2210年08月23日
人類が宇宙に進出してから10年とちょっとが経過した。地球各地では未だにパレードが行われ、民衆はお祭り雰囲気だ。そして、アメリカ合衆国、ミズーリ国際研究所には、プロキオン星系から回収された
「700万年前……。ちょうど地球で“人類”と呼ばれる種族が生まれ始めた時期ね。もし、本当に銀河各地で生物を創造していたら、彼らは、私たちの祖先や近縁種にすら”干渉”していた可能性があるわね。」
白衣をまとった日本人の女性は、静かな口調でそう言いながら、傍らに立つ部下へ視線を向けた。
「それが事実だと判明したら、社会的な混乱は避けられませんね……。2210年の現在でも、神や創造主の存在を信じている人は数え切れないほどいます。正直、私としても単なる偶然であってほしいですが……」
男性は言葉を切り、目の前のモニターに映し出された映像へ視線を戻した。そこに表示されているのは、最近日本の淡路島で発見された地下遺跡の内部構造だった。遺跡の壁面や柱には、かつてプロキオン星系で確認された人工物《アノマリー》と酷似した記号や言語体系が刻まれている。さらに、それらは地球上では再現不可能なほど高い強度を持つ、未知の合金によって構築されていた。少なくとも、人類がこれまでに開発してきた技術の延長線上には存在しない素材だ。
「この発見が、すぐに世間へ公表されることはないでしょうね。」
女性はそう言って声を落とし、手元のコーヒーカップを持ち上げて一口だけ口に含んだ。
「問題は、なぜ“彼ら”──先駆者と呼ぶべき存在が、この星に目をつけたのか。そして、なぜ日本、しかも淡路島にこの構造物が残されていたのか……。考えるほど、仕事が増えていくわ~……」
プロキオン星系で発見された人工物と、地球上の遺跡。その製作者が同一である可能性は、もはや無視できない段階に入っていた。調査が進めば進むほど、人類という種の起源や歴史そのものが、根底から覆される危険性すらある。
事態を重く見た国際機関は、淡路島全域を即座に封鎖。世界各国から専門分野の異なる調査員や研究者が集められ、大規模な合同調査が開始された。この場所は公式に考古学的特別調査地点と指定され、後に【国産み神殿】と名付けられることになる。そしてそれは、単なる遺跡では終わらない。人類全体の歴史観と未来像に、計り知れない影響を与える研究成果を、今後も供給し続ける場所になるのだった。
──────────────────────────
2210年09月21日
2210年09月21日国際地球連合にとって、後に歴史の転換点として記録される出来事が起きた。国際地球連合領土レーラ星系とハイパーレーンで繋がっているアストレイア星系において、これまでのいかなる天体観測データとも一致しない、不可解な信号が検出されたのである。当初は自然現象の一種とも考えられた。恒星フレアや未知の電磁擾乱、あるいは観測機器の誤作動の可能性も排除できなかったからだ。だが、信号は一定の周期と構造を保ち続けており、偶然やノイズとして片付けるには、あまりにも整然としすぎていた。調査は慎重を期しつつ、同星系へ無人観測プローブを派遣を実行した。そして、現地から送られてきた莫大な映像とデータは、調査チームの想定を大きく超えるものだった。アストレイア星系主星の軌道上には、明らかに人工物としか考えられない構造物が存在していた。形状や配置から判断して、それは自然に形成された天体ではなく、恒久的な運用を前提とした”星系基地”である可能性が極めて高かった。さらに決定的だったのは、その周辺宙域で確認された複数の宇宙船の存在である。それらは人類がこれまで設計してきたどの船体設計とも異なり、推進機構や外殻構造に至るまで、既存の工学的常識では説明のつかない独特な形状をしていた。人類はついに確信した。アストレイア星系には、少なくとも人類とは異なる文明が築いたと考えられる拠点が存在していると。これにより、この異星人の調査と、レーラ星系の要塞化が具申され、彼らは【Alpha・alien】と命名され、積極的な調査が開始された。