かわいいホームズの親友ちゃんは、相棒の座を奪われて焦心苦慮   作:くぁwせdrftgyふじこlp

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キュアエクレールの復活!【後編】

【みのるSide】

 

キュアエクレールがウソノワールを文字通り圧倒してからしばらくの間、戦場には静寂が流れている。

 

あれほどまでに猛威を振るっていたウソノワールが、今ではまともに反撃することすらできずにいる。

 

エクレールの凄まじい速度と攻撃力は、私の想像を遥かに超えていた。

目で追うことすら困難な攻撃を前に、あの怪物でさえ一方的に打ちのめされていたのだから。

 

このまま行けば、間違いなく勝てる。

私はそう確信していた。

 

……ところが。

 

「でも……」

 

不意に聞こえてきたエクレールの弱々しい声。

 

その直後、糸の切れた人形のようにエクレールの身体がふらりと傾いた。

 

そして、そのまま音も立てずに地面へ倒れ込んでしまう。

 

「「!?」」

 

……ついさっきまであんなに圧倒していたのに。

 

ウソノワールの攻撃を難なく回避していたし、少なくとも私が見ていた限り、まともにダメージを受けた様子なんて一度もなかった。

 

なのに、どうして突然……?

 

「せ……世界が回ってますぅ~~」

 

倒れたエクレールをよく見ると、どうやら目を回しているらしい。

苦しそうというより、完全に目眩を起こしているような状態だった。

 

身体にはかすり傷一つ見当たらないということは、つまりこれは……。

 

「力を使いすぎるとああなるでシュ」

 

「「「ええええええ!!?」」」

 

あれだけ凄まじい戦いを繰り広げておいて、倒れた原因が力の使いすぎ?

 

「自分の速さについていけないでシュ」

 

……なるほど、そういうこと。

あの「きらめきタイム」という能力も、決して万能というわけではなかったらしい。

 

考えてみれば当然かもしれない。

あんな人外染みた速度で空中を飛び回り、急加速と急停止を繰り返しながら攻撃を叩き込んでいたのだ。

 

プリキュアとはいえ、身体にかかる負荷が尋常ではないことくらい想像できる。

つまり、あまりにも速すぎるが故に、自分自身の身体がその速度についていけなくなるということか。

 

……強すぎるが故の弊害。

あれほど無敵に思えたキュアエクレールにも、ちゃんと弱点は存在していたらしい。

 

まあ、あの凄まじい能力に何の代償もなかったら、それこそ反則だと思うけど。

 

とはいえ、今はそんなことを考えている場合じゃない。

エクレールが戦闘不能になった一方で、ウソノワールはまだ動いていた。

 

あれだけの攻撃を受けてもなお倒れないなんて、本当にしぶとい。

 

だけど、さすがに無傷では済んでいない。

その巨体はふらついていて、先ほどまでの圧倒的な迫力も失われつつあった。

 

今はミスティック、アンサー、アルカナ・シャドウの三人で場を繋ぐしかない。

 

「回ってます~………」

 

目を回したままのエクレールから何とも情けない声が漏れている。

……さっきまでのかっこよさはどこへ行ったのやら。

 

「エクレールが回復するまで頼んだでシュ~!」

 

シュシュタンは倒れているエクレールの身体を引きずった。

小さな身体で一生懸命に引っ張りながら、戦闘の余波が届かない安全な場所へと移動させていく。

 

しばらく休めば再び戦えるようになるらしい。

ゲームで言うところのクールタイムみたいなものかな?

 

強力な技を使った後は、一定時間の休息が必要になる。

そう考えれば納得できる。

問題は、その回復までの時間をどう凌ぐかだけど……。

 

「ウソノワールは弱ってる!今なら!」

 

アルカナ・シャドウのかけ声に合わせて三人のプリキュアが再び動き出した。

 

今のウソノワールは、先ほどまでとは違う。

エクレールの猛攻によって体力を大幅に削られ、立っていることさえやっとの状態だ。

あの怪物に、もう十分に戦えるだけの力は残っていない。

 

「ヴオ゙オ゙オ゙オ゙!!!」

 

それでもウソノワールは、怒り狂ったような咆哮を上げ、残された力を振り絞るかのように巨大な腕を三人めがけて勢いよく振り下ろす。

 

……けれど。

 

「ミスティックリフレクション!」

 

ミスティックが素早く前に出て、バリアを展開。

巨大な腕が障壁へと激突する。

 

しかし、先ほどまでの威力はどこへ行ったのか。

ミスティックのバリアはびくともせず、その一撃を軽々と受け止めてしまった。

 

今なら、十分に対抗できる!

そして、二人はその隙を逃さない。

 

「アルカナスターレイン!」

 

アルカナ・シャドウが放った無数のレーザーがウソノワールへと降り注ぐ。

 

「アンサーアタック!」

 

さらにアンサーが勢いよく飛び込み、渾身の一撃を叩き込んだ。

立て続けに炸裂する攻撃。

 

ウソノワールは防御することすらままならず、その巨体を大きく揺らしながら後方へとよろめいた。

 

「グウウゥゥ………」

 

苦しげな唸り声が。

……それでもまだ倒れない。

 

本当にどこまでしぶといんだろう。

 

だけどもう長くはない。

先ほどまでの絶望的な戦力差は、完全に覆っている。

 

今なら、この三人だけでも勝てるかもしれない。

そんな希望が私の胸の中で確かなものへと変わり始めていた。

 

「エクレール!早く起きてほしいでシュ~!」

 

シュシュタンはエクレールの傍らで大きな尻尾を振っていた。

ふさふさとした尻尾を団扇のように動かし、エクレールの顔へ風を送り続けている。

 

その甲斐あってか、先ほどまで目を回していたエクレールの表情が少しずつ落ち着きを取り戻していった。

 

「………はっ!」

 

エクレールが目を開いた。

ようやく意識がはっきりしたらしい。

 

よかった、これでまた戦える。

 

「グオ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙!!!」

 

ウソノワールにはもはや理性など残っていないのか、傷ついた巨体を無理やり動かし、死に物狂いで三人へと向かってくる。

しかし、その前に一筋の光が飛び込んだ。

 

「みんなお待たせ!」

 

……エクレール!

先ほどまで地面に倒れていたとは思えないほど軽やかな動きで、彼女は再び仲間たちの前へと躍り出た。

 

その背中を見た瞬間、私の胸が熱くなる。

 

……ようやく、ここまで来たんだ。

 

最初はミスティックとアンサーの二人だけだった。

何度も強敵に立ち向かい、傷つきながらも諦めずに戦ってきた二人。

そこへアルカナ・シャドウが加わり、そして今、長い眠りから目覚めたキュアエクレールまで戻ってきた。

 

四人のプリキュアが、同じ敵を前に肩を並べている。

少し前までなら、こんな光景は想像すらできなかっただろう。

 

それぞれが違う過去を抱え、違う想いを胸に秘めながらも、今は同じ場所に立っている。

 

私はプリキュアじゃない。

だけどこうして四人の背中を見ているだけで、不思議と勇気が湧いてくる。

 

あれほど恐ろしかったウソノワールを前にしても、もう絶望なんて感じなかった。

 

今ならどんな困難だって乗り越えられる。

そんな気さえしてくる。

 

……きっとこれが、誰かと一緒に戦うということなんだろう。

 

「私に任せて。みんなを困らせる嘘なんて、私が終わらせる!」

 

……名探偵は世界を救う。

彼女たちが掲げたその言葉を、今まさに実現しようとしている。

 

怪盗団ファントムの思惑通りになんて、絶対にさせてはいけない。

 

人々の平和を、笑顔を、そして何気ない日常を守るために。

エクレールは目の前で苦しげに唸るウソノワールへ最後の浄化へと一歩を踏み出した。

 

「オープン!プリキットミラールーペ!」

 

……プリキットミラールーペ。

ただし、みくるやあんなが使っているものとは、少しだけデザインが異なっていた。

 

細部に施された装飾や、全体から漂う独特の雰囲気。

同じ名前のアイテムでありながら、彼女のためだけに作られた特別な道具のように見える。

 

これが、キュアエクレールだけが扱う孤高のプリキットミラールーペなのだろう。

 

「シュシュタン!」

 

「シュシュ~!」

 

呼びかけに応じたシュシュタンが、エクレールへとマコトジュエルを差し出した。

それを受け取った彼女は、迷うことなくミラールーペへと装着する。

 

「マコトジュエル!」

 

周囲の景色が一変した。

 

……青い。

どこまでも澄み渡る青空。

その中を、真っ白な雲がゆっくりと流れていく。

 

足元には鏡のように透き通った水面が広がっていた。

その中央に、一人の少女が静かに降り立つ。

 

彼女の足先が水面に触れた瞬間、小さな波紋が生まれた。

 

一つ、また一つ。

幾重にも重なった波紋が、彼女を中心として果てしなく広がっていく。

 

その幻想的な光景の中で、エクレールはゆっくりとミラールーペを構えた。

 

「キュアエクレールが解決!」

 

彼女がミラールーペの鏡のついたカバーを開くと、レンズから光が放たれた。

その光はエクレール自身を包み込み、彼女の存在そのものを照らし出すかのように輝いていく。

 

そして……彼女の背中から、巨大な四枚の光の翼が現れた。

大きな翼が、左右へと輝きながら広がっていく。

 

その姿は、まさしく蝶。

光そのものを形にしたかのような翼は、透き通るような青い光を放ち、見る者すべてを魅了するほど美しかった。

 

「優雅に、羽ばたき、謎を解く!」

 

エクレールがミラールーペの中央にある宝石を回転させる。

すると、翼から放たれる光がさらに強まった。

 

もう一度回す度に輝きは一段と増していく。

まるで無限に湧き上がる力が、その小さな宝石を通じて翼へと注ぎ込まれているかのように。

 

光の粒子が周囲へと舞い散り、青空と水面を幻想的に染め上げていく。

 

……凄い、これがキュアエクレールの浄化技。

ミスティックやアンサーの技とはまた違う、圧倒的な美しさと力強さがそこにはあった。

 

「これが私のアンサーよ」

 

その言葉と共に、エクレールが大きく飛び上がった。

 

水面を蹴り、彼女の身体は一筋の閃光となって空へと舞い上がる。

 

背中に宿した四対の翼が、青空いっぱいに広がった。

その姿はもはや一人の少女というよりも、光を纏った巨大な蝶そのもの。

 

そして、その眩い翼に宿された絶大な力が、目の前に存在する嘘を打ち砕くために解き放たれようとしていた。

 

「プリキュア!フライング・インフィニティ!」

 

その姿を見て、私の脳裏に一枚の写真が浮かび上がった。

 

あの青い光の蝶が写っていた写真。

あの写真に写っていた幻想的な存在。

 

それが何なのか、ずっと疑問に思っていたけれど……そういうことだったんだ。

あの青い蝶は、キュアエクレールが放つ浄化技の一部だった。

 

目の前に広がる光景は、まさしくあの写真そのもの。

実際に目にすると、その壮大さは写真の比ではなかった。

 

彼女自身の何倍もの大きさを誇る蝶の翼が、大きく羽ばたく。

バサッ、と空気を震わせるような音と光の奔流が生まれた。

 

そして、エクレールは一直線に飛び出した。

目指す先は、ただ一つ。

 

……ウソノワール

 

青い閃光が空を切り裂く。

巨大な蝶の姿をした光がウソノワールへと迫っていく。

 

その光景を前に、私は瞬きすることすら忘れていた。

 

そして………貫いた。

 

巨大な光の蝶が、ウソノワールの身体を真正面から貫通した。

 

「キュアット解決!」

 

直後、ウソノワールの巨体を中心として光が一気に広がった。

青白い光が幾重にも重なり、その巨大な身体を完全に包み込んでいく。

 

もはや抵抗する余地すらなかった。

あれほど恐ろしい力を振るっていたウソノワールが、今はただ光の中に立ち尽くしている。

 

「グオオオオオォォォ……………」

 

断末魔のような唸り声。

その声も次第に小さくなっていく。

 

光に包まれた巨体が、少しずつ縮み始めた。

全身を覆っていた禍々しい嘘の力が、エクレールの浄化によって次々と消滅していく。

 

そしてウソノワールの変身が完全に解けた。

そこに残されていたのは、先ほどまでの巨大な怪物とは似ても似つかない、小さな妖精の姿。

 

力を失ったその身体は、重力に従うようにゆっくりと落下していった。

 

やがて、瓦礫の中へと姿を消す。

先ほどまで激しい轟音と衝撃が絶え間なく響いていた戦場に、嘘のような静けさが訪れた。

 

……終わった?

本当に……?

 

「やった………」

 

「ウソノワールを退けた……」

 

その言葉を聞いて、ようやく実感が湧いてきた。

 

……勝ったんだ。

あのウソノワールに。

 

かつてミスティックとアンサーを圧倒し、どれほど抵抗しても歯が立たなかった怪盗団ファントムの首領。

 

今日だって、絶望的なまでの強さを見せつけられた。

どれだけ必死に立ち向かっても、その圧倒的な力の前では何もかもが無意味に思えてしまうほどに。

 

しかし最後の最後で、キュアエクレールがすべてを覆してしまった。

 

エクレールだけじゃない。

ミスティックも、アンサーも、アルカナ・シャドウも。

みんなが諦めずに戦い続けたからこそ、ここまで辿り着けたんだ。

 

どれだけ追い詰められても、決して希望を捨てなかった。

その想いが、最後には絶望的な戦力差さえもひっくり返してしまった。

 

……大どんでん返し。

まさしく、そう呼ぶにふさわしい結末だった。

 

怪盗団ファントムの首領、ウソノワール。

その恐るべき野望を、四人のプリキュアが見事に打ち砕いたのだ。

 

本当に、凄い。

 

あれほど遠く感じていた勝利が、今こうして目の前にある。

そして何より、あの青い光の蝶が私たちを勝利へと導いてくれた。

 

胸の奥から、言葉にできないほどの喜びが込み上げてくる。

 

……私たちは、勝ったんだ。

 

「ぐ……ぅぅ……」

 

瓦礫の中から、苦しげな呻き声が聞こえてきた。

 

首領としての面影は、もうどこにもない。

あれほどの力を振るっていた存在が、今では自力で起き上がることすらできずにいる。

 

ゴウエモンは倒れているウソノワールを慎重に抱き上げる。

その周囲には、ニジーやアゲセーヌをはじめとする怪盗団ファントムの幹部たちが集まっていた。

 

誰もが心配そうにウソノワールの様子を窺っている。

私たちを苦しめてきた怪盗たちも、今ばかりは戦う意思を見せなかった。

 

「ウソノワール様……休演としましょう」

 

「プ………プリキュア……」

 

ゴウエモンに抱えられたまま、ウソノワールがかすれた声を絞り出す。

その言葉に込められているのが怒りなのか、悔しさなのか、それとも別の感情なのか私にはわからない。

 

ただ、一つだけ確かなことがある。

……大王になるという計画は、完全に失敗した。

 

キュアエクレールのマコトジュエルを取り込み、絶大な力を手に入れようとしたウソノワール。

けれど、その力はエクレール自身によって浄化され、すべて失われてしまった。

 

もはやこの場で戦い続ける理由も力も残されていないのだろう。

やがて、ファントムの面々は私たちに背を向け、その場から撤退していった。

 

そして、彼らの姿は跡形もなく消えてしまった。

 

……行っちゃった。

追いかける必要はもうないだろう。

 

「ウソノワール、一体何者なんだ?あんな妖精見たことないぞ」

 

ジェット先輩が、ファントムの消えた方向を見つめながら疑問を口にする。

 

ウソノワールは妖精の姿をしていたけれど、ポチタンやマシュタンたちとは雰囲気が違っていた。

そもそも、あれほどの力を持つ妖精なんて、普通に存在するものなのだろうか。

 

「……でしょうね」

 

……ん?

マシュタンの返答が、妙に引っかかった。

 

まるでジェット先輩が知らないことを最初からわかっていたような……。

けれど、今はそれを深く考える余裕なんてなかった。

 

全身から力が抜けていく。

張り詰めていた緊張の糸が、ようやく切れたような感覚だった。

 

「やっと………終わった……」

 

本当に長かった。

ウソノワールを引きつけるために囮になって、必死に走って、何度も危険な目に遭って……。

 

正直、途中からは自分でも何をどうしていたのかよく覚えていない。

ただ、みんなを助けたいという一心で動いていた。

 

その結果、こうして無事に立っていられる。

 

……よかった。

心の底から安堵したその時だ。

 

「みのるううぅぅぅ!!」

 

振り向く暇もなく、目の前に勢いよく飛び込んでくる人影。

 

「え?うわっ!?」

 

身体に柔らかな衝撃が走った。

ミスティックが私に抱きついてきたのだ。

 

あまりの勢いに後ろへよろめいてしまう。

 

「すごいよみのる!!一人でウソノワールに立ち向かってマコトジュエルを取り返したなんて!!」

 

「私もびっくりしすぎて釘付けだったよ!はなまるすごーい!」

 

てっきり無茶をしたことを怒られると思っていたのに。

ミスティックは私の身体を抱きしめたまま、まるで自分のことのように喜んでいる。

 

……あれ?

本当に怒ってないの?

 

いや、もちろん褒めてもらえるのは嬉しいんだけど……。

あれだけ危険な行動を取ったのだから、少しくらいお説教される覚悟はしていた。

 

「えっと、ありがとう?……怒ってないの?」

 

「前の私だったら怒ってたかもしれない。でも今は純粋にみのるの頑張りをすごいって言えるし、みのるが必死に頑張ってる姿を否定なんてできないから」

 

……そっか。

確かに、以前のみくるだったらきっと私の無茶な行動を厳しく注意していただろう。

 

危険だからやめてほしい。

無理をしないでほしい。

そんなふうに、私の身を案じてくれていたはずだ。

 

もちろん、それは今だって変わらないと思う。

だけど、彼女は私の行動をただ危険だったという理由だけで否定しなかった。

 

私が何を考え、何のために行動したのか。

その想いまで、ちゃんと見てくれていたんだ。

 

「正直に言うとみのるが落ちた時は心臓が止まるかと思ったけど、ポチタンとの連携も取れてたから、自然と大丈夫だって考えが変わっちゃってた」

 

あれは私自身も相当危なかったと思う。

一歩間違えていたら、今こうして笑っていることすらできなかったかもしれない。

 

でも、私は一人じゃなかった。

ポチタンがいてくれた。

私の考えを理解して、最後まで一緒に行動してくれた。

 

だからあの無茶な作戦も成功させることができたんだ。

 

「そうなんだ。みんなの役に立てたなら嬉しいよ!」

 

自然と笑みがこぼれた。

ずっと、みんなの力になりたいと思っていた。

 

プリキュアじゃなくても、何かできることがあるはずだって。

その想いが、ようやく形になったような気がした。

 

……そういえば、私はふと手元にあるものを思い出した。

 

「あ、そうだ。これ……ミスティックが落としたプリキットライト」

 

ウソノワールとの戦いの最中、ミスティックが落としてしまったもの。

私が拾ってから、ずっと手放さずに持っていた。

 

あの絶体絶命の瞬間。

このプリキットライトが私の力になってくれた。

 

「ありがとう。みのるがプリキットを使ったのもびっくりしたけど、きっとみんなの役に立てちたい強い想いが応えてくれたかもね」

 

「そういうものなのかな?」

 

ミスティックは嬉しそうにプリキットライトを受け取った。

 

……想いに応えてくれた、か。

あの時の私は必死だった。

 

目の前に迫るウソノワールの攻撃。

逃げることも、避けることもできない状況。

 

それでも諦めたくはなかった。

 

みんなを守りたい。

少しでも役に立ちたい。

 

その一心でプリキットライトを握りしめたら、私の意思に応えるように力を発揮してくれた。

 

……不思議だな。

プリキュアでもない私が、あんな力を使えたなんて。

 

「おーい!勝利を喜んでいるところ悪いけど、そろそろ移動した方がいいぞ」

 

少し離れた場所から、ジェット先輩の声が聞こえてきた。

 

「え?」

 

「あれ?人が戻ってる!?」

 

つい先ほどまで誰もいなかったはずの場所に、人々の姿が見え始めていた。

 

一人、また一人と。

最初からそこにいたかのように、人々が街へと戻ってきている。

 

「ウソノワールに消されてた人たちも、無事に戻って来れたみたいだね」

 

その光景を見て、ようやく本当の意味で安心できた。

 

ウソノワールを倒しただけじゃない。

彼によって消されてしまった人たちまで、ちゃんと元に戻ってきたんだ。

 

プリキュアの存在は無闇に公にしてはいけない。

今のミスティックたちは、まだ変身したまま。

 

このまま人々に見つかってしまったら、間違いなく大騒ぎになる。

せっかくウソノワールを倒したのに、今度は別の意味で大変なことになってしまう。

 

すぐにその場を離れることにした。

 

 

_______________

 

 

 

ウソノワールの敗北とともに、街を覆っていた結界は完全に消滅した。

 

つい先ほどまで、激しい戦闘によって見るも無惨な姿へと変わり果てていた港町。

地面には無数の亀裂が走り、建物は崩れ、あちこちに瓦礫が散乱していたはずだった。

 

それなのに、今はどうだろう。

ひび割れていた道路は綺麗に修復され、崩壊していた建物も元通り。

街並みは最初から何事もなかったかのように整然としている。

 

そして何より、あのランドマコトタワー。

ウソノワールとの激戦によって見る影もないほど破壊されていたはずの巨大な塔が、今では港町のシンボルとして堂々とそびえている。

 

青空の下、太陽の光を浴びながら輝くその姿は私たちが知っているランドマコトタワーそのもの。

 

……嘘みたい。

いや、実際に嘘だったのかもしれない。

あの凄惨な光景さえも、ウソノワールの力によって生み出されたものだったのだろうか。

 

今となっては、それを確かめる術もない。

この街には、あれほどの激戦が繰り広げられた痕跡が何一つ残っていなかったからだ。

 

「ウソノワールの嘘が解けた…」

 

「うん…」

 

ランドマコトタワーの展望台からは、港町の景色を一望することができた。

遠くには青い海が広がり、穏やかな波が陽光を反射している。

 

港には船が停泊し、その周囲では人々が忙しそうに行き交っていた。

道路には車が走り、歩道には買い物袋を提げた人や、楽しそうに会話を交わす人たちの姿がある。

 

あんな戦いがあったなんて、きっと誰も想像できないだろう。

当たり前の生活が、これからも続いていくのだろう。

 

……だけど、すべてが元通りになったわけではない。

 

キュアエクレールと、キュアアルカナ・シャドウ。

くれあさんと、るるかさん。

 

唯一無二の相棒だったという二人。

長い時間を経て、ようやく再会することができたはずなのに……。

 

その間には、どうしても埋められない距離があるように感じられた。

 

「アルカナ!」

 

「……………」

 

エクレールが、彼女の名前を呼んだ。

その声にはどこか懐かしさを感じさせる響きがある。

 

返事はなかった。

アルカナ・シャドウは背中を向けたまま、振り返ろうともしない。

エクレールの顔を見ることを拒んでいるかのようだった。

 

やっぱり私が余計なことをしてしまったからなのかな。

るるかさんはくれあさんの記憶を戻すことを望んでいなかった。

 

もうプリキュアにはならず、パティシエとして平穏な日常を送ってほしい。

そう釘を刺していた。

 

だけど私は彼女の願いを無視してしまった。

ウソノワールを倒すためとはいえ、くれあさんを再びプリキュアとして目覚めさせてしまった。

 

……これでよかったのかな。

 

結果として街は救われた。

でも、その代わりに二人の関係を壊してしまったのだとしたら……。

 

「私は、キュアアルカナ・シャドウ」

 

「え?」

 

「アルカナ」ではなく、「アルカナ・シャドウ」。

 

たったそれだけの違いなのに、そこには何か大きな意味が隠されているように思えた。

そういえば、以前私が彼女をアルカナと呼んだ時も、ひどく取り乱していた。

 

あの時は理由がわからなかったけれど……。

もしかすると、今の彼女の姿は、本来の名探偵プリキュアとしての姿ではないのかもしれない。

 

かつてのキュアアルカナと、今のキュアアルカナ・シャドウ。

その間には、私たちの知らない何かがある。

 

怪盗団ファントムとの間で、一体何があったのだろう。

そして、どうして彼女はそこまで昔の自分を否定しようとするのだろう。

 

「あなたの知っている名探偵は……」

 

彼女はゆっくりと振り返る。

そこにあったのは、喜びとは程遠い顔だった。

 

長い時間を経て、大切な相棒と再会できたはずなのに。

嬉しそうに笑うことも、懐かしそうに目を細めることもない。

 

ただ、何かを必死に押し殺しているような、ひどく苦しげな表情。

その瞳には、諦めにも似た暗い感情が宿っていた。

 

「もう、いない」

 

彼女の表情は、あまりにも複雑だった。

 

すべてを諦めてしまったようにも見える。

けれど同時に、心のどこかではまだ何かを捨てきれず、必死に葛藤しているようにも見えた。

 

……るるかさん。

あなたは一体、何を抱えているの?

どうして、そんなに苦しそうな顔をするの?

 

せっかくくれあさんが戻ってきたのに。

もう一度、昔のように一緒にいられるかもしれないのに。

 

……どうして?

 

「行きましょう」

 

彼女はこれ以上、何も話すつもりはない。

そんな明確な意思が感じられた。

 

アルカナ・シャドウは私たちから距離を取るように歩き出し、マシュタンを呼び寄せる。

 

その傍らにいるマシュタンも、決して明るい表情ではなかった。

 

「マシュタン……」

 

「………」

 

シュシュタンが心配そうに名前を呼んでも、マシュタンは何も答えなかった。

ただ静かにアルカナ・シャドウのもとへ近づき、その傍らに寄り添う。

 

その時、陽光がマシュタンの耳元にあるイヤリングを照らした。

小さな宝石が、きらりと光る。

 

その輝きが、私にはまるで涙のように見えた。

あの小さな光には、言葉にできないほどの悲しみが込められているような気がした。

 

……マシュタンも何か知っているんだ。

るるかさんが抱えているものを。

 

やがてアルカナ・シャドウはマシュタンをそっと抱き抱え、展望台の端へと歩いていく。

彼女は何の躊躇いもなく、その身を宙へと投げ出した。

 

「っ………!」

 

エクレールは展望台からアルカナ・シャドウの姿を探した。

 

……けれど、もうどこにもいなかった。

残されたのは静かな青空と、眼下に広がる平和な港町だけ。

 

私たちは確かに勝利したはずなのに。

その二人が、再び肩を並べて笑い合うことはなかった。

 

あなたの言う『もういない』という言葉には、一体どんな意味があるの。

かつての名探偵を、どうしてそこまで否定するの?

 

……この二人の間にある問題は、ウソノワールを倒しただけでは解決しない。

 

そしてそれはきっと私たちが想像している以上に深く、複雑なものなのだろう。

 

 

_______________

 

 

 

「れーーーい!!」

 

あんなの元気な声。

その声につられて視線を向けると、少し離れた場所に二人の姿があった。

 

れいとエリザさんだ。

 

「あんな!?」

 

「みんなー!」

 

こちらに気づいたエリザさんも、大きく手を振っている。

二人とも無事だったらしい。

 

ウソノワールとの戦いが激しかったせいで、二人のこともずっと気がかりだった。

あの結界の外がどうなっているのか、私たちにはわからなかったのだから。

 

けれど、こうして二人の元気な姿を確認できたことで、ようやく安心できた。

 

すると私たちの傍にいたポチタンが、勢いよく飛び出していく。

 

「れい!」

 

「ポチタン!よかった……」

 

れいは駆け寄ってきたポチタンを両手で受け止めると、その小さな身体を胸元へと引き寄せ、ぎゅっと抱きしめた。

 

れいの目には涙が浮かんでいる。

ずっと心配していたんだろう。

こうして再会できたことが、何よりも嬉しいのだと思う。

 

「ぽ、ポーチが喋った!?」

 

エリザさんはポチタンの正体をまだ知らない。

 

私たちにとってはすっかり見慣れた光景だけど、初めて見た人からすれば相当不思議な存在だろう。

 

そんなエリザさんの様子をよそに、くれあさんが心配そうに声をかけた。

 

「足は、大丈夫?」

 

エリザさんは歩道橋の階段で足を挫いていた。

無事に再会できたとはいえ、怪我が悪化していたら大変だ。

 

「うん。みんな無事でよかった……」

 

ポチタンが喋ったことに驚いていた彼女だったけれど、今はそれ以上に、みんなが無事だったことへの喜びが勝っているようだった。

その瞳には涙が浮かんでいた。

 

エリザさんも、ずっと心配してくれていたんだ。

私たちがどんな戦いをしていたのか、すべてを知っているわけではないだろう。

 

それでも、こうして全員が無事に戻ってきたことを、心から喜んでくれている。

 

あれほど危険な戦いを乗り越えて、こうして再び顔を合わせることができた。

 

当たり前のように思えるこの時間が、今は何よりも大切に感じられる。

 

 

_______________

 

 

 

【あんなSide】

 

〈続いてのニュースです。まことみらい市での怪獣騒ぎですが、被害はありませんでした〉

 

事務所のテレビから、聞き慣れたニュースキャスターの声が流れていた。

 

……怪獣騒ぎ、か。

あの巨大なウソノワールを見た人たちからすれば、怪獣としか言いようがないのかもしれない。

でも、私たちにとっては、そんな簡単な言葉で片づけられるような出来事じゃなかった。

 

圧倒的な力。

何度攻撃しても倒れない巨体。

そして最後の最後まで諦めずに戦い続けたみんなの姿。

 

……本当に、長い戦いだったなぁ。

ようやくキュアット探偵事務所に帰ってくることができた私たちは、久しぶりに身体を休ませていた。

 

さっきまで緊張しっぱなしだったせいか、椅子に腰を下ろした途端、全身の力が抜けてしまった。

もう今日は何も考えずに、ゆっくり過ごしたいくらい。

 

テレビでは相変わらずウソノワールのことが話題になっているけれど、幸いにも大きな騒ぎには発展していないみたい。

あの結界のおかげで、港町の建物も道路も、全部元通りになった。

 

ニュースでも被害はなかったと報道されているし、街の人たちも普段通りの生活に戻っている。

あれだけ激しい戦いだったのに、誰も被害を受けずに済んだんだから。

 

「やっぱりここが、一番落ち着くでシュ~!」

 

シュシュタンは自分の大きな尻尾をくれあさんの腕にくるりと巻きつけていた。

 

まるで本物のシュシュみたい。

ふわふわした尻尾が腕を包み込んでいて、シュシュタン自身も満足そうに身体を預けている。

 

……だからシュシュタンって名前なのかな?

あんな体勢でくっついていて疲れないんだろうか。

 

まあ、本人が落ち着くって言ってるんだから、いいのかな。

 

私はそんなことを考えながら、用意していたお茶をみんなのところへ運んだ。

こうしてみんなでお茶を飲める時間が、なんだかすごく久しぶりに感じられる。

 

「お茶が入ったよ~。あれ?ジェット先輩とみのるは?」

 

人数分のお茶を用意したつもりだったけれど、二人の姿が見当たらない。

さっきまで一緒にいたはずなのに、どこへ行っちゃったんだろう?

 

「研究室にいると思うけど…」

 

……研究室?

こんな時まで、二人で何か調べているのかな。

 

戦いが終わったばかりなのに、もう研究を始めているなんて。

 

でも、何を調べているのかは気になる。

私たちは二人を呼ぶために地下にある研究室へ向かうことにした。

 

階段を下りていくと、事務所の賑やかな雰囲気とは違う静かな空気が漂ってくる。

研究室の扉へ近づくと、中から二人の話し声が聞こえてきた。

 

「どれだけ調べても普通の鎧にしか見えないよ……」

 

「もっと詳しく調査する必要がありそうだ」

 

……鎧?

何の話だろう。

 

とりあえず扉を開けてみる。

 

「何してるの?」

 

「見りゃわかるだろ?調べてるんだ」

 

研究室の中ではジェット先輩とみのるが大きな作業台を囲んでいた。

その中央に置かれていたもの………これって!

 

「ウソノワールが置いていった鎧をジェット先輩が持ち帰って調査してるところだよ」

 

作業台の上にあったのは、あのウソノワールが身につけていた鎧だった。

 

改めて見ると、鎧そのものは特別変わった形をしているわけじゃない。

表面には細かな装飾が施されているけれど、見た目だけなら普通の鎧とそれほど違わないようにも思える。

 

……でも、これがあのすごい力の秘密を握っているんだとしたら?

 

「あのとんでもない力は、こいつのおかげみたいだ。動かす仕組みも全くわからない……一体なんなんだ?」

 

ジェット先輩でもわからないんだ。

やっぱり、普通の鎧じゃないんだろうな。

 

「シュシュタンも初めて見るでシュ……」

 

「なんでも知っている『知識の妖精』のシュシュタンも知らないなんて……」

 

シュシュタンは知識の妖精というのをくれあさんから聞いた。

いろいろなことを知っているシュシュタンですら見たことがない鎧。

 

……ますます不思議になってきた。

ウソノワールはどこでこんなものを手に入れたんだろう。

それとも、最初から彼が持っていたものなのかな?

 

考えれば考えるほど、疑問が増えていく。

けれど、そんな私たちの様子を見て、ジェット先輩は自信満々に胸を張った。

 

「ま、この天才に任せとけって!必ず解明してみせるから!」

 

……あはは、やっぱりジェット先輩だ。

さっきまで難しい顔をしていたのに、もうすっかりいつもの調子に戻っている。

 

でも、こういう時のジェット先輩は本当に頼りになる。

きっと今回も、何かすごい発見をしてくれるんだろうな。

 

「シュシュタンも調べてみるでシュ~!」

 

シュシュタンもやる気満々みたい。

知識の妖精と天才発明家。

この二人が一緒に調べるんだったら、きっと鎧の秘密もすぐにわかるはず。

 

……なんて考えながら、私はもう一度作業台の上に置かれた鎧へ視線を向けた。

 

鎧の襟元、そこに刻まれている小さな星形の模様。

その模様が一瞬だけ………光ったように見えた。

 

「……?」

 

気のせいだったのかな。

研究室の照明が反射しただけかもしれない。

私は少しだけ不思議に思いながらも、それ以上は気にしないことにした。

 

 

_______________

 

 

 

オレンジ色に染まった夕焼けが、ゆっくりと地平線の向こうへ沈もうとしていた。

 

空を上げると、西の方角にはまだ太陽の名残が鮮やかに広がっているけれど、反対側はすでに青紫色の夜空へと変わり始めている。

 

昼と夜が入り混じる、不思議な時間。

その境界をなぞるように、空には淡い色の雲がゆっくりと流れていた。

 

そして、夕焼けとは反対の空にはぽっかりと月が浮かんでいる。

まだ完全に暗くなっていないせいか、その光は少し控えめだったけれど、中庭のガーデンを優しく照らしていた。

 

キュアット探偵事務所の中庭には、色とりどりの花が咲いている。

その中でも一際目を引くのが、白く美しい百合の花。

 

すらりと伸びた茎の先に、大きく開いた花びら。

夕焼けの光を受けたその姿は、ほんのりと橙色に染まっている。

 

この百合が、くれあさんの記憶を取り戻す鍵になったんだ。

この花があったからこそ、くれあさんは再びキュアエクレールとして目覚めることができた。

 

そして、その百合の花が咲くガーデンの前に、一人の女性が立っていた。

 

「くれあさん!探しちゃいましたよ!」

 

私の声に気づいたくれあさんが、ゆっくりとこちらを振り返る。

夕焼けに照らされたその横顔は、どこか物思いにふけっているように見えた。

 

「ごめんなさい。トップオブリリー、るるかと一緒に植えたの」

 

……そっか。

るるかさんと一緒に植えた花。

 

つまり、このガーデンには二人の思い出が残されているんだ。

 

今はもう、ここにるるかさんの姿はない。

ウソノワールとの戦いが終わった後、彼女は私たちの前から去ってしまった。

 

せっかくくれあさんが戻ってきたのに……どうして、あんなことになっちゃったんだろう。

 

「くれあさん……」

 

その先の言葉が出てこない。

何を言えばいいのかわからなかった。

 

二人がどれほど深い絆で結ばれていたのか、私にはまだ全部はわからない。

それでも、くれあさんにとってるるかさんが大切な存在だということくらいは、十分に伝わってくる。

 

今ここで無理に元気づけるようなことを言っても、きっと違う気がした。

 

そして私には、もう一つ伝えなければならないことがある。

 

くれあさんがキュアエクレールとして復活したということは、これから私たちと一緒に事件を解決していくことになるはず。

 

もちろん、まだわからないことはたくさんある。

るるかさんのことだって、これからどうなるのかわからない。

 

それでも、同じ名探偵プリキュアとして一緒に行動するのなら、隠し事はできるだけ少なくしておきたい。

 

……特に、私のことは。

 

今までずっと、当たり前のようにみくるたちと一緒に過ごしてきた。

けれど、くれあさんは私がどこから来たのかまだ知らない。

 

後になってから、あの時ちゃんと話しておけばよかったなんて後悔するのは嫌だ。

それに、いつか話さなければならないことなら早いうちに伝えておいた方がいい。

 

……うん、決めた。

私は小さく息を吸い込み、くれあさんの方へ向き直った。

 

「それで、何かあったの?」

 

ここは思い切って、正直に話そう。

変に遠回しに説明するより、最初から全部伝えた方がきっとわかりやすい。

 

「実は私……2027年から来たんです!」

 

くれあさんは、私の顔をじっと見つめている。

 

……あれ?

反応がない。

 

もしかして、いきなりすぎたかな?

でも事実なんだから仕方ないよね?

 

「……………え???」

 

……やっぱり、そうなるよね。

 

くれあさんは完全に固まってしまっていた。

 

その表情は、まるで今まで聞いたこともないような、とんでもない話を突然聞かされた人そのものだった。

 

実際そうなんだけど。

だって、いきなり未来から来たなんて言われても、普通は信じられないよね。

 

私だって、逆の立場だったら同じ反応をすると思う。

 

さて、ここからどう説明しようかな。

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