自宅に届いた『惑星開発キット』で、社畜SEは異世界工場の管理者になる ~運用保守はもう終わり。現代の物資と無限の資源で、銀河規模の自動化帝国を築き上げます~ 作:パラレル・ゲーマー
「今日こそ、絶対にスライムを倒す!!」
東京・品川、星海インタラクティブの社内テストルーム。
フルダイブポッドの前に立った佐倉健太は、拳を握りしめて高らかに宣言した。
前回の初テストから一週間。健太はこの七日間、仕事の合間も寝る前も、あの城門の外でぷるぷると揺れていた青いスライムの姿が頭から離れなかったのだ。
「前回みたいに、パン屋で初期資金を使い切ったり、武器屋で持てもしない大剣を試着して時間を溶かしたりは絶対にしない! 俺は今日、剣士としてモンスターと戦うんだ!」
鼻息を荒くする健太の隣で、真田悟が苦笑しながら手元のメモ帳を閉じた。そこには、前回わずかに見えたUIの仕様や初期スキルの構成から逆算した、本日のタイムスケジュールと陣形案がびっしりと書き込まれている。
「その意気だ、佐倉。今回は冒険者ギルドの登録も済んでいるから、ログインしたら最短ルートで依頼を受けてそのまま南門から出る。移動目標は三分以内だ」
男性陣二人がすっかり戦闘モードに入っている横で、水野結衣が少しだけ名残惜しそうに指先を絡めた。
「えー……でも、あの街の東にある時計塔から夕日も見てみたかったなあ。あと、赤猪亭のシチューもまだ食べてないし……」
「水野さん、今日は『戦闘テスト』の日だからな!? 観光はちゃんとノルマを達成して時間が余ってからだ!」
悟がピシャリと釘を刺す。
そのやり取りを見ていたディレクターの黒瀬やプランナーの島村たちが、コンソールの前で楽しそうに笑っていた。
黒瀬が手元のタブレットで、本日の検証項目を読み上げる。
《クローズドβテスト第二回:FD-2準拠 戦闘アクション・魔法操作・パーティ連携検証》
「前回は君たちが街の中で想定の五倍寄り道してくれたおかげで、肝心の戦闘データが全く取れなかったからな。今日は存分に外で暴れてきてくれ。データは前回の終了時点――ギルド登録完了の状態から引き継いである」
「よっしゃあ! 行こうぜ二人とも!」
三人はそれぞれのポッドへと乗り込み、ヘッドギアを装着した。
《FULL DIVE CONNECTION――START》
視界が白く弾け、次の瞬間、三人は再び城塞都市『アルカディア』の中央広場に立っていた。
頬を撫でる爽やかな風と、活気ある街のざわめき。何度体験しても、自分が別の世界の空気を吸っているという事実に胸が躍る。
健太は一歩踏み出し――そこでふと、視線を広場の角へと巡らせた。
「……今、探してるでしょ」
隣を歩く結衣が、ジト目で健太の横顔を突いた。
「い、いや、違くて! ほら、先週はいきなり抱きついて迷惑かけたからさ、もしあのお姉さんが通りかかったら、社会人としてちゃんと謝っておこうかなって!」
「下心しか見えない言い訳をするな。謝罪に行ったらまた衛兵が飛んでくるぞ、前を見ろ!」
悟に背中を押され、三人は大通りを早足で進み始めた。
しかし、この街の誘惑は手強い。
赤い幌のベーカリーの前を通りかかれば、焼きたての黄金蜂蜜パンの甘く芳ばしい香りが風に乗って鼻腔をくすぐる。
「……っ、やっぱり一個だけ買って食べ歩きしながら――」
結衣の足が吸い寄せられるように店へ向かいかけ、健太が「おい水野さん、我慢しろ!」とローブの襟首を掴んで引き戻す。
さらにその先の路地裏から、「ニャア」と可愛らしい鳴き声がして、前回の茶トラ猫がひょっこりと顔を出した。
今度は、先頭を歩いていたはずの悟の足がピタリと止まった。
「……真田さん? 今、膝を曲げてしゃがもうとしなかったか?」
「してない! 靴紐の確認だ!」
「お前ら、先週俺のこと散々寄り道魔みたいに言ってたよな!?」
互いにツッコミを入れ合いながら誘惑を振り切り、三人はギルドの受付で初心者用の『始まりの草原・スライム三体討伐』の依頼書を光の速さで受注した。
そのまま脇目も振らずに大通りを駆け抜け、前回は四十分かかった道のりを、今回はわずか四分で突破して巨大な外周城門をくぐり抜けた。
視界いっぱいに広がる、果てしない緑の大草原と蒼穹。
ここからようやく、三人にとって本当の「冒険」が始まるのだった。
◇
街道から少し外れた、背の低い草花が揺れるなだらかな丘陵地帯。
革靴の裏に伝わる柔らかな土の感触を確かめながら、三人は慎重に歩を進めていた。風が吹くたびに草が波打ち、遠くの小川のせせらぎが耳に届く。
その時、前方の草むらがガサリと揺れた。
三人の足が同時に止まる。
草をかき分けて、ぷるん、と弾みながら姿を現したのは、太陽の光を透かす美しい青色のゼリー状の生命体――一週間前、まさに剣を振り下ろす直前で強制ログアウトの憂き目に遭った、因縁のスライムだった。
「いたあああああ!! お前、先週のあいつだな! 一週間越しの仇を取ってやる!!」
健太が歓喜の声を上げて腰の鉄剣を引き抜いた。
「どう見ても別個体だろ! いいか佐倉、打ち合わせ通り陣形を守れ!」
悟が素早く背中のショートボウを構え、数歩後ろへ下がりながら指示を飛ばす。
「俺が後方から矢で牽制する。佐倉は前衛で敵の足止めだ。水野さんはその後ろから魔法で援護を頼む!」
「うん、任せて! 今日は魔法をいっぱい撃つために来たんだから!」
結衣も木の杖を両手で握りしめ、気合十分といった様子で頷いた。
相手はRPGにおける最弱モンスターの代名詞、スライムである。三人とも、この時点ではピクニックの延長のような余裕とワクワク感に満ち溢れていた。
健太が左手の小型の円盾(バックラー)を前に出し、スライムとの距離を詰める。
「よし、来いよスライム! 俺の最初の一撃を――」
健太が言いかけた、その瞬間だった。
地面にいた青いスライムの身体が、ぐにゃり、と低く潰れるように縮んだかと思うと。
バネが弾けるような猛烈な初速で、健太の胸元めがけて一直線に飛びかかってきたのだ。
「うおおっ!?」
画面越しのゲームなら、可愛らしいモーションに見える体当たりだ。
だが、自分の目の前に、直径五十センチ近い質量の塊が砲弾のようなスピードで迫ってくる光景は、想像を絶する迫力だった。
健太は悲鳴を上げながら、反射的に左腕の盾を顔の前に掲げた。
ドォンッ!!
硬い木と鉄の盾を突き抜けて、ズシリと重い衝撃が左腕から肩、そして胴体へと一気に突き抜けた。
視界の隅にある緑色のHPバーが、ほんのわずかに削れる。FD-2の安全規格により「痛み」は完全に遮断されている。しかし、自分の身体が物理的な質量にぶつかられ、後ろへ押し込まれる強い圧迫感はそのままフィードバックされていた。
「う、うわっと……!」
健太はたたらを踏んで二歩後退し、革靴の踵で必死に草原の土を踏みしめて体勢をこらえた。心臓がドクンと大きく跳ねる。
「ちょっ、待てこれ!! スライムってこんなに勢いよく飛んでくる生き物なの!?」
盾を構え直しながら、健太が目を白黒させて叫んだ。
「体当たり攻撃なんだから飛んでくるに決まってるだろ! 怯むな佐倉、ゲームなんだからちゃんと戦え!」
後ろから悟が檄を飛ばす。
「頭じゃゲームだって分かってるけど、本当に自分の目の前に飛んでくると話が全然違うんだよ!!」
モニターの向こうのキャラクターがダメージを受けるのではない。「自分自身」が敵意を持ったモンスターに襲われる。その圧倒的な臨場感に、健太の額にじわりと汗が浮かんだ。
だが、怖いだけではない。
盾で弾き返され、目の前の草むらにボテッと落下して無防備に揺れているスライムを見た瞬間、健太の中でゲーマーとしての闘争本能に火がついた。
「くそっ、よくも驚かせてくれたな……! せいっ!!」
健太は右足のバネを使って一歩踏み込み、右手の鉄剣を力いっぱい斜めに振り下ろした。
剣術アシストが軌道を補正し、白刃がスライムの半透明な身体へと深々と食い込む。
ぐにゅり。
刃から返ってきたのは、訓練場の藁人形とは全く違う、奇妙な手応えだった。
分厚く弾力のあるゼリーを無理やり押し潰すような強い抵抗感。そこからさらに腕に力を込め、刃を押し込むと、ブツッ! と表面張力が限界を迎えたようにゼリー状の身体が裂け、青い光の粒がしぶきとなって散った。
スライムの頭上に表示されたHPゲージが、一気に三分の一ほど減る。
「うおおおおお!! 斬れた! 今、俺が自分の手でモンスターを斬ったぞ!!」
腕に残る確かな「斬撃の感触」に、健太が歓喜の声を上げた。
しかし、喜びすぎて剣を振り抜いたまま硬直してしまう。
ダメージを受けたスライムが、即座に身体を収縮させて二度目の跳躍体勢に入った。
「あ、やべっ!?」
健太が慌てて盾を戻そうとするが、大振りした後の体勢からは到底間に合わない。
スライムが地面を蹴り、無防備な健太の脇腹へ飛びかかろうとした――その刹那。
ヒュンッ!!
風を切り裂く鋭い音とともに、後方から飛来した一本の矢が、跳び上がったスライムの横腹に深々と突き刺さった。
パシッ! という乾いた命中音とともに、スライムの身体が空中で横に弾かれ、健太のすぐ脇の地面へと不格好に転がり落ちる。
「……ナイス真田さん! 助かった!」
「よそ見するな! まだ生きてるぞ、前を見ろ!」
弓を構えたまま叫ぶ悟の声にも、隠しきれない興奮が混じっていた。先週は訓練場の動かない的に当てるのがやっとだった自分の矢が、今、動いているモンスターを正確に射抜き、前衛の仲間のピンチを救ったのだ。
◇
前衛の健太と中衛の悟が、転がるスライムを相手に激しく立ち回る。
その後方で、魔術師の結衣は木の杖を構えたまま、焦っていた。
(えっと、先週の訓練場では、杖の先を敵に向けて、《ファイアボルト》って声に出して撃ったんだよね……!)
結衣は杖の先端をスライムに向け、深く息を吸い込んだ。
だが、ここは訓練場ではない。
スライムは不規則に草むらを跳ね回り、それを追って健太が左右にステップを踏み、さらに悟の矢が交差する。
「ちょ、ちょっと二人とも! そんなに動き回らないで、怖くて狙えないよ!」
「無理言うな水野さん! 止まったらこいつに体当たりされるんだよ!」
健太がスライムの突進を盾で受け流し、二者がもつれ合うようにして位置が入れ替わる。
狙いを定めて、魔力の流れを意識して、呪文の名前を口に出す――そんな手順を踏んでいる間に、射線上には健太の背中が入ってしまう。
その時だった。
健太の剣が空を切った隙を突き、スライムが大きく横へ跳躍した。そこからさらに二段跳びのように地面を蹴り、体勢を崩した健太の死角から、その頭部めがけて一直線に飛びかかったのだ。
「うわっ、マズい!?」
「佐倉、避けろ!」
悟の二射目はまだつがえられていない。健太の盾も間に合わない。
それを見た結衣の喉が、ひゅっと鳴った。
呪文を唱えている時間なんてない。杖を構え直している余裕もない。
けれど、結衣の脳裏には、ただ一つの強烈な思いが閃いていた。
(あいつを止めなきゃ。――あそこに、炎を飛ばして撃ち落としたい!)
言葉よりも早く、結衣の頭の中に鮮明なイメージが浮かび上がった。
自分の手元で赤く燃え上がる火球の熱。それが弧を描いて飛び、空中のスライムのど真ん中に突き刺さって弾ける光景。
「そこへ飛んでいけ」と、結衣の意思が世界のルールに触れた、その瞬間だった。
――ボッ!!
結衣は、一言も声を出していなかった。杖を大きく振りかぶってもいなかった。
ただ、突き出した杖の先と、空き手である左手の指先がスライムを捉えていただけだ。
それなのに。
結衣が頭の中で思い描いたのと寸分違わぬタイミングで、杖の先端の空間がカッと赤く爆ぜ、バスケットボール大の真紅の火球が瞬時に形成されたのである。
次の瞬間、火球は結衣の意思に引かれるようにして空気を裂き、跳躍中のスライムめがけて一直線に飛翔した。
ドォンッ!!
空中で火球が直撃し、盛大な炎の華が草原に咲き誇る。
焼き焦げるような熱風と、煌めく火の粉が舞い散り、吹き飛ばされたスライムが地面を数回転がったかと思うと、そのまま光の粒子となってシュウウと消滅していった。
ピロン、と軽やかな音が響く。
《スライムを討伐しました》
《経験値を獲得しました》
しかし、結衣の目には、そんなシステムウィンドウなど全く入っていなかった。
結衣は草原の真ん中で立ち尽くしたまま、自分の両手を顔のすぐ前に掲げて、じっと見つめていた。
華奢な指を、ゆっくりと握る。そして、開く。
自分の手のひらを、表と裏、何度も交互に見つめる。
「…………え?」
ぽつりと漏れた声に、剣を下ろした健太が笑顔で駆け寄ってきた。
「うおおお、水野さんナイス!! 今のめちゃくちゃ完璧なタイミングだったぞ! 危うく顔面にスライム食らうところだった!」
だが、結衣は健太の方を見ようともせず、まだ自分の指先を凝視している。
遅れて歩いてきた悟が、その異様な様子に気づいて眉をひそめた。
「……水野さん? どうした、どこか気分でも悪くなったか?」
結衣はゆっくりと顔を上げ、二人を見た。
その瞳は、驚きと、信じられないものに触れたような感動で大きく見開かれていた。
「……今、私、魔法の名前、言ってない」
かすかに震える声で、結衣が言った。
健太と悟が顔を見合わせる。
「え? あ、そういえば『ファイアボルト』って聞こえなかったな。小声で言ったんじゃないのか?」
「違うの。声なんて全然出してないし、杖だって振ってない」
結衣はもう一度自分の右手を見つめ、次第に熱を帯びていく声で続けた。
「ただ、健太くんが危ないって思って……あのスライムに炎を当てたい、あそこまで火の玉よ飛んでいけって、頭の中で強く考えただけなの。そしたら……」
そこで結衣は息を呑み、次の瞬間、弾かれたように顔を上げて叫んだ。
「本当に出た!! 私が頭の中で『炎を出したい』って考えたら、本当に私の手から炎が出たんだよ!!」
結衣の声が、広い草原の青空へと突き抜けた。
これまで結衣は、現実世界で何十本、何百本というファンタジーRPGを遊んできた。
コントローラーのボタンを押す。コマンドメニューから『魔法』を選び、『ファイアボルト』を決定する。すると画面の中のキャラクターが杖を振り、プログラムされた美しい炎のエフェクトが再生される。
それはもちろん楽しかったし、画面の中の魔法使いにずっと憧れていた。
けれど、今ここで起きたことは、それとは次元が違っていた。
魔法を使うキャラクターを「外から操作した」のではない。
ボタンも、コマンドも、詠唱という手順すら介さず、「炎よ出ろ」という自分自身の純粋な意思が、そのままダイレクトにこの世界の物理現象となって具現化したのだ。
画面越しのゲームでは絶対に味わうことのできない、自分の心と世界が直結する感覚。
結衣は自分の両手を胸に当て、込み上げてくる感情を抑えきれずに、くすくすと笑い出した。
「あはっ……あははははっ! なにこれ、すごい、すごいよ! だってこれ、本当に魔法じゃん! 私、今、本当に魔法使いになってる!!」
少女のように無邪気に跳びはねて喜ぶ結衣を見て、悟がハッとしたようにメニュー画面を開き、システムヘルプの『魔法操作』の項目を呼び出した。
《魔法操作方式:意思入力(ダイレクト・インテンション)》
《習得済みの魔術スキルに対し、明確な発動意思と対象・軌道のイメージを定めることで、術式は即座に起動します。音声による詠唱や杖の予備動作は、初心者がイメージを固定するための補助ガイドであり、必須ではありません》
「……なるほど!」
悟が画面を指さして唸った。
「先週の訓練場では、チュートリアルのガイド通りに声を出しながら撃ってたよな。あれはただの補助輪で、本来は『頭の中で発動をイメージするだけ』で撃てる仕様だったんだ!」
「えっ、ちょっと待てよ」
健太が口をあんぐりと開けて結衣を見た。
「ってことは、このゲームの魔法使いって、戦闘中に頭の中で考えるだけでバンバン魔法を撃てるってことか!?」
「そういうこと!!」
結衣が満面の笑みで胸を張る。
「私、考えるだけで炎が出せるの!」
開発陣にとっては、数か月前から仕様書に明記し、何度も調整を重ねてきた標準の入力システムに過ぎない。単なる雑念や日常会話での連想では暴発せず、プレイヤーの明確な「スキル発動意思」だけを検知して術式を起動する仕組みだ。
だが、それを実戦の極限状態で自ら掴み取った結衣にとって、それは自分が本物の「魔法使い」へと生まれ変わった、生涯忘れられない革命的な瞬間だった。
◇
一度その感覚を掴んでしまうと、もう結衣の好奇心は誰にも止められなかった。
「ねえ、ちょっと待ってて! もう一回、最初から声を出さないで試してみたい!」
「おい水野さん、MPの残量は大丈夫なのか?」
「まだ八割残ってる! ほら、あそこの岩を狙うから見てて!」
結衣は十メートルほど離れた場所にある手頃な岩の前に立つと、杖を軽く前に構えた。
今回は最初から口を閉じ、杖も振らない。
ただ岩の一点を見つめ、頭の中で「あそこに火球を撃ち込む」と明確に意思を固める。
ボッ!
思った通りの瞬間、杖の先端に赤い火球が出現し、一切のタイムラグなく岩へと飛んでいって炸裂した。パチパチと火の粉が舞い、結衣が「うわあああ!! やっぱり出たあああ!!」と両手を挙げて歓声を上げる。
「おい、今の見たか真田さん! マジでノーモーションで火が出たぞ!」
「ああ……詠唱時間なしでこれが撃てるなら、立ち回りの自由度が段違いだぞ」
さらに結衣は、今回のテスト用にあらかじめ習得リストに入っていた二つの初級補助魔法にも目をつけた。
一つ目は、暗所を照らす生活魔法《ライト》。
結衣は杖を脇に挟み、何も持っていない右の手のひらを上に向けて差し出した。
(この手のひらの上に、小さな温かい光が浮かんでほしい)
ぽうっ。
結衣がそう願った瞬間、右の掌から数センチ浮いた空中に、ピンポン玉ほどの大きさの柔らかな白い光球がふわりと生まれた。
「…………わあ」
結衣は息を呑み、その光球を見つめたまま、頭の中で(右へ動いて)と意識した。
すると光球は、結衣の思考に寄り添うように、すーっと右へ移動した。
(次は左。……上。……私の周りを、くるっと一回りして)
白い光の玉が、結衣の頭上へ昇り、顔の周りをまるで懐いた小さな妖精のようにくるくると旋回し、最後に結衣の肩の横でピタリと止まった。もちろん《ライト》というスキルに設定された移動範囲内の挙動なのだが、操っている本人にはそんな枠組みなど意識されない。
「ねえ見て二人とも!! 光が動くよ! 私が『こっちへ動け』って思った通りに、空中をふわふわ動くの!!」
「うおおお、すげえ!! なんか一気にファンタジーの魔法使いっぽくなった!!」
気を良くした結衣は、もう一つの初級補助魔法《ウインド》に意識を切り替えた。本来は煙を払ったり、軽い対象を押し返したりするための微風を起こす魔法だ。
結衣は草原に向かって両手を広げた。
(あそこの草むらを、下からぶわーって吹き上げるような風!)
明確な発動意思を込めた直後。
ヒュオオオッ! と心地よい風の音が鳴り、結衣の前方数メートルの草花が一斉に波打って倒れ、地面に落ちていた木の葉や白い綿毛がくるくると渦を巻いて青空へと舞い上がった。
近くに立っていた健太のチュニックの裾と銀髪までが、その風を受けて大きくはためく。
「うおっ!? すげえ風! これも水野さんがやったのか!?」
「そう! 私が風を起こしたの!」
舞い上がる木の葉の中心で、結衣は自分の両手を見つめ、うっとりとため息をついた。
「……私、モンスターなんか倒さなくても、ここで魔法を出してるだけで一日中遊んでられるかも」
そのあまりにも楽しそうな姿を見て、隣にいた健太が我慢できなくなったように剣を鞘に収め、両手を前へ突き出した。
「よっしゃ、俺もやる!! 俺もイメージの力で手から火を出す!!」
「えっ、健太くん剣士じゃん」
「気合とイメージでなんとかなるって! いいか、俺の右手から赤い炎が……燃えろ、俺のコスモ……ッ!!」
健太は目を固く閉じ、顔を真っ赤にして右手をぷるぷると震わせた。
一秒。三秒。五秒。
草原には、爽やかな風が吹き抜ける音だけが響いていた。
「…………何も出ないぞ、佐倉」
悟が極めて冷静にツッコミを入れる。
「お前、魔術師のクラススキルを習得してないんだから、いくら頭の中で炎を妄想したってシステムが反応するわけないだろ」
「くそおおおおお!! なんで俺の右手からは火が出ないんだあああ!!」
「あははははっ! ごめんね健太くん、このパーティで魔法が使えるのは私だけみたい!」
自由自在に見えても、そこはやはり緻密に設計されたRPGの世界だ。スキルのない剣士が念じたところで魔法は出ない。その「ゲームとしてのルール」があるからこそ、魔法使いである結衣の特別感が際立っていた。
「よーし、次はライトを出しながらウインドで回して、最後にファイアボルトを――」
結衣がすっかり全能感に酔いしれて連続発動を試みた、その時。
ピロン、と警告音が鳴り、結衣の手元の光と風がプツリと消えた。
《MPが不足しています》
「えええええええ!? もう切れたの!?」
「当たり前だ!! さっきから何もない空間に魔法を無駄撃ちしすぎなんだよ!!」
悟が頭を抱えて叫ぶ。
「だって、考えたら出るのが楽しすぎるんだもん! こんなの我慢できるわけないじゃん!」
「まあ、この気持ちは分かるわ。俺だって魔法使えたら絶対MP空になるまで花火上げてたもん」
「俺だって内心めちゃくちゃ羨ましいのを我慢して進行管理してるんだよ!!」
結局、効率重視のレイドリーダーだったはずの悟までが本音を漏らし、三人は草原の真ん中で声を上げて笑い合った。
◇
数分間、草の上に座り込んで結衣のMPが自然回復するのを待ってから、三人は再び討伐クエストを再開した。
《スライム討伐クエスト:1/3体》
「よし、あと二体だな。次は水野さんの意思発動魔法も計算に入れて、もっと綺麗に連携を決めるぞ」
悟が弓を構えながら周囲を警戒する。
「任せて! 今度はもう無駄撃ちしないから!」
「さっきMPをすっからかんにした人が言うと説得力がすごいな!」
軽口を叩きながら街道沿いの草地を進むと、前方の茂みが二箇所、同時にガサガサと揺れた。
飛び出してきたのは、二体の青いスライムだ。
「二体同時か! 俺が左のやつを止める!」
健太が即座に踏み込み、一体目のスライムの前に立ち塞がって剣を振った。スライムが警戒して跳ね回り、健太と一対一の睨み合いになる。
だが、もう一体のスライムは健太を完全に無視し、後方で構えていた結衣の方へとターゲットを定めて、一直線に草むらを滑るように迫ってきた。
「っ、水野さん! 右から一体抜けた、そっちへ行くぞ!」
悟が叫びながら矢を放つが、草の陰を低く跳ねるスライムにかわされる。
スライムが結衣の足元数メートルまで迫り、跳躍のために身体をぐにゃりと縮めた。
「分かってる!」
しかし、今の結衣に先ほどまでの焦りはなかった。
詠唱はいらない。杖を振り回す必要もない。
結衣は迫り来るスライムを真っ直ぐに見据え、その距離と速度を一瞬で測ると、頭の中で明確な意思を形作った。
(ダメージじゃなくていい。あいつを止めて、健太くんの前まで吹き飛ばす! ――《ウインド》!)
結衣が左手を前へ突き出すのと同時に、スライムの真正面の空間で、ドンッ! と目に見えない高圧の空気の塊が弾けた。
飛びかかろうとしたスライムは、正面から突風の壁に叩きつけられ、「ぷぎゅっ」と潰れたような音を立てて真横へと大きく弾き飛ばされた。
その吹き飛んだ先は――ちょうど一体目を剣で牽制していた健太の、目の前だった。
「うおっ!? ナイスパス水野さん!!」
目の前に転がり込んできた無防備なスライムを見て、健太の目が輝く。
健太は迷わず腰を落とし、全体重を乗せて鉄剣を真一文字に薙ぎ払った。
ザシュッ!!
手応えのある重い斬撃がスライムの核を捉え、さらに間髪入れず、横合いから悟の放った矢がヒュンッと飛来して同じ箇所を射抜いた。
二人の連続攻撃を受けたスライムは、反撃する間もなく光の粒子となって弾け飛んだ。
「うおおおおお!! 今の見たか!? めちゃくちゃカッコいい連携が決まったぞ!!」
健太が剣を振り抜いた体勢のまま歓声を上げる。
「今の私、風で敵を弾き飛ばしてパスしたんだよ! すごくない!?」
「すごい! 最高のアシストだ! ……だが喜ぶのはあと一体倒してからにしろ、来るぞ!」
残った最後の一体が、仲間の消滅にも怯まず健太へ飛びかかる。
だが、すでに完全に身体が温まり、この世界の感覚に馴染んだ三人の敵ではなかった。
「よっしゃ、来い!」
健太が半歩踏み込んで左腕の盾を斜めに合わせ、スライムの体当たりをガツンッ! と受け止めて真上へと弾き上げる。
宙に浮いて無防備になったスライムに、悟の矢が突き刺さって動きを止め、そこへ結衣が思い描いた《ファイアボルト》の紅蓮の火球が吸い込まれるように直撃した。
ドォンッ!!
炎が爆ぜ、最後のスライムがきらめく光の粒となって草原の風へと溶けていく。
直後、三人の視界に、華やかなファンファーレとともにシステムメッセージが表示された。
《クエスト達成:『始まりの草原のスライム討伐(3/3)』》
《パーティ全員が経験値を獲得しました》
《戦利品(ドロップアイテム)を獲得しました》
一瞬の静寂。
そして、三人は同時に顔を見合わせ――
「「「やったあああああああああ!!!」」」
誰からともなく駆け寄り、草原のど真ん中でバチン! と両手でハイタッチを交わした。
健太と悟が互いの肩をバンバンと叩き合い、結衣が杖を抱えてその場でぴょんぴょんと跳びはねる。
画面の向こうの数字が増えただけではない。自分たちの足で走り、自分の腕で剣や弓を振るい、自分の意思で魔法を放って、三人で力を合わせて掴み取った勝利だった。
「あ、おい見てみろ! なんか落ちてるぞ!」
健太が足元の草むらを指さした。
スライムが消えた跡に、拳大の透き通った青い塊がコロンと転がっていた。
《スライムゼリー(素材アイテム)》
健太がしゃがみ込んでそれを拾い上げる。
手のひらに乗せると、ひんやりとしていて、ぷるぷるとした独特の弾力があった。指先でつつくと、本物のゼリーのように気持ちよく揺れる。
「うわ、なにこれ、本当にぷるぷるしてる! 水野さん、ちょっと触ってみろよ!」
「わあ、ほんとだ! 冷たくて気持ちいいー!」
「おいお前ら、貴重な初ドロップ品をおもちゃにして遊ぶな! ……ちょっと俺にも貸してみろ。……おお、本当だ、すごい弾力だな……」
結局、三人揃って頭を突き合わせ、しばらくの間スライムのドロップ品をぷにぷにとつついて遊んだ。
「……なあ、これ記念に現実の家に持って帰りたいな」
「データで作られたゲーム内アイテムなんだから持って帰れるわけないだろ!」
◇
時刻は夕刻に近づき、ゲーム内の空が美しい茜色に染まり始めていた。
前回は城門から一歩出たところで無念のタイムアップとなった三人だったが、今回は胸を張って城門をくぐり、アルカディアの街へと帰還した。
夕暮れの街並みを歩きながら、健太が自分の革鎧の胸元をポンと叩いて、しみじみと呟いた。
「……なあ。俺たち、本当に冒険者になったんだな」
「何言ってるんだ、先週ギルドカードを貰った時点で冒険者だろ」
隣を歩く悟が笑うが、健太は首を横に振った。
「いや、システム上の肩書きじゃなくてさ。街の外へ出て、自分の手でモンスターと戦って、仲間と助け合って、こうやって夕日を見ながら街に帰ってくる……なんか、子供の頃から夢見てた『冒険者』そのものじゃんか」
「分かる……!」
結衣も杖を握り直し、深く頷いた。
「私も今、ものすっごく『冒険から帰ってきた!』って気分になってる!」
二人の言葉に、悟もふっと表情を緩めて前を向いた。
「まあ……気分じゃないさ。俺たちは今、実際にここで冒険してきたんだからな。ゲームの中とはいえ、この体験は本物だ」
冒険者ギルドへ戻ると、受付嬢のNPCがにこやかに三人を出迎えた。
「お帰りなさいませ、皆様。無事に討伐依頼を達成されたようですね」
「はい!! スライム三体、きっちり倒してきました!!」
健太が誇らしげにギルドカードと、先ほどのスライムゼリーをカウンターに提出する。
受付嬢が確認を終えると、小さな革袋からチャリン、と澄んだ金属音を立てて数枚の銅貨を取り出し、三人の前へ並べた。
「こちらが依頼達成の報酬となります。お疲れ様でした」
健太が自分の分の銅貨を手に取る。ずしりとした確かな重み。
「うわ……俺、異世界でモンスター倒して、初めてお金を稼いだぞ……」
すると、横から結衣が目を輝かせて健太の袖を引っ張った。
「ねえねえ! この稼いだお金で、帰り道にパン屋さん寄って蜂蜜パン買おうよ!」
「お前ら、報酬が手に入った瞬間にまたパンの話かよ!!」
悟が盛大にツッコミを入れるが、もちろん反対する理由はなかった。
三人はギルドを出ると、その足で例のベーカリーへと向かった。
「おばちゃん! 黄金蜂蜜パンを三つくれ! 今日は初期資金じゃなくて、自分たちでスライムを倒して稼いできたお金なんだ!」
健太が胸を張って銅貨を差し出すと、店主の女性は目を丸くしてから、豪快に笑って頷いた。
「おやまあ、新米なのに頑張ったんだねえ! よし、それなら一番大きくて焼きたてのやつを三つ包んでやるよ! しっかり食べて、また明日も頑張りな!」
ホカホカと湯気の立つパンを受け取り、三人は夕暮れの広場のベンチに並んで腰を下ろした。
そして一斉に、黄金蜂蜜パンにかぶりつく。
サクッとした食感と、口いっぱいに広がるバターと蜂蜜の優しい甘み。
一週間前に食べたものと、データの数値は全く同じはずだった。けれど、自分の足で駆け回り、汗をかいて戦った後に食べるパンの味は、前回よりも何倍も美味しく感じられた。
「……ああ、幸せ」
結衣がパンを頬張りながら、うっとりと目を細める。
「戦って、報酬をもらって、街に帰ってきてみんなで美味い飯を食う。……これ、もう完全に異世界の冒険者生活じゃん!」
「ああ。……ゲームとして、これ以上ないくらい最高だな」
悟もパンを噛み締めながら、心の底から満足そうに頷いた。
◇
《TEST SESSION COMPLETE――LOG OUT》
今回は終了のアナウンスにも慌てることなく、三人は夕暮れの街の空気を最後まで味わってから、穏やかに現実世界へと帰還した。
――もっとも、穏やかだったのはポッドが開くまでの数秒間だけだった。
プシュー、とキャノピーが開いた瞬間、三人はバネ仕掛けのように上半身を起こし、控え室にいた黒瀬たち開発陣に向かって、堰を切ったように同時にまくし立て始めたのだ。
「黒瀬さん!! 俺が最初に盾でスライムの体当たりを止めたところ、モニターで見てました!? あのドンッて来る衝撃と、剣でゼリーを斬り裂く手応え、めちゃくちゃ気持ちよかったです!!」
「そんなことより魔法です!! 私、最初は声に出して撃ってたんですけど、途中で『炎を出したい』って頭の中で考えただけで本当に炎が出たんです! 詠唱しなくても、思った通りに光が動いたり風が吹いたりして、あれもう一回やりたいです!!」
「いや、俺の弓も聞いてください! マウスもコントローラーもなしに、自分の指で弦を引いて、動いてるスライムの横腹を射抜いたんですよ! 味方をカバーした時の達成感が今までのMMOと次元が違います!!」
テストルームは、三人の熱気と大声で一瞬にして占拠された。
先週よりもさらに熱量の増した、文字通り「自分が異世界で戦ってきた武勇伝」のマシンガントークだ。
黒瀬、島村、芹沢、三枝の四人は、圧倒されながらも、たまらなく嬉しそうに目を細めてその話を聞いていた。
芹沢の端末には、先ほどまでの戦闘ログと、アンノウン機関の安全管理AI・オラクルからの監査結果が表示されている。
《FD-2 戦闘・物理衝撃フィードバック試験:正常終了》
《魔術スキル・意思入力(ダイレクト・インテンション)判定:正常稼働》
《神経系負荷・バイタル異常:一切なし》
システム上の数値は、すべて完璧だった。
だが、黒瀬の視線が釘付けになっていたのは、モニターの数字ではなく、ポッドの脇に立っている結衣の姿だった。
結衣は開発スタッフに説明しながら、何も持っていない自分の右手を何度も開いては握り、まるでまだそこに魔法の光や炎の熱が残っているかのように、愛おしそうに指先を見つめていたのだ。
「本当に、私が『出ろ』って思った瞬間に、目の前の世界が変わったんですよ……! 私、あんな感覚、生まれて初めてでした……!」
紅潮した頬でそう語る結衣を見て、黒瀬はふっと息を吐き、隣の島村たちに静かに言った。
「……なあ、島村。俺たちはこの数か月、フルダイブ空間で綺麗に燃える『魔法のエフェクト』を作っていたつもりだったんだけどな」
「え? 違ったんですか?」
島村が首を傾げると、黒瀬は確信を込めて首を横に振った。
「いや、エフェクトも作ったさ。だが、あの子の目を見てはっきり分かった。俺たちが作ったのは、ただの魔法の演出じゃない。『プレイヤー自身が、本物の魔法使いになれるゲーム』だったんだ」
ボタンを押してキャラクターに魔法を使わせるのではない。プレイヤー本人に「自分が魔法を使った」と心の底から信じ込ませる体験。
それこそが、黒瀬たちが試行錯誤の末に辿り着いた、フルダイブRPGの真髄だった。
「さて、お前ら!」
黒瀬が一歩前に出て手を叩くと、喋り続けていた三人がピタリと止まってこちらを見た。
「今日も最高のデータが取れた、ありがとう。おかげで基本戦闘と魔法操作の検証は一発クリアだ。……で、次回の最終テストなんだが、もう少し歯ごたえのあるフィールドとモンスターを用意する予定だ」
その言葉に、三人の目がギラリと輝いた。
「えっ、マジですか!? 森の奥ですか!? ゴブリンとか、でっかいボスとか出ます!?」
「新しい魔法も増えますか!? 私、もっと色んな属性の魔法を使ってみたいです!」
「報酬で初期装備の更新はできますか? あと、上位の討伐クエストの仕様も知りたいです!」
矢継ぎ早に飛んでくる質問に、黒瀬は腹を抱えて笑った。
「おいおい、最初は街の中で迷子になってた連中が、一週間でもうすっかり熟練の冒険者だな!」
テストルームが再び温かな笑いに包まれた。
数十分後、着替えを済ませて帰りの支度を整えた結衣は、エレベーターを待つ廊下で、ふと立ち止まって自分の右手を目の前にかざした。
現実の照明に照らされた、いつもの自分の手。
もちろん、ここでいくら強く念じたところで、手のひらに光の玉が浮かぶこともなければ、指先から風や炎が生まれることもない。
けれど、結衣の脳裏と指先には、あの草原で意思が世界を動かした瞬間の震えるような全能感が、はっきりと刻み込まれていた。
結衣は開いた手のひらをそっと胸に抱き寄せ、誰にも聞こえない声で小さく呟いた。
「……ああ、早くまた、魔法使いたいなあ」
彼女が次のテストの日を今から待ちきれない理由は、もう、単に新しいゲームを遊びたいからだけではなかった。
自分の意思が魔法になる、あの眩しい世界へ帰りたかったのだ。
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