首なし皇女は笑えない   作:haku728

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第25話 皇女の映画化 (夢と魔法の世界編⑥)

(え!わたくし、まさか…平九郎猫に殺されちゃうの!)

 

ハラハラドキドキの和子。

 

 

 

『グオオオオォ!』

 

どん!という音を残して跳躍しカズコの居る高台に地響きと共に着地したパイ・フ―。

 

その右前足の鋭い爪を高々と差し上げた。

 

『パイ・フ―!お願いだから正気に戻って!』

 

悲痛な叫びを上げるカズコ。

 

パイ・フ―は何も聞こえぬかの様に爪をカズコに振り降ろした。

 

カズコは観念して目を閉じた。

 

誰もが絶望し、 静まり返った。

 

 

 

 

 

『?』

 

カズコはゆっくり 目を開けた。

 

爪先はブルブル震えながらカズコの額の直前で止まっていた。

 

『グ…ウ…カ…ズ…コ!?』

 

パイ・フ―は顔を歪めて苦しそうに呻く。

 

 

それを見て顔色が変わる慎之助。

 

『そんなバカな!何をしている!パイ・フ―!早く皇女を引き裂け!』

 

 

『そう…わたしよ…パイ・フ―…苦しいのね…』

 

優しい表情で、苦しむパイ・フ―の顔をそっと撫でる カズコ。

 

 

悲しみ、優しさ、慈愛が入り混じった 美しい旋律が流れ出す。

 

カズコは両手を広げて透き通るような声で歌う。

 

 

 

――よくわかるわ あなたの気持ち♪

 

――力を奪われた あなたの悲しみ♪

 

――よくわかるわ あなたの心♪

 

――力を曲げられた あなたの怒り♪

 

 

苦しんでいたパイ・フ―が静かになる。

 

 

――でもあなたを信じたいの♪

 

――あなたと過ごした日々

 

――あれは決して偽りじゃない

 

 

『パイ・フ―!惑わされるな!皇家に縛られるな!』

 

慎之助が必死の形相で叫ぶ。

 

 

 

――貴方はわたしの友達♪

 

――大切な友達♪

 

――忘れないで欲しい♪

 

――貴方ははかけがえの無い友達?

 

――貴方は大切な友達♪

 

 

パイ・フ―の目から赤い光が消えた。

 

『そうだ…俺はパイ・フ―…皇家の守り神だ!』

 

そして蛇の指輪が粉々になって砕け散った。

 

 

愕然となる慎之助。

 

パイ・フ―は慎之助を睨んだ。そして彼に向かって突進した。

 

『いやだァァァ!こんな馬鹿な事!』

 

逃げようと背を向けた慎之助の背に金色に光ったパイ・フ―の爪がヒットした。

 

その瞬間慎之助の体は黒い煙となり黒衣だけがバサッと地面に落ちる。

 

その黒衣から一羽のカラスが飛び出した。

 

『あっ!慎之助が逃げる!』

 

カズコが叫ぶ。

 

カラスが逃げ去ろうとした時、一発の銃声が響いた。

 

『クエエェ―!』

 

カラスに銃弾が命中し海に落下した。

 

カズコがライゼンバ―グに目を向けると、彼が構えた銃口から煙が立ち昇っていた。

 

その後ぐらっとライゼンバーグの体が崩れ落ちた。

 

 

 

『ライゼンバ―グ!』

 

必死に駆け寄ったカズコがライゼンバーグの体を抱き起こす。

 

『カズコ…僕は…もう…駄目だ…』

 

がっくりと首が力を失うライゼンバーグ。

 

『イヤぁ!』

 

泣き崩れるカズコ。

 

 

『でも、キスをしてくれたら目が覚めるかも』

 

薄目を開けて、片目でウィンクするライゼンバーグ。

 

 

カズコは怒って彼の頬をひっぱたいた。

 

びっくりして身を起こすライゼンバーグ。

 

その彼に思いっきり抱きついてキスをするカズコ。

 

手に口を当てて狼狽する義国。

 

大統領と皇帝は目を合わせて困惑しながらも微笑む。

 

その時、猫の大きさに戻ったパイ・フ―が慎之助の黒衣を見て歓声を上げる。

 

『おい!見ろ!俺達の神具だ!』

 

皆が目を向けると、衣服の横には、黒真珠の腕輪、翡翠の首飾り、水晶の冠の3つが美しく輝いていた。

 

 

数日後、カズコとパイ・フ―は森の中の祠を訪れた。

 

二人は順番に祠の三方に有る四聖獣の石像に神具を戻した。

 

ごごごご!という振動とともに、石の皮が砕け、中から四聖獣の内の3体が飛び出した。

 

『イェーイ!』

 

青龍の《シン・リ―》

 

 

『最高!』

 

朱雀の《ス―・ジャン》

 

 

『空気がうまいぜ!』

 

玄武の《クン・プ―》

 

 

3体がさっと整列してカズコとパイ・フ―に礼を言った。

 

『ありがとう!』

『助かったぜ!』

『礼を言うぜ!』

 

 

ドヤ顔のパイ・フ―に対し、シン・リ―がフ―の右肩に手をかけて行った。

 

『ところで ちょっと聞こえたんだが俺達の中で一番偉いのはお前だって?』

 

クン・プ―も左肩に手をかけて言った。

 

『お前いつから俺達の中で一番偉くなったんだ?』

 

パイ・フ―はばつが悪そうな顔でもじもじしている。

 

『あ、いや…その…俺そんなこと言ったっけ…』

 

ニヤッと笑ってス―・ジャンが言った。

 

『いや。パイ・フ―。お前が一番偉い。俺達を救ってくれた』

 

『お前達…』

 

パイ・フ―は笑顔になった。

 

三獣はパイ・フ―を抱き締めた。

 

 

それを笑顔で見守るカズコ。

 

 

 

四聖獣はカズコに向かって横1列に並んだ。

 

カズコは寂しげな顔でパイ・フ―を見つめた。

 

『もう、元に戻るのね』

 

 

『ああ…でもカズコの事は忘れない…これからもずっと見守っているよ』

 

 

『パイ・フ―!』

 

 

二人は抱き合った。

 

 

そして2人はゆっくり 離れると、シン・リ―が叫んだ。

 

『よ-し!俺たちの定位置に戻るぜ!』

 

『オッケー!』

『イエッサー!』

『イッツ オ―ライ!』

 

四聖獣は光を発しながら空中に飛び上がり祠の四方の台座の上に乗った。

 

そして元の石像に戻った。

 

それぞれの石像の体には神具が光り輝いていた。

 

 

 

場面が変わり、盛大な結婚式の影絵と共にナレーションが流れた。

 

『その後、カズコとライゼンバ―グは結婚しました。二人はレイワとアメリアナ両国民に愛され、二国の架け橋となり、幸せに暮らしました。それは昔々の物語…』

 

画面が赤い舞台用のカーテンで閉まり、ジ・エンドの文字が浮かぶ。

 

 

 

『ちょっと待て!』

 

パイ・フ―が強引にカーテンを開ける。

 

 

『おいおい!まだ終わりじゃないぜ!』

 

『そうさ!せっかく久々に4人が揃ったんだ!』

 

『俺達のご機嫌のセッションを聞かせてやるぜ!』

 

そう言うと祠の前にバンドが現れた。

 

シン・リ―はべ―スギター

 

ス―・ジャンはキーボード

 

クン・プ―はドラムス

 

パイ・フ―はエレキギター とリードボーカル

 

 

『ワン!ツ―!ワン!ツ―!スリ―!フォー!』

 

 

――遥か海の向こうから♪

――お前の先祖がやってきた♪

――長い髪をなびかせて♪

――微笑みながらやってきた♪

――俺達四神は土地の神♪

――最初はMAX警戒心♪

――だけど彼女は強かった♪

――島のゴタゴた納めたよ♪    

――平和な1つの国になり♪

――俺達ゃ 彼女を見直した♪

――お前の一族守ってやるよ♪

――固い約束かわしたよ♪

――俺は白虎のパイ・フ―さ♪

――四神で一番偉い奴♪

 

皇祖神も祠の中で一緒に踊る。

 

――俺は白虎のパイ・フ―さ♪

――四神で一番偉い奴♪

――俺は白虎のパイ・フ―さ♪

――四神で一番偉い奴♪

 

 

歌に合わせてエンドロールが流れる。

 

 

 

 

次回 映画の評価が荒れまくる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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