かわいいホームズの親友ちゃんは、相棒の座を奪われて焦心苦慮   作:くぁwせdrftgyふじこlp

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奇跡のプリキットミラールーペ!

【みくるSide】

 

「う……ぅぅ……アン……サー……」

 

声が、喉の奥から絞り出すようにしか出てこない。

 

「ミス……ティック………」

 

アンサーの声も、同じように掠れていた。

 

身体が動かない。

 

意識だけはかろうじて繋ぎとめているものの、四肢はもう言うことを聞かなかった。

 

全力を尽くした——そのつもりだった。

 

けれど、あの強大なハンニンダーの前では、自分たちの渾身の力など、砂に落とした水のように消えてしまった。

 

いつの間にか、すぐ隣にアンサーが倒れていた。

お互いが満身創痍であることは、言葉を交わすまでもなくわかった。

 

「ハハハハハ……また一雨来そうだね」

 

ニジーの声は、ひどく軽やかだ。

その軽さが、今の自分には針のように刺さる。

 

言葉どおり、まだ4月だというのに、遠くから雷鳴が届いてくる。

 

雨はいったん弱まったはずなのに、また空が重みを増しはじめていた。

濡れた土の匂いが鼻をつく。

 

「この空は、まるでキミたちの心を写しているかのようだ」

 

——そう、かもしれない。

 

勝てる、と思った瞬間があった。

確かにあった。

 

なのに今は、仰向けになったまま空を見上げることしかできない。

 

分厚い雲に覆われた、灰色の空。

太陽はどこにも見当たらない。

日没が近づいて、あたりはじわじわと薄暗くなっていく。

 

まるで時間そのものが、自分たちを急かしているようだった。

 

早く立ち上がらなければ——そう思う心だけが、空回りし続ける。

 

身体は、もう応えてくれなかった。

 

「………っ……」

 

奥歯を噛みしめた。

 

あんなと喧嘩した。

みのるにひどいことを言った。

 

謝らないと、ずっとそう思っていたのに。

 

勇気を出すどころか——今、目の前の敵にすら立ち向かえない自分がいる。

 

約束を守れない。

あんなと交わしたあの約束を、このまま破ってしまう。

 

「……みくるに……傘を届けに行ったんだ……」

 

ふいに、アンサーの声が聞こえた。

 

ゆっくりと、ひとつひとつ言葉を選ぶように。

 

「……え……?」

 

傘を、届けに。

 

胸の中で、何かがざわりと動いた。

 

もしかして——あんなが学校にいたのは、依頼を引き受けたからじゃなくて。

最初から、ずっと——。

 

「そしたら……友達といるみくるを見て……邪魔しちゃ……ダメだって!」

 

「………!」

 

アンサーの目に、涙が滲んでいた。

 

その瞬間、さっきの光景が脳裏に蘇る。

 

りえとゆみと笑いながら話していた放課後。

あんなはそれを見ていたんだ。

 

遠くから、ひとりで。

 

気づくのが、遅すぎた。

 

あんなの様子がどこかおかしかったのも、息が噛み合わなかったのも——全部、全部、自分のせいだった。

 

「でも……何よりも思ったの……。この時代で、この世界で……ひとりぼっちなんだって!!」

 

「……!!」

 

あんなは……ずっと、寂しかったんだ。

 

当たり前だ。

たったひとりで、知らない時代に放り込まれて、重すぎる運命を背負わされて。

 

それでも笑っていた。

笑い続けていた。

 

なのに自分はその笑顔の裏側を、一度でもちゃんと見ようとしただろうか。

 

「だから……私一人で調査して……ぅぅ……っ……ごめんね………」

 

泣き崩れるアンサーの顔が、胸の深いところに突き刺さった。

 

いつもこうだ。

 

仲良くしていると思っていた。

大切にしているつもりだった。

 

でも結局——その人が本当に抱えているものに、気づけない。

気づこうとしていなかった。

 

「……知らなかった……。そうだよね……1999年に……この時代に来て……心細いよね……不安だったよね……!」

 

気がつくと、自分の目にも涙が滲んでいた。

 

あんなは嘘をつかない人だから、大丈夫だと思い込んでいた。

楽しそうに見えたから、きっと平気なんだと——都合よく、そう決めつけていた。

 

ちゃんと見ていなかった。

ちゃんと、見てあげられていなかった。

 

「なのに……私……私こそ……一人で……!ぅ……ぁ!?」

 

声が途切れた。

 

重い身体を起こそうと、腕に力を込める。

 

震える腕が地面を押した。

でも、すぐに崩れた。

 

ぬかるんだ砂の上に、また倒れ込む。

 

「……ごめん……」

 

それだけ言うのが精一杯だった。

 

「ミスティック……みのるのことも……大事に……してあげて……」

 

「え……」

 

みのる。

 

その名前が耳に届いた瞬間、身体の中で何かが弾けた。

さっきまで石のように沈んでいた体が、わずかに持ち上がる。

 

「みのるは……小さい頃から……両親が……いないんだ……」

 

「……ぇ」

 

初耳だった。

 

みのるがいじめを受けていたことは、本人から聞いていた。

実際に目の当たりにしたこともある。

 

でも両親がいないなんて。

 

一度も、一度だって、そんな話は聞かされていなかった。

 

どうして。

どうして、知らなかったの。

 

どうして、みのるは……。

 

「……知らない……なんで……みのる……!」

 

「私は……この時代に来て……これだけ……つらい思いをしてたから……ずっとひとりぼっちだったみのるは……もっと……つらいはずだよ……!」

 

「……っ……くっ……ぁ」

 

涙が溢れて、止まらなかった。

 

私は——なんてことを言ったんだろう。

 

みのるが唯一心を開いてくれた相手が、私だったのに。

親友だって言ってくれたのに。

 

なのに私は、あんなと同じように……みのるの本当の気持ちを理解できなくて、一番深いところを、傷つけた。

 

「私……あんなも………みのるも………こんな目に遭わせて……最低だ……!!」

 

涙が砂浜に落ちる。

 

ひとつ、またひとつ。

小さな水溜まりができていく。

 

少し離れた場所に倒れているみのるの姿が目に入った。

 

その瞬間、胸が締め付けられて、息ができなくなりそうになる。

 

罪悪感が波のように押し寄せて、このまま押し潰されてしまいたかった。

 

「だから……謝ろう……。ハンニンダーを、倒して……マコトジュエルを……取り返して……」

 

アンサーが微笑む。

 

ボロボロのまま、傷だらけのまま——それでも、あんなは笑っていた。

 

その笑顔に答えようと、口を開きかけたときだった。

 

「「ハンニンダー!!」」

 

「「!?」」

 

ハンニンダーの声が、砂浜に響き渡る。

 

待っていてくれなかった。

 

人形のハンニンダー——そして、アンサーと激しく交えていたはずのツバメのハンニンダーまでも、すでに立ち上がっていた。

二体が並んで、私たちの前に立ちはだかる。

 

「さて、そろそろショーも終わりの時間だよ……プリキュア!!」

 

「……っ!!」

 

ニジーの言葉に応えるように、ハンニンダーが動き出した。

 

一歩。

また、一歩。

 

ゆっくりと、確実に迫ってくる。

 

それでも身体が動かない。

 

足が、まるで鉛を流し込まれたように固まっている。

命の危険を感じている。

 

頭はわかっている。

なのに足は、一ミリも動かなかった。

 

やられる。

 

その言葉が、頭の中でゆっくりと広がった。

 

そのときだった。

 

「ポチー!!」

 

声が、届いた。

聞き慣れた、あの声が。

 

いつだって傍にいてくれた。

 

飛び回って、はしゃいで、じっとしていることが苦手で——でも、いつも、どこにいても、必ず近くにいてくれた、あの小さな妖精の声が。

 

「ここで登場か……ベイビー妖精!」

 

ニジーの声に、薄ら笑いが混じっていた。

 

「ポチタン……!ジェット先輩!!」

 

砂浜の向こうに、見知った姿があった。

 

ジェット先輩がポチタンを胸に抱いて立っている。

倒れたまま見上げた視界に、その姿が飛び込んできた瞬間——灰色に沈んでいた胸の中に、かすかな光が灯った気がした。

 

だが、ニジーはその光さえ踏み潰すつもりだ。

 

「だが舞台には上げないよ!!」

 

「「ハンニンダー!!」」

 

号令と同時に、ツバメのハンニンダーが動いた。

機体から無数のエネルギー弾が生成されていく。

 

一発、二発、ではない。

数え切れないほどの弾が、空を埋め尽くすように展開されていく。

 

人形のハンニンダーがその全てに力を注ぎ込み、一発一発の輝きがさらに増していった。

 

プリキュアでもない妖精一匹に向ける火力じゃない。

これは、蹂躙だ。

 

「なんだよあれ!?」

 

「ポチ……!」

 

驚愕するジェット先輩と、怯えて身を縮めるポチタン。

 

あの弾幕の中に、生身で飛び込む隙間などどこにもない。一発でも掠れば……考えるだけで息が詰まった。

 

「ダメ!!ジェット先輩逃げて!!」

 

叫んだ。

声だけは出た。

でも身体は動かない。

 

この距離から、何もできない。

 

歯がみしながら見ていることしかできない自分が、憎かった。

 

「これ!届けたいんだろう!?あんなとみくるに!!」

 

「ポチ!!」

 

ジェット先輩がポケットから取り出したのは——さっきあんなが使おうとしていた…確かなプリキュアの力を帯びたアイテムだった。

 

プリキットミラールーペ。

 

あんなが私に渡すはずだった、新しい力。

それをジェット先輩はポチタンに託した。

 

自分は、囮になるつもりだ。

 

「行け!!ポチタン!!」

 

「ポチ!!」

 

ポチタンがこちらへ向かって飛び出した。

 

小さな体を懸命に動かして、あの弾幕が渦巻く空を真っ直ぐに。

 

怖いはずだ。

怖くないわけがない。

 

それでもポチタンは、一直線にこちらへ向かってくる。

 

脳裏に、ジェット先輩の言葉が蘇った。

 

『名探偵プリキュアには、それを支えるお供妖精がいるんだ。名探偵の身近に在る者となり、いつも側で見守る存在だ』

 

「……ポチタン……」

 

お供妖精。

 

ポチタンは今……私たちの、アンサーとミスティックのお供妖精に、なろうとしている。

 

あの小さな身体で、あの恐怖の中で、それでも飛んでいる。

 

「あいつらの邪魔はさせない!!来るなら来てみやがれ!!」

 

ジェット先輩がゴーグルを装着した。

表情に、迷いはなかった。

覚悟を決めた顔をしていた。

 

でも——押し寄せるエネルギー弾の数が、多すぎる。

 

どう動いたとしても、躱しきれるはずが——。

 

そう思った瞬間、一発のエネルギー弾が軌道を変えた。

弧を描くように滑らかに方向を変え——ポチタンめがけて、真っすぐに迫っていく。

 

(嘘……)

 

息が止まった。

 

顔から、表情が抜け落ちていくのがわかった。

 

あれがポチタンに直撃したら。

あの小さな身体に、あの力が——。

 

絶望しかけたときだった。

 

閃光が、走る。

 

紫色の、鋭いビームだった。

 

どこからともなく飛んできたそれが、ポチタンへ迫っていたエネルギー弾を、跡形もなく消し飛ばした。

 

「……え?」

 

思考が、一瞬止まる。

 

次の瞬間、紫のビームが、今度は一条ではなかった。

 

大量の光条が夜明け前の空を切り裂くように殺到し、ジェット先輩の真上を轟音とともに通過した。

 

そしてハンニンダーが展開していたエネルギー弾の全てが、まとめて消えた。

 

砂浜に、一瞬の静寂が落ちる。

 

(どういうこと……誰がやったの!?)

 

ハンニンダーの攻撃ではない。

それだけは確かだった。

 

あれほどの数のエネルギー弾を一瞬で消し飛ばすほどのビーム、一般人に出せる力じゃない。

 

あたりを見回した。

砂浜に怪しい人影はない。

 

波打ち際にも、空にも、それらしい存在は見当たらなかった。

 

謎は残る。

でも今は、それよりも大事なことがある。

 

「はぁ……はぁ……アンサー!」

 

まだ身体は軋んでいた。

深く息を吸うだけで肺が痛む。

 

立ち上がれるほどの体力が残っているかどうか、正直わからない。

 

それでも、絶望的な状況をかろうじて回避できた。

希望は、まだある。

 

私はそっと、アンサーへ向けて手を差し出す。

 

「……ミスティック……!」

 

アンサーが膝をつきながら、それでも確かに身体を起こしていく。

震える腕で、私の手をしっかりと掴んだ。

 

「………三角関係……か」

 

「え?」

 

思いがけない言葉だった。

 

三角関係——恋愛の話で出てくるような、あの言葉。

 

「ジェット先輩が言ってた。私たちは、繋がってるって」

 

「………」

 

アンサーが私の手を取ったまま、微笑んだ。

 

その瞬間——何かが、胸の中で繋がった。

 

三角関係。

私とあんなとみのる。

 

三人はそれぞれ、互いに影響し合って、支え合って、初めて成り立っている。

 

似ているところがあるから、すれ違う。

すれ違うから、傷つける。

 

でも、だからこそ、わかり合える。

 

このすれ違いの答えは、誰か一人が解決するものじゃなくて、三人で一緒に踏み出していくことなんだ。

 

『一歩踏み出せば、答えはついてくる!』

 

あんなの声が、耳の奥で響いた。

 

「あなたが気づかせてくれたから……」

 

『一歩の勇気が、答えになる。だよ!』

 

——やっと、わかったよ。

あんな。

 

「……何っ!?」

 

ニジーの表情が変わる。

 

体力は、底をついたままだった。

それなのに——身体の奥から、じわりと熱いものが広がってくる。

 

さっきまで鉛のようだった足が、少しずつ地面を踏みしめる感覚を取り戻していく。

 

私とアンサーはゆっくりと立ち上がり、ニジーへと向いた。

 

「ミスティック……」

 

「……」

 

アンサーの声を、私は黙って受け取る。

 

「さっき、1999年に……この時代に来て心細い、不安でしょって言ったけど……」

 

アンサーの表情に、もう迷いはなかった。

 

さっきまで涙に濡れていた目が、今は真っ直ぐ前を見ている。

 

私も、同じだった。

 

「私、もう平気だよ!だって、私の中にみくるがいるから!」

 

「ええ!私の中にも、あんながいる!」

 

これからどんなにつらいことがあっても——二人がいる限り、折れることはない。

 

つらいなら助ける。

孤独なら、側にいてあげる。

 

それだけでいい。

それだけで、きっと前に進める。

 

「そして私とみくるには大切な親友……」

 

「「みのるがいる!!」」

 

みのる——ずっと一人にさせて、ごめん。

 

なんで話してくれなかったのかって、一瞬でもショックに思った自分が恥ずかしい。

 

あなたはきっと、心配させたくなかったんだよね。

 

自分のことより誰かのことを先に考えてしまう、そういう優しさが、あなたにはある。

 

だから今度は私が言う。

 

あなたは一人じゃない。

大切な親友だって——ちゃんと伝える。

 

「私たちは……」

 

「「一人じゃない!!」」

 

今度こそ、決着をつける。

 

どんな敵が来ても、私たちには負けない理由がある。

諦めない理由がある。

 

強い絆で結ばれた三人がいる限り——私たちは、絶対に挫けない。

 

「……一人だろうが二人だろうがどうでもいい!!ボクには後がない……倒すまでさ!!!」

 

ニジーの顔が歪んでいる。

 

余裕の仮面が剥がれ落ちていた。

 

あれだけの準備をして、あれだけ圧倒して——それでも私たちが立ち上がるから。

 

焦りが、怒りが、その表情に滲み出している。

 

「ミスティックと二人で!!」

 

「マコトジュエルを……ツバメの像を……そしてみのるを!!」

 

アンサーの手を握る。

アンサーも、握り返してくる。

 

お互いの体温が、指先から伝わってくる。これが答えだ。

 

「「取り返す!!!」」

 

同時に叫んだ、その瞬間。

 

「ポチー!!」

 

小さな影が、風を切って飛び込んできた。

ポチタンだ。

 

あの弾幕をくぐり抜けて、ジェット先輩から託されたプリキットをしっかりと持って——真っ直ぐに、私たちのもとへ。

 

「「二人じゃない……みんなで!!」」

 

ポチタンの身体からプリキットミラールーペが飛び出した。

 

アンサーと私、二人で一つのお揃いのプリキット。

光を帯びて、宙に舞う。

 

「「オープン!プリキットミラールーペ!」」

 

手の中に収まった瞬間——初めて触れるはずなのに、まるでずっと使い続けてきたかのように、自然と馴染む。

 

不思議な感覚だった。

でも、迷いはなかった。

 

「「ポチタン!」」

 

「ポチ~!!」

 

ポチタンが差し出したマコトジュエルを受け取り、ミラールーペにセットする。

 

「「マコトジュエル!」」

 

——その瞬間、全身に力が満ちた。

 

さっきまであれほど重かった身体が、嘘のように軽い。

痛みの奥から、熱いものがせり上がってくる。

 

「見て!」

 

「感じて!」

 

「「謎を解く!」」

 

鏡の蓋を開く。

 

内側から光が溢れ出し、力が渦を巻くように高まっていく。

 

「「これが、私たちの答え(アンサー)だ!!」」

 

まだ見ぬ未来を守るために。

困っている人の傍にいるために。

 

嘘で塗り固められた世界を、絶対に許さないために——私たち名探偵プリキュアは、ここにいる。

 

「「プリキュア!!フライング・スペクトル!!」」

 

雲が、割れた。

 

眩い白光が空を貫き、巨大な白い鳥が姿を形作る。

羽ばたく翼が嵐のように空気を震わせ、ハンニンダーへ向かって一直線に——。

 

勝負は、決まった。

 

そのはずだった。

 

「……このまま引き下がれるか……押し返せ!!ハンニンダー!!!」

 

ニジーの叫びが、砂浜に響き渡った。

 

「「ハン……ニン………」」

 

二体のハンニンダーの内部で、何かが膨れ上がっていくのがわかる。

 

エネルギーが、急激に、異常なほど高まっていく。

 

「「ダーああああああああぁぁぁぁぁぁッ!!!!!」」

 

人形とツバメ——二体同時に放たれた巨大なレーザーが、フライング・スペクトルに真っ向から激突した。

 

「「うぅぅぅぅあぁぁぁああ!!!」」

 

光と光がぶつかり合い、轟音が世界を揺さぶる。

 

押し返される。

私たちの渾身の一撃が、ハンニンダーの力に拮抗され、押し込まれていく。

 

言葉では言い表せない。

身体の芯から、力が削り取られていくような感覚。

 

勝負が決まったはずだった。

 

なのに——また、窮地だ。

 

フライング・スペクトルの白い輝きが、二本のレーザーに挟まれて、今にも掻き消されそうに揺れていた。

 

「ハンニンダーああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「嘘でしょ!?何……この力!?」

 

「なんとか……耐えて……ポチタン!!!」

 

「ポチぃぃぃぃぃ!!」

 

押されていた。

 

プリキットミラールーペとポチタンの力を合わせてなお、押されていた。

 

フライング・スペクトルの白い光が、レーザーに挟まれてじりじりと削られていく。

 

一体何なの、このハンニンダーは。

 

「フルパワーだ!!このまま潰せ!!」

 

「「ハンニンダーああああぁぁぁ!!!!!」」

 

レーザーがさらに太くなった。

 

膨れ上がった光の奔流が白いツバメを押し包み——ついに、白い翼が後退し始める。

 

「こんな……はずは……!?」

 

「堪えて……ミスティックぅぅぅ!!!」

 

まずい。

本当にまずい。

 

せっかく生み出したフライング・スペクトルが、このままでは打ち消される。

 

全力で踏ん張った。

足の裏に砂が食い込む。

 

それでも身体が後ろへ、後ろへと押されていく。

 

押しきれるどころか、ビームがじわじわとこちらへ迫ってくる。

 

「見たか名探偵プリキュア!!どんな友情を見せたところで、圧倒的な力の前では全て無意味だ!!」

 

「うぅぅぅぅ!!!」

 

違う。

絶対に違う。

 

こんなところで、終われない。

諦めるわけには——。

 

「諦めるな!!」

 

「「ジェット先輩!?」」

 

いつの間にか、背中に重みがあった。

 

ジェット先輩が、私とアンサーの真後ろで踏ん張っている。

両腕を広げて背中を押さえ、全体重を預けるように地面を蹴って支えてくれている。

 

言葉がなくてもわかった。

 

ジェット先輩は、私たちの覚悟を無駄にさせるつもりはない。

 

「お前たちは、二人で一つなんだろう!?みのるを救いたいんだろう!?世界を守りたいんだろう!?だったら踏ん張れ!!絶対に諦めるな!!お前たちは奇跡の三人なんだ!!」

 

言葉が、胸に届いた。

 

諦めたくない——じゃない。

絶対に諦めない。

 

あんなと、私と、ポチタンと、みのると——一緒に帰るんだ。

 

それだけは、何があっても譲れない。

 

「「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」」

 

白いツバメが、輝きを増した。

 

「な……何だと!?」

 

劣勢が、一瞬で覆った。

 

押されていたフライング・スペクトルが、今度は逆にレーザーを押し返しながらハンニンダーへと向かっていく。

 

「力ではハンニンダーの方が上のはず!?なぜだ!?」

 

なぜ——そんなの、答えはひとつだ。

 

「確かに力ではあなたの方が上かもしれない……でも私たちは、一人じゃない!苦しい時に手を伸ばしてくれる仲間がいる!」

 

「誰かの想いを踏みにじって手に入れた力なんかに……絶対負けない!!」

 

白いツバメが、さらに強く輝いた。

 

気がつくと、空が変わっていた。

 

あれだけ重く垂れ込めていた雲が割れて、虹をかけた鮮やかな夕焼けが砂浜を照らしている。

光の中で、白い鳥の翼がさらに大きく広がっていく。

 

「そ……そんな……」

 

「「ハ……ハンニンダー!?」」

 

「「はあああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」

 

全ての力を、込めた。

 

足がつりそうなほど踏ん張った。

 

それでも前へ。

少しずつ、確実に、前へ。

 

レーザーが、押し返されていく。

 

削られていく。

消えていく。

 

「……決まったな」

 

ジェット先輩の静かな呟きが、耳に届く。

 

その言葉が終わるより早く——白い鳥はハンニンダーのレーザーを完全に押し包み、そのまま二体の胴体を、まとめて貫いた。

 

「「キュアット解決!」」

 

閃光が、砂浜を白く染めた。

 

光の柱が天へと立ち上り、二体のハンニンダーを包み込んでいく。

 

「「ハン……ニン………ダー……」」

 

力の抜けた声が、波音に溶けていった。

 

人形のハンニンダーも、ツバメのハンニンダーも——光の中に、ゆっくりと消えていく。

 

ツバメの像から、二つのマコトジュエルがほろりと零れてポチタンのもとへ舞い降りた。

 

そしてみのるに宿っていたマコトジュエルは、静かに、みのるの身体の中へと還っていった。

 

やっと、終わった。

 

そう思った瞬間、全身から力が抜けていった。

 

今まで張り詰めていたものが一気に緩んで、どっと疲れが押し寄せる。

 

膝が笑う。

息が重い。

身体のあちこちが悲鳴を上げている。

 

でも、不思議と悪い気はしなかった。

 

 

_______________

 

 

 

【みのるSide】

 

波の音が聞こえた。

ゆっくりと、目を開く。

 

視界に、夕暮れの空が広がっていた。

雲の切れ間から覗く茜色が、砂浜を柔らかく染めている。

 

身体は重く、頭がぼんやりとしていた。

 

——そうだ。

自分のマコトジュエルがハンニンダーにされて、意識を失ったんだ。

 

そこからのことは、何もわからない。

気がついたら、こうして砂の上に倒れていた。

 

またプリキュアに迷惑をかけてしまった——その事実が、静かに重くのしかかってくる。

 

自分が足を引っ張った。

自分のせいで、二人はもっと苦しい戦いを強いられた。

 

そう思うと、起き上がる気力すら萎えてしまいそうだった。

 

でも、なんとかなったのだろう。

それは——倒れたまま視線を向けた先の光景を見れば、誰にでもわかることだった。

 

「………っ……」

 

ニジーが倒れていた。

 

服は汚れ、髪は乱れ、いつも被っていた帽子が少し離れた砂の上に落ちている。

悔しさと疲弊が入り混じった表情が、その顔に刻まれていた。

 

それだけで十分だった。

 

ニジーは、負けたんだ。

 

「……だから……言ったのに……プリキュアを……甘くみたら……ダメだって……大人しく持って帰れば……こんなことにならなかったでしょ?」

 

一応、忠告はしていた。

 

でもニジーは戦うことを選んで、そして負けた。

 

頭ではそう理解していた。

なのに——倒れているニジーを見ていると、どうにも放っておけない感情が胸に滲んできた。

 

自分でも、なぜかはわからない。

 

ニジーは身体を動かさないまま、虚ろな目をこちらへ向ける。

息が荒く、声は掠れていた。

 

「……うるさい……ボクはもう……終わりなんだ……勝手に言ってろ……」

 

「……消されるの?」

 

言葉が、口から出ていた。

 

粛清——その言葉が、脳裏に浮かぶ。

 

敵とはいえ、それは……あんまりではないか。

ニジーは天を仰いだまま、怯えたような目をかすかに細めた。

 

「……わからない。でも……きっとそうだろうな……」

 

沈黙が落ちた。

 

波だけが、変わらず繰り返している。

 

「………」

 

「………」

 

ウソノワールという存在がニジーを消す場面を、無意識に想像していた。

 

ニジーはただ命令に従っていただけだ。

それで失敗したからといって用済みにされるなら——それは理不尽だ。

 

どう考えても、理不尽だ。

典型的な、使い捨てだ。

 

そう考えれば考えるほど、胸の中の感情が抑えきれなくなってきた。

 

「……キュアアンサー……明智あんなは……2027年の……未来から来た……」

 

気がついたら、口が動いていた。

 

「は?」

 

ニジーの目が、見開いた。

 

「……あ……うっかり……口を滑らせちゃった……」

 

自分でも驚いていた。

 

敵に、重要な情報を。

 

なぜそんなことを——頭ではわかっている。

 

でも身体は、もう喋っていた。

 

ニジーは呆然と、私を見つめていた。

 

「……何を考えてる?」

 

「……せめて重要な……情報を、持ち帰れば……見逃して……くれるんじゃないかな?……確証はないけど……」

 

ニジーが息を飲んだ。

 

ゆっくりと体を起こして、私をまじまじと見つめる。

 

「ボクたちは敵同士だぞ!なんで情報を吐いた!?」

 

「……つらそうなニジーを見てたら……放って……おけなくて……」

 

言いながら、自分でもおかしいと思っていた。

 

さっきまであれだけプリキュアと激しく戦っていたニジーに——被害者である自分が、こんなことを言っている。

 

筋が通っていないのはわかっている。

 

でも、嘘をついても仕方がなかった。

 

放っておけなかった。

それだけが、本当のことだった。

 

「……なんなんだ……本当に……」

 

「……本当……敵なのにね……」

 

みくるたちが聞いたら、きっと怒るだろう。

 

でも——まあ、いいか。

どうせ私はもう、みんなと一緒にいる資格なんてないんだから。

 

そんな投げやりな気持ちが、胸の隅にじわりと滲んだ。

 

しばらく、波の音だけが続く。

 

「なあ……昔……キミと一緒にいたこと……なかったか?」

 

「え?」

 

思わず、ニジーの顔を見た。

 

聞き間違いじゃない。

昔、一緒にいた——どういうこと?

 

脳がその言葉を処理しようとして、うまくいかない。

 

「もちろん、そんな記憶なんてない。だけど、一瞬だけ……頭の中にノイズがかかったような気がしたんだ。見ず知らずのキミを見て、そうなった……」

 

「私は……ニジーを知ったのは最近で、ファントムの存在も知らなかったから……わからない……」

 

小さい頃から、みくる以外に誰ともまともに関わったことがない。

 

ニジーなんて会ったことも、見たこともない。

 

怪盗団ファントムという組織があることすらずっと知らなかった。

 

それは本当のことだ。

なのに——なぜこの人は、そんなことを言うんだろう。

 

「そうか……ただの思い過ごしか……」

 

ニジーはそれ以上は追わず、空を見上げた。

 

さっきまであれほど重く垂れ込めていた雲が、今は嘘のように晴れている。

茜色と橙色が混ざり合った夕空が、砂浜の濡れた砂を静かに照らしていた。

 

「……でも、もしそんなことがあったら……私たちは何をしてるんだろうね……」

 

「……どうだか……」

 

横たわったまま、二人で同じ空を見ていた。

 

そうしてしばらくそのままでいると、

 

「……盛り上がってるところ悪いけど、帰りましょう」

 

声が、現実を引き戻した。

 

さっきの少女だ。

 

ニジーに向かって、静かに、しかし有無を言わさない口調で告げている。

 

瞬間——ニジーの表情が変わった。

さっきまでの、奇妙な柔らかさが消えて、恐怖が滲み出てくる。

 

やっぱり、怖いんだ。

ウソノワールが。

 

その先に待っているものが。

 

「ニジー……」

 

でも、私にはどうすることもできない。

 

何も変えてやれない。

 

せめて——砂の上に落ちていたニジーの帽子を拾って、差し出した。

 

それだけしか、できなかった。

 

「……ああ、ありがとう」

 

「えっ……」

 

思わず、手が止まった。

 

ありがとう。

あのニジーが——私に、感謝の言葉を言った。

 

聞き間違いじゃない。

確かにそう聞こえた。

 

少女に連れられて、ニジーが遠ざかっていく。

 

二つの影が小さくなるにつれて、胸の中に言いようのない感情が広がっていった。

 

ウソノワールは、ニジーをどうするんだろう。

 

結果がどうであれ——この人に、どうか幸せな結末が来ますように。

 

祈ることしかできない自分に、少しだけ歯がみしながら、みのるはただ、遠ざかる背中を見つめていた。

 

 

_______________

 

 

 

制服はまだびしょ濡れで、シャツが肌に張り付いて気持ち悪い。

 

でも、そんなことはどうでもよかった。

 

ジェットは少し離れた場所で何かを調べているようだった。

 

「………」

 

「ポチ……」

 

みくるとあんな。

二人の名探偵が、私の前に立っている。

 

ポチタンが心配そうな顔でこちらを見ていた。

 

どんな戦いだったのかは見ていないけれど、余裕のある戦いじゃなかっただろうことは、二人の顔を見ればわかった。

 

——こんな風に、毎回毎回巻き込まれて迷惑をかける。

 

だったら、もう関わらない方がいい。

そう思うのは、自然なことだった。

 

『何もしないで!!』

 

みくるがそう言ったんだ。

 

私はただ、みくるの意思を尊重する。

それだけのこと。

 

こちらから手を引けば、もう二人が苦しむことはない。

そう自分に言い聞かせた。

 

「みのる……さっきのこと……その……」

 

震えた声だった。

言葉を探しているのがわかる。

 

そして、やっと絞り出すように言った。

 

「ごめん……!あんなこと言って……」

 

——やっぱり、みくるは謝るんだ。

優しいから。

 

でも、私は小さく息を吐いた。

これ以上その言葉を聞いたら——きっと、また迷ってしまう。

 

揺らいでしまう。

だから、先に口を開いた。

 

「私……思ったんだ」

 

みくるの言葉を遮るように。

 

みくるの口が止まる。

胸の奥がざわついた。

 

それでも、言う。

 

「みくると私はもう……親友じゃないと思う」

 

みくるの目が、大きく見開かれた。

 

「な……なんで……?」

 

「ポ……ポチ!?」

 

「本当にごめん……!私があんなこと言ったから……だよね!」

 

私はゆっくりと首を振った。

 

「違うよ」

 

声は、驚くほど落ち着いていた。

自分でも不思議なくらいに。

 

「最初から私とみくるは親友じゃなかったと思う」

 

みくるの表情が、固まった。

それでも私は続けた。

 

「みくるには友達がいるし」

 

視線が、自然にみくるの隣へ向く。

 

明智あんな——明るくて、真っ直ぐで、正直で。

 

みくるの隣に立つのが、一番似合う人。

 

「何より、あんなという新しい相棒……親友がいる。良かったじゃん」

 

自分でもわかるくらい、薄い笑みが浮かんでいた。

 

諦めたような、それでいて取り繕った笑顔。

みくるの唇が震えた。

 

「ち……ちが……」

 

「みのる……!」

 

あんなが口を挟んだ。

 

「みくるはずっと——」

 

「これからは」

 

それでも私は遮った。

あんなの言葉を聞きたくなかった。

 

聞いたら——きっと、崩れてしまう。

 

「新しい親友と一緒に『二人で』探偵頑張ってね……」

 

ほんの少し笑った。

諦めの混じった、薄い笑顔。

 

私の幕は、ここで終わりだ。

 

「違う!!」

 

みくるが叫んだ。

 

「そういうことじゃなくて!私はただ……!」

 

でも、声が続かなかった。

みくるは私のことを本当に親友だと思っているのだろうか。

 

本当に——思っていたのだろうか。

 

だから、聞いた。

 

「じゃあなんなの?」

 

みくるの目を、真っ直ぐに見て。

 

「名探偵のくせに、一番近くにいた私の気持ちも理解できなかったんだ」

 

みくるの体が、びくりと震えた。

 

何も言えない。

言葉が出てこない。

 

それでも、私は続けた。

 

「それすら気づけないなんて……」

 

一瞬だけ、間を置いた。

 

言葉を選ぶためじゃない。

ただ——この言葉を言ったら、もう戻れないとわかっていたから。

 

「名探偵失格だね」

 

静寂が、落ちた。

みくるの顔が崩れた。

 

私の胸の奥で、何かが静かに、音もなく砕けた。

 

傷つけたかったわけじゃない。

でも、これでよかったんだ——そう言い聞かせながら、私は視線を逸らす。

 

「………っ………」

 

唇が震えている。

涙が溢れている。

 

「……う……うぅ……」

 

声にならない嗚咽が、みくるの喉から漏れていた。

 

私は——一番言ってはいけない言葉を、言ってしまった。

 

(……ごめん)

 

心の中だけで、そう呟く。

 

でも、もう遅い。

 

私はもう、決めたんだから。

 

そう自分に言い聞かせながら、みくるから視線を逸らす。

 

「ポチぃぃ……」

 

隣でポチタンが泣きそうな顔で私を見つめている。

 

——そんな目で、見ないでほしい。

揺らいでしまうから。

 

「みのる!」

 

あんなの鋭い声が飛んできた。

 

一歩前に出て、真っすぐ私を睨んでいる。

怒っているのは声を聞かなくてもわかった。

 

「今の言葉は……あんまりだよ!!」

 

そうだね。

 

あんまりだよ。

自分でもわかってる。

 

でも、私は何も言わなかった。

 

ただ視線を逸らして——ゆっくりと、背を向けた。

 

もうここにいる理由はない。

 

このまま離れればいい。

それだけだ。

 

「ちょっとみのる!!」

 

一歩、足を踏み出した。

 

その瞬間だった。

——ぐにゃり。

 

「……え」

 

視界が、大きく歪んだ。

 

世界が揺れる。

足元が定まらない。

 

景色がぐらぐらと傾いて、焦点が合わなくなる。

 

(……あれ)

 

体がやけに重い。

頭がぼんやりする。

 

さっきまで確かにあったはずの力が、全身からするすると抜けていく。

 

体が傾くのがわかった。

 

(……まずい)

 

そう思った時には、もう遅かった。

 

足に力が入らない。

ぐらりと体が前へ傾いで——。

 

ドサッ

 

砂浜の上に、力なく崩れ落ちた。

 

冷たい砂の感触が頬に触れる。

 

遠くで、声が聞こえる。

 

「みのる!?……みのる!!」

 

みくるだった。

 

誰かの手が肩を掴んで、体を抱き起こす。

ぼんやりした視界の中に、みくるの顔が近づいてきた。

 

涙でぐしゃぐしゃになった顔。

 

さっきあれだけのことを言ったのに——まだ、そんな顔をしているんだ。

 

「みのる……!大丈夫!?しっかりして……!」

 

声がまだ震えている。

 

そして、もう一つの手が額に触れた。

あんなだった。

 

「……ひどい熱!」

 

「みのる……!」

 

「ポチ……!ポチぃ!!」

 

ポチタンが慌ててジェットを呼びに駆けていく気配がした。

 

あんなの声が聞こえた。

悔しさをにじませた、低い声で。

 

「あの雨の中……ずっとみのるは……!」

 

その言葉が、遠くなっていく。

視界がどんどん暗くなる。

 

体の感覚が、少しずつ薄れていく。

 

(……ああ)

 

頭の中で、ぼんやりと思う。

 

(みくる……)

 

最後に見えたのは。

必死に自分を抱きしめている、みくるの顔だった。

 

あんなこと言ったのに。

突き放したのに。

 

それでもまだ、こんな顔で——こんな手で、抱きしめてくれるんだ。

 

(……やっぱり)

 

胸の奥で、小さく思う。

 

(優しいな……)

 

「おい!どうしたんだ!?」

 

ジェットの声が近づいてくるのがわかった。

でも、それ以上は何も感じなかった。

 

みくるの腕の温もりだけを最後に感じながら、私の意識は静かに、闇の中へと沈んでいった。

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