かわいいホームズの親友ちゃんは、相棒の座を奪われて焦心苦慮 作:くぁwせdrftgyふじこlp
【あんなSide】
アルカナ・シャドウとの戦いは、あまりにもあっさりと幕を下ろした。
ついさっきまで激しい攻防が繰り広げられていたというのに、その終わりは驚くほど突然に……。
「ニジーのやつしくじったな?」
「チョベリバ~!」
少し離れた場所ではゴウエモンとアゲセーヌがすでに撤退を始めていた。
これ以上ここに留まるつもりはないらしい。
それと同時に、周囲を包み込んでいた結界も消えていく。
つい先ほどまで私たちを閉じ込めていた異様な空間が、最初から存在しなかったかのように元の景色へと戻っていった。
そして、私の目の前にいたアルカナ・シャドウも突然攻撃の手を止める。
あれほど激しく攻め立ててきた彼女が、何の前触れもなく背中を向けたんだ。
「な…?」
まだ戦いの途中だったはずなのに、どうして急に……?
そんな私の疑問に答えるように、アルカナ・シャドウは淡々と言い放った。
「マコトジュエルはなくなった。戦う意味はもうない」
彼女たちにとって、何よりも優先されるのはマコトジュエルの確保。
私たちプリキュアとの戦闘は、あくまでもその目的を達成するための手段に過ぎないのだろう。
だから肝心のマコトジュエルがなくなってしまえば、これ以上戦う必要もない。
……でも、それだけなのだろうか。
戦っている最中のアルカナ・シャドウは、日が経つにつれて様子が違っている。
攻撃は激しく、こちらに反撃する隙を与えないほど執拗だった。
一刻も早く決着をつけようとしているような、そんな焦りさえ感じられる。
予言の日が近づいている。
その事実が、彼女たちから少しずつ余裕を奪っているのかもしれない。
少なくとも、今のアルカナ・シャドウが何かに追い詰められていることくらいは私にもわかった。
「帰りましょう、アルカナ・シャドウ」
「……………」
マシュタンの呼びかけに対して、アルカナ・シャドウは何も答えなかった。
ただ黙ったまま、その場を後にしようとしている。
私はその背中を見つめることしかできなかった。
そして、ほんの少し前まで激しい戦場だった場所には、何事もなかったかのような静けさが戻ってきた。
あまりにも突然の幕切れだった。
今回はファントムのメンバーが全員揃っていた。
それだけに戦いが始まったときはどうなってしまうのかと不安だった。
相手の人数を考えれば、簡単に終わるような戦いではないと思っていたから。
でも実際はこんなにもあっけなく終わってしまった。
本当に、こんなことがあるなんて……。
(いたた……)
緊張が解けた途端、身体のあちこちに痛みが走った。
アルカナ・シャドウの攻撃は、いつにも増して激しかった。
一撃一撃が鋭く、少しでも対応を間違えれば、そのまま押し切られてしまいそうなほど。
戦っている間は必死だったから気にしていなかったけれど、こうして落ち着いてみると、身体には相当な負担がかかっていたみたい。
それでもなんとか彼女の攻撃をやり過ごすことはできた。
決して楽な戦いではなかったし、こちらが圧倒できたわけでもない。
だけど、あれだけ激しい攻撃を受けながらも、こうして無事に戦いを終えられた。
今は、それだけでも十分なのかもしれない。
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「れ~い!」
「れい~!」
戦いが終わり、結界が消え去ったところで、私はれいの姿を見つけて大きく手を振った。
隣にいたポチタンも、嬉しそうにれいの名前を呼びながら飛び込んでいく。
「ポチタン!無事でよかった……」
れいはポチタンの姿を確認すると、心の底から安心したような表情を浮かべ、その小さな身体を優しく抱きしめた。
その腕には、もう二度と離したくないと言わんばかりの温かさが込められているように見えた。
れいは私たちと違ってたった一人で結界の外に取り残されていたから、中で何が起こっているのかもわからず、私たちが無事なのかどうかさえ確かめられない。
きっと、ずっと不安だったに違いない。
だからこうしてポチタンと再会できたことが、何よりも嬉しいのだろう。
「かぎ、どうぞ!」
「取り返してくれたんだね」
れいの腕の中にいたポチタンが、取り返した鍵を差し出した。
無事に鍵が戻ってきたことももちろん嬉しいはずだ。
でも今のれいにとっては、それ以上にポチタンが無事だったことの方が大切なのかもしれない。
そんなことを考えていると、れいの視線がみのるへと向けられた。
「みのるも頭は大丈夫?」
「大丈夫、みくるが手当てしてくれたから心配ないよ」
みのるはいつもと変わらない落ち着いた様子で答えた。
その額には、一枚の絆創膏が貼られている。
みくるが手当てしてくれたおかげでひとまず心配はなさそうだけれど、やっぱり怪我をしている姿を見ると気になってしまう。
それでも、みのるが普段どおりに話しているのを見て、私もほっと胸を撫で下ろした。
「れい、ポチタンを守ってくれてありがとう。みのるもね」
みくるの声はとても優しく、心から二人に感謝していることが伝わってくる。
今回、れいとみのるがいてくれたことは、私たちにとって本当に心強かった。
二人がそれぞれの場所でポチタンを守ってくれたからこそ、こうして無事に再会することができたのだと思う。
「二人がいてくれてよかった」
言葉にしたくなるくらい、私は二人の存在をありがたく感じていた。
「ありがと、れい、みのる!」
「……うん!」
ポチタンとれいのやり取りで戦いの緊張がようやく解け、みんなの顔にも穏やかな表情が戻っている。
無事に鍵を取り返せたこと。
ポチタンが戻ってきたこと。
そして、こうしてみんなで顔を合わせられたこと。
その一つひとつが、今はとても平和だった。
_______________
【みのるSide】
キュアット探偵事務所へ戻ってくると、室内にはふんわりと甘く、どこか上品な香りが漂っていた。
その香りの正体は、ジェット先輩が研究を進めていた香水だ。
登校前にも確認していたけれど、あれから作業は順調に進んでいたらしい。
机の上には、朝よりもずっと多くの香水が並べられていた。
透明な小瓶の中で揺れる液体は、光を受けて美しく輝いている。
これなら完成まであと少しだ。
「わぁ、いい香り!」
「優雅で気品のある香り…!」
鼻をくすぐるその香りには、不思議と心を落ち着かせるような心地よさがある。
「ああ、もうすぐだ!」
ジェット先輩も、完成が目前に迫っていることに手応えを感じているようだった。
三人の楽しそうな声が室内に響く。
けれど、私はその会話の輪には加わらなかった。
今の私には、どうしても確認しておきたいことがあったからだ。
静かにその場を離れ、壁に掲げられている地図へと歩み寄る。
そこには、四枚の写真が貼られていた。
かつてキュアアルカナと共に戦っていたという、もう一人の名探偵プリキュア。
その正体を探るため、私たちがこれまで関わってきた四人の候補者たち。
私は一枚ずつ、写真に視線を向けた。
来栖エリザさん。
女子高生でありながらミステリー作家として活動している彼女は、探偵という存在に強い憧れを抱いていた。
初めて事務所を訪れたときから、彼女の好奇心と行動力には驚かされることが多い。
そしてみくるとあんなの関係を見て、彼女はこんなことを口にしていた。
『私も二人みたいなコンビだったら、今頃名探偵だったかも!』
自分の可能性を信じ、探偵という新たな道にも目を向けようとしていた姿。
彼女にも自分だけの強い想いがあった。
家入しるくさん。
野外ステージでの事件。
怪盗団ファントムから予告状を送りつけられ、大切な思い出の品であるイヤリングを狙われた彼女。
それでもしるくさんは自分の舞台を大切にしていた。
そして、事件が解決したあと、彼女は私たちに向かって笑顔で言っていた。
『三人は私にとって、大切な仲間だね!』
大切なものを守ろうとする気持ち。
仲間を信じる心。
あのイヤリングに込められていた想いは、決して小さなものではなかった。
彼女がキュアエクレールである可能性も、簡単には否定できない。
帆羽くれあさん。
私はその写真の前で、しばらく視線を止めた。
彼女と初めて出会ったときは、まさかここまで深く事件に関わることになるとは思っていなかった。
けれど、彼女の周囲では不思議な出来事が続いていた。
るるかさんが執着していた写真。
失われた記憶。
そして、本来なら一般人が入ることのできない結界へ彼女が足を踏み入れたこと。
何より、アルカナ・シャドウに向かって呼びかけたときのあの反応。
彼女の存在が、るるかさんの心を大きく揺さぶっていたことは間違いない。
それでも、くれあさんは自分の信じるものを見失わなかった。
『それでも私は、私のきらめきを信じる!』
あの言葉には、迷いを振り払おうとする強い意志が込められていた。
失った過去があったとしても、今の自分が大切にしているものを信じる。
そんな彼女の姿勢は、私の心にも深く残っている。
そして、最後の一枚。
金田れいさん。
まことみらい学園の生徒会長であり、理事長の孫でもある彼女。
最初は厳格で、少し近寄りがたい印象を持っていた。
けれど実際に関わってみれば、彼女もまた誰かを守りたいという強い想いを抱いていることがわかった。
今回の事件では、私たちと共に危険な状況へ巻き込まれた。
それでも、れいさんは決して自分のことだけを考えていたわけではなかった。
『私に、そのプリキュアの力があれば、ポチタンを!みのるを!!学校を守れるのにっ!!!』
あの必死な叫びが、今も耳の奥に残っている。
自分に力があれば、大切な人たちを守れるのに。
その悔しさが痛いほど伝わってきた。
私自身も同じような無力感を抱くことが何度もある。
れいさんの気持ちは決して他人事には思えなかった。
……四人。
それぞれ違う立場で、違う人生を歩んできた人たち。
けれど誰もが自分の中に譲れない想いを持っていた。
その想いこそが、マコトジュエルの輝きにも繋がっている。
もう一人のプリキュア……キュアエクレール。
その正体は……恐らくもう答えは出ている。
今日までのるるかさんの行動。
彼女が誰に接触し、誰に対して感情を揺さぶられ、そして何を守ろうとしていたのか。
それらを一つずつ繋ぎ合わせれば、答えは自然と一人に絞られる。
……あの人しかいない。
もちろん、まだ全ての謎が解けたわけではない。
なぜ記憶を失ったのか。
なぜるるかさんは怪盗団ファントムに身を置いているのか。
そして、キュアエクレールの存在が、これから訪れる決戦にどのような影響を及ぼすのか。
わからないことは多い。
私は地図に貼られた写真を見つめたまま、静かに息を吐いた。
予言の日まで、あと一週間。
たった7日。
それだけの時間が過ぎれば、未来自由の書に記された約束の時が訪れる。
怪盗団ファントムは、その日に何をしようとしているのだろう。
ウソノワールは何を企み、ジャックはどのように動くのか。
そして、るるかさんは……。
彼女が抱えている本当の目的も、いずれ明らかになるのだろうか。
一方でみくるとあんなはどうするのだろう。
名探偵プリキュアとして、これまでも数々の困難に立ち向かってきた二人。
けれど今回ばかりは相手の規模も、目的も、これまでとは違う。
二人がどれほど強い想いを持っていたとしても、その先に待っているものが勝利だとは限らない。
誰が傷つき、誰が救われ、どんな結末を迎えるのか。
それは、今の私には想像すらできなかった。
背後からは、相変わらず三人の楽しそうな声が聞こえてくる。
香水の完成を喜ぶ、何気ない日常の一場面。
けれど、その穏やかな時間さえ、あと一週間で失われてしまうかもしれない。
そう考えるだけで、胸の奥が冷たくなる。
キュアエクレールの正体を突き止めることが、これからの運命を左右するのかもしれない。
……決戦の日は、確実に近づいている。
その日の答えは、まだ誰にもわからない。
ただ一つだけ確かなのは、私たちに残された時間が決して多くないということだった。
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【ジャックSide】
「また失敗………」
薄暗い劇場に、ウソノワール様の声。
その一言だけで、周囲の空気が重くなる。
玉座に腰掛けるウソノワール様の視線は、舞台の中央で頭を下げているニジーへと向けられていた。
私はその少し後ろに立ち、二人のやり取りを静かに見守っていた。
「本当に申し訳ありません!!相手が一人だと完全に油断していました!ジャックが側にいながら……」
ニジーは深々と頭を下げ、必死に謝罪の言葉を並べた。
今回の失敗は油断によるところが大きい。
相手が一人だからといって、決して侮っていいわけではなかった。
私が側にいた状況でマコトジュエルの奪取に失敗したという事実は変わらない。
つまり、今さら何を言ったところで結果が覆るわけでもない。
私は口を挟まず、ウソノワール様の反応を待った。
「顔を上げろ」
「は、はい!!」
ニジーが慌てて顔を上げる。
その表情には、これからどのような処罰を下されるのかという不安が浮かんでいた。
しかし、ウソノワール様はニジーを責め続けることなく、別の問題へと意識を向けられた。
「本来は通常のマコトジュエルを十分に集めておきたかったが……」
「っ………」
ニジーの身体がわずかに強張る。
マコトジュエルの収集。
それこそが、これまで私たち怪盗団ファントムに課せられてきた重要な任務だ。
しかし、度重なる失敗によって、必要な数を十分に確保できているとは言い難い。
そして何より、未来自由の書に記された約束の時はもう目前に迫っている。
残された時間は、あまりにも少ない。
「ならば仕方あるまい。このマコトジュエルを使うべきではないのだが、未来自由の書の通りに事を運ばなければ……」
そう告げたウソノワール様が一つの結晶を取り出した。
通常のマコトジュエルとは明らかに異なる存在感。
内側に秘められた力は、表面から伝わってくるだけでも尋常ではない。
「それは、キュアエクレールのマコトジュエルですか?」
「元々人間に宿っているマコトジュエルは、通常のマコトジュエルよりも大きな力を持っているとされる。そしてプリキュアのマコトジュエルであれば尚更……」
これほどの力を秘めたマコトジュエルであれば、通常のマコトジュエルを大量に集めるよりも遥かに大きな効果が期待できるだろう。
しかし、それは同時に、無視できないリスクを意味していた。
力が強大であればあるほど、それを扱う側にも相応の負担がかかる。
それがプリキュアの力を宿したマコトジュエルとなれば……。
「確かにそのマコトジュエルからは強大な力を感じます。しかし、それほど膨大な真の力を秘めたマコトジュエルだと、拒絶反応が起きてしまうのでは……?」
その言葉にニジーも反応する。
「拒絶反応……真逆の力を無理矢理吸収した結果、自身の力が制御できずに暴走してしまう現象か?」
「うん、特に妖精に起きやすい現象。ウソノワール様がそのマコトジュエルを使ってもしものことがあったら……」
拒絶反応
それは本来相容れない性質の力を無理に取り込むことで引き起こされる極めて危険な現象。
吸収した力を制御できなくなれば、身体にどのような影響が及ぶのか予測することさえ難しい。
特に妖精は、その影響を受けやすい。
私が懸念しているのは、単に力を使いこなせるかどうかという問題ではなかった。
万が一、ウソノワール様の身に何かが起これば、未来自由の書に従って進めてきた計画そのものが崩れてしまう可能性もある。
しかし、その懸念を最後まで口にすることはできなかった。
「私にこのマコトジュエルの力を制御できぬとでも言うのか?」
ウソノワール様の声が、劇場の空気を鋭く震わせる。
玉座から向けられる視線には、疑念を差し挟むことすら許さないほどの威圧感があった。
「とんでもございません。少し不安になってしまっただけなので」
決して、ウソノワール様の力を疑っているわけではない。
ただ、あのマコトジュエルが秘めている力は、それほどまでに異質で強大なもの。
私自身、これまで幾度となくマコトジュエルを目にしてきたけれど、あの結晶から感じられる力は明らかに別格だった。
だからわずかな不安が拭えなかったのだ。
「力がないと大王にはなれない。私たちが望む世界のためだ」
未来自由の書に記された約束の時。
そして、私たちが望む世界。
その全てを実現するためには、今まで以上に強大な力が必要になる。
ウソノワール様が危険を承知であのマコトジュエルを使おうとしているのも、そのためなのだろう。
もはや通常のマコトジュエルを集め直している時間はない。
計画を進めるためには、残された手段を選ぶしかない。
「私たちはウソノワール様の忠実な部下として、必ず役に立ってみせます」
ニジーが力強く宣言した。
未来自由の書が示す約束の時まであと僅か。
その日が訪れれば、私たち怪盗団ファントムの運命も大きく動き出すことになる。
「私は大王になる。そして、世界を永遠の嘘で覆うのだ!」
永遠の嘘に覆われた世界。
それこそが、ウソノワール様の掲げる理想。
そして、私たち怪盗団ファントムが目指している未来だった。
その結晶は、変わらず強大な力を秘めている。
あれほどの力を取り込んだ先に、一体何が待ち受けているのか、今の私にはまだわからない。
ただ、何があっても私たちは決して歩みを止めることはない。