かわいいホームズの親友ちゃんは、相棒の座を奪われて焦心苦慮   作:くぁwせdrftgyふじこlp

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熾烈な戦い

【あんなSide】

 

どうして……?

 

るるかさんは怪盗団ファントムの一員だったはず。

それなのに、どうして今になって敵対している私たちの側についたのだろう。

 

今まで敵として戦ってきた相手が、突然仲間を裏切るような行動を取るなんて……。

何か、理由があるのかな?

 

「アルカナ・シャドウ!!一体何の真似だ!?」

 

その疑問を抱いていたのは、私だけではなかった。

ゴウエモンもまた、突然の出来事に困惑を隠せない様子だった。

 

そういえば、ゴウエモンはアルカナ・シャドウと一緒に行動していることが多かった。

彼女が突然こちら側についたことが信じられないのかもしれない。

 

だけど、今はそれ以上に気になるものがあった。

 

それは、ウソノワールが手にしている一つの結晶。

あの輝き……間違いなくマコトジュエル!

 

でも何かがおかしい。

これまで私たちが見てきたマコトジュエルとは形が違っていた。

あの形のマコトジュエルってもしかして…。

 

「……あれって!?」

 

「キュアエクレールのマコトジュエル」

 

「「え!?」」

 

キュアエクレールの……マコトジュエル?

その名前を聞いた瞬間、私の頭の中に一つの可能性が浮かび上がる。

 

キュアエクレールは過去の記憶を失っている。

もし、その原因がマコトジュエルにあるのだとしたら……。

 

「以前ウソノワールに奪われた」

 

あの結晶は、ウソノワールがキュアエクレールから奪ったものだったんだ!

だったら、私たちがやるべきことは一つしかない。

 

「だったら取り返さないと!」

 

今の怪盗団ファントムがどれほどのマコトジュエルを集めているのかはわからない。

 

だけど、あの結晶をこのままウソノワールの野望のために使わせるわけにはいかない!

絶対に阻止しなきゃ!

 

「「はあああぁぁぁっ!!」」

 

私たちは三人同時に地面を蹴った。

狙うのは、ウソノワールただ一人。

 

一気に距離を詰め、三方向から攻撃を仕掛ける。

このまま一気に……!

 

「……!!」

 

しかし、私たちの拳がウソノワールに届くことはなかった。

 

突然、目の前に割り込んできたニジーが、私のパンチを受け止めたのだ。

それとほぼ同時に、ミスティックの攻撃はアゲセーヌの足によって防がれ、アルカナ・シャドウの拳もゴウエモンの扇子に阻まれていた。

 

三人とも、ウソノワールに指一本触れることさえできなかった。

 

しかも彼らはハンニンダーを使っていない。

自分たちの力だけで、プリキュアである私たちの攻撃を防いでみせたのだ。

 

「てか、ウソノワール様マジ忙しいし!」

 

「如何にも!邪魔立て無用!!」

 

ゴウエモンが勢いよく扇子を振るった瞬間、扇子から無数の桜の花びらが舞い上がる。

 

綺麗な桜吹雪……なんて思う余裕はなかった。

花びらとともに巻き起こったのは、凄まじい勢いの突風。

 

「「「ああっ!?」」」

 

突然の反撃に対応できず、私たちはまとめて吹き飛ばされた。

身体が宙に浮き、ウソノワールから一気に引き離されていく。

 

「そう、予言である今日この時、十分なマコトジュエルが必要なのだ!!お前たちの度重なる邪魔がなければ、マコトジュエルを手に入れてさえいれば、これを使わなくて済んだものを!!!」

 

「「「!!」」」

 

ウソノワールの怒号が聞こえた直後、手元から放たれた強烈なエネルギー弾が、吹き飛ばされたばかりの私たちに向かって迫ってきた。

 

まずいと思った時には、もう遅かった。

凄まじい衝撃が全身を襲い、視界が激しく揺れる。

 

攻撃をまともに受けた私たちは、さらに後方へと弾き飛ばされてしまった。

 

「うっ!!ぐっ……」

 

背中から壁に叩きつけられ、全身に鋭い痛みが走った。

まだ戦いが始まったばかりなのに……こんなに早く………!

 

痛む身体を何とか起こし、再び前方へと視線を向けた。

 

すると、そこにはさらに驚くべき光景が広がっていた。

ウソノワールを守るように、怪盗団ファントムの幹部たちが横一列に並んでいる。

私たちを絶対に近づけさせないと言わんばかりの陣形。

 

そして、その中心に立っているのは……ジャック。

彼女は私たちを見据えると、力強く声を上げた。

 

「行くよ、怪盗団ファントム!!」

 

そのかけ声を合図に、幹部たちが一斉に動き出した。

今度は向こうから、私たちに向かってくる。

 

(直接向かって…!?)

 

ハンニンダーを生み出すわけでもなく、何かを仕掛けてくるわけでもない。

彼ら自身が、私たちと直接戦おうとしている。

 

そう理解した瞬間には、すでにニジーが目の前まで迫っていた。

ニジーの身体が鋭く回転し、その勢いを乗せた回し蹴りが私の顔へと迫る。

 

私は咄嗟に身体を反らし、間一髪で蹴りを躱した。

だけど安心する暇なんてなかった。

 

ニジーは攻撃を躱されても動きを止めず、すぐさま次の一撃を繰り出してくる。

私はその攻撃を避けながら、必死に相手の動きを目で追った。

 

ニジーは私だけを狙っている。

他の二人には目もくれず、私をこの場に釘づけにしようとしているかのように次々と攻撃を仕掛けてくる。

 

一度避けても、また次の攻撃。

少し距離を取ろうとしても、すぐに間合いを詰められる。

 

しかもその動きには一切の迷いがない。

これまでニジーと直接戦ったことはないけど、明らかに様子が違っていた。

 

私を逃がさない。

そんな強い意志さえ感じられるほど、執拗に攻撃を繰り返してくる。

 

怪盗団ファントムの幹部たちが、ハンニンダーに頼らず自ら戦いに出てきた。

それだけでも今までとは状況違う。

そして、ニジーの攻撃は今も止まる気配がない。

 

ニジーの攻撃を躱しながら、私は周囲の状況を確認した。

 

ミスティックにはアゲセーヌ。

そして、アルカナ・シャドウにはゴウエモンがそれぞれ立ちはだかっている。

 

三人とも私たちが合流しようとする動きを見せる度に、その進路を塞ぐように攻撃を仕掛けていた。

 

……なるほど、ようやくファントムの狙いが理解できた。

 

これは単なる正面からの戦闘じゃない。

私たち三人をそれぞれ別の相手と戦わせ、完全に分断するための作戦なんだ。

 

これでは互いに協力することも、ウソノワールのところへ向かうことも難しい。

 

だけど、それ以上に気になることがあった。

今までニジーたちは基本的にハンニンダーを生み出して私たちと戦わせていた。

 

彼ら自身が戦えないわけじゃない。

それでもここまで高度な戦闘技術を持っていたなんて……。

 

私はニジーが繰り出した拳を横に躱し、そのまま反撃の蹴りを放った。

しかし、ニジーは素早く後方へ跳び、私の蹴りが届く寸前で間合いから離れた。

 

……おかしい。

 

攻撃のタイミングも、回避する方向も、私が反撃しようとする瞬間まで読まれているような気がする。

まるで、私たちプリキュアの戦い方を事前に研究していたかのように。

 

……いや、もしかして……!

 

「………ジャックの仕業でしょ?」

 

「その通り!ジャックがプリキュアの戦い方をボクたちに徹底的に叩き込まれたのさ!おかげでこうして自らプリキュアと戦えるのが運命のように感じるよ!」

 

やっぱり……!

ジャックはこれまで私たちの戦い方を何度も間近で見てきた。

 

それだけじゃない。

ジャック自身が私たちと戦い、その攻撃の特徴や弱点を分析していたとしたら、ニジーたちが急に強くなった理由にも納得がいく。

 

私が正面から拳を繰り出すと、ニジーは腕を交差させて防御。

ならばと、私は身体を回転させながら横から蹴りを放った。

しかし、それすらも予測していたかのようにニジーは素早く身を引いた。

 

そのまま私の側面へ回り込み、反撃の拳を突き出してくる。

腕で受け止めたものの、衝撃で数歩後退させられてしまった。

 

……やっぱり簡単には突破できない。

それでもここで足止めされているわけにはいかない!

 

「そこを通して!!」

 

私は再び勢いよくニジーに向かって拳を振り抜いた。

ニジーは私の拳を受け流すと、すぐさま進路を塞ぐ位置へと移動した。

 

「それはできないさ。ウソノワール様が大王になるためにボクらは何日もかけて準備を進めようとした。だがキミたちが邪魔をするせいで、ファントムの計画は狂う一方!今度こそウソノワール様へは指1本触れさせない!」

 

言葉と同時にニジーが鋭い蹴りを繰り出してきた。

私はその攻撃を防ぎ、すぐに反対の拳で反撃する。

 

けれどニジーは深追いせず、素早く距離を取った。

 

まただ。

 

私が攻撃しようとするたびに、ニジーは必要以上に打ち合おうとしない。

確実に攻撃を防ぎ、私が前へ進もうとすればその進路を塞いでくる。

私を倒すことよりも、ここから先へ行かせないことを優先しているみたい。

 

だけど……!

 

「私こそ、ファントムの欲望のために関係のない人たちまで巻き込むつもりなら、私たちはファントムを止める!!」

 

私の突撃にニジーが正面から迎え撃とうとする。

その拳を身を屈めて躱し、私は一気に懐へと踏み込んだ。

 

今度こそ……!

そう思って拳を振り上げた瞬間、ニジーは身体を捻り、私の攻撃を紙一重で回避した。

 

さらにその勢いを利用するように背後へ回り込んでくる。

私はすぐに振り返ったものの、ニジーの蹴りを完全には防ぎきれなかった。

 

強い衝撃が腕に伝わり、身体が後方へ押し戻される。

それでも何とか踏みとどまり、再び構え直した。

 

「くっ……」

 

思わず悔しさが込み上げる。

 

攻撃が通用しないわけじゃない。

ニジーを倒せないほどの実力差があるとも思わない。

 

だけど、相手が徹底して防御と回避を優先しているせいで、決定的な一撃を与える機会がなかなか生まれない。

私がウソノワールへ向かおうとすれば、必ずニジーが前に立っている。

 

これじゃあいつまで経っても……!

 

「あくまでボクらはウソノワール様への時間稼ぎ。プリキュア相手に積極的に攻めていたら痛い目を見るのはわかっているからね」

 

……時間稼ぎ。

その言葉を聞いて、私は改めて状況の厄介さを理解した。

 

最初から、私たちを倒すことを目的としていない。

ウソノワールが何かを成し遂げるまで、私たちを足止めできればそれでいいんだ。

 

だから、無理に攻め込もうとしない。

反撃を受ける危険を冒してまで、私たちを倒そうとはしない。

必要な時だけ攻撃し、あとは徹底的に防御と回避を繰り返す。

それが、今のニジーたちの戦い方。

 

……でも、こんな作戦を彼ら自身が考えたのだろうか。

 

プリキュアの戦い方を分析し、その特徴を幹部たちに教え込んだジャック。

もし彼女が私たちの実力だけでなく、どうすれば効果的に足止めできるかまで考えていたとしたら……。

 

「これもジャックが教えたの…?」

 

ニジーはすぐには答えなかった。

ただ、私の問いかけを楽しんでいるかのように、不敵な笑みを浮かべる。

 

そして余裕を感じさせる口調で言い放った。

 

「答えを見つけるのが探偵だろう?」

 

……っ!

 

その言葉に私は歯を食いしばった。

 

答えを教えるつもりはない。

自分で考えてみろということなんだろう。

 

相手の狙いはわかっている。

私たちを分断し、ウソノワールのために時間を稼ぐこと。

そして、その作戦にはジャックが深く関わっている可能性が高い。

 

ウソノワールの手には、キュアエクレールのマコトジュエルがある。

あれを使って何をしようとしているのかは、まだわからない。

 

それでも、絶対に好き勝手にはさせられない。

私はニジーの動きを注意深く観察しながら、次の攻撃に備えた。

 

ただ闇雲に突っ込んでも同じことの繰り返しになる。

だったら相手の動きを見極めるしかない。

 

ニジーがどのタイミングで攻撃し、どんな時に防御へ切り替えるのか。

その一つ一つを見逃さず、突破するための糸口を探す。

 

……そうだ、答えを見つけるのが探偵なら、私だって必ず見つけてみせる。

 

 

_______________

【みくるSide】

 

目の前から迫ってきたアゲセーヌの蹴りを、私は腕で受け止めた。

強い衝撃が両腕に伝わるも、これくらいなら耐えられる!

 

私はすぐにアゲセーヌの急所を狙って拳を突き出した。

しかし、軽く身体を傾けるだけで私の攻撃を躱すと、そのまま後方へ跳んで距離を取った。

 

これで何度目だろう。

さっきから何度も攻撃を仕掛けているのに、決定的な一撃を与えることができない。

かといって私が一方的に押されているわけでもなかった。

 

アゲセーヌの攻撃も、今のところ対応できている。

お互いに攻撃を仕掛けては防ぎ、躱しては距離を取る。

その繰り返しだった。

 

「……互角?」

 

「……みたいね」

 

こんなに戦いにくい相手だったなんて。

 

こちらから攻めれば、相手は必要最低限の動きで攻撃を躱す。

逆にアゲセーヌが攻めてきた時には、私も防御や回避に集中せざるをえない。

 

対応できないほどの速さじゃない。

だけど、反撃しようとした瞬間にはもう相手が次の動作に移っている。

私がどんな攻撃をするのか最初からわかっているみたい。

 

……そう。

例えるなら、私の動きを学習したロボットと戦っているような感覚。

 

アゲセーヌが再び距離を詰めてくる。

私は正面から繰り出された拳を横に躱し、その腕を狙って反撃しようとした。

 

けれど、アゲセーヌはすぐに腕を引き、反対の足で蹴りを放ってくる。

私は身体を捻ってそれを避ける。

 

そして着地と同時に一歩後退した。

 

……やっぱりおかしい。

 

「私たちが知らない間に何をしたの?」

 

「別に~。ただいつも通りマコトジュエルを奪ったりしてただけだし~?」

 

そう言いながらアゲセーヌは軽やかに踏み込んできた。

私は繰り出された蹴りを腕で受け止め、そのまま拳を飛ばす。

 

またしても簡単に躱されてしまった。

 

……絶対に何か隠してる!

 

マコトジュエルを奪っていただけで、こんなに戦い方が変わるはずがない。

アゲセーヌは私の攻撃の癖まで理解しているように見える。

 

「とぼけないで。誰かに戦い方を教えてもらったんでしょ?」

 

そう問いかけながら、私はアゲセーヌへ向かって連続で攻撃を繰り出した。

 

一発目は躱され、二発目は腕で防がれる。

さらに三発目を放とうとした瞬間、アゲセーヌは素早く間合いから離れた。

 

私の予想が正しいなら、こんなことができる人物は一人しかいない。

 

最近、毎回のように私たちの前に姿を現している少女。

私たちの戦いを何度も見てきて、その実力を誰よりも詳しく知っているかもしれない人物。

 

そして私たちがどれだけ全力で戦っても、簡単には勝たせてくれない強敵。

 

……ジャックなら、私たちの戦い方を分析している。

アゲセーヌたちに、その対処法を教えることだって……。

 

「ジャックはたまに気に食わないこともあるんだけど、こと戦闘に関してはプロだから、アゲもこの日のために特訓を続けてきたってワケ!」

 

……やっぱり私の予想は当たっていた。

 

アゲセーヌは、今日の戦いに備えてジャックから戦闘技術を教わっていたんだ。

 

一日や二日だけじゃない。

この日のために、ずっと特訓を続けてきたということは、私たちの動きを徹底的に研究していた可能性が高い。

 

「本当にどこまでも嫌な相手……」

 

ジャック自身が強いだけでも十分厄介なのに、まさか他の幹部たちまで鍛えていたなんて。

これじゃあ、ますますウソノワールのところへ向かうのが難しくなっちゃう。

 

私は視線をわずかに動かし、離れた場所にいるアンサーたちの様子を確認しようとした。

だけど、その一瞬の隙をアゲセーヌが見逃すはずもなかった。

 

「ほらほら、手が止まってるよー。これならアタシだけでプリキュアに勝てちゃうかも?チョベリグ~!」

 

挑発するような声とともに、アゲセーヌが勢いよく飛び込んできた。

放たれた蹴りを身体を反らして躱すと、そのまま反撃の拳を振り抜いた。

 

アゲセーヌはまたしても軽やかに回避する。

 

……もう!

さっきから何度も何度も!

 

「甘く見ないで!!」

 

相手がどれだけ私の戦い方を研究していたとしても、簡単に負けるつもりなんてない!

 

右の拳を突き出し、続けて左の蹴りを放つ。

アゲセーヌはその両方を躱したものの、私は攻撃の手を止めなかった。

 

今度こそ一撃を当てる!

そう思って、さらに前へ踏み込もうとした瞬間だった。

 

「そっちこそ、足元がお留守だし!」

 

「!」

 

その言葉と同時に、アゲセーヌが素早く身体を低くした。

私の足元を狙って足払いが繰り出される。

 

しまった……!

私は地面を蹴り、上空へ跳び上がった。

 

間一髪。

アゲセーヌの足が、ほんの少し前まで私の立っていた場所を勢いよく通り過ぎていく。

 

危なかった……。

だけど、これで攻撃を躱せたと思ったのも束の間だ。

 

顔を上げたらすでにアゲセーヌが次の攻撃に移っていた。

私が足払いを避けるためにジャンプすることまで、予測していたかのように、空中にいる私の正面へアゲセーヌの拳が勢いよく迫ってくる。

 

……っ!

 

両腕でギリギリ防御。

直後に衝撃が腕を襲う。

 

空中では地面を踏ん張ることもできず、その勢いに押されるように身体が後方へ弾かれた。

何とか体勢を整え、地面に着地する。

 

だけど着地した瞬間にも油断できない。

アゲセーヌはすでに次の攻撃に備え、こちらの動きをじっと観察していたからだ。

 

……完全に読まれてる。

足払いを仕掛ければ、私がジャンプして避ける。

 

そうすれば空中で自由に動けなくなるから、正面から追撃できる。

そこまで考えて、あの攻撃を仕掛けてきたんだ。

 

私がどう動くのかを考え、その先の行動まで予測して攻撃を組み立てている。

無理に攻め込もうとはせず、反撃されそうになればすぐに距離を取る。

 

……これが、ジャックの教えた戦い方。

 

プリキュアの特徴を徹底的に研究し、相手の得意な攻撃を封じながら、自分たちに有利な状況を作り出す。

本当に私たちとの戦い方を学習しているんだ。

 

今までと同じように戦っているだけじゃ、きっとこの状況を打開することはできない。

 

でもここで負けるわけにはいかない。

ウソノワールを止めるためにも、キュアエクレールのマコトジュエルを取り返すためにも。

まずは、目の前のアゲセーヌを突破しなきゃ。

 

私は呼吸を整えながら、再び戦闘態勢を取った。

相手が私の戦い方を知り尽くしているというのなら、それを乗り越える方法を見つけるだけ。

 

だって私は名探偵プリキュアなんだから。

どんなに難しい相手でも、絶対に乗り越えてみせる!

 

 

_______________

 

 

 

【るるかSide】

 

ゴウエモン……あなたに恨みがあるわけじゃない。

 

これまで怪盗団ファントムの一員として、何度も行動を共にしてきた相手。

敵として憎んでいるわけでもなければ、個人的に決着をつけたいと思っているわけでもない。

 

だけど私には、どうしても果たさなければならない目的がある。

 

くれあのために、あの子のマコトジュエルを取り返すために、私はウソノワールのところへ行かなければならない。

だから相手がゴウエモンでも、ここで退くわけにはいかない。

 

私は正面に立ちはだかるゴウエモンへと一気に距離を詰めた。

 

ティアアルカナロッドを振り抜く。

ゴウエモンは手にした扇子を広げ、私の攻撃を受け流した。

続けて左から蹴りを放つものの、それすらも扇子で防がれてしまう。

 

ならばと私はさらに前に出て、連続でアルカナロッドで攻撃を続ける。

 

けれど……。

 

「やめろアルカナ・シャドウ!オレはお前と戦いたくない!」

 

……どうして?

 

ゴウエモンは私の攻撃を防いでいるだけだった。

扇子を巧みに操り、私の拳や蹴りを弾いているものの、一切反撃してこない。

 

攻撃できる隙はいくらでもあったはず。

それなのに、ゴウエモンは自分から攻撃を仕掛けようとしなかった。

 

少し離れた場所では、アンサーがニジーと激しく拳を交えていた。

さらに別の場所では、ミスティックがアゲセーヌの攻撃を躱しながら反撃の機会を窺っている。

 

……二人とも苦戦している。

ニジーもアゲセーヌも戦い方が違っていた。

 

無駄な動きが少なく、相手の攻撃を予測しているような立ち回り。

おそらくジャックから戦闘技術を教わったのだろう。

 

だとすれば、ゴウエモンも同じはず。

私の知らないところで彼らがそこまで本格的な特訓をしていたことには驚かされた。

 

だけど、それ以上に理解できないことがある。

ゴウエモンほどの実力があれば、私に反撃することだって難しくないはずなのに。

 

なぜ、何もしないの?

 

私はまたゴウエモンへ向かって駆け出した。

勢いよく足を突き出すと、ゴウエモンは扇子を斜めに構え、その軌道を逸らす。

 

私はそのまま身体を回転させ、横から蹴りを放った。

しかし、ゴウエモンは一歩後退して攻撃を躱すだけ。

 

……また反撃してこない。

 

「そんな綺麗事言ってる場合じゃないでしょ!?私はあなたを裏切ってる。それでもゴウエモンは私と戦いたくないの!?驚かないの!?」

 

私は怪盗団ファントムを裏切った。

それもウソノワールが予言を実行しようとしている、まさにこの瞬間に。

 

彼らにとって私は敵になったも同然。

なのにどうしてゴウエモンはそんな態度を取れるのだろう。

私の攻撃を受け止めたゴウエモンは、扇子を構えたまま静かに口を開いた。

 

「そりゃ驚いたさ。何のつもりでこんなことをしているのかは当然気になる。だが、正当な理由もなくオレはお前に手を出すつもりはない!」

 

……正当な理由。

 

確かにゴウエモンは私が裏切った理由を知らない。

くれあのことも、私が今まで何を考えて行動していたのかも。

 

それでも、敵になった私を攻撃しないというの?

 

……本当に、どこまで甘いのかしら。

 

「ならそこを開けて。私はウソノワールのところに行かないといけない」

 

これ以上争いたくないのなら……これを。

 

だから、お願い。

そこを通して。

 

だけど、ゴウエモンは扇子を握り直すと、私の進路を塞ぐように立つ。

 

「だが、それとこれとは別問題だ。オレはウソノワール様を守る重要な役目がある。ここを通すわけにはいかねぇ」

 

……まあそうなるわね。

 

ゴウエモンが私と戦いたくないと思っているのは本当なのだろう。

だけど、彼にも怪盗団ファントムの一員として果たすべき役目がある。

 

ウソノワールを守ること。

それだけは、たとえ私が相手でも譲れないらしい。

 

だったら無理にでも突破するしかない。

今度は正面から拳を放つと見せかけ、直前で身体を低くして側面へ回り込んだ。

 

ゴウエモンは扇子を翻し、私の進路を塞ぐ。

私は足を止めず、反対側へ回り込もうとした。

 

けれど、それすらも読まれていた。

扇子が鋭く振るわれ、私の前に強い風が巻き起こる。

その勢いに押され、後退する。

 

攻撃してこないからといって、簡単に突破できる相手じゃない。

むしろ守りに徹しているからこそ厄介だ。

 

ゴウエモンは私を傷つけようとはしない。

ただ、ウソノワールのところへ向かう道だけは、絶対に譲ろうとしない。

 

そんな攻防を繰り返していた時だった。

 

「ゴウエモン、なんで攻撃しないの?」

 

……!

 

ゴウエモンの隣にいるのは、ジャック。

 

彼女は私たちの戦いを見ていたらしく、ゴウエモンの消極的な態度を不思議そうに眺めている。

ゴウエモンもまた、ジャックの方へ顔を向けた。

 

「すまねえな、情が湧いたんだよ。今のところは敵同士だが、何か理由があるのかもしれん」

 

……情が湧いた。

その言葉が妙に胸に引っかかる。

 

ゴウエモンは私が裏切ったことを理解している。

それでも何か事情があるのかもしれないと考えてくれている。

だから、私を攻撃しようとしなかった。

 

……どうして、そんなことを。

 

一方ジャックはゴウエモンの言葉を聞いても、特に驚いた様子を見せなかった。

ただ、何かを決めたかのように、ゆっくりとこちらへ歩き始める。

 

「ならゴウエモンは休んでて、私がやる」

 

「お、おい!」

 

ジャックはゴウエモンの制止を気にすることなく、前へと進み出てくる。

 

ゴウエモンが相手なら、まだ突破する機会はあった。

けれど、ジャックは違う。

 

怪盗団ファントムの中でも、圧倒的な戦闘能力を誇る少女。

ミスティックやアンサーですら、何度も苦戦を強いられてきた相手。

 

そんな彼女が、今度は私の前に立っている。

 

「……ジャック」

 

ジャックの表情には、ゴウエモンのような戸惑いも躊躇いもない。

 

ただ、目の前の敵をどう倒すか。

それだけを考えているような冷たい眼差しだ。

 

ジャックが相手となれば、先ほどまでのようにはいかない。

少しでも隙を見せれば、容赦なく攻撃を仕掛けてくるだろう。

 

でも、くれあのマコトジュエルを取り返すために私はここまで来たのだから、戦いを止めるつもりはない。

 

「裏切り者には相応の罰を……。一回ぶん殴ってみたかったんだよね。キュアアルカナ・シャドウ」

 

……っ。

 

その言葉を聞いた瞬間、背筋に冷たいものが走った。

 

ゴウエモンとは違う。

ジャックは最初から私と戦うつもりでいる。

それにただ足止めするだけでは済まさないつもりらしい。

 

私は一歩足を引き、両腕を構えた。

目の前に立つジャックから、決して視線を逸らさない。

 

……わかっている。

裏切り者である私に、彼女が容赦する理由なんてない。

ならば私も出し惜しみなんてしていられない。

 

これまで何度もアンサーやミスティックを圧倒してきた、怪盗団ファントム最強の幹部。

その実力がどれほど恐ろしいものなのか、私だって十分に理解している。

 

彼女は私を裏切り者として始末するつもりかもしれない。

中途半端な攻撃では、きっと一瞬で返り討ちにされるだろう。

 

だったら最初から全力で行く!

 

私は周囲にエネルギーを集中させ、空中に無数の光が出現する。

12の星々が輝き、それぞれが鋭い光線を放つ準備を整えていく。

 

狙うのは、目の前に立つジャック。

 

「アルカナスターレイン!」

 

私の声に呼応するように、周囲に展開された星々から一斉にレーザーが放たれた。

 

広範囲降り注ぐ光の雨。

それぞれが異なる軌道を描きながら、ジャックのいる一点へと殺到する。

 

普通の相手なら、回避することさえ難しい。

だけど私は、この技がジャックに通用するとは思っていない。

 

アンサーやミスティックでさえ、これまで何度か回避されたり防御されたりしている。

ジャックは、あの二人を遥かに上回る実力の持ち主。

 

以前、美術館で戦闘が起きた時も、私の攻撃の流れ弾に巻き込まれながら、彼女は一切ダメージを受けていなかった。

だから今回も何らかの方法で防がれるだろうとは予想していたけれど……。

 

「!!」

 

これでも私の予想は甘かった。

 

ジャックは止まっていた。

正確には、ほとんどその場から動いていなかった。

 

最初のレーザーが迫ると、わずかに顔を反らす。

次の一撃には身体を捻り、その次はほんの少し足をずらす。

 

降り注ぐ光の軌道が最初から見えているかのように、レーザーが次々と襲いかかっているにもかかわらず、ジャックは一度も大きく距離を取ろうとしなかった。

 

反撃で打ち消すことも防御することもない。

 

ただ避ける、それだけ。

 

光線が地面を穿ち、周囲に衝撃が広がる中、ジャックの身体だけが不自然なほど滑らかに動き続けている。

そして最後の一筋が通り過ぎた時、彼女は最初とほとんど変わらない場所に立っていた。

 

全弾、回避された……。

 

「…………」

 

彼女は何も言わなかった。

ただ、私を見ている。

 

その視線に気づいた瞬間、全身に嫌な予感が走った。

まずいと思って防御の姿勢を取ろうとした時だった。

 

「ぐっ…!!?」

 

頬に鋭い痛みが走った。

視界が横へと弾け、身体が大きく傾く。

 

……殴られた?

 

何が起きたのか理解するよりも先に、私は地面を蹴って後方へ飛び退いた。

 

頬が熱い。

口の中にわずかに血の味が広がる。

 

ジャックはついさっきまで離れた場所にいたはず。

いつの間に距離を詰めたというの?

 

瞬きをする時間さえ遅く感じられるほどの速さ。

 

……これが、ジャックの実力。

 

(攻撃が重い……これをアンサーとミスティックは毎回……)

 

二人が何度も苦戦してきた理由を、今になって身をもって理解した。

 

ただ速いだけじゃない。

一撃一撃に込められた威力があまりにも大きい。

まともに受ければ、それだけで戦況が大きく傾いてしまう。

 

今度はこちらから距離を詰める。

右の蹴りをジャックの顔へ向けて放つと、彼女は軽く姿勢を下げて回避した。

 

その動きを見越して、私はアルカナロッドを棒術のように振り回す。

それも全て受け流される。

 

私は身体を低くし、足元を狙って蹴りを放った。

ジャックが跳び上がる。

その瞬間を逃さず、私は地面を強く蹴って追いかけた。

 

空中で身体を回転させ、勢いを乗せた蹴り。

けれどジャックはこれも受け止めた。

 

衝撃は伝わったはずなのに、彼女の表情は変わらない。

直後にジャックの膝が私の腹部へと迫ってきた。

 

完全には躱しきれず、脇腹をかすめた痛みに息が詰まる。

そのまま着地すると、ジャックはまた目の前に迫っていた。

 

右から拳が飛んでくる。

私はアルカナロッドで防御する。

 

続けて左。

さらに右。

休む間もなく繰り出される連続攻撃に、私は必死に対応した。

 

拳を弾き、蹴りを躱し、時には防御で衝撃を受け止める。

一瞬でも判断を誤れば、致命的な一撃を受けかねない。

それほどまでにジャックの攻撃は鋭かった。

 

私は防御に徹しながらも彼女の動きを観察していた。

どれほど速くても、攻撃する瞬間には必ず身体のどこかが動く。

 

拳を出すなら肩が動く。

蹴りを放つなら重心が変わる。

そのわずかな変化を見逃さなければ……!

 

ジャックが再び右の拳を出してきた。

私はそれを左腕で外側へ受け流す。

そして彼女の身体がわずかに前へ傾いた瞬間。

 

今だ!

私は踏み込んだ足に力を込め、右の拳をジャックの腹部へと叩き込んだ。

 

確かな手応えがあった。

ジャックの身体がわずかに折れ、足元が後方へ滑る。

 

……当たった!

私はその隙を逃さなない。

身体を回転させ、勢いを乗せた二発目の蹴りを放つ。

 

しかし、ジャックは素早く片腕を上げ、私の蹴りを受け止めた。

私の蹴りを受け止めたまま、彼女は口元に笑みを浮かべている。

 

「へえ、アンサーとミスティックよりは戦いがいがあるね。流石は先輩の名探偵プリキュアってところかな」

 

「っ…」

 

……余裕ね。

 

確かに一撃を入れたはずなのに、ジャックは痛がるどころか楽しそうにしている。

 

私は受け止められた足を引き戻そうとしたが、ジャックの腕に力が込められる。

私は反対の足で彼女の腕を蹴り、強引に拘束を振りほどいた。

 

そのまま後方へ跳んで距離を取る。

着地と同時に構え直したものの、呼吸はすでに乱れ始めていた。

 

……強い、想像していた以上に。

こちらが全力で攻撃して、ようやく一撃を入れられる程度。

それに対してジャックはまだ本気を出しているようには見えない。

 

私がそんなことを考えていた時に、ジャックの雰囲気が変わった。

 

先ほどまで浮かべていた笑みはそのまま。

けれど、彼女の身体から放たれる圧力が、一段と強くなったように感じられた。

 

「死滅天衝」

 

……!

 

その言葉が耳に届いた瞬間、ジャックの姿が視界から消えた。

 

いえ、消えたんじゃない。

速すぎて目で追えない……!

 

私の右側から衝撃が襲ってきた。

すぐに腕を上げて防御する。

 

しかし、その直後には左側から蹴りが飛んできた。

躱そうとしたものの、肩に強い衝撃が走る。

 

さらに背後。

振り返ろうとした瞬間、背中に拳が叩き込まれた。

 

「!?」

 

身体が前方へ押し出される。

けれど、倒れることさえ許されなかった。

 

今度は正面からジャックが現れ、鋭い蹴りを放ってくる。

その衝撃で地面を滑るように後退する。

 

ジャックは一か所に留まらなかった。

右へ、左へ、背後へ。

縦横無尽に動き回りながら、次々と攻撃を繰り出してくる。

 

一撃を防いだと思えば、すでに別の方向から次の攻撃が迫っている。

 

拳

 

蹴り

 

さらに拳

 

途切れることのない連続攻撃。

何人ものジャックを同時に相手にしているかのようだった。

 

私は必死に体を動かし、迫りくる攻撃を防ぎ続ける。

だけど防御が追いつかない。

右腕で拳を受け止めた直後、左側に蹴りが直撃する。

 

身体が傾いたところへ、今度は腹部に強烈な一撃。

息が詰まる。

それでも何とか踏みとどまろうとした瞬間、背後からさらに衝撃が襲ってきた。

 

(反応しきれない波状攻撃!!)

 

……このままじゃ……!

 

私は防御の体制を取り、少しでも被害を抑えようとした。

けれど、ジャックの動きは止まらない。

正面から迫ってきた拳を防ぐ。

 

その瞬間にはすでに数発の蹴りが飛んでくる。

躱そうとしても完全には避けきれない。

また背後へ回り込まれ、衝撃が走った。

 

攻撃の軌道を見極める時間さえ与えてくれない。

それでも私は耐え続けた。

くれあのマコトジュエルを取り返すまでは……!

 

私は迫ってきた拳をアルカナロッドで受け止め、強引に踏みとどまった。

 

しかし、ジャックがまた一瞬で私の側面へ回り込み、勢いを乗せた蹴りを叩き込んできた。

 

「うぅ……!」

 

凄まじい衝撃に、身体が大きく後方へ弾き飛ばされた。

足が地面を擦り、何とか転倒だけは免れる。

 

全身が悲鳴を上げている。

腕も、肩も、腹部も。

たった今受けた連続攻撃の痛みが、遅れて一斉に襲ってきた。

 

私は荒くなった呼吸を整えながら、何とか顔を上げた。

目の前にはジャックが立っていた。

 

あれほど激しく動き回っていたというのに、彼女の呼吸はほとんど乱れていない。

今の攻撃さえ軽い運動だったかのように。

 

……冗談じゃない。

これほどの攻撃を受けて、ようやく立っているというのに。

 

「これを耐えるなんて、やっぱり強い相手だと面白いね。でも、このままじゃウソノワール様と戦う前に決着がついちゃうよ?」

 

確かにこのままではまずい。

私はすでに相当なダメージを受けている。

それなのに、ジャックにはまだまだ余裕がある。

 

このまま戦い続ければ、ウソノワールのところへ辿り着く前に私の方が力尽きてしまうかもしれない。

 

……それでも私が戦う理由はただ一つ。

 

くれあのため。

あの子のマコトジュエルを取り返すために、私は怪盗団ファントムを裏切った。

 

今さら引き返すことなんてできない。

目の前にいるのが、私より遥かに強い相手だったとしても。

 

まだ終わっていない。

私はまだ、倒れていないのだから。

 

「……そろそろ頃合いかな」

 

「?」

 

頃合い……?

一体何のこと?

 

先ほどまでの激しい攻防が嘘だったかのように、ジャックはその場で動きを止めていた。

私は警戒を解かず、彼女の一挙一動を注意深く観察する。

 

すると、ジャックはゆっくりと片腕を持ち上げた。

人差し指と親指を伸ばし、ピストルを構えるかのような形を作る。

 

その指先が、真っ直ぐに私へと向けられた。

 

……あれが来る。

そう直感した瞬間、ジャックの指先に凄まじいエネルギーが集まり始めた。

 

周囲の空気が震え、闇が一点へと収束していく。

その暗さは徐々に強さを増し、直視することさえ難しくなっていった。

 

その技を見た瞬間に全身に緊張が走った。

 

極光殲滅砲………指先に収束させた膨大なエネルギーを、一筋の強烈な光線として撃ち放つ技。

その威力は、まともに受ければ一撃で勝負が決まってしまうほど。

 

先ほどの死滅天衝でさえ、私は防御しきれずに大きなダメージを受けている。

そんな状態であの光線を受け止められるはずがない。

 

……絶対に避けなければ。

私はすぐにジャックとの距離を取った。

 

正面からの攻撃を避けられるよう、彼女の指先の向きに注意しながら後方へ下がっていく。

あれほど強力な技なら、発射する直前の動きさえ見逃さなければ回避できるかもしれない。

少なくともまともに受けるよりはずっといい。

 

私はそう判断した。

……だけど。

 

それは、あくまでも私一人が狙われている場合の話だった。

 

「……はっ!!」

 

あることに気づいた瞬間、心臓が大きく跳ねた。

 

私の真後ろ。

ジャックが構えている指先の延長線上に、二人のプリキュアがいた。

 

アンサーとミスティック。

二人はそれぞれニジーとアゲセーヌを相手に、今も激しい戦闘を続けている。

 

ジャックの正面に私。

そのさらに後方に、アンサーとミスティック。

そして、二人の動きを封じるように立ち回っているニジーとアゲセーヌ。

 

……まさか、最初からこの位置に誘導していたというの?

私たちを三人に分断し、それぞれの相手と戦わせていたのも。

 

ニジーとアゲセーヌが積極的に攻め込まず、二人の動きを制限していたのも。

 

全部、この瞬間のため……?

 

ジャックの極光殲滅砲を、私たち三人まとめて受けさせるために……!

だとしたら、ニジーとアゲセーヌはそこまで考えて!?

 

……まずい!

このままでは、二人まで巻き込まれる!

 

「逃げて!!」

 

「「!?」」

 

私の叫びに二人がこちらへ顔を向けた。

けれど、その時にはもう遅かった。

 

ジャックの指先に集まっていた光が、限界まで膨れ上がる。

視界を真っ暗に染め上げるほどの閃光が、一直線に放たれた。

 

凄まじいエネルギーの奔流が、地面を震わせながら突き進んでいく。

 

私は距離を取っていたため、その軌道から身を外した。

しかし光線は止まらない。

そのまま一直線にアンサーとミスティックのいる場所へと迫っていった。

 

そして攻撃が来ることを最初から知っていたかのように、ニジーとアゲセーヌが同時に大きく後退している。

 

二人はジャックがこの攻撃を仕掛けることを知っていた。

ニジーはアンサーから素早く離れ、アゲセーヌもミスティックとの間合いを一気に広げる。

 

その場に残されたのは、アンサーとミスティックだけ。

二人が回避しようとするよりも早く、ドス黒い光線がその身体を呑み込んだ。

 

「「きゃあああああっ!!?」」

 

光線が直撃した瞬間、二人の身体が激しく吹き飛ばされる。

その勢いは凄まじく、まるで落ち葉のように宙を舞っていた。

 

……そんな。

 

アンサーとミスティックが……。

二人とも、まともに……!

 

ジャックの攻撃がどれほど危険なものなのか、私は知っていた。

だからすぐに逃げるよう叫んだ。

 

だけど、間に合わなかった。

ニジーとアゲセーヌが事前に攻撃範囲から離れていたことを考えれば、これは偶然なんかじゃない。

 

最初から仕組まれていた。

私たちの立ち位置も、戦闘の流れも、全て計算されていたんだ。

 

無事なの……?

あれほどの攻撃を受けて、二人は……!

 

そのことばかりが頭を占め、私は目の前の敵から完全に意識を逸らしてしまっていた。

 

その一瞬こそが致命的だった。

 

……っ!?

 

突然、背後に気配を感じた。

ついさっきまでジャックは離れた場所にいたはず。

 

極光殲滅砲を放った直後なのだから、まだそこにいると思っていた。

 

けれど……違う。

すぐ後ろにいた……。

 

私は慌てて振り返った。

そして視界いっぱいに映り込んできたのは、すでに振り抜かれようとしているジャックの拳。

 

しまっ……!

 

防御する時間なんて、もう残されていなかった。

目の前に迫る拳を見つめながら、私は自分が完全に隙を突かれたことを悟った。

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