルカがあはは、と愉快そうに笑う
クレハの耳元でルカが告げる
「ね?いい人たちでしょ?」
「……ああ、降参かな、これは」
クレハが肩を竦めながらキララに頷きを返す
「わかったよ。それなら…お言葉に甘えさせてもらうかな」
「よっしゃ、商談成立!」
キララがクレハとルカの手をとって握手する
呆気に取られていたクレハとルカだったが、肩の力が抜けたのか笑みを漏らしていた
「コレからよろしく、お二人さん」
「ああ、しばらくよろしく。SHPのみんな」
俺たちのいく先々で現れる魔女
その名はクラン・クイン
今度はこの地球で悪さを企んでいるらしい
雷ノ魔唱獣を目覚めさせて、何をするつもりだ?
荒ぶる雷を纏う難敵・ボルグトーン
そのパワーに、ダイナミックでパワフルな新しい力が燃え上がる!
次回
「豪雷獣躙」
ダイナマイトに、決めるよ!!!