地球衛生軌道上
宇宙艇サロン・フォルトナ
内部には大きな遊戯場が広がっていた
さまざまな種族の異星人たちが、思い思いにポーカーやルーレット、スロットなどの賭け事に興じ、バカ騒ぎを続けている
そこに、カツンとハイヒールを鳴らしながら現れたのは長い白髪の怪人物ークラン・クインだった
騒いでいた異星人たちがその姿を見て静まりかえる
『おい、地球人がこんなところになんのようだ?』
ルーレット台に向かっていたペダン星人が立ち上がり、銃口を向ける
「ワタシが…地球人?あははははッ」
『何がおかしい!?』
愉快そうに笑うクラン・クイン
ペダン星人の銃を宙を舞う黒いカードが叩き落とす
『ぐっ!?』
それを静観していたマーキンド星人、ノワール星人、レイビーク星人、ダダ、サングラスの大男、チブローダーを纏うチブル星人が各々の武器を構えて立ち上がる
狂気の笑みを浮かべながらクインは自身の周囲に黒いカードを舞わせる
『貴様……何者ですか?』
『返答次第ではこの場で始末してやるぞ!!』
『ーやめろ、お前ら』
サロンの奥から響く声に星人たちが居住まいを正し武器を下げる
中には舌打ちを漏らすものもいたが、武器は素直に下げる
「ヤァヤァ、お会いできて光栄だよ。ギルツ・スリーセブン」
奥から姿を現したのは、スマイルフェイスのようなフルフェイスヘルメット型頭部を持つ機械のような体を持った異星人
『こちらも、お前みたいなのと出会えて愉快だよ。クラン・クイン』
機械宇宙人ールテル星人ギルツ・スリーセブンは愉快そうに告げる
『クラン・クインだと…!?』
『神出鬼没の魔人…』
『何を考えてるかわからん魔女とかいう話だが…』
ザワつく異星人たちを掻き分け、クインがギルツの眼下に歩み寄る
「ワタシは交渉に来たのさ。貴方が持っているあるものを譲ってほしくてねぇ。代価は……ワタシに用意できるものならなんでも用意しよう」
『なるほど、商談なら大歓迎だ。で?何が欲しい?クシアの残骸データから引きずり出したギャラクトロンか?それとも、外宇宙から流れついた機体をリバースエンジニアリングしたレギオノイドか?』
「ノンノン。そんなオモチャはいらないさ。ワタシが欲しいのは…」
「ー貴方が持つ、「織」のカード…ウルトラマントレギアのカードさ」
『……耳がいいようだなァ、魔女さんよ』
「ワタシは地獄耳だよ。それくらい知っているさ」
ギルツはクインを見下ろし、睨みつけていたが急にガハハ!と高笑いをあげる
『いいぜ、おもしれぇ。そろそろこの星でのショウケースを始めようかとも思っていたんだよ。代価はオレ様を満足させること…ってとこかなぁ』
ギルツがクインに歩み寄り、顔を突き出して見下ろしながら告げる
『ー精々オレ様を楽しませてみせろ。道化』
「ーおおせのままに」
芝居がかった礼をしたクインを置き去りにギルツがサロン奥のVIP席に戻る
「ー精々愉快に踊ってくれよ?そちらこそ」
道化の魔女は愉快そうに微笑んで、誰にも聞こえない小声でそう呟いた
◆◆◆
「ふぁあ…ッと」
朝一番に起きたキララが寝ぼけまなこにのれんを手にして銭湯まで降りてくる
「おはよう、キララ」
男湯側の脱衣所からクレハが覗いて手を振る
「おお、おはようクレハ。もう掃除入ってくれとるんか?」
「まぁね。意外といい鍛錬にもなるねこの仕事は」
タンクトップとジーンズにデッキブラシを持っていたクレハが爽やかに笑う
「ルカはまだ寝とるんか?」
「うん。もう少ししたら起きてくると思う。俺はいつも鍛錬とかで早起きしちゃうから…」
そうこう話していると、ルカが銭湯の方に降りてきた
「クレハおはよ〜、あ、キララもおはよう!」
「おはよう、ルカ」
「おーう、おはようさん」
ルカは挨拶を済ませると、配達されていたらしいケース入り牛乳を軽々と持ち上げて鼻歌混じりに運んでそれぞれの脱衣所にある冷蔵庫に補充していく
「ルカって力持ちじゃったんじゃな…」
「ふふん、頑張れば自販機くらいなら持ち上がるよ!」
自慢げに力こぶを作ってみせるルカ
ティファレトーンの事件を経て、クレハとルカは定住している場所がないことを明かしたところ、キララから銭湯の仕事を手伝うことを条件に2階の一室を貸してもらうことになっていたのだ
「2人とも、ひと段落ついたら朝ご飯にするで」
「わかった」
「はーい!」
仕事をひと段落つけた3人は2階でおにぎりと味噌汁を食べていると、サブとオトメが姿を見せる
「おはようございます姐御、クレハさんたちも!」
「お、おはようござい…ます…!」
「おはよーさん」
「おはよう、サブ、オトメ」
「おはよー2人とも」
食器などの片付けをしながらルカが鼻歌を歌っていると、サブがふと口を開く
「そういえば、ルカさんって歌姫なんスよね。どっかで歌を披露したりとかってしないんスか?」
「うーん…歌姫ってのは一応自称なの…別にアイドルみたいな活動してるわけではないんだけど…怪獣被害とかにあった人たちに歌を披露して、傷ついた心の癒しになったらいいなって歌うくらい」
へぇ〜とサブが頷く
「なったらいいな、なんてとんでもない。実際にルカの歌声はみんなを助けてくれてるよ、きっと」
「そうだといいんだけど…私の力だけじゃ、直接誰かを助けることはできないから…なんだか、そこは悔しいなって」
あはは、と笑うルカをクレハは少し寂しそうに見つめる
その話を聞いていたキララがふと手を叩く
「あの…なんやったっけ…ほら、サブが追っかけやっとるあの…ばーちゃるなんちゃら…」
「バーチャルライバーッスよ、姐御」
「そう、それや!!」
「バーチャル…」
「ライバー…?」
クレハとルカが揃って首を傾げる
サブがタブレットをつけてあるバーチャルライバーの配信画面を出す
「こういった感じに、アバターみたいなのを作って顔出ししないで配信活動してる方々のことッス。オレはこの猫野 マグロちゃんとかが所属してるぶいティブってグループの推しでしてここの子達はみんな個性的だけど元気をもらえる配信が多くてッスねー」
「ストップストップ、クレハたちが困るやろ一気に詰め込んだら…」
揃ってはてなマークを頭に浮かべているクレハとルカを見てキララがストップをかける
「ちょうどSHPも、広報担当というかなんかこう、マスコット的なのが欲しかったところじゃし、クレハとルカがええならやってみんか?ライバー?」
「わ、私はその…嬉しいですけど…」
「ルカがやる気なら、俺は大賛成かな」
「クレハ!?」
クレハに背中を押されながらももじもじしているルカ
「……でも、準備とか色々大変そうだし…そこまで迷惑かけるわけには…」
話を聞いていたオトメとサブがギラリと目を光らせ、各々何かを準備し始める
「できました、ルカさんの配信用アバターのデザイン!3Dモデルも今日一日あればできます!」
「ふぇえッ!?」
オトメがパソコン上に物凄い速さでデザインを完成させていた
「……いいな。ルカの雰囲気そのままに可愛い…」
「恐縮です…」
えへへ…とオトメが顔を赤らめる
「オレ、放送機材なら全部揃ってるので問題ないッス!」
「なんや、自分でもライバーしたかったんか?」
「いえ?マグロちゃんのおすすめだから買ったまでッスよ」
「たまに怖くなるのなんなん???」
あれよあれよと準備が整っていく中、あわあわしているルカにキララが微笑みかける
「迷惑やないなら、って言ってたけど。迷惑なんかとんでもない。あたしらにとってもSHPの宣伝になるし、むしろ助かる」
グッとサムズアップしてみせるキララ
オトメの描いたイラストをルカが改めて見つめる
えへへ、と楽しそうに頬を緩ませるルカをクレハは愛おしげに見つめていた
◆◆◆
市街地から少し離れた森の中
クインは鼻歌混じりに歩き、目的のものー紫の結晶が覗く祠を見つける
「び、ん、ご〜」
クインはダークリングを構え、腰のホルダーから5枚のカードを取り出す
全て「雷」の属性を持つ怪獣たちのカードを順番にスキャンしていく
《ネロンガ》
《エレドータス》
《エレキング》
《コカクチョウ》
《ゴロサンダー》
バチバチと取り出された怪獣たちの雷属性のエネルギーがリングへと集まって渦を巻く
「闇の力〜お借りしまーす!」
ダークリングを祠へと突き出し、蓄積したエネルギーを注入する
紫の結晶ートーンクリスタルが一際輝くと大地が鳴動し始め、晴れていた空に暗雲が立ち込めはじめる
「さぁ、シビれるようなショウタイムにしようぜ…?」
「ーク・レ・ハ…」
◆◆◆
ビシャーーーーーーーーンッ!!!
「「おわぁあああああぁあぁあ!?!?!?」」
「ぴゃっ!?」
突然の雷鳴に抱き合って驚くサブ、オトメ
思わず耳を塞いだキララと、同じく驚いたルカを庇うようにクレハが立ち上がってカーテンを開ける
「降るなんて予報なかったんじゃけど!?」
「いや、雨は降ってないというか…」
クレハが窓を開け、向こうに見える山を指差す
今も続く派手な雷鳴はその山の周辺でしか発生していないようだった
「一部の場所だけの雷ってことッスか…!?」
「ち、超常現象……狐の嫁入り……?」
「いやアレ雨降っとるか…??」
3人がごにょごにょ話している中、ルカがクレハに耳打ちする
「……これって、もしかして…」
「……うん。魔唱獣の可能性があるかも」
2人の表情が険しくなる中、いつの間にかSHPの3人はアルミホイルを巻いたようなよくわからないスーツに着替えていた
「……えーっと、一応聞くけどそれは?」
「オトメ開発の絶縁スーツ。見た目はクソダサいけど、ちゃんと電気を通さんのは実験できとる!」
「くそださ…!?」とショックを受けるオトメを無視してサムズアップするキララ
「やっぱり行くのかキミら…」
「ち、超常現象の捜査も、私たちの仕事、ですから!」
「それにあんな急な落雷とか、逃げ遅れた人とかもあるかもやしな」
よーし!とキララが拳を上げる
「サムシング・ヘルプ・ピープル、出動!いざ、魔の山へ!!」
「「ラジャー!!!」」
はぁ…とため息をつきながら
「俺たちも行くよ。なんかキララたちだけだと不安だし」
「SHP臨時隊員として、頑張ります!」
ルカが敬礼のようなポーズをする
「その意気やよし!あ、でも2人の防護服無いから無茶は禁物で」
「少なくともキララには言われたくないな…」
◆◆◆
落雷発生地点付近
「あ!お前らまた来たのか!?」
「げ、兄貴…」
SHP社用車から降りたキララが苦虫を噛み潰したような顔を見せる
そこにはウイング隊のバイクから降りていたゴロウがいた
「てかなんだその服…クソダサ…」
「クソ……ダサ……」
打ちひしがれて膝から崩れ落ちるオトメをサブとルカが撫でて慰める
「とにかく、異常気象の方はおれらが調べるから、お前ら一般人は大人しくしとけ」
「大人しくなんかできんなぁ、SHPはそういう仕事じゃ」
はぁ…とゴロウが重いため息を漏らす
「わかった…ならおれも一緒に行くぞ。それなら文句はないな」
「ぐぬぬぬぬ…仕方がない…」
「危ないことなったら引きずってでも避難さすぞ愚妹」
ゴロウも合流して6人となった一行は山道を進んでいく
オトメは道中手にした計測器を色々なところに向けながらデータを見ている
「く、空気中の…分子運動が…激しくなってる…?」
「……もっとわかりやすく言い直せるか、オトメ?」
「つまり…ここら辺の空気は今、セーターに擦り付けた下敷きみたいになりつつあるんです。あの、静電気ぱちぱちなるヤツです」
「電気が発生しやすくなってるのか…」
その説明を聞いていたクレハが一行の半歩後ろを歩きながら辺りを見渡す
「ちょっと、クレハごめん、待って…」
「あ、ごめんルカ、だいじょー」
「ーハロー?ク・レ・ハ♪」
振り返った目前にあった真紅の瞳に、クレハが思わず飛び退く
いつの間にかキララたちはいなくなり、そこにはクレハと白髪の魔女の姿だけがあった
「お前は…クラン・クイン…!!」
「あはは!名前を覚えてくれてるなんて嬉しぃなぁ」
油断なくオールトライザーソードを構えながらクレハが狂ったように笑うクインを睨みつける
「でもキミは酷いなぁ。彼女さんの声を聞き間違えるなんて」
「ふざけるな。ルカの声真似なんて悪趣味なことを…!!」
「……ふふん、うまいもんでしょう?きひひひ」
ひらひらと冗談めかしたように手を振るクインにクレハが肉薄する
振り抜かれた刃は黒いカードに弾かれ、飛び退いたクレハは油断なく構え直す
「行く先々で絡んでくるが、今度は何を企んでいる?」
「簡単な話。ワタシの目的はいつでも一緒さ」
「ワタシは、キミに本当の力を知って欲しいのさ。ウルトラマンオールト」
「…なんのことだ?」
「さぁ?キミはまだ気づかないんだ。相変わらず鈍いなぁ」
「お前に俺の何がわかる!?」
あっははははははははははは!!!とクインが哄笑を上げ、顔から表情を消してクレハを睨む
「なんでも知ってるさ。キミのことなら、ね」
ククク、と不気味に笑いながらクインが無数のカードに包まれるようにして姿を消す
「あぁ、ついでに新しい魔唱獣を起こしといたから。頑張ってね」
「クレハ!」
ハッと我に帰ると、すぐ隣にルカがいた
「なんかボーっとしとったけど、なんかあったんか?」
キララたちも心配そうにこちらに歩み寄る
どうやらクインはキララたちには姿を見せていないらしい
「いや、なんでもない」
そう言って合流しようとしたら矢先
ーラァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!
耳をつんざくような怪音がそこらじゅうから響き渡った
「ま、またアポカリプティックサウンド…!?」
同時に大地も大きく揺らぎ、遠景の山肌が稲妻を放ちながら吹き飛ぶ
ーゴァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!
荒々しい雄叫びと共に現れた黒い体に紫の巨大な爪と一本ツノを持つ怪獣が山肌から姿を現し、周囲に黒紫の稲妻を撒き散らす
木の上からその様子を見ていたクインがきひひと笑う
「雷ノ魔唱獣ボルグトーン。この子は暴れん坊だぞ〜?」
現れた怪獣ーボルグトーンにパニックになる中、ルカと目配せしたクレハが一行から離れてオールトライザーを構える
「ネクサスさん!」
《ウルトラマンネクサス》
ーシャアッ!!
「オーブさん!」
《ウルトラマンオーブ》
ーシュワッ!!
「奏でましょう、絆のハーモニー!!」
《ハーモニックアップ!》
《ウルトラマンオールト シュトロムスプリーム》
ーシュウワッ!!
ボルグトーンの目前にオールトが光と共に現れる
『ー光を重ねて、闇を祓う!!!』
ーシュウァッ!!
ーゴァァァァァァァァッ!!!
オールトが疾走し、ボルグトーンとぶつかる
巨大な爪の攻撃を回避し、腕を掴んで抑えながら蹴りを撃ち込む
鬱陶しげに払い除けながら雷を纏う尻尾がオールトの目前を掠める
『スプリームフェザー!!』
ーシュウァッ!!
バク転で退いたオールトが光弾を放ち牽制するが、ボルグトーンは爪を振り回して無理矢理光弾を叩き落とす
ボルグトーンは大きく息を吸い込むようにすると、体の各所から生えた突起を鳴動させる
ーラァァァァァァァァァァァァァァ!!!
突起の振動に合わせて大気が鳴動
ボルグトーンの周辺がバチバチと稲光りを放ち始める
ーゴァァァァァァァァッ!!!
ボルグトーンの咆哮と共に周囲に黒紫の落雷が降り注ぐ
咄嗟にバリアで防ぐオールトだが、何条もの雷全てを防ぐには間に合わず、いくつかの直撃を受け膝を突く
ーシュウァァッ…!?
落雷の出力に痺れたように体勢を崩したオールトに向けて、巨大爪に落雷を落として纏わせたボルグトーンが右、左と薙ぎ払い、とどめに爪を交差させて振り抜く
大気を引き裂く豪雷の爪撃がオールトの体を貫き、大ダメージを受けたオールトが倒れ伏す
「く、オールト!?」
見守っていたルカが思わず顔を覆う
「兄貴!ジェットウイング隊は!?」
「ダメだ、落雷が激しすぎてここまで侵入できない…ッ」
キララも思わず唇を噛み締める
「クッ……ぁあッ……」
膨大な雷のエネルギーの直撃を受け、オールトがうつ伏せに倒れたままもがく
胸のカラータイマーが赤く点滅を始める
ーゴァァァァァァァァァァァァッ!!!!
倒れ伏したオールトを見たボルグトーンは一転して市街地の方に歩みを進めていく
「行かせるか……ッ!溢れんばかりのパワーなら……」
痺れる体を起こしたクレハが、腰のホルダーから新たな2枚のカードを取り出して構える
「ー新たな力、お借りしますッ!!!」
「ダイナさん!」
《ウルトラマンダイナ》
ーデァッ!!!
「タイガさん!」
《ウルトラマンタイガ》
ーシュアッ!!!
「響かせましょう、勇気のデュオ!!」
《ハーモニックアップ!》
《ウルトラマンオールト ソルジェントフラッシャー》
ーデュウァッ!!!
赤い炎のような光を払い、空を翻りながらウルトラマンオールトがボルグトーンの目前に降り立つ
その姿は、炎のように聳える日本のウルトラホーンを持つマッシブな姿へと変わっていた
ーデュウァッ!!
「ウルトラマンが変わった!?」
「なんだか…さっきよりもパワフル…!」
ーゴァァァァァァァァァァァァッ!!!
ボルグトーンは再び大気を揺らし、オールトの周囲に稲妻を降り注がせる
『ストジェント・ネイチャー!』
オールトは空を見上げ、腕を額の前でクロスし一瞬体を青く光らせると、両手を広げる
降り注ぐ黒紫の落雷はその腕に引き寄せられ、青白いエネルギーへと変化してカラータイマーへと吸い込まれていく
空を鳴らしていた雷をすっかり吸い込み、オールトのカラータイマーが青へと戻る
『ーダイナマイトに、行くよッ!!!』
ーデュウァッ!!!
オールトとボルグトーン、2つの巨体が駆け出していく
オールトの拳が赤く、炎を纏って輝く
『ストジェントブロー!!!』
赤い炎の拳がボルグトーンに迫る
咄嗟に爪でガードしようとするが、その一本をへし折りながら拳が顔面に直撃し、大きくその巨体を吹き飛ばす
ふらつきながら立ち上がるボルグトーンにさらに炎を纏った拳が一発、二発と連続で直撃し、更に腕を回して力を貯めた渾身のラリアットがボルグトーンを地に伏せさせる
倒れたボルグトーンの尻尾を掴み、その巨体を引きずり上げる
『バルカマイトスイング!!』
ーデァッ!!!
尻尾を掴んだまま、赤いエネルギーを撒き散らしながらボルグトーンをジャイアントスイングの要領で振り回して天高く投げ捨てる
しばらく放物線を描いて吹っ飛んだ巨体が大地に叩きつけられる
ーゴ、ァアァァァァ……ッ!?
ぼろぼろになったボルグトーンが立ち上がる
それに相対し、額の前で腕をクロスしたオールトの体が赤く輝くと、全身に宇宙のパワーを迸らせながら胸の前で拳をぶつけて合わせる
オールトの胸の前に赤いエネルギー球が形成され、拳を構える
ーゴァァァァァァァァァァァァッ!!!
負けじとボルグトーンは爪を振り回して爪撃を放つ
『ストジェントボンバー!!!』
オールトが拳を撃ち込んで放った光球が爪撃を破壊しながら突き進み、ボルグトーンを貫く
胸に大きな風穴を開けたボルグトーンはよろめき、膝を突くとそのまま倒れ伏して膨大な稲妻を解き放ちながら爆発した
クレハの姿に戻り、その手に新たなウルトラカードが握られる
「頼」の属性を持つウルトラマンエックスのカードだ
「あいつを封印していたのはエックスさんでしたか。お疲れ様でした。これから、よろしくお願いします」
一礼してカードをホルダーに収める
「クレハ!」
そこにルカが走り込んできて抱きつく
思わずクレハは尻餅をついてしまう
「ルカ!?いきなりびっくりしー」
飛び込んできたルカがクレハのシャツを強く掴んだまま俯いていることに気づき、言葉を飲み込む
「よかった……無事で……」
泣きそうな声のルカの顔を上げさせ、その額にキスをする
「大丈夫。俺は絶対にキミを、みんなを守る。この命に変えても。でもそもそもキミを置いて死んだりはしないよ」
ルカの小さな背をクレハが撫でて抱き寄せる
その体温を確かめるように、しばらくルカはクレハから離れなかった
ダークリングから生成されたボルグトーンのカードを手にし、ニヤニヤとクインが眺める
「絶対に守る、絶対にキミを置いて死んだりしないだって?」
あははははははははははははははははははははは!!!!
クインのタガが外れたような哄笑が響き渡る
「吐き気がするほど甘ったるいなぁ、相変わらず」
笑みを残したまま吐き捨てると、ホルダーからカードを取り出す
土ノ魔唱獣ドグラトーン
美ノ魔唱獣ティファレトーン
反ノ魔唱獣アンティトーン
霜ノ魔唱獣フロストーン
雷ノ魔唱獣ボルグトーン
今までオールトが撃破してきた魔唱獣たちのカードが、怪しく輝きを放つ
「破滅のプレリュードまで、あと一つ…」
「楽しみだねぇ、優しい標的さん…♪」
◆◆◆
緊張した面持ちでマイクに向かい、配信機材とヘッドセットを身につけたルカがグリーンバックの前に立つ
「うまくやれるかな……」
緊張しきっているルカを側にいるクレハが元気づける
「ルカなら大丈夫。ルカの歌は最強だから」
「クレハがそう言うなら…だけど緊張はやっぱりするよ〜!」
「あ、放送準備できました!」
オトメの言葉にぴーんとルカが背を伸ばす
「クレハの言う通り大丈夫!ちょっとくらい失敗してもええよ。ゆっくり自分らしくやるのが一番じゃし」
にははとキララが笑う
そうこうしているうちにオンエアが始まった
『あ、あー…はじめまして!えっと…SHPの新メンバーになりました。流坂ルカといいます!よ、よろしくお願いしますッ!』
オトメがデザインと3Dモデル作成をしたルカのアバター『流坂ルカ』が画面の中で話し始める
『えっと…私、歌うことが大好きでして。広報のために、時々こうして歌の披露をしてみようかなぁ〜って』
『ということで、聞いてください!』
意を決してルカが歌い出す
夕焼けの道を歩きながら、鍵を探す晴々とした曲
即興のスタジオの中でSHPの面々とクレハが聴き入っているうちに歌は無事終了していた
『聴いてくれてありがとうございました!まだまだへたっぴかもですが、頑張って練習していきますから、また聴いてくれると嬉しいです。えへへ…』
配信のコメントがそこそこのスピードで流れていく
『いい歌だった…』
『癒し系の声で素敵』
『早速ファンになっちゃったかも』
『弱小オカルトチャンネルにはもったいなくない?』
「おい最後のヤツ表出ろや……」
「どうしますかキララさん?藁人形でも送りましょうか?」
「ストップストップ!?!?危害加えようとしないで!!」
「当然と言えば当然だね。ルカの歌は最強だか、らー」
流れていくコメントを見ていたクレハが固まる
『ルカたん結婚して』
『ルカはオレの嫁』
『抜け駆けは許さんぞお前ら』
ミシッ
パソコンの画面を掴んで食い入るように見ていたクレハ
画面が軋みを上げる音が響いてくる
「………オトメ、キララ。俺も手伝う」
「クレハさぁん!?!?!?」
配信が終了し、バカ騒ぎに発展するSHPの事務所
3人に混ざってどこか楽しそうに騒ぐクレハを見て、ルカは嬉しそうに笑っていた
「やっぱり、楽しい人たちだね。クレハ」
突如現れた新たな魔唱獣スペクトーン
拍子抜けするようなヤツかと思いきや、隠し玉を持っていたみたいだ
暗闇に潜んで襲いくる魔唱獣
怖くなんかないさ。そんなもの慌てた人が見間違えたに違いない
……怖くなんかないさ!!
勇気のデュオのアツさで振り払ってやる!!
次回
「恐れの暗闇」
ダイナマイトに、行くよ!!