かわいいホームズの親友ちゃんは、相棒の座を奪われて焦心苦慮   作:くぁwせdrftgyふじこlp

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名探偵の交わる想い

【あんなSide】

 

「完成!」

 

そう声を上げた瞬間、私の頭に電気が走るような衝撃が流れた。

 

目の前に置かれたのは、真っ白なホイップクリームに苺が乗った定番のショートケーキ。

 

だけど、ただのショートケーキじゃなかった。

 

上にはホワイトチョコレートのプレートが飾られていて、そこにはこう書いてあった。

 

[あんな HAPPY BIRTHDAY]

 

「………これって」

 

言葉が、うまく続かなかった。

 

「あんなちゃんの誕生日をお祝いするバースデーケーキだよ」

 

「えっ?」

 

誕生日じゃないのに誕生日ケーキ。

 

頭ではそう理解しながらも、私の視線はケーキから離れられなかった。

 

衝撃を受けたのは、誕生日ケーキだったからというわけじゃない。

 

このケーキ――初めて見た気がしなかった。

 

どこかで、確かに見たことがある。

 

「『雪みたいに積もってるけど、あったかい』って言ってたでしょ?あんなちゃんの誕生日は1月。ふわふわの雪みたいなデコレーションがされてるケーキで、用意してくれたのはお母さん。あんなちゃんの喜ぶ顔を見たくて、こんなケーキにしたんだと思う」

 

「……………」

 

思い出した。

 

これと全く同じ見た目のケーキだったんだ。

私のお母さんが買ってくれた――私の名前が書いてある、たった一つのショートケーキ。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「わあぁぁぁ!はなまる、おいしそう~!」

 

お母さんが買ってきたケーキもたっぷりのホイップクリームに苺が乗ったシンプルなショートケーキだった。

 

だけどそのシンプルさが、かえってケーキとしての存在感を放っていて、見ているだけで食欲がそそられる。

 

「さあ!私も準備するぞ!」

 

「張り切ってるねー」

 

「当たり前でしょ!今日は特別な日にするんだから!」

 

ずっと楽しみにしていた誕生日パーティー。

 

あったかい家でお母さんたちと一緒にケーキを食べて、何気ない夜を過ごす。

 

そんな一日を、私はずっと夢見ていたはずだった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

でも、そんな時間は来なかった。

 

ポチタンが悪いわけじゃない。

だけど、ずっとお母さんと離ればなれになるのは――本当は、つらい。

 

みのるだって普段は笑顔に見えたのに、私に打ち明けてくれた時の表情はつらそうだった。

 

それはそうだよ。

大切な家族とずっとずっと会えないなんて、そんなの、一人だけじゃ耐えられない。

 

みのるやみくるがいなかったら、私はどうなっていたんだろう。

考えたくもない。

 

「食べられなかったんです……」

 

「………」

 

寂しい気持ちを抑えようとしても声が震えてしまう。

 

私を笑顔にしようと作ってくれたケーキなのに、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

 

「誕生日ケーキ、せっかく用意してくれたのに……今お母さんとは、会いたくても会えなくて」

 

「それがあんなちゃんの元気がない理由ね」

 

「え?」

 

そう。

私は寂しい、ずっと寂しい。

 

家族に会いたい。

 

お家に帰りたい。

 

今のみくるたちといる時間が決して嫌というわけじゃないけど――たまに、ふとした瞬間に、お母さんのことを思い出してしまうんだ。

 

「………すみません」

 

言葉が口から漏れた瞬間、自分でも情けないと思った。

 

みんなを助けるはずの探偵が、こんな姿を見せたら幻滅されてしまう。

それでも、つらい感情が溢れて止まらなかった。

 

「どうして謝るの?」

 

「だって私、探偵なのに……困ってる人の力にならなきゃいけないのに……」

 

悔しさと寂しさが混ざり合って涙が溢れた。

頬を伝う涙が床を濡らしていく。

 

困っている人を助けたい――だから私が困っていたら、みんな不安になってしまう。

 

嘘をつくのはダメだってわかってるのに、不安にさせちゃいけないからって嘘をついて誤魔化してしまう。

 

そんな自分が惨めだった。

 

「探偵さんだって、寂しい時はあるんじゃない?」

 

泣いている私を見たくれあさんは、軽蔑も幻滅もせず、微笑みながら溢れている涙を指でそっと拭ってくれた。

 

「あんなちゃんは強いから、みんなに心配かけないように寂しさを隠してしまうんだろうけど――心の煌めきを大切にしてほしいな」

 

「心の……煌めき……」

 

私の心に込められた想い。

その言葉を口の中でゆっくりと繰り返した。

 

「うん。心にある、真っ直ぐな気持ち。楽しいや嬉しいだけじゃない。悲しかったり、寂しいって気持ちだってあるの。無理して抑えることはないわ。心の煌めきは真実だから」

 

「……!」

 

そうなんだ。

ずっと、みんなを心配させてしまうことはあまり言わない方が良いって思ってた。

 

だけど、違うんだ。

ずっと楽しいことや面白いことだけを考えるのが煌めきじゃないんだ。

 

悲しいことや怒りの気持ちも含めて、喜怒哀楽があって、初めて本当の煌めきになる。

 

くれあさんはそう言いたかったんだ。

 

「私はその人の煌めきを知ってケーキを作ってるのよ。楽しい気持ちはもっと楽しくしてあげて、寂しければ、その寂しさを癒してあげたいの」

 

くれあさんの言葉が、じんわりと心の中に響いてくる。

 

ケーキを作るだけじゃなくて、相手の気持ちも考えて癒してあげる。

 

なんて素敵な人なんだろう。

 

私も、もっといろんな人の心を癒してあげられるような名探偵になりたいな――。

 

 

_______________

 

 

 

【るるかSide】

 

「マコトジュエルはこの辺りのはずだが…」

 

ゴウエモンが高い場所に登って周囲を見渡している。

だけど肝心のマコトジュエルはなかなか見つからないらしく、その声にはじわじわと焦りが滲み始めていた。

 

「アルカナ・シャドウ、どうなってるんだ!?アイスを食べに来ただけじゃないだろうな!?」

 

「もちろん」

 

かなり急いでいるみたいだけど、ウソノワールはそこまでせっかちじゃない。

 

今日中にマコトジュエルを手に入れれば良いだけの話で、焦る理由もなかった。

 

私は近くのキッチンカーで買ったアイスを食べながら、のんびりしている。

ゴウエモンの奢りで。

 

それにマコトジュエルのことは、特に心配する必要もない。

 

「だって……」

 

マシュタンは占いの妖精。

彼女の占いに任せれば、ある程度の未来の流れはわかる。

 

「マシュマシュマシュマシュマシュマシュマシュ~!」

 

さっき占ってもらったばかりなのに、ゴウエモンのためにまた水晶を取り出して占ってくれるマシュタン。

 

占う際に必ず小さい帽子を被るところが、なんともかわいらしかった。

 

「見えたわ!望む物が自ずと近づいてくるって占いに出た」

 

「だから待ってる」

 

「むっ……」

 

つまり、マコトジュエルの方からこちらへ近づいてくるということ。

 

無理に探し回って体力を消耗するより、こうして待っている方がずっと効率が良い。

アイスも食べられてマコトジュエルも来るなんて、一石二鳥だと思わない?

 

「アイス食べたら?」

 

「そうだな、そうするか」

 

物わかりが良いところも、私がゴウエモンと一緒にいても不快にならない理由の一つだ。

 

ニジーやアゲセーヌなら絶対に私の言うことを素直に聞くはずがない。

新人の私の提案にも耳を傾けてくれるゴウエモンは、理想の上司だと思う――やってることは別として。

 

「さすがにどら焼きはねぇか。王道はバニラだな、イチゴも捨てがたい」

 

近くのキッチンカーに書かれたメニューを眺めながら、ゴウエモンが悩んでいる。

 

私もアイスを選ぶ時は悩むから、その気持ちはよくわかる。

 

焦らずのんびり行く――それが今の怪盗団ファントムに足りないものだと、私はずっとそう思っていた。

 

「来た、マコトジュエル」

 

ゆっくりアイスの続きを食べようとした瞬間、僅かなマコトジュエルの気配を感じた。

 

視線を向けると、向こうを歩いている親子の姿が見える。

 

女の子の手には、にんじんを持ったウサギの人形が大事そうに抱えられていた。

マコトジュエルの場所は、多分あそこね。

 

「抹茶味に決めたのに!!」

 

タイミングが悪い……。

 

でもマコトジュエルが来たのなら仕方がない。

気持ちを切り替えて、行きましょう。

 

 

_______________

 

 

 

【みくるSide】

 

「たい……りょく………はぁ……つけないと……あぁ!!」

 

強くなるためには体力も必須。

だからランニングも続けないと、ちょっと走っただけですぐにバテてしまう。

 

「待って……みくる……死ぬ……」

 

少し後ろからは、死にかけてる表情でついてくるみのるが。

 

どのくらい走ったかわからないけれど、どちらもとっくに限界だった。

 

「はぁ………はぁ………はぁ………」

 

「もう無理………これ以上動けない……」

 

とうとう限界が来て、二人揃って土手に倒れた。

 

かなりの距離は走ったと思う。

だけど終始フラフラだったから、本当に走れていたかは微妙なところ。

 

でも、頼りになるってこれで合ってるんだっけ?

 

「ちょっと待って、体力と頼りがいってあんまり関係なくない?」

 

「今気づいたのそれ!?」

 

……ごめんなさい、ずっと勘違いしてた。

 

つい張り切ったつもりが、みのるを巻き込んで関係ない特訓をずっと続けていたことに今更後悔した。

 

ということは、どうやって頼りになる探偵になれるかは未だに不明だということ。

 

どうしよう。

 

「ポチ?ポチ~!」

 

ポチタンの鳴き声が、張り詰めていた空気を切り裂くように響いた。

 

「ポチタン?」

 

小さな妖精は何かに気づいたように、落ち着きなく辺りを見回していた。

 

その様子を見た瞬間、嫌な予感がした。

 

まさか――私が言葉にする前に、隣のみのるも同じことを察したらしい。

 

「……まさかマコトジュエルが」

 

その一言で確信した。

また何かが起きている。

 

私たちが立ち止まっている暇なんてない。

 

「すぐにあんなと合流しないと!!」

 

けれど、その勢いは一瞬でしぼんでしまった。

 

脳裏に浮かんだのは、少し前のあんなの表情。

 

いつもみたいな元気な笑顔じゃなく、無理に明るく振る舞おうとしているような、どこか苦しそうな顔。

 

「……あ、でもあんな……なんだかつらそうだったし……」

 

足が止まる。

もしまた同じことになったら。もし私の言葉が届かなかったら。

 

もし私が側にいても何も変わらなかったら。

そんな不安が次々と浮かんできて、胸を重くしていく。

 

「また息が合わなくなっちゃったら……」

 

私は名探偵プリキュアだ。

みんなを導く立場なのに。

 

こんな時に弱気になってどうするんだろう。

それでも、不安は簡単には消えてくれなかった。

 

すると、隣から優しい声が聞こえた。

 

「みくる」

 

その声に顔を向ける。

 

「え?」

 

みのるは私を見つめていた。

どこまでも穏やかな目だった。

 

「大切なのは、側にいてあげること……でしょ?」

 

その言葉を聞いた瞬間、私は息を呑んだ。

 

側にいてあげること。

その言葉は、不思議なくらい真っ直ぐ心に届いた。

 

私は何を悩んでいたんだろう。

何を恐れていたんだろう。

 

あんなの悩みを全部解決しなきゃいけないと思っていた。

正しい言葉を見つけなきゃいけないと思っていた。

 

でも、本当に必要なのはそんなことだったのかな。

 

「あんなが何に悩んでいるのかわからなくても、一人でいるよりはずっとずっと頼りになる」

 

柔らかな声。

だけど、その言葉には不思議な説得力があった。

 

「それだけでもあんなには十分、心の支えになってるはずだから」

 

胸の奥がじんわりと温かくなる。

 

そうだ、私は何度も助けてきた。

 

苦しい時も。

迷った時も。

泣きたくなった時も。

 

私はいつだってみのるの側にいた。

 

特別な言葉を伝えていない時だってある。

それでも、私の存在だけでみのるが救われたことは、何度もあった。

 

なら――あんなも同じようにすればいい。

 

あんなの側に行けばいい。

大切な友達として。

仲間として。

 

ただ一緒にいてあげればいい。

 

「みのる……」

 

「まずはみくるの純粋な気持ちをぶつけてみようよ。大切な仲間として……ね」

 

胸の中の霧が少しずつ晴れていく。

気づけば自然と笑みが浮かんでいた。

 

「………ありがとう」

 

心からそう言った。

みのるは少し照れたように笑う。

 

「どういたしまして!」

 

その笑顔を見ていると、不安ばかり見ていた自分が少し恥ずかしくなった。

 

「ポチポチ!」

 

ポチタンも元気よく声を上げる。

まるで「早く行こう!」と言っているみたいに。

 

「急ごう」

 

迷わずあんなのところへ行く。

 

どんな顔をしていても、どんな言葉が返ってきても、私はあんなの仲間だから。

 

隣を見ると、みのるは先ほど全力で走った影響が残っているらしく、少し肩で息をしていた。

 

「走ったばかりだけど行けそう?」

 

「足ガクガクだけど、頑張るよ」

 

その返事に思わず笑ってしまった。

こんな状況なのに、少しだけ気持ちが軽くなる。

 

大丈夫、一人じゃない。

私には仲間がいる。

あんなにも、そのことを伝えたい。

 

私はみのると共に地面を蹴った。

胸の中にあるのはもう不安じゃない。

 

大切な仲間の元へ向かうという――ただそれだけの、強い想いだった。

 

 

_______________

 

 

 

【あんなSide】

 

「あ、ちょっとすみません」

 

「どうぞ」

 

プリキットボイスメモから着信が入り、その場を離れて通話に出る。

相手はみくるだった。

 

「みくる!」

 

「あんな!」

 

慌てている様子で、所々息が切れている。

 

話を聞くと、ポチタンがマコトジュエルに強く反応したらしい。

 

ポチタンが反応したということは、マコトジュエルに危険が迫っている証拠。

ファントムに狙われているのなら、すぐに向かわないと!

 

「うん……うん。わかった!」

 

短いやり取りを終えて通話を切る。

 

「くれあさん、あの……」

 

「ふふっ。いってらっしゃい」

 

緊張しているということをくれあさんは察してくれたのか、何も聞かずに送り出してくれた。

 

さりげなく気遣いもできるところが、また凄いと思ってしまう。

 

「ありがとうございます!行ってきます!」

 

厨房を出て店を飛び出し、いつもの服に戻りながら私は走り続ける。

 

誰かが困っているのなら、私がそのつらい気持ちを癒してあげるんだ。

 

くれあさんみたいに上手くいかなくても、人の大切な物を盗むファントムなんかに、絶対負けない!

 

「――あんなー!!」

 

遠くから聞き慣れた声が響いた。

向こうから全力で駆けてくる二人の姿が見える。

 

「みくる!みのる!ポチタン!」

 

さっきまでの沈んでいた気持ちが、少し軽くなった気がした。

 

二人は私のところまで来ると、その場で立ち止まる。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」

 

みくるは肩で大きく息をしている。

顔も赤い。

 

かなり無理をして走ってきたのが一目でわかった。

隣のみのるも似たような状態で、足が今にも震えそうになっている。

 

「えっ、何?どうしたの、二人ともそんなに疲れて……」

 

心配になって声をかける。

 

すると、みくるは荒い呼吸を整えながら私を真っ直ぐ見た。

その瞳は少しだけ不安そうで――でもそれ以上に、強い意志が宿っている。

 

「元気が出ないかもしれないけど……頼りないかもしれないけど……」

 

みくるらしくない言葉だった。

いつもならもっと自信を持って話すはずなのに。

 

だからこそ、その言葉には飾りのない本音が詰まっているように感じた。

 

「でも私……いるからね!」

 

「……………!」

 

言葉を失う。

ただそれだけの言葉だった。

 

特別な励ましじゃない。

悩みを解決する魔法の言葉でもない。

 

でも不思議だった。

どうしてだろう、胸の奥に張り付いていた不安が少しずつ溶けていく。

 

私は一人じゃない。

そんな当たり前のことを、改めて思い出した気がした。

 

気づけば自然と笑顔になっていた。

 

「みくる……ありがとう!みくるの顔見たらもっと元気出た!」

 

みくるは少し驚いたような顔をして、それから笑った。

 

そんな様子を見ていると、隣のみのるがどこか満足そうな表情を浮かべる。

 

「ね、大丈夫だったでしょ?」

 

「え、何が?」

 

私が首を傾げると、みのるは意味深に笑った。

けれど答えたのはみくるだった。

 

「……なんでもないよ」

 

どこか照れ隠しをするような声。

二人の間で何か話していたのだろう。

でも、その内容はなんとなく想像できた。

 

きっと私のことだ。

その事実が少しくすぐったくて、嬉しかった。

 

そんな温かな空気を切り裂くように、ポチタンが勢いよく前を指差す。

 

「あっちポチ!」

 

その声で私たちは現実へ引き戻される。

 

そうだった、今は立ち止まっている場合じゃない。

マコトジュエルを取り返さなければならない。

 

私はぐっと拳を握った。

さっきまで感じていた重さは、もうほとんど残っていない。

 

仲間がいてくれる。

それだけで、こんなにも力が湧いてくるなんて。

 

「急ごう!」

 

「うん!」

 

みくるが力強く頷く。

みのるも笑いながら後に続いた。

 

風が頬を撫でる。

その風は、さっきまでよりずっと心地良く感じた。

 

私は仲間たちと共に前を向いて走る。

胸の中にはもう迷いではなく、温かな勇気が灯っていた。

 

 

_______________

 

 

 

【るるかSide】

 

人形はゴウエモンが手に入れた。

やはりマコトジュエルはその人形に宿っている。

 

このまま劇場に帰れば任務完了……といかないのが、私と同じ、プリキュアの存在。

 

「「あっ!」」

 

もうあの妖精が察知したのか、予定よりも早く現場に駆けつけて来た。

 

ポチタン、みくる、あんな、みのる。

いつものメンバーが揃って私とゴウエモンを睨みつける。

 

「来やがったな!」

 

「そのぬいぐるみ、あの子の!」

 

既に面識があったのね。

プリキュアが来た以上、争いは避けられない。

 

アイスを食べて帰りたかったけど、結局はこうなる。

 

「返して!」

 

「ならばオレと勝負だ!」

 

ゴウエモンは扇子を片手に、桜吹雪と共にハンニンダーを呼び出す。

 

「ウソよ覆え!来やがれ、ハンニンダー!」

 

深紅の輝きを放っていたマコトジュエルの欠片は黒く覆われ、ハンニンダーが姿を現した。

 

「ハン、ニン、ダ!」

 

胴体はウサギの姿、持っていたにんじんはバズーカのような大砲に変化していた。

 

「「うん!」」

 

あんなとみくるの二人は互いに頷いた後、ジュエルキュアウォッチを手に変身を開始する。

 

今回はどのくらい成長したのか、まずは様子を見てみましょう。

 

「どんな謎でも、はなまる解決! 名探偵『キュアアンサー』!」

 

「重ねた推理で、笑顔にジャンプ! 名探偵『キュアミスティック』!」

 

「「名探偵プリキュア!!」」

 

名乗りと決めポーズが終わり、戦闘開始。

最初に動いたのはハンニンダー。

 

「ハンニンダー!ハンニンダー!ハンニンダー、ハンニンダー!」

 

ウサギの如く跳躍力を生かしてアンサーとミスティックに接近する。

 

「ダー!」

 

変則的な動きを入れてから、至近距離でパンチを仕掛ける。

 

前の二人だったら食らっていたでしょうけど、今の二人はハンニンダーの攻撃を避けている。

 

「ハ~ンニンダー!!」

 

ハンニンダーは次にバズーカを構え、にんじん形のミサイルを連続で発射した。

 

「ふっ……はっ!」

 

「だぁぁっ!」

 

次々に発射されるミサイルも、アンサーは飛び越えたり蹴り返したりしているし、ミスティックもパンチでミサイルをハンニンダーへ跳ね返している。

 

自分の場所へ返ってくるミサイルには対応できずに、ハンニンダーは被弾。

 

「ハン!?」

 

やはりハンニンダーでは限界がある。

ここは私が一喝入れるとしましょう。

 

「ええいちょこまかと!……うん?」

 

「アイス奢ってもらったから、やるべきことはやる」

 

借りを返すのとはまた違うけれど、奢ってもらってまで何もしないのは少し申し訳ない気持ちにはなる。

 

ハンニンダーが早々に浄化されないうちに、私もさっさと変身を開始した。

 

「オープン、ティアアルカナロッド」

 

自身の服が光に包まれ、黒い衣装に覆われていく。

 

「神秘と秘密で包み込む、『キュアアルカナ・シャドウ』」

 

アルカナロッドを回し、変身は完了。

さあ、迷宮へ誘いましょう。

 

「ダー!ハンニンダー!!」

 

ハンニンダーも起き上がり、さらにミサイルを発射する。

 

「はぁっ!!」

 

アンサーがまた蹴り返す。

だけど、今度はそうはいかない。

 

ハンニンダーに飛んでいくミサイルの前に移動し、アンサーに向けてミサイルをさらに蹴り返した。

 

「うわっ!?」

 

「アンサー!!」

 

かなり強めに蹴ったので、倍近くのスピードが出たままミサイルはアンサーに突っ込んだ。

 

同時に地面に着弾し、爆発が発生する。

 

この早さにも反応できないようでは、まだまだファントムには及ばない。

 

「いいぞアルカナ・シャドウ!流石オレの弟子!」

 

「違うから」

 

マシュタンのツッコミは的確。

 

新人の立場だったはずなのに、いつの間にかゴウエモンの弟子にされている。

なんだかやりづらい。

 

「ハ~ンニンダー!!」

 

そんなやり取りの最中、ハンニンダーは隙を見てアンサーへミサイルを3発撃ち込む。

 

その間にミスティックがアンサーを庇った。

 

「ミスティックリフレクション!」

 

展開されたバリアにミサイルが衝突し、激しい押し合いが始まる。

 

ただ、ミサイルの力は意外と強く、ミスティックはなかなか押し返せずにいた。

 

「くっ……」

 

「しぶといな。さっさと諦めろ!」

 

どんなに責めても折れることのない強い意志に、ゴウエモンが呆れる。

それでもアンサーが立ち上がった。

 

「諦めないよ!」

 

何度傷ついても前に進む。

一体何があの子たちの心を奮わせているのだろうか。

 

恐らく精神力なら、私たちよりも頭一つ抜けている。

 

「だってその人形には、あの子が心から大好きって気持ちや、お母さんの愛情でいっぱいなの!!」

 

どうしてそこまでして多くの人を救いたいの?

 

依頼が来てそれを解決するだけの仕事に、何故そんなに他人に対して思いやる心を持てるの?

 

「心の煌めきが、たくさん詰まってる!!」

 

……私も、かつてはそうだったかもしれない。

 

けど、過去を引きずっていては何も始まらない。

自分の問題は、自分でしか解決できないのだから。

 

あの二人がどんなに大勢の人を助けたとしても、私の気持ちは揺るがない。

 

「ミスティック!」

 

「うん!」

 

アンサーはミスティックの隣に並び、二人でバリアを押さえる。

 

二人から感じるマコトジュエルの気配は、さらに輝きを増していく。

 

「うぅ……たぁぁっ!!」

 

力を振り絞り、ミサイルを全て弾き出した。

 

その僅かな隙を狙って、アンサーとミスティックは動いた。

 

「「オープン!プリキットミラールーペ!」」

 

二人の浄化技、フライング・スペクトルがハンニンダーへと襲いかかる。

 

ポチタンから受け取ったマコトジュエルをミラールーペに装着し、中央の宝石を3回転。

 

「「これが、私たちの答え(アンサー)だ!」」

 

光が弾け、白い鳥が一直線にハンニンダーへと飛び立った。

 

「「プリキュア!フライング・スペクトル!」」

 

白い鳥はハンニンダーを貫き、光が爆散した。

激しい閃光が空高くまで上り、浄化は完了。

 

「「キュアット解決!」」

 

「ハン……ニン……ダーぁぁぁぁ……」

 

消滅したハンニンダーからマコトジュエルが戻り、その欠片は私たちのところではなく、名探偵たちの手に渡った。

 

ポチタンが回収し、戦闘は終了。

周囲の荒らされた場所も全て元に戻り、これ以上戦う必要はなくなった。

 

つまり、任務は失敗。

 

「くっ……やっぱり小豆アイスにするぜ!」

 

ゴウエモンはよくわからない捨て台詞を吐いて撤退した。

 

「アイス分は働いた」

 

「んじゃ、帰りましょ」

 

正確にはにんじんミサイルを蹴り返しただけだけど、細かいことは気にしない。

早く帰ってアイスの続きを食べよう。

 

 

_______________

 

 

 

【みのるSide】

 

うさぎの人形は無事に女の子の手に戻り、一件落着。

 

……グルル

 

すると隣からお腹の鳴る音が聞こえ、みくるの方を見ると顔を赤くしてお腹を押さえていた。

 

「ぐるるーポチ」

 

そりゃあれだけ走り回ったのだから、カロリーの消費も激しいはずだ。

 

私もお腹が空いてきたけれど、生憎ご飯は作っていないし弁当も買っていない。

 

というか、まだ夕食には微妙な時間帯だ。

 

「トレーニングしてたから、お腹空いちゃって……」

 

「トレーニングという名の苦行だね」

 

ほぼ走っただけで1日が終わった。

 

それにトレーニングは毎日続けないと意味がないから、私たちには絶対に無理な話だ。

 

それをプリキュアに変身しただけで身体能力が人外レベルに覚醒するのも意味わからないけど。

 

「ちょうど良かった!」

 

「えっ?」

 

ちょうど良かったとはどういうことだろう。

あんなは微笑んだままで何も理由を言わない。

 

 

_______________

 

 

 

「「「「うわぁ~!!」」」」

 

あんなについて来た場所はパティスリーチュチュ。

 

ジェット先輩とも合流して向かうと、そこにはくれあさんが待っていて、テラスのテーブルには立派なショートケーキが置いてあった。

 

「か…かわいい…!」

 

ケーキの上には私たちの姿をしたかわいらしいマジパンが5つ飾られている。

 

中央のチョコレートのプレートにはなぜかあんなの誕生日を祝う内容が書かれていたが、気にしないことにする。

 

そういえばあんなはジェット先輩のキャンディーの買い出しに行っていたはずだけど、本当は何をしていたんだろう。

 

「くれあさん、これ!」

 

「マジパンで、キュアット探偵事務所のみんなを作ったの。みんなも、あんなちゃんの煌めきだから」

 

「くれあさん……」

 

どうやらくれあさんと何か話していたらしい。

 

あんなの煌めきというのが何なのか詳しくは知らないけれど、きっとあんなの迷いが晴れるきっかけになったのだろう。

 

「ポチタンポチ~!」

 

「うわっ!?ポ…ポーチまで作ってくれたんですね」

 

ポチタンのマジパンに反応したポチタンに、みくるが慌てて口を塞ぐ。

 

やっぱりポチタンにじっとしていることなんてできないよね。

半ば諦めモードの私。

 

「ふふっ、だってとってもかわいいから」

 

くれあさん、絶対気づいているよね?

明らかに動いているポチタンを見ていたし、普通はわざわざポーチの分まで作ろうだなんて思わないから。

 

「キャンディーもおいしいが、このケーキもおいしそうだな!」

 

「王道のショートケーキはいつ見ても綺麗だね……」

 

綺麗な円形に艶のあるクリーム。

プロが作るショートケーキは息が漏れるほどのクオリティーで、見ているだけでよだれが垂れそうになる。

 

「みんなで食べよう!ホールケーキはやっぱり大勢で食べないとね!」

 

「ふふ…………」

 

すっかり元気になったあんなを見て、くれあさんは微笑む。

 

それに続くようにみんなにも笑顔が広がっていった。

 

一人で食べるよりもみんなで食べた方がいいというあんなの言葉はその通りで、ケーキを切った後はまるでパーティーのように盛り上がった。

 

これもくれあさんが言う煌めきの一つなのだろうか。

夕暮れのパティスリーチュチュからは、いつまでも楽しそうな声が響いてくるのだった。

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総合評価:271/評価:9/連載:29話/更新日時:2026年05月31日(日) 22:18 小説情報

名探偵プリキュア!vs 大怪盗プリキュア!(作者:MOZO)(原作:名探偵プリキュア!)

~あらすじ~▼2027年の【マコトミライタウン】に暮らすマジックが得意(?)な少女・蝶野ゆめは、ある日祖母のシルクハットから飛び出してきた不思議な妖精・ポシェタンに導かれて1999年の【まことみらい市】にタイムスリップしてしまう。元の時代に戻るための手掛かりとなる『マコトジュエル』を集めるべく、ゆめは『大怪盗プリキュア』に変身。▼ライバルの『名探偵プリキュア…


総合評価:209/評価:8.5/連載:5話/更新日時:2026年04月27日(月) 22:00 小説情報

名探偵プリキュア! 〜A Memoir White〜(作者:秋葉ばっこ)(原作:名探偵プリキュア!)

 まことみらい市で暮らす少年、工藤(クドウ)新二(シンジ)はバイト生活に明け暮れていた。▼ なんてことはない日常を過ごす傍ら、名探偵プリキュアと怪盗団ファントムの戦いに巻き込まれ、ひょんなことから彼女たちの『おとも妖精』になり行動を共にする羽目に。▼「こんな俺にも、決して譲れないモノってのがあるんだよ」▼ 2027年の未来からタイムスリップしてきたという、明…


総合評価:313/評価:8.67/連載:23話/更新日時:2026年05月29日(金) 22:00 小説情報

森亜るるか、そしてアイスの人(作者:ヒラメもち)(原作:名探偵プリキュア!)

勢いで書いてます。不定期更新のためご了承くださいませ。▼今後どんな危険があろうと、アイスを届けるオリ主です。


総合評価:662/評価:8.73/連載:7話/更新日時:2026年04月26日(日) 00:30 小説情報

環姉妹の真ん中っ子(作者:匿名)(原作:魔法少女まどか☆マギカ)

 環姉妹の真ん中っ子がお姉ちゃんに内緒で魔法少女宗教マギウスの翼に入信する話。▼ 二部未読+アニメ版の設定を都合よく混ぜてます。▼(タグの理由)▼ ガールズラブ→ねむちゃん▼ ガールズラブ+R15→アリナパイセン▼(設定改変について)▼ この小説では魔法少女の因果(魔力)は契約後も増えることがあります。加齢による魔力の衰えとかは特に無いです。▼ そのため、梓…


総合評価:659/評価:8.96/連載:10話/更新日時:2026年05月09日(土) 18:48 小説情報


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