かわいいホームズの親友ちゃんは、相棒の座を奪われて焦心苦慮   作:くぁwせdrftgyふじこlp

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続・探偵エリーの事件簿!?

【るるかSide】

 

事務所の中が突然騒がしくなった。

何があったのかと視線を向ければ、さっきまであんなと話していた女性が、慌ただしく事務所から飛び出していくところだった。

 

普通の帰り方ではない。

何かから逃げるような勢いで駆け出していく女性、そのすぐ後ろから、もう一人の女性が姿を現した。

 

……同じ顔。

髪型も服装も、何もかもが瓜二つだった。

 

後から出てきた女性自身も、目の前を走っていくもう一人の自分を見て目を丸くしている。

 

「え、私!?」

 

まあ、驚くのも当然でしょうね。

自分と全く同じ姿をした人間が突然目の前を走っていけば、普通ならそういう反応になる。

 

「きっと怪盗団ファントム!」

 

その言葉を聞いても、私はそこまで驚かなかった。

怪盗団ファントムには変装を得意としている者が多い。

 

ゴウエモンを除けば、ほぼ全員が変装の技術を持っているのだから、誰かが別人になりすまして事務所へ忍び込んでいたとしても不思議ではない。

 

……あと、私がマコトジュエルを回収するはずなのに。

 

そんなことを考えている間にも、事務所の騒ぎはさらに大きくなっていく。

 

「私の携帯!?」

 

逃げていく女性の手元を見ると、そこにはストラップ付きの携帯電話がしっかりと握られていた。

どうやら奪うこと自体には成功したらしい。

 

けれど、これでは盗みが成功したとは言い難い。

変装は完全に見破られ、正体まで疑われている。

 

気づかれないように持ち去るどころか、強奪しているようなものだった。

 

「みくる!あんな!この人はアゲセーヌだよ!!」

 

「「え!?」」

 

「いつの間にか変装して事務所に忍び込んでたみたいだ!すぐに追いかけるぞ!」

 

やっぱり逃げているのはアゲセーヌ。

私は走り去っていくその背中を眺めながら、呆れたように息を吐く。

 

もう少しボロが出ないように努力した方が良いのに。

せっかく変装して事務所の中にまで忍び込めたというのに、最後には正体が割れて追いかけられている。

それでは変装した意味がほとんどない。

 

もっとも、本人はそんなことを気にしていなさそうだけど。

 

「また強引に盗んで。正体もバレちゃってるし…アゲセーヌったら」

 

「ゲットっしょ!チョベリグ~!」

 

……本当に気にしていないみたい。

確かに、目的の物を盗むというところまでは成功している。

 

けれど、盗んだことを気づかれている状態では、その後が問題になる。

 

相手は名探偵プリキュアだ。

このまま何事もなく振り切るのが容易ではないことくらい、アゲセーヌ自身も理解しているはず。

 

ましてや、そのまま劇場へ戻るわけにもいかない。

追跡されたまま帰れば、怪盗団ファントムの居場所を特定される可能性がある。

それは絶対に避けなければならない。

 

かといって、追いかけてくるプリキュアを完全に振り切れるとも限らない。

そうなれば、結局やることは一つ。

 

ハンニンダーを召還して戦う。

いつもと同じ流れになる。

 

そして、これまで何度も見てきた結果も頭に浮かぶ。

ハンニンダーを召還してプリキュアと戦い、最終的には浄化される。

そうしてマコトジュエルを持ち帰ることができず、任務は失敗に終わる。

 

恐らく今回も同じ流れでしょう。

逃げていくアゲセーヌと、その後を追おうとする者たちを眺めながら、私は静かに考える。

 

それでも、失敗していいわけではない。

怪盗団ファントムはマコトジュエルを手に入れなければならない。

このまま回収できない状況が続けば、こちらが不利になっていくだけなのだから。

 

 

_______________

 

 

 

【みのるSide】

 

アゲセーヌを追いかけて事務所を飛び出し、そのまま街中まで走ってきた。

けれど、こういう時になると嫌でも自分の体力の無さを思い知らされる。

 

「はぁ……はぁ……」

 

みんなに置いていかれないよう必死に足を動かしているだけなのに、呼吸はすっかり乱れていた。

胸が激しく上下し、足も少しずつ重くなってくる。

 

それでも立ち止まるわけにはいかない。

息を整えながら、私は必死にみんなについて行った。

 

「ファントムはどこ行った!?」

 

路地を曲がり、その先にある大通りへ飛び出す。

けれど――そこにアゲセーヌの姿はなかった。

 

さっきまで確かに前を走っていたはずなのに、影も形もない。

私は息を切らしながら周囲を見回す。

 

おかしい。

私たちの視界からアゲセーヌが消れたのは、ほんの僅かな時間だった。

その一瞬だけで完全に逃げ切るなんて、いくら妖精でも難しいはず。

 

それに大通りには、身を隠せそうな障害物もそれほど多くない。

だとしたら、考えられることは一つ。

 

「また誰かに変装したのかも!エリザさんのペンの時と一緒だ!」

 

以前、エリザさんのペンを盗んだニジーが使った方法。

あの時のニジーは私たちから逃げている途中、ほんの僅かに視界から消れた隙を利用して別人へ変装した。

そして何食わぬ顔で一般人に紛れ込み、私たちをやり過ごそうとしていた。

 

今回のアゲセーヌも同じ手を使った可能性が高い。

つまり、今この大通りを歩いている誰かがアゲセーヌかもしれない。

 

「あの時は電波が繋がらないのを知らずに、携帯で話している人がいて犯人だってわかった。今回は通信障害じゃないし、携帯で話している人が犯人ってわけにはいかない」

 

「それに街の中だから人通りも多い。以前より格段に難易度が上がってる」

 

しかし、今回は大通りで人通りは多い。

道を歩く人、店から出てくる人、立ち止まって話をしている人。

その中には携帯電話を耳に当てている人も何人かいる。

 

以前のような電波障害が起きているわけではない。

だから、携帯電話で話しているというだけでは何の手がかりにもならない。

そしてこの人数を一人ずつ調べるなんて不可能だ。

 

どうする……?

何かアゲセーヌだけを見分ける方法があれば――。

 

「携帯で話している人……そうだ!」

 

「?」

 

突然エリザさんが声を上げる。

私たちがどうやってアゲセーヌを探し出すべきか悩んでいる中、エリザさんだけは表情を変えていない。

むしろ何かを思いついたように見える。

 

「犯人がわかるかも!」

 

「「「「え!?」」」」

 

この状況で?

これだけ人がいる中から、誰に変装したのかもわからないアゲセーヌを見つけられるというのだろうか。

 

さすが、推理小説を書いているだけあって発想力は高い。

ただ探偵を目指したいと言っているだけではないらしい。こういう状況ですぐに手がかりを見つけられるあたり、しっかりと実力もついているようだった。

 

「私に任せて!」

 

「ファントムがわかるって!?」

 

「どうやって?」

 

この人混みの中からアゲセーヌが変装している人物だけを探し出すのは難しい。

 

でも、それは全員をしらみ潰しに調べた場合の話だ。

 

エリザさんのペンが盗まれた時だってそうだった。

犯人にしか当てはまらない条件や手がかりさえ見つけられれば、人数がどれだけ多くても対象を一発で特定することは難しくない。

 

「私のペンが盗られた時と逆だよ!」

 

「逆?」

 

「あの時は電波障害で携帯は繋がらなかった。でも今は繋がる!」

 

その言葉を聞いて、私も気づいた。

そういうことか。

 

今回、通信障害は起きていない。

そしてもう一つ、アゲセーヌが盗んだ物は――携帯電話。

 

この二つを組み合わせれば、アゲセーヌが誰に変装しているのかを特定できる。

 

「だからファントムが持っていった辺見さんの携帯に電話すれば!」

 

エリザさんはすぐに自分の携帯電話を取り出した。

そして操作し、頼子さんの携帯電話へ電波を発信する。

 

アゲセーヌが盗んだ携帯電話を今も持っているのなら、当然そこへ着信が入る。

そして、この人混みのどこかから着信音が鳴るはず。

 

姿を変えることはできても、持っている携帯電話まで別物になるわけじゃない。

鳴った音を辿れば、アゲセーヌが変装している人物を見つけられる。

エリザさんは、それを利用しようと考えたのだ。

 

――ピピピピピピ……

 

「「!!」」

 

微かな電子音が聞こえた。

確かに今、私たちの背後から携帯電話の着信音が聞こえてきた。

 

エリザさんの作戦は成功したんだ。

私は耳を澄ませながら、周囲にいる人たちへ視線を向ける。

 

あのラブラブなカップルは違う。

二人とも特に変わった様子はなく、着信音もそちらから聞こえているわけではない。

 

近くにいる学生たちでもない。

道を歩いている通行人たちからも音は聞こえなかった。

 

それなら――視線を動かした先、大通りの側に設置されたベンチが目に入った。

そこにはスーツ姿の男性が一人で座っている。

 

……聞こえた、間違いない。

着信音はあの男性のところから聞こえている。

 

けれど、男性は何事も起きていないようにベンチでくつろいでいた。

携帯電話が鳴っているというのに、ポケットを探ることもなければ、画面を確認しようとする素振りすらない。

 

普通、自分の持っている携帯が鳴ったら少しくらい反応するはず。

それなのに、まるで聞こえていないふりをしている。

 

なんとなく不自然さが目立つ。

エリザさんも同じことに気づいたらしい。

足を止めることなく男性のもとへ向かうと、その正面に立った。

 

そして迷うことなく人差し指を向ける。

 

「携帯を盗んだ犯人は……いえ、ファントムはあなたです!」

 

「うっ……!?」

 

男性の表情が明らかに変わった。

ファントムだと見破られたことへの衝撃が、その顔にはっきりと表れている。

 

これだけ人が多い場所だ。

誰かに変装して紛れ込んでしまえば、簡単には見つからないと思っていたのだろう。

 

しかし、自分の正体を見破ったのはプリキュアですらない一般人。

それは完全に予想外だったらしい。

 

「………はぁ、マジチョベリバ……」

 

その言葉で、もう答え合わせをする必要すらなくなった。

間違いなくアゲセーヌだ。

 

「ほら!犯人見つけたよ!これでテスト合格~!」

 

正体を見破ったエリザさんたちは、目の前にアゲセーヌがいることよりも犯人を見つけられたことの方が嬉しいらしい。

アゲセーヌをそっちのけにして喜び始めてしまった。

 

……敵が目の前にいるんだけど。

さすがに我慢の限界だったのか、スーツ姿の男性は変装を解く。

 

見慣れたアゲセーヌの姿へ戻ると、怒ったように声を上げた。

 

「アタシを無視してアガってんじゃないし!」

 

「「「あ……」」」

 

敵を前にしてなんて無防備な……。

悪く言えば危機感が足りない。

でも、それがこの子たちの良いところでもあるのかもしれない。

 

そんなやり取りの中、アゲセーヌはいつもの流れに移った。

 

「ウソよ覆え!チョベリグにしちゃって~、ハンニンダー!」

 

盗んだ携帯電話の横に、黄色いハイビスカスが飾られる。

そしてストラップに宿っていたマコトジュエルから、異形の存在が姿を現した。

 

「ハン、ニン、ダー!!ハッハッハ~!!」

 

……何に対して笑ってるの?

 

現れたハンニンダーが身につけているのは探偵エリーの服装。

元になったストラップはあんなに可愛らしかったのに、見るも無惨な姿になってしまった。

 

「探偵には探偵っしょ!」

 

「ダ~?」

 

アゲセーヌの言葉と同時に、周囲の景色が変化した。

ハンニンダーが現れたことで結界が展開され、私たちは周囲の世界から隔離された空間に包まれる。

 

さっきまで大勢いた通行人たちの姿が消えていく。

そして、すぐ近くにいたエリザさんの姿も消えてしまった。

 

残されたのは、私たちとアゲセーヌ、そしてハンニンダー。

 

「あんな!」

 

「うん!」

 

人がいなくなったのなら、周囲に気を遣う必要もない。

戦闘の舞台が整ったことで、みくるとあんなは胸元にあるジュエルキュアウォッチのペンダントを掴んだ。

 

「「オープン!ジュエルキュアウォッチ!」」

 

二人の服がみるみるうちに変わっていく。

光に包まれながら、装飾の施されたフリフリの衣装が二人の身体を包み込んだ。

 

……今さらだけど、よくこんな動きにくそうな服で派手な戦闘ができるよね。

見た目だけなら、とても戦うための衣装には思えない。

私はプリキュアじゃないから、実際に着たらどんな感覚なのかは知らないけど。

 

変身を終えた二人が、それぞれ堂々と構える。

 

「どんな謎でもはなまる解決!名探偵、キュアアンサー!」

 

「重ねた推理で笑顔にジャンプ!名探偵、キュアミスティック!」

 

そして二人の声が重なる。

 

「「名探偵プリキュア!」」

 

名乗りと決めポーズが終わった。

その直後、二人は同時に地面を蹴る。

 

迎え撃つようにハンニンダーも動き出した。

プリキュアとハンニンダーが激しくぶつかり合い、その衝撃で足元から砂埃が舞い上がる。

 

「ファントムも懲りないよね…何度も負けてるのにまたハンニンダーを呼ぶなんて」

 

ハンニンダーといってもピンチになるほど大苦戦したのは虹ケ浜で戦ったハンニンダーくらいであり、それ以外のハンニンダーは多少押されることはあっても最終的に逆転して負けている。

何度も召還して倒されるのなら呼び出す意味がないのではと思ってしまう。

 

「アゲセーヌたちが戦闘向きじゃないからだろ?ジャックは一度もハンニンダーを呼んだことがないし」

 

「確かに。ジャックだけ一度もハンニンダーを呼んでない」

 

ジャックはそもそもハンニンダーを呼び出す必要もない。ジャック自身が強いから、ハンニンダーを呼び出しても逆に足を引っ張られることになる。

 

そう考えると戦闘面ではプリキュアに対抗できるほどの力がない幹部たちはハンニンダーが唯一の対抗手段なんだ。

 

「ハンニンダー!!」

 

「ミスティックリフレクション!」

 

ハンニンダーが持っているルーペからレーザーが射出され、ミスティックがバリアを展開して直撃を阻止。

 

そしてミスティックの後ろからアンサーが飛び出し、隙を突いて攻撃を仕掛けた。

 

「アンサーアタック!」

 

「ダー!!?」

 

アンサーのパンチを受けてぶっ飛ばされたハンニンダーは地面に叩きつけられた。

やはり二人の連携にはハンニンダーも対応しきれていない。

 

「ストラップを返して!」

 

マコトジュエルを返すよう迫るアンサーに、アゲセーヌも言い返す。

 

「そっちこそ写真返すし!あれアゲが撮った写真だし!」

 

「写真?」

 

「さっき事務所で見た写真!」

 

変装してた時に写真を見て反応したのは見間違いじゃなかった。

やっぱりアゲセーヌの写真だったんだ。

 

ということは、あの蝶の正体を知っているのかもしれない。

しかし、アゲセーヌの口から出たのは予想外のことだった。

 

「青い蝶の写真?」

 

「はぁ?あれプリキュアっしょ?」

 

「え!?」

 

プリキュア……あの写真がプリキュア?

 

一瞬頭の中がおかしくなる。

アンサー、ミスティック、アルカナ・シャドウの他にもプリキュアがいるということなのか?

 

「あの写真がプリキュア!?」

 

「プリキュアがもう一人……!?ロンドンの事務所も把握してないぞ!?」

 

「ポチ!」

 

「ジェット先輩も知らないなんて……」

 

ロンドンの事務所すら知らない正体不明のプリキュア。

まだアルカナ・シャドウやジャックの詳しい情報がないのにさらに謎が増えてしまった。

これほど過去について知りたいと思ったのは初めてだ。

 

「ちょーウケる!何も知らないの?」

 

私たちの中にあの青いプリキュアを知っている人が一人もいないとわかると、アゲセーヌは煽るように笑った。

 

でも、写真を撮った本人なら話は別だ。

アゲセーヌ自身があの場にいたのなら、写真に写っている青い蝶がどんな存在だったのか、実際に目撃しているかもしれない。

 

「ちょーデカいマコトジュエルを手に入れようとした時に……」

 

それは、ウソノワールが巨大なマコトジュエルを奪おうとした頃の話だった。

 

 

――――――

 

 

「ウソノワール様がマコトジュエルを盗った!チョベリグ記念っしょ!」

 

巨大なマコトジュエルへ手を触れようとしているウソノワール。

その瞬間を記念に残そうとしたアゲセーヌは、少し離れた場所からカメラを構えていた。

 

ウソノワールがマコトジュエルを手に入れる瞬間を撮影する。

ただ、それだけのはずだった。

 

しかし――

 

「うわああぁぁぁ!?」

 

突然、アゲセーヌの真横を何かが猛烈な速度で駆け抜けた。

 

青い蝶。

一瞬だけ視界に映ったそれは、そうとしか表現できないほど速かった。

 

あまりにも突然の出来事に驚き、その拍子にカメラのシャッターが切られる。

そして青い何かが駆け抜けた勢いで突風が発生した。

 

まともに風を受けたアゲセーヌの身体が吹き飛ばされ、そのまま湖へと落ちていく。

 

けれど、水面へ叩きつけられるまでの僅かな時間。

アゲセーヌは確かにその姿を視界に捉えていた。

 

「……!!………プリキュア…!?」

 

蝶ではなかった。

少女だった。

 

今のアンサーやミスティックと似たような衣装を身につけた、青い少女。

 

その姿を見ただけで、アゲセーヌにはわかったらしい。

あれはプリキュアなのだと。

 

偶然シャッターが切られたことで撮影された写真はそのまま現像され、しばらく空中を漂った。

そして風に運ばれながら、取水塔へと繋がる橋の上へ落ちていった。

 

 

――――――

 

 

これが、あの写真の真実だった。

ずっと取水塔に残されていた一枚の写真。

 

事件の証拠品なのかどうかすらわからなかったものが、まさかアゲセーヌが偶然撮影した写真だったなんて。

 

……思ったんだけど、現場に証拠品を残すって怪盗として致命的なミスなんじゃないの?

そのことについて怒られなかったのかな?

 

まあ、それはともかく。

話を整理すると、その青いプリキュアが巨大なマコトジュエルを使おうとしていたウソノワールの前に現れ、ギリギリのところで阻止したということになる。

 

でも、やっぱりわからない。

そのプリキュアは誰なんだろう。

 

今はどこにいるのだろうか。

それとも、もういないのだろうか。

 

「ってアイツがまた出るとか、マジちょーヤバいっしょ!」

 

「「え?」」

 

……また出る?

今、確かにそう言った。

 

アイツが『また出る』。

つまり――あの写真に写っている青いプリキュアが、再び姿を現すということ?

 

アゲセーヌの口から、次々と新しい情報が流れ出してくる。

その表情にはさっきまでの余裕がなかった。

 

かなり焦っている。

少なくとも、今話したことが嘘には見えない。

 

それだけ焦っているということは、あの青いプリキュアは余程強いのだろうか。

もっと詳しく聞けば、何かわかるかもしれない。

 

そう思った時だった。

 

「喋りすぎ」

 

「「!!」」

 

突然、上から声が降ってきた。

直後、私たちとアゲセーヌの間に一つの影が飛び込んでくる。

 

るるかさんだった。

私たちには何も言わない。

 

事情を説明することもなければ、何かを問いかけることもない。

そのまま、いきなり変身を始めた。

 

「オープン、ティアアルカナロッド」

 

るるかさんの姿が変化していく。

アンサーやミスティックと同じように、その身体が神秘的な衣装に包まれる。

 

ただし、二人とは違う。

黒を基調とした、どこか秘密めいた雰囲気を感じさせる姿。

 

そして変身を終えたプリキュアが静かに名乗った。

 

「神秘と秘密で包み込む、キュアアルカナ・シャドウ」

 

さっきまでアゲセーヌから青いプリキュアについて話を聞いていたはずなのに、展開が流れ作業のように次々と変わっていく。

 

そのせいで――

 

「ハンニンダー……」

 

……ハンニンダーは完全に蚊帳の外になってる。

召還されて戦っていたはずのハンニンダーなのに、誰からも相手にされていない。

 

けれど、アルカナ・シャドウにとってもハンニンダーは眼中にないらしい。

視線は最初からアンサーとミスティックだけに向けられていた。

 

そして何の前振りもなく、アルカナ・シャドウが二人へ蹴りを放つ。

突然の攻撃に、アンサーとミスティックはすぐさま後方へ退いた。

 

一定の距離を取った二人は構えを崩さず、アルカナ・シャドウの次の動きを警戒していた。

 

「プリキュアって!」

 

「どういうことなの!?」

 

アンサーとミスティックがアルカナ・シャドウに問いかける。

二人が気になっているのは、もちろんさっきアゲセーヌの口から突然出てきた、新たなプリキュアの存在だ。

 

私だって気になる。

写真に写っていた青い蝶。

その正体がプリキュアで、しかもアゲセーヌの話では再び現れるらしい。

 

同じプリキュアであるアルカナ・シャドウなら、何か知っているかもしれない。

 

「さぁ?誰がなったのかもわからない。ただ、一度だけあの時…マコトジュエルと一緒に消え失せた。だから、二度と現れない」

 

アルカナ・シャドウはそれだけ答えた。

そして話は終わりだと言わんばかりに、再びアルカナロッドを振り抜いて攻撃を仕掛ける。

 

誰がプリキュアになったのかはわからない。

アルカナ・シャドウはそう言った。

 

でも――私はそうは思わなかった。

 

多分、アルカナ・シャドウは知っている。

新たなプリキュアが誰なのかを。

 

ここ最近のアルカナ・シャドウは、初めて私たちの前に姿を見せた頃とは少し違う。

どこか焦っているように見える。

 

その理由はきっと、アンサーとミスティックがるるかさんの真相に少しずつ足を踏み入れ始めているからだろう。

 

知られたくない何かがある。

だからこそ、必死に隠そうとしているように感じる。

 

「アルカナスターレイン」

 

「「きゃああっ!!」」

 

強力なレーザーが広範囲へ降り注いだ。

アンサーとミスティックは回避しようとするものの、範囲が広すぎる。

避けきれなかった攻撃をまともに受け、二人の身体が弾き飛ばされた。

 

「あなたたちは何も知る必要はない」

 

冷たく言い放つ。

やっぱり、何かを隠している。

 

「そうよ!キュアエクレールのことなんて、知る必要ないわ!」

 

「「え?」」

 

今の言葉は、そこにいたマシュタンから出てきた。

また新しい情報が出てきたんだけど……。

 

キュアエクレール。

エクレールはフランス語で「閃光」「稲妻」を意味している。

そして何より重要なのは、マシュタンがそのプリキュアの名前を知っているということ。

 

マシュタンが知っているのなら、アルカナ・シャドウが知らないはずがない。

やっぱり、さっきの「誰が成ったのかもわからない」という言葉は怪しい。

 

「マシュタン?」

 

アルカナ・シャドウが静かにマシュタンを見る。

声自体は落ち着いているのに、妙な圧を感じた。

 

「あ、ごめん」

 

マシュタンも自分が何を言ってしまったのか気づいたらしい。

うっかり口を滑らせたマシュタンに、アルカナ・シャドウは無言の圧をかけ続けている。

 

……まあ、知られたくないことを勝手に話されるのは誰だって嫌だろうし、その気持ちはなんとなくわかる。

 

でも、おかげでこっちは新しい情報を知ることができた。

あの青いプリキュアの名前は、キュアエクレール。

 

「アゲたちのこと忘れるんじゃないし!ハンニンダー!」

 

「ハンニンダー!ダ~」

 

アルカナ・シャドウが乱入してからすっかりほったらかしにされていたアゲセーヌとハンニンダーが、とうとう痺れを切らしたらしい。

戦闘を再開し、ハンニンダーがルーペを構える。

 

けれど、その攻撃が放たれるより早くミスティックが飛び込んだ。

 

「はぁぁぁっ!」

 

「ハアアアッ!?」

 

勢いの乗った飛び蹴りがルーペへ直撃する。

レンズが砕け散り、ハンニンダーの武器が破壊された。

 

さらにその背後にはすでにアンサーが回り込んでいた。

アンサーがハンニンダーの片足を力いっぱい押す。

 

「はあああ!」

 

「ハッ!?ハアアアア!?」

 

片足を崩されたハンニンダーはバランスを失い、そのまま派手に地面へ倒れ込んだ。

 

完全に隙だらけだ。

そして、その瞬間をミスティックが逃すはずもない。

 

「任せて!」

 

ミスティックが前へ出る。

これで決めるつもりだ。

 

ハンニンダーを浄化するため、プリキットミラールーペを取り出す。

戦いを終わらせる浄化技の準備が始まった。

 

「オープン!プリキットミラールーペ!」

 

ミスティックがプリキットミラールーペを構える。

ポチタンからマコトジュエルを受け取ると、それを使って中央の宝石を三回転させた。

 

回転するたびに力が集まり、ミラールーペが眩い光を放ち始める。

そして、以前アンサーが使った時と同じように、ミラールーペの先端から光の剣身が伸びた。

 

形を変えた武器は、一本のレイピアとなる。

ミスティックはそれを高く空へ掲げた。

 

「プリキュア!ミスティックストライク!」

 

レイピアを構えたまま、ミスティックが勢いよく跳び上がる。

そのまま剣先を真っ直ぐハンニンダーへ向けた。

 

「はあああああぁぁぁぁ!!」

 

一閃

光のレイピアがハンニンダーを貫くように振るわれ、辺り一帯が眩い光に包まれた。

 

ハンニンダーには、もう抵抗する術がない。

全身が浄化の光に包み込まれ、あとは消滅するのを待つだけだった。

 

「キュアット解決!」

 

「ハン…ニン…ダッハッハ……」

 

……消える時まで笑ってる。

最初に現れた時も笑っていたけど、何がそんなに面白かったんだろう。

本当に個性的なハンニンダーが多すぎる。

 

浄化されたことで、ストラップに宿っていたマコトジュエルも元の状態へ戻り、それをポチタンが回収する。

これで一件落着。

 

「チョームカつく!!」

 

今回も結局負けてしまったアゲセーヌは悔しそうに撤退していった。

 

それを見届ける間もなく、アルカナ・シャドウとマシュタンも戦闘を止める。

どうやら二人も、これ以上ここにいるつもりはないらしい。

 

「マシュタン」

 

「ええ。帰りましょ」

 

そのまま二人が立ち去ろうとした時。

 

「待って!キュアエクレールって?」

 

アンサーが呼び止める。

当然、気になるよね。

 

さっきマシュタンがうっかり口にした、キュアエクレールという名前。

あの青いプリキュアについて、まだほとんど何もわかっていない。

 

「これ以上あなたたちには何も教えないわ!」

 

マシュタンもこれ以上は話すつもりがないらしい。

さっきの失言でアルカナ・シャドウから圧をかけられたばかりだ。

今度こそ余計なことは言わないようにするんだろう。

 

……と思ったのに。

 

「それより、あなたの部屋のカーテン、気にした方がいいんじゃない?」

 

「え?」

 

「るるかの部屋だった時はもっとおしゃれだったわ!」

 

……今度は急に部屋のセンスをディスり始めた。

でも、私が気になったのはそこじゃない。

今、さらっとものすごく重要なことを言わなかった?

 

『るるかの部屋だった時』

 

つまり――今あんながいるあの部屋は、元々るるかさんが寝泊まりしていた部屋だったということ?

 

「マシュタン」

 

るるかさんの声が響く。

さっきよりも強い圧を感じた。

 

「あ、ごめん、つい……。もうお口にチャックね…!」

 

マシュタンは自分がまた失言したことに気づいたらしい。

これ以上余計なことを言われる前に帰ろうと思ったのか、るるかさんはマシュタンと一緒にその場を離れていった。

 

二人の姿が消える。

同時に結界も解けていき、隔離されていた街が元の状態へ戻った。

さっきまで消えていた大勢の人たちが再び現れ、いつもの大通りの光景が戻ってくる。

 

でも、私たちはすぐには動けなかった。

青いプリキュア。

キュアエクレール。

そして、今あんなが使っている部屋が元々るるかさんの部屋だったという事実。

 

短い時間の中で知らなかった情報が次々と飛び出してきて、頭の整理が追いつかない。

しばらくの間、私たちはその場で呆然と立ち尽くしていた。

 

「るるかさんの部屋だったの……?」

 

アンサーの小さな呟きだけが、風に乗って流されていった。

 

 

_______________

 

 

 

【ジャックSide】

 

「ふーん、そこそこのデータは取れたかな」

 

アゲセーヌとアルカナ・シャドウが名探偵プリキュアと戦っている間、私は戦場から少し離れた場所にいた。

 

もちろん、ただ眺めていたわけではない。

私の視線の先にいるのは、キュアアンサーとキュアミスティック。

二人がハンニンダーやアルカナ・シャドウと戦う様子を、最初から最後まで観察していた。

 

私自身、あの二人と戦った経験はある。

けれど、こうして戦闘には参加せず、相手の動きだけを真剣に分析するのは今回が初めてだった。

実際、戦っている時には気づかなかったこともいくつかある。

 

まずはミスティック。

ミスティックが使う防御技――「ミスティックリフレクション」。

 

あの技を使うタイミングには、ある程度の傾向がある。

相手から遠距離攻撃を受けた時。

 

特にレーザー系の攻撃に対しては、ミスティックリフレクションを発動する確率がかなり高い。

ただし、警戒するべきなのはバリアそのものだけではない。

 

ミスティックが前方からの攻撃をバリアで防いでいる間、その背後は安全圏になる。

そして、その安全圏で待機しているのがアンサー。

 

ミスティックに攻撃を防がせ、相手の意識がそちらへ向いた瞬間に飛び出して追撃する。

さっきハンニンダーに仕掛けた連携もまさにそれだった。

 

あの動きには要警戒。

そして途中から参戦したアルカナ・シャドウとの戦闘でも、いくつか特徴が見えた。

 

範囲攻撃を仕掛けられた場合、アンサーとミスティックはその場で防御するよりも、距離を取って回避することが多い。

 

なら、その回避行動を利用できる。

ジャンプで避けた場合は着地の瞬間を狙う。

あるいは攻撃を回避した直後、二人が体勢を整えるより先に次の攻撃を仕掛ける。

 

その方が無難だろう。

相手が動く場所を予測できれば、こちらが先回りすることだってできる。

 

それから――浄化技。

アンサーはなまるソードやミスティックストライク。

あれも発動する瞬間さえ見極めれば、剣身を直接掴んで阻止でき――

 

……さすがに無理か。

そんなことができる相手を基準にして戦い方を教えても意味がない。

 

ともかく、今回手に入った情報だけでも十分だ。

これをニジーたちに伝えれば、今までよりは戦いやすくなるだろう。

 

少しでも勝率を上げるためには、まだ観察が必要になる。

相手がどんな状況でどんな技を使うのか。

 

どう防御するのか。

どう回避するのか。

そして、二人がどんな連携を得意としているのか。

 

情報が増えれば増えるほど、対策できる行動も増えていく。

いつまでも名探偵プリキュアの好きにはさせない。

 

調子に乗っているあの二人を退ける日も、そう遠くはない。

 

「…さっさと帰ろう」

 

ある程度の戦い方は観察できた。

私はその場を離れ、すぐに劇場へ戻ることにした。

 

これ以上、二人を尾行する必要はない。

今優先するべきなのは、手に入れた情報を持ち帰ること。

 

少しでも怪盗団ファントムの戦力を上げるために、この情報をみんなに伝えないと。

 

 

_______________

 

 

 

【みのるSide】

 

「ありがとうございます!」

 

「みんないなくなったと思ったら、ファントムから取り返してきたのね!さすが名探偵ね!」

 

ファントムに奪われていた携帯電話を頼子さんに返し、これで今回の事件は無事に解決した。

 

エリザさんだけは、ハンニンダーが結界を展開してからずっと外に弾き出されていた。

突然みんなの姿が消えてしまったのだから、きっと不安だったと思う。

 

それでも、こうして全員が無事に戻ってきたことで、エリザさんの表情にも安堵が浮かんでいた。

 

「でも、あの時エリザさんがいなかったら取り返せなかった」

 

「!」

 

それは間違いない。

今回の事件で、解決への糸口を見つけたのは紛れもなくエリザさんだった。

 

アゲセーヌが別人に変装して大勢の人の中へ紛れ込んだ時、普通に探していたら見つけるのは難しかったはず。

 

でもエリザさんは、アゲセーヌが携帯電話を持っているという状況そのものを利用した。

 

盗まれた携帯電話へ電話をかける。

たったそれだけで着信音を手がかりにし、誰がファントムなのか一発で特定してみせた。

 

「ちょっと待てよ。エリザの推理のおかげで事件を解決したなら…」

 

「「探偵テスト合格!?」」

 

「え!?」

 

探偵テストに合格した者は、キュアット探偵事務所の探偵として活躍できるようになる。

そして今回、エリザさんは自分の推理によって事件を解決へ導いた。

 

もしこれで正式に探偵になれば、ここにいるメンバーの中では唯一、探偵テストを受けて合格したという実績を持つことになる。

 

「直接事件の解決に導いたのはエリザさん。探偵テストに合格する条件に当てはまるってことだね」

 

「そういうことになるな」

 

「私が……探偵に!」

 

エリザさんの瞳が輝く。

その表情を見るだけで、どれほど探偵という存在に憧れていたのかが伝わってきた。

 

エリザさんが探偵になって、これからいろいろな事件を追いかけていく姿。

少し見てみたい気もする。

 

推理小説を書いているから発想力もあるし、実際に今回の事件では自分の力で犯人を見つけ出した。

きっと探偵としても活躍できるんじゃないだろうか。

 

でも――それは同時に、小説家を捨てることにもなる。

 

「……約束、ですもんね」

 

「「……………」」

 

頼子さんの声には、どこか寂しさが滲んでいた。

なんだかんだ言って、やっぱり寂しいのかもしれない。

 

これまでずっとエリザさんの側にいて、時には叱り、時には励ましながら支えてきたはず。

小説家と担当という関係ではあるけれど、それだけじゃない。

 

相棒のように二人三脚で関わってきたのだと思えば、頼子さんの気持ちもなんとなくわかる気がした。

 

「………先生。依頼人の皆さんを、笑顔にしてくださいね。探偵エリーみたいに」

 

それでも頼子さんは止めなかった。

寂しさを抱えながらも、エリザさんを探偵の道へ送り出そうとしている。

 

これからエリザさんは、このキュアット探偵事務所で私たちと一緒に活動……

 

「新しいアイデア浮かんじゃった」

 

「え?」

 

……?

 

「ファントムを追いかけている時に探偵エリーのアイデアが降ってきて!戻って書かないとね!」

 

…………。

 

どうやら、こんなタイミングで探偵として活動を始めるよりも先に、新しい小説のアイデアが浮かんでしまったらしい。

 

ファントムを追いかけ、実際に自分の推理で正体を暴いた経験から、探偵エリーの新しいアイデアまで思いついてしまうなんて。

 

探偵としての才能もある。

小説家としての才能もある。

その二つを同時に持っているなんて、はっきり言って羨ましい。

 

「でも……」

 

「探偵を諦めたわけじゃないから!小説を書きながら探偵もやる。でも今日のところは締め切りも近いし…」

 

なるほど、探偵になるか小説家を続けるか。

どちらか一つを選ぶ必要なんてなかったんだ。

 

エリザさんは探偵として活動しながら、これまで通り推理小説も書き続けるつもりらしい。

 

そう言い終えると、エリザさんは着ていた探偵服を勢いよく脱ぎ捨て、いつもの私服姿へと戻った。

 

そして――

 

「わっ……」

 

脱ぎ捨てられた探偵服が、なぜかそのまま私の腕の中へ落ちてきた。

反射的に受け止める。

 

……なんで私に?

そんな私を気にすることもなく、エリザさんは堂々と声を上げた。

 

「女子高生ミステリー作家、来栖エリザで!」

 

「はい!アイデアを忘れないうちに行きましょう!」

 

頼子さんもすっかりいつもの調子に戻っていた。

こうしてエリザさんは、新たな探偵エリーの冒険を書くために、今日もペンを走らせることになる。

 

前の探偵エリーの続編に続き、さらに新しい物語を書き始める。

それも、小説家としては異例と言っていいほどのペースで。

 

さっき実際に事件を解決した時の発想を見ても、エリザさんの探偵としての知恵は本物だと思う。

その知恵を推理小説の中でも発揮できるのだから、かなり高いポテンシャルを持っているんじゃないだろうか。

 

「あ、さっき私の推理で事件を解決したって言ったけど違うよ。猫探しの時もそう、あんなちゃんとみくるちゃんがいたから!」

 

事務所を出ようとしていたエリザさんが、ふと足を止めて振り返った。

 

今回の事件を解決したのはエリザさん一人だけじゃない。

変装したファントムを見つけ出すきっかけを作ったのはエリザさんだった。

 

でも、実際にファントムと戦い、盗まれた携帯電話を取り返したのはプリキュアになったあんなとみくるだ。

 

猫探しの時だってそうだった。

誰か一人だけが全部を解決したわけじゃない。

それぞれが自分にできることをして、それが繋がった結果、事件の解決へ辿り着いたんだ。

 

「私も二人みたいなコンビだったら、今頃名探偵だったかも!じゃあね!」

 

そう言い残して、エリザさんは頼子さんと一緒に事務所を出ていった。

二人の姿を見送りながら、私はその言葉について考える。

相棒、か。

 

……良いよね。

あんなとみくるみたいに、お互いに助け合って、一緒に事件を解決していける相手。

 

私もいつか、みくるの隣にいられるような助手になれるくらい、立派になってみたい。

 

今の私にはまだできないことも多い。

それがいつになるのかもわからない。

 

でも、いつかそんな機会があれば……。

そこで私は、ふと腕の中へ視線を落とした。

 

さっきエリザさんから飛んできた探偵服が、まだしっかりと抱えられている。

 

……………。

 

エリザさんが脱ぎ捨てたこの探偵服、どうするの?

 

 

_______________

 

 

 

【あんなSide】

 

夜になり、離れの共有スペースには静かな時間が流れていた。

昼間の騒がしさが嘘みたいに辺りは落ち着いていて、私とみくるはしばらくそこでくつろいでいた。

 

私の腕の中にはポチタンがいる。

小さな身体を支えながらミルクを飲ませていると、ポチタンは夢中になって口を動かしていた。

 

「エリザさん、キュアット探偵事務所に入ってくれたらいいな」

 

「きっと楽しくなるよね」

 

エリザさんは小説家を続けることを決めた。

でも、探偵を諦めるとは言っていない。

 

小説を書きながら探偵もする。

そうはっきり言っていた。

 

だから、いつかまた今日みたいに一緒に事件を追いかけられる日が来るかもしれない。

 

その時は、エリザさんもキュアット探偵事務所の仲間として活動してくれたらいいな。

きっと今よりもっと賑やかで、楽しくなる。

 

「ポ……チ……」

 

腕の中から弱々しい声が聞こえた。

見ると、ポチタンは目を閉じそうなくらい眠そうにしている。

 

「そろそろ寝ようか」

 

「ええ」

 

気づけば、もう夜も遅い時間帯だった。

明日からまた頑張るためにも、今日は早めに休んだ方がいい。

 

私とみくるは共有スペースを離れ、それぞれの部屋へ戻ることにした。

 

 

_______________

 

 

 

部屋に戻り、私はベッドに横になった。

あとは目を閉じて眠るだけ。

 

……なのに、なかなか眠れない。

今日はいろいろなことがありすぎた。

 

頭の中には、アゲセーヌやマシュタンの口から突然出てきた新たなプリキュアのこと。

そしてエリザさんが残した言葉が、何度も浮かんでは消えていく。

 

「ここ……るるかさんの部屋だったのか」

 

私はベッドから部屋を見渡した。

 

マシュタンが言っていた。

この部屋は、元々るるかさんが使っていた部屋。

 

そして――私の部屋のカーテン。

……そんなにセンスがなかったのかな。

結構悩んで選んだつもりだったのに、少しショックだ。

 

これも個性として捉えれば良いのかな……?

そんなことを考えていた時、不意に昼間のエリザさんの言葉が頭の中に蘇った。

 

『同じ部屋でも個性って出るんだね!』

 

「……同じ部屋?」

 

私は身体を起こした。

 

改めて考えてみる。

私の部屋と、みくるの部屋。

二つは左右対称になっているだけで、構造そのものはほとんど同じだ。

 

同じ間取りの部屋が、離れに二つ並んでいる。

今までは特に気にしていなかった。

 

でも――まるで最初から、二人の探偵がここで暮らすことを前提に作られているような?

 

そして、もう一つ。

エリザさんが帰る直前に言っていた言葉。

 

『私も二人みたいなコンビだったら、今頃名探偵だったかも!』

 

二人……コンビ。

同じ間取りの二つの部屋。

 

るるかさんが使っていた私の部屋。

それなら、もう一つの部屋は――。

 

「…………!」

 

まさか……!

 

一つの可能性が頭の中で繋がった。

そう思った瞬間、いても立ってもいられなくなった。

 

私は勢いよくベッドから立ち上がり、そのまま部屋を飛び出す。

するとほとんど同じタイミングで、向かい側からみくるも部屋を出てきた。

 

表情を見ただけでわかった。

きっと、みくるも同じことに気づいたんだ。

 

「みくる!離れに間取りが同じ部屋が二つ!」

 

「ええ、るるかさんとコンビを組んでいた人がここにいたのかもしれない!」

 

るるかさんとマシュタンの話から考えても、かつてるるかさんがこの事務所にいたことは間違いない。

 

そして、この離れには同じ間取りの部屋が二つある。

今は私とみくるがそれぞれ使っている部屋。

 

もし昔も同じように二人が暮らしていたのなら――るるかさんと一緒に、もう一人の探偵がいた。

そう考えれば全部が繋がる。

 

私が今使っている部屋に、るるかさんがいた。

なら――みくるが使っているもう一つの部屋には?

 

「もしかして、みくるの部屋にいたのは……」

 

私とみくるの視線が重なり、同時にその名前を口にした。

 

「「キュアエクレール!」」

 

アゲセーヌが目撃した、青いプリキュア。

マシュタンがうっかり口にした、キュアエクレールという名前。

 

その正体不明のプリキュアが――かつて、このキュアット探偵事務所にいたことになる。

 

〖運命の七の月。1999年7月19日まで、あと1ヶ月〗




※現在放送されているアニメで登場するキュアット探偵事務所本部の所長の名前が「花崎まふる」と、名字がみのると完全に被ってしまいましたが、変更や設定を変えるつもりはありません。この名字被りも使ってさらに物語を展開させていきますで、これからもよろしくお願いします。
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