かわいいホームズの親友ちゃんは、相棒の座を奪われて焦心苦慮   作:くぁwせdrftgyふじこlp

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想いを語る親友

【みのるSide】

 

帰りの列車は、行きとはまるで別世界。

 

あれほど賑やかだった車内は、今では静かな寝息だけが流れている。

窓の外を流れる夕焼け色の景色も、誰も見る余裕がないほど、みんな修学旅行三日分の疲れを身体いっぱいに溜め込んでいた。

 

座席にもたれながら、私はぼんやりと窓の外を眺める。

 

ガタン、ゴトン――

 

規則正しいレールの音だけが、静かな車内に響いていた。

 

……本当に、いろいろなことがあった。

楽しかったことも、嬉しかったことも、怖かったことも、全部が混ざり合って、まだ頭の中が整理しきれていない。

 

観覧車で起きたあの事故。

あとほんの少し運が悪ければ、私は今こうして列車に乗ってはいなかったのかもしれない。

 

そう思うだけで、背筋がぞくりと震えた。

幸いにも命に別状はなく、病院へ搬送されることもなかった。

 

けれど、ゴンドラの扉が開き、乗客が転落しかけるという前代未聞の事故だったため、現場には警察や消防が何台も集まり、遊園地全体が一時騒然となっていた。

 

事情聴取も長かった。

事故当時の状況を何度も聞かれ、私が見たこと、感じたことを一つずつ説明する。

 

賠償や慰謝料の話まで出た。

遊園地側は深く頭を下げ、誠意をもって対応してくれた。

 

でも、私はその申し出を断った。

気持ちだけで十分だった。

今回の事故は、誰か一人の責任ではなかったから。

 

後から説明を受けた内容は、まさに不運が幾つも重なった結果だった。

 

想定よりも速く接近した積乱雲。

安全確保のためアトラクションを停止しようとしても、その判断が間に合わないほど急激な天候悪化。

さらに落雷によって配電設備へ電流が流れ、安全装置が作動して観覧車は緊急停止。

 

そして猛烈な突風。

停止したゴンドラは大きく揺れ、その衝撃でドアのロック機構が外れてしまった。

 

一つだけなら事故にはならなかった。

けれど、いくつもの偶然が最悪の形で重なり合い、あの瞬間が生まれてしまった。

 

通常なら大問題になる事故だったらしい。

それでも設備点検や整備そのものには問題はなく、スタッフの対応も適切だったという調査結果になり、今後さらに安全対策を強化するという形で、厳重注意に留まったそうだ。

 

私たち以外にも観覧車には乗客がいたが、幸い全員が無事だった。

 

そして――あの少女。

命懸けで助けた、小さな命。

 

あの子も大きな怪我はなく、無事に救出され、お父さんとお母さんの元へ帰ることができた。

その姿を見た瞬間、張り詰めていた緊張の糸がようやく切れた気がした。

 

『本当になんてお礼を言えばいいか……』

 

お父さんは何度も頭を下げていた。

 

『うちの娘を助けてくださって、本当にありがとうございます……!』

 

お母さんは涙を流しながら私の手を握ってくれた。

 

でも、そんなふうに感謝される資格なんて私にはないと思っていた。

だって、そもそも観覧車に乗らなければ事故は起きなかったのだから。

 

だから私は何度も謝った。

 

『ごめんなさい……』

 

そう口にするたび、二人は首を横に振った。

さらに少女本人まで、少し照れくさそうに笑いながら言った。

 

『私、観覧車が大好きなの!乗せてくれたこと、すごく嬉しかったよ!だから気にしないで!』

 

その笑顔が眩しかった。

あんなに恐い思いをしたのに私を責めるどころか、気にしなくていいと言ってくれる。

 

その優しさが、かえって胸に刺さる。

本当はもっと謝りたかった。

でも、何度も頭を下げ続ければ、せっかく安心した空気まで暗くしてしまう。

 

だから私は、

 

『……ありがとう』

 

それだけ伝えた。

少女も、満面の笑みで手を振ってくれた。

その笑顔を見られただけで、助けて良かったと心の底から思えた。

 

そしてもう一つ。

今回の騒動のきっかけになった、あの女子生徒。

 

先生から相当厳しく叱られたのだろう。

目を真っ赤に腫らし、今にも泣き出しそうな顔で私の前へ来た。

 

『……ご、ごめんなさい……』

 

この数時間ずっと後悔していたのだろうか。

私は少し考えてから、静かに首を振った。

 

『気にしないで』

 

責める気持ちは、不思議となかった。

あの時はお互い感情的になっていた。

 

私だけが悪いわけでもない。

でも、相手だけが悪いわけでもない。

だから、それで終わりにしたかった。

 

その言葉を聞いた彼女は、涙をこぼしながら何度も頭を下げていた。

 

その後、理事長からも注意を受けた。

 

「嫌なことがあったとしても、一人で抱え込んで勝手に行動してはいけません。まずは本部にいる先生へ報告しなさい」

 

その言葉は否定できなかった。

もし私が一人で歩き回らなければ、あの事故には巻き込まれなかったかもしれない。

 

結局、お互い反省すべきところはあったのだ。

だからこそ、もう誰も責める気にはなれなかった。

 

修学旅行自体もどうなるのかは先生たちが後日判断するということなのでまだわからない。

 

あんな事故を起こしてしまったんだ。

来年度の修学旅行はなくなるか規模が縮小されてもおかしくはない。

 

窓の外では、沈みかけた夕日が空を茜色に染めている。

静かに揺れる列車の中で、私は小さく息を吐いた。

 

散々な目に遭った。

でも――あの少女が最後に見せてくれた、あの無邪気な笑顔だけは、何度思い返しても温かかい。

 

命を助けられて、本当に良かった。

そう思えたことだけは、この修学旅行で一番確かな、本物の気持ちだった。

 

「……………」

 

「あの………どうしてここに?」

 

列車に揺られる中、私の席の隣にはなぜかみくるがいた。

一つのクラスで一つの車両として割り当てられているのに、違うクラスのみくるがここにいる。

 

「どうしてって……みのるが心配だから。それと理事長さんに『みのるの隣にいてあげて』って頼まれたの」

 

「あの理事長が?」

 

理事長って生徒のことなんでも見てるんだな…。

私がみくると一番仲が良いことも既に知っていた。

いろんな意味で恐い人だ…。

 

「みのる」

 

「な、何??」

 

「……本当に、無事でよかった」

 

みくるがぽつりと呟く。

その声には、まだ少し震えが残っていた。

 

「心配かけてごめん」

 

「うん、すごく心配した。観覧車から落ちるみのるを見た時……本当に、もう会えないかもしれないって思ったから」

 

私は何も言えず、窓へ視線を落とした。

 

「でも、助けた女の子は笑ってた」

 

「……うん」

 

「その笑顔を見た時ね……私、改めて思ったの」

 

みくるの横顔は、どこか今までよりも大人びて見えた。

夕日がみくるの瞳を優しく照らし出す。

 

「もっと立派な名探偵になりたい」

 

「え……?」

 

「事件を解決するだけじゃない。困っている人を助けて、悲しむ人を一人でも減らせる名探偵。誰かが危険な目に遭う前に気付ける名探偵。そして、みんなが笑顔になれる未来を守れる名探偵。まだ全然力不足だけど、それでも私はそんな名探偵になりたい」

 

その言葉には迷いがなかった。

修学旅行の三日間で、みくるもまた大きく成長したんだ。

私の行動で、みくるは探偵としての在り方を考え直した。

 

みくるはもう立派な名探偵なのにな……。

私なんてまだみくるの隣にすら立てないのに。

 

「みくるなら、きっとなれるよ」

 

「ありがとう」

 

みくる笑顔を見ていると、私まで元気をもらえる。

 

「私もね、今回のことで少し考えたんだ」

 

「うん」

 

「私はプリキュアじゃない」

 

それは変わらない事実。

強い力もない。

必殺技もない。

誰かを一瞬で救えるような特別な力も持っていない。

 

「でも、プリキュアじゃなくてもできることはあるんだって思えた」

 

あの少女を助けようとした時、私はプリキュアじゃなかった。

ただ、自分にできることを必死にやっただけだった。

 

「もちろん怖かったよ。足も震えたし、逃げたくもなった。でも、あの時見捨てたら、私はきっと一生後悔してた」

 

だから動いた。

ただ、それだけだった。

 

「これからも、プリキュアじゃなくても誰かの力になれるなら、私はできることをやりたい」

 

小さなことでもいい。

 

困っている人に声をかけること。

迷子を案内すること。

誰かの話を聞くこと。

 

そんな当たり前のことでも、人を救えるかもしれない。

そう思えた。

 

「それって、すごくみのるらしい」

 

「そうかな?」

 

「うん。プリキュアだから助けるんじゃない。みのるだから助けるんだよ」

 

私はそんな立派な人間じゃない。

 

失敗もするし、怖がることもあるし、逃げたくなることだってある。

 

それでも……

 

「ありがとう」

 

自然とその言葉がこぼれた。

 

「私たち、これからもっと成長しよう」

 

「うん」

 

「私は立派な名探偵になる」

 

「私は……プリキュアじゃなくても、人を助けられる人になる」

 

二人で交わした約束は、とても静かだった。

だけど、その決意は列車の揺れにも負けないくらい強く、私たちの胸に刻まれていく。

 

窓の外では、夕焼けが少しずつ夜へと溶け始めていた。

 

修学旅行は終わる。

けれど、この三日間で得た想いは終わらない。

 

誰かを助けたいという気持ちも。

誰かを笑顔にしたいという願いも。

 

そのすべてを胸に抱きながら、列車は私たちを、それぞれの日常へと運んでいった。

 

 

_______________

 

 

 

三日しか経っていない。

たったそれだけの時間。

 

それなのに、列車を降りて見慣れた街並みを歩いているとずっと昔に帰ってきたような不思議な感覚になる。

 

修学旅行という非日常が、それだけ濃密だったということなのだろう。

 

あっという間だった三日間。

楽しかった思い出も、笑い合った時間も、命の危険を感じた瞬間も、全部が昨日のこととは思えないほど遠く感じる。

 

私たちは自然と、いつもの場所へ足を向けていた。

 

――キュアット探偵事務所

 

初めて訪れた頃は少し緊張していたはずなのに、今では違う。

 

学校でもなく、自分の家でもない。

それでも、帰ってくると安心できる場所。

 

もう一つの「帰る場所」と言ってもいいくらい、私にとって大切な場所になっていた。

 

ジェット先輩は、一人で留守番をしていたはずだ。

きっと今日も研究室に籠もって、新しい発明や機械の開発に夢中になっているんだろう。

 

そんなことを考えながら歩いていると、隣から力の抜けた声が聞こえてきた。

 

「つ……疲れた……」

 

「もうヘトヘト……」

 

みくるとあんなが同時に肩を落とす。

無理もない。

三日間歩き回り、遊園地ではあれだけの騒動があったのだ。

 

身体も心も、限界まで使い切ってしまった。

今すぐベッドへ飛び込んだら、そのまま朝まで起きられない自信がある。

 

私も足は重いし、全身が鉛のようにだるい。

それでもここまで歩いてこられたのは、きっと安心感があったからだ。

 

「ポチポチ!!」

 

元気いっぱいの鳴き声が響く。

視線を下ろすと、ポチタンがずっと私の服にしがみついていた。

 

「ポチタン……そろそろ離れてくれない?」

 

「イヤ!!」

 

即答だった。

学校に到着してから解散し、帰るまでポチタンはずっとこんな調子だった。

 

私から一歩たりとも離れようとしない。

でも、それも当然なのかもしれない。

 

事故があった瞬間、ポチタンは私を助けたくても助けられなかった。

 

正体を隠さなければならない以上、人前で自由に飛び回ることも、大きな声で叫ぶこともできない。

ただ見守ることしかできなかったのだ。

そのもどかしさと恐怖は、きっと私が想像する以上だっただろう。

 

もし立場が逆だったら。

みくるやポチタンが命の危険にさらされているのに、私は何もできず見ているだけ。

 

……そんなの、耐えられる気がしない。

 

「ずっと、みのるのことが心配だったんだね」

 

私はそっとポチタンを抱き上げた。

 

「ありがとう、ポチタン」

 

「ポチ!」

 

ぎゅっと抱きしめると、さっきまで不安そうだった表情がぱっと明るくなる。

 

本当に心配をかけてしまったんだな。

そう思うと申し訳ない気持ちになるけれど、それ以上にこんなにも自分のことを想ってくれる存在がいることが嬉しかった。

 

やがて私たちは事務所の前へ辿り着き、みくるが慣れた手つきでドアノブを回す。

 

――カラン、カラン。

 

ドアベルが軽やかな音を立て、静かな事務所へ私たちの帰宅を知らせた。

 

「お!帰ってきたか!おかえり!」

 

部屋の奥から、聞き慣れた元気な声が飛んできた。

研究室から顔を出したのは、やっぱりジェット先輩だ。

 

「ジェット先輩!ただいま~!」

 

「お土産も買ってきたよ~!」

 

「ポチ~!」

 

ついさっきまで「疲れた」「動けない」と言っていたみくるとあんななのに一斉に駆け寄っていく。

 

……さっきまでの疲労困憊はどこへ行ったの?

人って、嬉しいことがあるとこんなにも元気になれるんだ。

 

私にはあんな元気は残っていない。

今は座れる場所があったら、そのまま眠ってしまいそうなくらいだ。

 

それでもいつもと変わらない事務所の空気。

そのすべてが、「帰ってきた」という実感を静かに運んできてくれる。

 

どうして私は助かったのか。

あの最後の瞬間、私を救ってくれた存在は誰だったのか。

 

その答えはまだ何一つわからない。

けれど、今はそれでいい。

またこうして、大切な仲間たちのいる場所へ帰ってこられた。

その事実だけで十分だった。

 

私は静かに事務所の中へ足を踏み入れ、胸の奥で小さく呟く。

 

――ただいま。

 

その一言は誰にも聞こえなかったけれど、不思議と心だけは、ようやく本当の意味で帰ってきたような温もりに満たされていた。

 

 

_______________

 

 

 

【るるかSide】

 

劇場の玉座の間は重苦しい空気に包まれている。

高い天井から吊るされたシャンデリアの光は淡く揺れ、色鮮やかなステンドグラスを通った光が床を不気味な色に染め上げている。

 

静寂を破ったのは、玉座に腰掛けるウソノワールの低く威圧的な声だった。

 

「約束の時間まであと一ヶ月を切ろうとしているのだが……お前たちはいつになったらマコトジュエルを奪えるのだ……」

 

その一言だけで、場の空気がさらに冷え込む。

ニジーは肩を震わせながら一歩前へ出た。

 

「も、申し訳ありません。名探偵プリキュアが想定よりも手強い連中でして……」

 

ぎっくり腰から復帰したものの、以前のような勢いはすっかり鳴りを潜めている。

言い訳をしているつもりはないのだろうが、声には焦りが滲んでいた。

 

「マコトジュエル集めてるのがジャックだけとか、マジチョベリバ~」

 

アゲセーヌはいつもの軽い口調。

けれど、その表情には余裕がない。

状況が良くないことは、誰もが理解していた。

 

「私も、これからはかなり厳しくなると思う。プリキュアは確実に成長を続けてる。実力では勝ってもなぜか逆転されることが多いから慎重に動く必要がありそうだよ」

 

ジャックはこれまで、実力で数多くのマコトジュエルを集めてきたらしい。

しかし、プリキュアとの戦いを重ねる中で、その能力や戦い方も少しずつ変わっていた。

 

今までと同じ作戦が通用するかどうか。

それは本人が一番理解していた。

 

「まだ14個くらいしか集められてないんだろ?世界を嘘で覆うには、まだまだ足りねぇぜ」

 

ゴウエモンの言葉に反論する者はいなかった。

現状は誰の目にも明らかだ。

 

そして、玉座の間に再びウソノワールの声が響く。

 

「なんとしてでも約束の日までに、マコトジュエルを多く持って来るのだ!」

 

その命令には、有無を言わせぬ重みがあった。

 

「「「「「ライライサー!!」」」」」

 

ニジー、アゲセーヌ、ジャック、ゴウエモン、マシュタンの声が揃う。

 

私はその声の輪には加わらなかった。

静かに立ったまま、玉座を見つめる。

 

私には、あの掛け声を口にする気にはなれない。

それでも、この状況が良くないことだけは理解していた。

 

約束の日まで、残り一ヶ月。

その期限は、私たち全員の首に巻かれた見えない鎖のようなものだった。

 

成果を出せなければどうなるのか。

誰も口にはしない。

けれど、想像することはできる。

 

ウソノワールが、失敗を笑って許すような人物ではないことくらい十分すぎるほどわかっていた。

 

私も例外ではない。

少しでも多くのマコトジュエルを持ち帰らなければ、厄介なことになるのは目に見えている。

 

しかし、その前に立ちはだかる存在がいる。

 

名探偵プリキュア。

小林みくると明智あんな。

 

あの二人は、私たちがマコトジュエルを回収する度に現れ、その計画を何度も阻止してきた。

奪ったはずのマコトジュエルが取り返されたことは一度や二度ではない。

 

偶然では済まされない。

確実に私たちの行動を読まれ始めている。

 

そして――もう一つ。

私の脳裏に浮かぶのは、あの少女の姿だった。

 

花崎みのる。

修学旅行で救ったあの子。

あの時、私は正体を隠したまま助けるしかなかった。

 

そして私たちが集めているマコトジュエル。

しかし、あのマコトジュエルだけは絶対に使わせてはいけない。

 

理由は誰にも話せない。

話すつもりもない。

 

――約束の日まで、あと一ヶ月。

残された時間は、思っている以上に短かった。

 

 

_______________

 

 

 

【あんなSide】

 

事務所へ入り、ふっと肩の力が抜ける。

 

見慣れた木製の床。

壁一面に並ぶ本棚。

机の上には工具や設計図が広がり、部屋の奥からは機械の小さな駆動音が聞こえてくる。

 

たった三日留守にしただけなのに、帰ってきたという安心感が胸いっぱいに広がった。

 

みのるはポチタンにミルクを飲ませ、お腹がいっぱいになったポチタンは眠ってしまった。

 

「ジェット先輩!見て見て!」

 

疲れていたはずのみくるは、さっきまでの様子が嘘だったかのように元気いっぱいだ。

バッグを開けると、中からお土産の袋を次々と取り出し始めた。

 

「これ、犬山城で買ってきたお城もなか!」

 

「これは名古屋港水族館限定のお菓子!」

 

「あと、これもかわいかったから買っちゃった!」

 

机の上はあっという間にお土産でいっぱいになる。

ジェット先輩も興味津々で身を乗り出した。

 

「おお!結構いろいろ買ってきたんだな!」

 

「修学旅行だからね!」

 

みくるは得意げに胸を張る。

その隣では、みのるも控えめに袋を差し出した。

 

「ジェット先輩。これ、少ないけど……」

 

「お、ボクにもか?ありがとな!」

 

ジェット先輩は嬉しそうに受け取り、何度も頷いている。

そんな様子を見ていると、私まで嬉しくなってくる。

 

「私はこれ!」

 

私も自分の袋から一つ取り出した。

細長い箱を見たジェット先輩は首を傾げる。

 

「ん?これは何だ?」

 

「守口漬!」

 

「……守口漬??」

 

聞き慣れない名前だったのか、ジェット先輩は理解できていない様子。

 

「名古屋名物の漬物だよ!」

 

「へぇ、漬物か」

 

「わぁ、細長い!」

 

袋から取り出された守口漬は、名前の通り細長く、独特の飴色をしていた。

 

「すごく長い大根なんだよ!」

 

「……確かに長いな」

 

「長いでしょ!」

 

ただ、ジェット先輩の反応はいまいちだった。

なんとなく理由は予想できる。

 

「というか、漬物一本をそのまま持って帰ってきたのか?」

 

「うん!多分おいしいと思うよ?」

 

「いや、おいしいかどうかじゃなくてな……普通もっとこう……かわいいお菓子とかあるだろ」

 

やっぱりそうだよね。

みんなお菓子とか買ってるのに私だけ意外なものを買ってきたんだから。

一応他の場所ではちょっとしたお菓子は買ったけど、守口漬が目立ちすぎている。

 

「買ったよ?」

 

「あるのか?」

 

「でも何を買っていいのかわからなかったから!」

 

「だからってこれを選ぶのは渋すぎるだろ!?」

 

ジェット先輩のツッコミにみくるは吹き出し、みのるは苦笑いを浮かべている。

なんか恥ずかしい…。

 

「だって気になったんだもん」

 

「その好奇心は探偵向きなんだろうけどなぁ。あとでちゃんと食べてみるよ」

 

「うん!」

 

そう言ってもらえると嬉しい。

どうなることかと思ったけど、微妙な反応じゃなくて良かった。

 

事務所には久しぶりの賑やかな空気が戻っている。

修学旅行の出来事を話し、お土産を見せ合い、みんなで笑う。

それだけで、ようやく日常に帰ってきたんだと実感できる。

 

すると、不意にジェット先輩が「あっ」と何かを思い出したように声を上げた。

 

「そういえば、お前たちが修学旅行に行ってる間に依頼の手紙が届いてたぞ」

 

「依頼?」

 

ジェット先輩は机の引き出しを開け、一枚の封筒を取り出した。

白い封筒には、丁寧な字で『キュアット探偵事務所御中』と書かれている。

 

その場の空気が、さっきまでの和やかさから少し引き締まった。

 

修学旅行は終わった。

しかし今、新しい依頼が、私たちを次の出来事へと導こうとしていた。

 

名探偵への道はまだまだ続く。




大変お待たせいたしました。これにて決意の修学旅行編完結となります。大分遅れてしまいましたが、アニメの20話から先の「忘却のプリキュア編」(キュアエクレール編)に入ります。

この先何回かオリジナルストーリーを挟むと思いますが、必ず完結させるつもりですのでご理解頂けたら幸いです。
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