(実は実力を隠してたりする)最弱が実力主義の世界に挑もうなんて考えてませんって。 作:異世界製菓(Prime)
(実は実力を隠してたりする)最弱が学園長に逆らおうなんて考えてませんって。
今私は、灰嬢勝より学園長がいるという部屋に連れられている。
「もっと…話したかったんですけど」
「あの子と、か?急を要しろと言われてな。水を刺すしかなかった。すまなかったとは思ってるよ」
「そういえば。学園長…って、何者なんです?」
「どうだろうな。『どんな人間か』なら、オレは分からないと答える。…さて、そろそろだ」
そうしてたどり着いたのは、ある大きな一室。
重い扉を開けて、中に入る。
中はというと…豪華だった。随分高級そうな外見。
客に対応するための机と四つの椅子が脇に置かれている。
奥には、背が高い机に積まれた資料と…小さな…子供?がいた。
窓から外を見下げている。それからカップの中のものを啜り…むせている。
「けほっけほっ、あー…けほっ、もう、コーヒーは飲まないようにしようかな…けほっ、苦いし熱いし!」
それを見かねてか、灰嬢勝が「はぁ」とため息をついたのち、砂糖の入った袋をいくつか持っていった。
「…学園長。御客人だ。それと、苦いなら砂糖とかミルクを入れればいいだろ」
「あ、ああ…灰嬢勝さん。でも熱いのはどうにもならないでしょ」
「冷めるまで待てばいい」
「私はすぐに飲みたいの!…あ、客?まぁそこら辺に座っといてよ」
「学園長、礼儀」
「そんな犬みたいな…ああ、そうだ。彼女とは二人で話したい。廊下で待つか、そのまま戻っていい」
「ああ、了解」
学園長と呼ばれた子供は、椅子を動かしてこちらに来る。
「…それ、さっきから聞こえてるんだけど…てか、子供じゃ…あーいや、君たちと同じくらいだしなぁ」
「……そうですか」
先ほど彼女を小さい子供と表現したが…なぜ小さいのかがわかった。
「気にしなくていいからさ。ささ、ちゃっちゃと終わらせちゃおう」
手足がない。厳密に言えば、欠損している。ついさっきカップを持っていたのは…背中から伸びる半透明の青白い腕だ。
「…切り替えて」
「はいはい」
「まず。単刀直入に聞くよ…」
「黒乃カイリ。何者なの、きみ」
「質問の意図が理解できかねますね」
「分からないの?きみは…Sランク相当のあの教師を、ふっ飛ばしたんだ。Dランクの、それも最下位であるきみがだ。なぜ?どうやって?」
「…そうですね。私は…」
「私はただの、黒乃カイリ。おそらく貴女と、相反するもの」
「なぜ?なぜ相反する?…我々の、実力主義的な思想に?」
「…私の目的は、━━━━━」
「……そんなの、どうやって成し遂げるつもりなんだ」
「私の能力は━━━━━━━━。━━━━━━━」
「そうか。…父上がやっていたことは、そういうことか。……」
学園長は考える素振りをして、もう一度口を開く。
「…理論上は可能。あくまで今考えただけだけどね」
「それで十分です。…貴女には、辛いことをさせてしまう」
「構わないさ。父上が望んだことでもある。この手足は名誉の傷ってやつさ。…」
「…ありがとう、ございます」
「それはそれとして…話は変わるんだが。きみはランクが上がった。DからBだ。高い方が融通が効くしな、Sランクなら尚更だ」
「リンは?」
「リンカくんかな?ああ、望むなら加える…というより、もうBランクなんだが。そも、彼女の能力でたかがDランクにおさまっているほうがおかしい」
「ありがとうございます。お礼を言ってばっかりですね」
「そんなきみにだ。おそらく…ほぼ確実に、高位のランカーはきみとリンカくんの実力を疑うだろう」
「ふむ。どうするのですか?」
「私が?きみがどうにかするんだ。こちらで話をつけておいた。…ある街が一夜にして滅んだ、というのはご存知かな?」
「…確か、『墓地街モリントメント』でしたっけ」
「そうだ。そんなことが起きたからこそ、色々推測が立てられ尾鰭がついた噂が広まる。目撃証言もあった、都市伝説…『墓地歩き』。きみと、もう一人にそれを対処してもらう。彼女、暴れ足りてないみたいだし」
…どんな人なんだろ。怖そう。
「怖いですね。…都市伝説が」
「嘘は付かなくてもいいんだけどね、私の前でなら。まとめると…墓地街モリントメントにいる墓地歩きを対処する。『対処』の仕方はなんでもいい。無力化でも、殺すでも」
「了解しました」
「おーけー」
そして椅子から立ち上がって…
「…明日ここに集まるように」
「明日?結構すぐなんですね」
「善は急げだ。きみのために考えたんだからな。ちなみに、表には『本当にBランクに相応しいのか試す』と伝わっている。死んではくれるなよ…多分、できないだろうが」
それを聞き届け、部屋から出る。
カイリの秘密1:『実は、リンカのことがとても大好き』
リンカの秘密#1:『実は、カイリのことがとても大好き』