自宅に届いた『惑星開発キット』で、社畜SEは異世界工場の管理者になる ~運用保守はもう終わり。現代の物資と無限の資源で、銀河規模の自動化帝国を築き上げます~   作:パラレル・ゲーマー

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第69話 覇権の同盟と核のドミノ

 アメリカ合衆国、ワシントンD.C.。

 ホワイトハウスの地下に設けられた、シチュエーション・ルーム(危機管理室)は、重厚なマホガニーの円卓と、壁面を覆い尽くすほどの巨大な暗号化通信用モニターによって構成されている。

 部屋の空気は、最高レベルの機密を扱うにふさわしい、ピンと張り詰めた冷気を帯びていた。

 

 円卓の上座に座るのは、ロバート・“ボブ”・ウォーレン大統領。

 その左右には、ダグラス首席補佐官と、CIA長官エレノア・バーンズが控えている。

 

 そして、部屋の隅のソファに深々と腰を下ろし、まるで劇場でオペラでも鑑賞するかのような優雅な態度でモニターを見つめている少年がいた。

 ノア・マクドウェル。

 アメリカの軍産複合体『タイタン・グループ』の次期総帥であり、日本から提供された『医療用キット』によって不治の病から蘇った、超越的な知性を持つ怪物だ。

 彼はこの会談に「オブザーバー」として参加しているが、発言権は持たない。

 ただ、その青白い光を宿した瞳で、日米のトップが交わす腹の探り合いを冷ややかに観察していた。

 

 モニターの向こう側に映し出されているのは、地球の裏側、東京・永田町の首相官邸地下『特別情報分析室』である。

 副島内閣総理大臣が中央に座り、その背後には内閣官房参事官の日下部が、いつものように無表情で控えている。

 日米の首脳が、完全に安全が担保された量子暗号通信回線を通じて顔を合わせる定例――いや、非公式のトップ会談であった。

 

「……そちらも夜遅くにすまないね、ソエジマ総理」

 

 ウォーレン大統領が、マグカップのコーヒーを傾けながら口火を切った。

 その口調は親しげでありながら、世界の覇権を握る者の揺るぎない自信に満ち溢れている。

 

「いえ、大統領。重要な事案であれば時間は問いません。

 我々も、そちらからの報告を心待ちにしておりました」

 

 副島総理が穏やかに応じる。

 両者の間には、かつてのような「超大国と従属国」という力関係の非対称性は薄れ、ある種のいびつな「共犯関係」としての対等さが生じつつあった。

 

「では早速、本題に入ろう。朗報だ」

 

 ウォーレンはデスクの上に置かれた一枚の書類を、指先でピンと弾いた。

 

「ロシアがウクライナ戦線の休戦協定を申し出てきた。

 我々アメリカに、その仲介役になってくれということだ」

 

 モニターの向こうで、副島総理の眉がわずかに動いた。

 日下部もまた、微かに目を細める。

 ロシアからの休戦申し入れ。

 長引く泥沼の戦争において、これは劇的なゲームチェンジャーとなる一報だ。

 

「……それは驚きですね。あのボグダノフ大統領が自ら矛を収めると?」

 

「ああ。どうやら先日、我々が行なった『大掃除』が致命的に効いたようだな」

 

 ウォーレンはニヤリと、肉食獣のような笑みを浮かべた。

 先日の「大掃除」――日本から提供された『グラス・アイ(位相空間レーダー)』のビーコンを活用し、アメリカ国内に潜伏していたロシアの諜報網(スリーパー・セル)を、わずか一晩で一網打尽にした一件だ。

 物理的な隠蔽をすべて無効化する神の視点。

 それによってもたらされた「見えない恐怖」が、北の熊の心を完全にへし折ったのだ。

 

「一部の強硬派、情報機関の『独走』だったということで、ご丁寧な謝罪の言葉もあったよ。

 もちろん、スパイ網を壊滅させられたことへの抗議は一切なしだ。

 すべてを呑み込んだ上で、アメリカにすり寄ってきた。哀れなものだな」

 

「……なるほど。それは世界にとって、大いなる朗報ですね」

 

 副島総理が深く頷いた。

 

「ウクライナの地に平和が戻り、国際社会の緊張が緩和されれば、我々としても今後の政策がやりやすくなります。

 エネルギー市場の安定化にも寄与するでしょう」

 

「うむ。ロシアはアメリカとの関係改善を望むと同時に、日本との国交も回復したいと言ってきている」

 

 ウォーレンの目が、モニター越しの副島を射抜いた。

 

「おそらく、貴国が隠し持っている『ナノマシン関連技術』で、なんとか繋ぎ(パイプ)が欲しいのだろう。

 彼らも馬鹿ではない。アメリカが急激に治安を回復し、シリアで不死身の兵士を運用しているという情報を繋ぎ合わせれば、その源泉が日本にあることくらいは勘づいているはずだ。

 ……すり寄って、あわよくばおこぼれに与ろうという魂胆だな」

 

 大統領の言葉に、エレノア長官が微かに頷く。

 CIAの分析でも、ロシアの急な態度軟化は、日本のオーバーテクノロジーに対する強烈な渇望と恐怖に起因していると結論づけられていた。

 

「だが、総理」

 

 ウォーレンは声を一段低くした。

 

「アメリカとしては、ロシアにあの技術を開示することには絶対反対だ。

 奴らに薬や監視システムを渡してみろ。どうせ、その力を使って周辺国への新たな侵略や、国内の恐怖政治を強化するだけだ。

 あいつらは本質的に信用できない」

 

 副島総理は表情を変えずに即答した。

 

「そうですね。日本としても、その方針で全く問題ありません。

 我々も、ロシアにあの技術を渡すつもりは毛頭ありません」

 

「そうか。中国と同じく、餌をぶら下げて『焦らし』ていく方針だな」

 

「はい。彼らが大人しくしている限りは、対話の窓口だけは開いておきます。

 ですが核心には絶対に触れさせません。

 大国には期待だけを抱かせたまま、永久に待ちぼうけを食わせるのが一番安全ですからね」

 

 副島の老獪な返答に、ウォーレンは満足げに喉を鳴らした。

 日米がスクラムを組んで、中露を徹底的に情報格差の底に沈めておく。

 この構図が維持される限り、覇権は揺るがない。

 

「ハハハ、結構だ。……ところで、少し残念なこともある」

 

 ウォーレンはコーヒーカップを置き、冗談めかした口調で言った。

 

「実は貴国が開発した、あの『26式多目的装甲戦闘服』をウクライナ戦線に投入して、その実戦での威力を大々的に確かめたかったところではあるんだがね。

 ロシアの戦車部隊を歩兵一人で鉄クズに変えるショーが見られなくなったのは惜しい」

 

 モニターの向こうで、日下部が微かに苦笑を漏らした。

 26式アーマー。テラ・ノヴァ由来のナノマシン装甲で作られた、一騎当千の化け物兵器。

 それをウクライナに投入すれば、戦局など数日で終わっていただろう。

 

「これは別の戦争で使うことにしよう」

 

 ウォーレンの軽口に、副島総理も笑みを返した。

 

「ははは。そうですね、それが良いでしょう。

 まあ我々としても、ウクライナ戦争のような混沌とした戦場で使用し、万が一にもロシア軍に『鹵獲』される危険性がある場所への投入は避けたかった、というのが本音です」

 

 副島の言葉は半分は真実であり、半分は建前だった。

 26式には不正解析を防ぐための「構造溶解(セルフ・デストラクト)」機能が組み込まれているとはいえ、万が一にもロシアの科学者の手に残骸が渡ることはリスクでしかない。

 

「アメリカ軍が主体となり、完全に戦場をコントロールできる環境でのみ使用される方が良いでしょうね。

 技術流出の懸念がない、安全な戦争で」

 

「うむ、そうだな。兵器は使う場所を選ぶ。賢明な判断だ」

 

 ウォーレンは深く頷き、話題を切り替えた。

 ここからが、彼にとって今夜の最大の「本題」である。

 

「さて、ソエジマ総理。次はその『技術』の恩恵に関する話なんだが……」

 

 大統領の目が、欲にまみれた商人のように細められた。

 ソファに座るノアが、面白そうにわずかに身を乗り出す。

 

「先日提供してもらった『医療用キット(オリジナル)』の話だ。

 ……あれは素晴らしい。本当に神の奇跡だ。我が国の研究者たちも舌を巻いている」

 

 ウォーレンは手元で両手を組んだ。

 

「単刀直入に言おう。追加で3個欲しい」

 

 その要求に、日下部の眉がピクリと動いた。

 オリジナルキットは、日本が「世界に100本にも満たない」と説明している超希少な不老不死の薬だ。

 すでに5本をアメリカに渡し、その絶大な効果は実証済み。

 それをさらに3個要求してきたのだ。

 

「国内の『協力者』を増やしたいのだ。

 アメリカの政治を、そして軍産複合体を完全に一枚岩にするためにな。

 どうしても救ってやらねばならない『重要な命』がある」

 

 大統領の言葉の裏には、生々しい権力闘争と利権の分配が透けて見えた。

 大統領選挙を控えた時期、あるいは議会対策として、圧倒的な影響力を持つフィクサーや大物議員の命を救い、永遠の恩を売る。

 これほど強力な政治資金(リソース)はない。

 

 モニター越しの副島総理は、数秒の沈黙の後、日下部の方をちらりと見た。

 日下部は表情を変えずに、わずかに顎を引いた。

 テラ・ノヴァの工場では、工藤創一の「バイオマター培養」の成功により、オリジナルキットの量産体制はすでに整っている。

 3個など、数時間で用意できる量だ。

 だが、それを悟らせてはならない。

 

「……3個ですか」

 

 副島はいかにも「苦しい決断」をしているかのように、渋い顔を作った。

 

「大統領のご要望とあれば無下にはできません。

 我が国にとっても、アメリカ国内の体制が安定し、強力な政権運営が行われることは国益に叶います。

 ……ええ、大丈夫ですよ。なんとか確保しましょう」

 

「そうか! 恩に着るぞ、総理」

 

「では前回同様、極秘ルートでの輸送の手配をいたします。

 厳重な管理をお願いしますよ」

 

「もちろんだ。……済まないな、無理を言って」

 

 ウォーレンは心底嬉しそうに破顔した。

 

「この恩は決して忘れない。近いうちに日本に対しても、少しばかりの『寄付』をさせてもらうよ。

 兵器のライセンス料の上乗せか、あるいは共同研究の予算名目かで、そちらの国庫を潤させてもらおう」

 

「お気遣い痛み入ります」

 

 日本にとっては原価ゼロに等しい薬3本で、アメリカからの巨額の「寄付(みかじめ料)」と、絶対的な外交的優位を引き出したのだ。

 日下部は心の中で、またしても胃薬の消費量が減ることを確信し、冷ややかな満足感を覚えていた。

 

「さて、次の話題だ」

 

 ウォーレンは機嫌よくコーヒーを啜り、表情を引き締めた。

 

「IAEA(国際原子力機関)が監査をしたいと、五月蝿く騒いでいるな。

 先日、貴国が発表した『次世代のウラン濃縮プロセス』についてだ」

 

 その話題が出た瞬間、会議室の空気が再び重くなった。

 日本が突然発表した核開発の基礎研究。

 国際社会は蜂の巣をつついたような騒ぎになり、IAEAは日本に対して即時の情報開示と特別査察を要求し続けている。

 

「どうするつもりだ、総理?

 今のところ、研究はどこまで進んでいるんだ?」

 

「……申し訳ありません、大統領。

 それにつきましては我が国の最高機密ですので、同盟国である貴国にも詳細をお話しすることはできません」

 

 副島が毅然とした態度で突っぱねる。

 本当は「異星で遠心分離機をぶん回して、無限にウラン235を錬成しています」などと言えるはずもない。

 

「ただし、IAEAの査察に関しましては受け入れる用意があります」

 

「ほう? 見せるのか?」

 

「いいえ。見せられるような内容ではありませんよ」

 

 日下部が、副島の言葉を引き継いで答えた。

 

「我々が用意するのは、厳重に警備されたダミーの実験室だけです。

 そこで、ビーカーに入った微量の溶液を一つ見せて、『これがナノマシンを用いた濃縮触媒の基礎実験サンプルです。現在はここまでしか進んでいません』と説明する予定です」

 

 日下部は真顔で、とぼけたことを言った。

 

「彼らがどれだけ放射線測定器を振り回しても、何も出ませんよ。

 そもそもウラン濃縮のプラントなど存在しないのですから。

 彼らは『本当に基礎の基礎段階なのだな』と納得して帰るしかありません」

 

 モニターを見つめるウォーレンの内心で、盛大な舌打ちが響いた。

 

 (……大嘘つきめ)

 

 ウォーレンは表面上は穏やかに頷きながらも、腹の中では毒づいていた。

 

 (どうせ、あの異常なナノマシン技術を利用して、熱反応や放射能漏れを完全に隠蔽したまま、どこかの地下――あるいは海中で――凄まじい規模の濃縮を完了させているに違いない。

 ビーカー一つ見せて誤魔化すだと? ふざけた茶番だ)

 

 だがウォーレンは、それを指摘することはできない。

 先ほど日本の喉から手が出るほど欲しい『薬』を3個も追加でねだったばかりなのだ。

 ここで日本の逆鱗に触れ、薬の供給を止められるわけにはいかない。

 

 (……まあここは、医療用キットを貰う手前、理解するふりをするか。

 日本が核を持とうが、アメリカのコントロール下にある限りは、中国やロシアへの強力な牽制になる)

 

「そうか。まあ彼らも仕事だから騒ぐだろうが、IAEAの監査は適当に受けておけ。

 形式的な透明性を示しておけば、我々アメリカも『日本の平和利用を支持する』と擁護しやすいからな」

 

「ご配慮に感謝します、大統領」

 

 腹の中を見せ合わない、見事な外交的プロレス。

 ソファのノアは、その滑稽な大人たちのやり取りを見て、音もなくクスクスと笑っていた。

 

「さて、最後だ。これが一番厄介な問題だ」

 

 ウォーレンがテーブルの上のファイルを重々しく叩いた。

 

「韓国だ」

 

 その単語に、日本側の空気が一段と冷えた。

 

「韓国で独自の核武装の議論が、かつてないほど活発化している。

 いや、正確に言うと韓国だけではない。

 日本の核開発発表を受けて、全世界的に『核のドミノ』が倒れかかっている」

 

 ウォーレンは眉間に皺を寄せた。

 

「アメリカとしては、これは絶対に避けたい事態だ。

 核保有国が増えれば増えるほど、世界のコントロールは難しくなる。

 NPT体制の崩壊は、我々の覇権を揺るがす。

 だが……」

 

 大統領はため息をついた。

 

「日本(おまえたち)の『基礎研究』を見逃しておきながら、韓国が同じように『研究したい』と言い出した時、それを頭ごなしに咎めると非常にややこしいことになる。

 彼らは『なぜ日本は良くて、我々はダメなのか!』と火病を起こして反米に傾きかねない」

 

 ウォーレンは副島総理の顔をじっと見つめた。

 

「ソエジマ総理。日本としては韓国の核武装を認めてもいいか?

 隣国に核保有国が誕生するのは地政学的に不安だろうが……」

 

 それはアメリカとしての苦肉の策であった。

 日本の特異な技術的突出が極東のパワーバランスを破壊した結果、生じた歪み。

 それを処理するために、日本に「妥協」を求めているのだ。

 通常であれば日本政府は全力で反対する案件だ。隣国が核の牙を剥くなど、悪夢以外の何物でもない。

 

 だが、モニター越しの副島総理は日下部と一瞬だけ視線を交わし、極めてあっさりと答えた。

 

「……そうですね。まあ、そこはしょうがない所です」

 

「……なに?」

 

 ウォーレンが予想外の反応に目を瞬かせた。

 

「韓国の核武装を認めましょう」

 

 副島は、まるで「明日の天気は晴れですね」とでも言うかのように、平然と言い放った。

 

「日本政府として、韓国の核開発に強い反対は行いません。

 彼らが自国の安全保障のために力を持ちたいと願うのは、主権国家として理解できる感情です。

 アメリカがそれを容認するなら、我々も同調しますよ」

 

 会議室は奇妙な静寂に包まれた。

 ダグラス首席補佐官が信じられないという顔でモニターを見つめ、エレノア長官でさえも、その日本の「寛容さ」の裏にある真意を測りかねて眉をひそめた。

 

 彼らは知らないのだ。

 日本がこれほどまでにあっさりと隣国の核武装を容認できる理由を。

 

 ――日本はすでに、地球上の「核」などという原始的な兵器の次元を遥かに超えた場所にいるからだ。

 テラ・ノヴァの工場では無限の電力が生み出され、レーザータレットが空を切り裂き、死なない兵士を作り出す薬が量産されている。

 さらに空間そのものを透視し、世界中のあらゆる密室を覗き見る「眼」を持っている。

 

 韓国が数年、あるいは十数年かけて原始的な核爆弾を数個作ったところで、日本から見れば「子供が爆竹を作って喜んでいる」程度の脅威にしか映らない。

 撃つ前に全て筒抜けであり、撃たれても装甲と薬で無効化できる。

 圧倒的な技術格差が、日本に「大人の余裕」を与えていた。

 

「……そうか。そう言ってくれると、非常にありがたい」

 

 ウォーレンは日本の真意は読み切れないものの、厄介な外交問題が一つ片付いたことに安堵の息を漏らした。

 

「韓国には、好きにしたら良いと言うよ。

 アメリカの核の傘に頼らず、自前でやりたいならやらせてみるさ。

 ……もっとも、彼らの技術力で完成するまでに何十年かかるか分からんがな」

 

「ええ。我々は静観の構えを貫きます。

 極東の平和は、日米の強固な絆によってのみ守られるのですから」

 

 副島が穏やかに締めくくった。

 

 会談が終了し、モニターの通信が切断される。

 シチュエーション・ルームの巨大な画面が暗転すると、ウォーレン大統領は深く椅子に背中を預け、天井を仰いだ。

 

「……日本め。すっかり図太くなりおって」

 

「彼らは、もはや核の脅威すら意に介していないようですね」

 

 エレノアが冷ややかな声で分析する。

 

「自分たちだけが『絶対安全圏』にいるという、不気味なほどの自信。

 ……あの国は本当に、地球とは別の次元に足を踏み入れてしまったのかもしれません」

 

「別の次元か」

 

 ソファから立ち上がったノアが、優雅な足取りで大統領のデスクへと近づいた。

 

「彼らがどこにいようと構いませんよ、大統領。

 重要なのは、我々がその『恩恵(リソース)』を確実に吸い上げているという事実です。

 薬も情報も、すべてタイタン・グループとアメリカ政府の血肉となっています。

 ……日本の工場が成長するなら、我々も共に成長すればいいだけのことです」

 

 若き怪物の言葉に、ウォーレンはニヤリと笑った。

 極東で倒れ始めた核のドミノ。

 だが、そのドミノがどこへ向かって倒れようとも、最後はアメリカの巨大な掌の上で踊るだけだ。

 彼らはそう信じていた。

 

 一方、東京・首相官邸地下。

 日下部参事官は、通信が切れたモニターを見つめながら胃薬の袋を開けていた。

 

「韓国の核武装容認……。また国内のメディアが狂ったように騒ぎ出しますよ、総理」

 

「構わん。騒がせておけ。真実から目を逸らさせるための良いノイズになる」

 

 副島総理は立ち上がり、背広の皺を伸ばした。

 

「我々が見据えるべきは、朝鮮半島の小さな火種ではない。

 テラ・ノヴァという無尽蔵の炉心だ。

 工藤氏に連絡を取れ。……もっとエネルギーを、もっと強力な防壁を作れと。

 世界が核の炎で燃え上がろうとも、日本だけは絶対に焼け焦げない『無敵の城』を完成させるのだ」

 

「承知いたしました」

 

 日下部は深く一礼した。

 世界の常識が崩壊し、狂気が蔓延していく中で、日本の官僚たちはただ冷徹に計算機を弾き続けていた。

 彼らの背後には、異星で無邪気に工場を拡大し続ける一人の男の影が、巨大な歯車となって回り続けている。

 

 




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