「ネスって超能力者なんだ!?」
アビドス高等学校、生徒会室にて。
現会長のユメはネスのPSIに驚き、半信半疑だった補佐のホシノは目の前で披露しろと言い出した。
見た目は12やそこらの野球少年だ。 大切なユメ先輩を救ってくれたのは事実としても、中身は厨二病を患い始めた痛いお年頃と侮っていたのだ。
……ユメが好意的なのを感じて、無意識に警戒、いや、嫉妬しているのもある。
「ふーん。 それじゃ何かやってみせてよ」
「わかったよ。 "催眠術α"!」
ネスがホシノに手の平を翳す。 すると。
「別に何、も…………うへぇ……すぴー……」
ホシノは急に瞼が重くなり、やがて完全に閉じると、その場に座り込んで眠ってしまった!
「ネスは催眠術も使えるんだね!」
「うん。 他にも痺れさせる技もあるよ」
「凄いなぁ。 スプーンを曲げたりするマジックじゃなくて、ちゃんとしたのを見れるなんて……ホシノちゃん、起きてー!」
「ふぇ!?」
ユメが軽く揺らせば、直ぐに起きるホシノ。
ハッとして愛用の自動散弾銃を抱き寄せるあたり、普段は気を張っている子らしい。
そんな子が、こうもあっさりと落ちるとは。
やはり超能力者は実在するんだと驚くばかり。
「……ネスって本物なんだね。 認めるよ」
「ありがとう。 でも悪い事に使わないよ」
「当然。 でもチンピラに絡まれたら容赦しなくて良いからね……でもネス、銃を持ってないみたいだけど。 ヘイローも少しも見えない。 不思議な力があるといっても大丈夫なの?」
「ぼくは銃は使えないから。 ジェフっていう友達なら使えるけど……へいろーって何だろう?」
ネスが首を傾げたから、今度はユメが説明。
豊満な胸を張って堂々する様は、思春期に入る男の子には目に毒だが、本人は気にするでもなく話していく。
「外から来たなら分からないよね。 ヘイローは私たち生徒が持つ神秘。 頭の上に浮かぶ輪っかの事だよ」
「言われてみれば、薄ら見えるような……」
「ヘイローがあるとね、銃で撃たれても滅多な事じゃ大怪我しないんだ。 だからキヴォトスの生徒達は皆銃を持って、お互いによく撃ち合っているの。 逆に銃を持っていない生徒は、裸の生徒よりもいないって言われるほどだよ」
「は、はだか……」
マジカントの記憶が過り、赤くなりながらも、なんだか凄い世界に来ちゃったなとネスは漠然と思った。
銃社会にしても、やり過ぎではないか。
ジェフも銃を使うが、この世界を見たらどう思うだろうか。 危険過ぎる。 今までの冒険も危険が付き纏っていたが、銃弾が飛んできた記憶は殆どない。 超能力は数多あれども。
「ユメ先輩、ネスも年頃の男の子ですよ。 あまり不健全な発言は控えるべきかと」
「えぇ!? そ、そんな過激だったかな?」
「それはもう。 あまり不用心だと、ユメ先輩が襲われてしまいます。 気を付けてくださいね」
「そんな事しないよ!?」
心外な事を言われ、流石に反論するネス。
最後の冒険から成長し、大人びたとはいえ、善良な人を攻撃する気はない。
尤もホシノの言う襲うとは、えっちぃ行為を指しているのだが、分からないのならそのままで良い。 清らかでいて。
「だ、大丈夫だよ! 私は信じてるもん!」
「……ふーん。 私以外にも信じられる人が出来て良かったですね先輩」
「ひぃん!? ホシノちゃんの目から光が消えてるよぉ! ホシノちゃんの事も信じてるからね! いつも助けてくれてありがとうね!?」
面白いお姉さん達の漫才を見て、ふと、オネットのジャイアントステップ、その手前の旅芸人の小屋と、立ち往生していた旅人を思い出した。
ネスが用事を終わらせた頃には、どこかへ行ってしまったが、元気だろうか。
「そ、そうだ! ネスの超能力って、私達にも真似できるのかな!?」
「うーん、PSIは才能があればできると思うよ。 砂漠の地下にいたサルとか、魔境のサルは教えたらテレポートできたし……」
「お猿さんも使えるの!?」
「皆じゃないと思うけど、一応……」
動物も超能力が使えると聞いて、驚愕のユメ。
ホシノは「えぇ……」と、またも訝しんでいたが、心が真っ直ぐなネスが言うならそうなんだろう。
PSI(サイ)は"ココロのチカラ"とされる事もあるが、普通にバケモノや宇宙人、恐竜や改造人間らしき存在も使ってきた。
"自身の闇"は兎角、ギーグなんかは、ネスだけが使えると思われていた必殺PKを繰り出せた。
PSIには謎も多いが、善悪は無いという事なのだろう。 世界も関係無いかも知れない。
「何か教えて欲しいな!」
「わかった。 それじゃあ……」
──────────────ぽえ〜ん。
「とう! やあ! どう? 眠くなった?」
「はい。 先輩のつまらなさで欠伸が出ます」
「ひぃん……」
ユメは催眠術を試みた!
……だめ でした……。
「ぼくも、昨日今日で出来たチカラじゃないからね。 あまり気を落とさないで?」
「そうですよ。 それに簡単に出来ちゃったら、世の中超能力者だらけになっちゃいますよ」
「コツを掴めれば、きっと出来そうなんだけどなぁ。 そうだ、ホシノちゃんも習ってみたら?」
「私? 嫌です、時間の無駄ですよ」
「モノは試しだよ! 良いよねネス?」
「ぼくは良いけど……ホシノちゃんは?」
「はぁ……ユメ先輩がそれで満足するなら」
ユメが目を輝かせるものだから、ホシノはしぶしぶといった様子でネスに教わる。
といっても学校の授業でやるような、数式や言葉の羅列がある訳ではない。
抽象的な表現は聞きようによっては馬鹿らしい。 けれど、聞いているうちに心地良さすらある。
(ネスの目も先輩に似て綺麗だなぁ)
ネスの純粋で真っ直ぐな瞳に射抜かれて。
温かな言葉は、内側から温かくなる。
時々重ねる手の平越しの温もりは、じんわりと心を溶かしてくれる。
「そろそろ、そんな感じでやってみて」
「そ、そう。 それじゃやってはみるけど」
ネスを真似るように、ホシノはユメに手を翳す。
念じるは、ネスが最初に覚えた能力、ライフアップαだ。 体力や傷を癒やす能力である。
α、β、γ、Ωと能力の強さがあるうち、最も初期のものだ。
「まぁ、簡単に出来たら苦労しないでしょう」
ホシノはライフアップαを試みた!
ユメのHPが満タンになる!
「ふぇ?」
奇妙な感覚に、思わず変な声が出た。 刹那。
「凄いよホシノちゃん! 今ね、体がぽかぽかしたよ! ネスに怪我を治して貰った時みたい!」
「ええええ!?」
「ぼくも驚いたよ! 凄い事だよ?」
ホシノ、まさかの超能力者入りか。
ネスの影響か、元々の才能なのか。
ホシノはライフアップαを覚えた!
「こんな、こんな事が許されて良いのか……」
「良いんだよホシノちゃん! これで怪我した人を治せるよ。 とても良い事だよ!」
「ココロのチカラを消費するから、そこは気を付けてね。 あまり疲れていると、PSIは使えないよ」
「ナニを2人とも平然と受け入れてる!?」
盛り上がるアビドスの面々。
これを機にするように、超能力者は拡散していくのだが、それはまた別の話……になるだろうか。
また約2年後の未来、或いは並行世界にワープしたジェフが、スペーストンネルの通信機能で連絡を取ってくるのもそうなるのか。
ネスが過去で起こした出来事が、ジェフのいる未来に影響が出る……。
そして散々なるキヴォトスの未来を、協力して変えていく。
その先に互いの目的があると信じて。
それは破滅しかけている、未来の地球から来たブンブーンのような……未来の者が過去に行き、助けを求めるのは相当逼迫した状況なのかも知れない。
それでも少年は、見ず知らずの人達の為にも冒険に出るだろう。
かつて自分が、人知れず世界を救ったように。