首なし皇女は笑えない   作:haku728

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第34話 採用面接再び⑥

面接が終わった観覧室。

 

タカシと田端は心地よい疲労感に包まれていた。

 

「イヤ―。素晴らしい!まさかあのような方々が応募されているとは。全く嬉しい誤算だよ」

 

田端は気持ちが高揚して頭から湯気が立ち上っている。

 

「はい!その通りです。経理だけでなく、きっと何でもお任せできますよ!ねえ、館長!」

 

日々オーバーワークに疲労困憊のタカシも期待感が半端でない。

 

二人の真ん中でミニ和子が満面の笑みで天使の羽をパタつかせながらしきりに頷いている。

 

「さて…募集要員は一人だが…誰を採用しよう?」

 

「そうですね…瑠璃君はきっと飲み込みが早くて何でも素直に言うことを聞いてくれそうだし…」

 

(それに可愛い!)

 

ミニ和子が速攻で付け足し。

 

「西園寺さんは何も言わなくても全て片付けてくれそうだし…」

 

(それにビロードボイス!)

 

「伊集院さんは記念館の運営もお任せ出来るレベルだし…」

 

(それにワイルドなイケメン!)

 

「本当に贅沢な悩みだね。そうだ…タカシ君…」

 

「はい!」

 

「いっそ3人共採用しちゃおうか!」

 

「館長!ナイスです!」

 

2人はにっこり笑って見つめ合った。

 

田端は腕組みして黙している平九郎に向ってお伺いを立てた。

 

「名誉顧問!全員採用という事で…如何でしょうか?」

 

(当然採用よね!ね!平九郎!)

 

ミニ和子も鼻息荒くパイ・フ―を見つめる。

 

平九郎は初めて低い声を絞り出した。

 

 

「ぬう…彼奴ら…たしかに見目麗しき者共…」

 

 

(そうよね!そうよね!イケメンよね!)

 

 

「計算もそれなりに出来る様子…」

 

 

(そう!優秀なの!はい、採用!はい、採用!)

 

ミニ和子は自分の頭を右手に持って上下させ、チアガールのように腰を振りながら連呼した。

 

 

「だが!しか―し!」

 

平九郎はクワッと目を見開き絶叫した。

 

三人は表情が凍りついた。

 

「動機が誠に不純である!殿下目当ての卑しき奴ら!」

 

平九郎の眼は憤怒する閻魔大王の様に燃え盛っていた。

 

(そんな事ない!そんな事ない!平九郎!みんな真面目な方々よ!)

 

ミニ和子は天使の羽をパタつかせながらパイ・フ―の周りを必死に飛び回ってなだめる。

 

平九郎は観覧室の格子天井を遠い目で見つめながらしみじみと語った。

 

「殿下は常に外面(そとずら)に囚われる事無く、内面を重んじておられた…」

 

(そ、その通り!内面は大事…でも外面も大事なのよ!)

 

ミニ和子は半泣きになりながら平九郎の耳元で叫ぶ。

 

「もし、殿下が生きておいでなら必ずこう仰せになるじゃろう『見た目を飾るのも結構ですが、もっと心を磨いて出直しあそばせ』と」

 

(言わな―い!!!)

 

ミニ和子は絶叫してパイ・フ―の頭をポカポカ連打。

 

田端はゴクリと唾を飲み込んでプルプル震えながら平九郎に訊ねた。

 

「で、では…今回の採用は…」

 

「うむ!全員不合格じゃ!」

 

そう言うと平九郎はパイ・フ―の耳を前後に振りながら『ガッハハハ!』と豪快に笑った。

 

ミニ和子は地面に落下激突して『ムギュウ…』といって気絶。

 

生ける屍となった2人を尻目にパイ・フ―は玉座の和子にむかって直立不動の体制となった。

 

「殿下…自分は殿下をつけ狙う忌まわしき馬の骨どもを見事に退けましたぞ…この平九郎を褒めて下され…」

 

そう言って大粒の涙を流し、パイ・フ―の着ぐるみを濡らした。

 

 

「うぐ!」

 

タカシは確かに見た。

 

一見無表情に見える玉座の和子の周りに黒い瘴気が渦巻いているのを。

 

 

 

 

 

がっくりうなだれて帰る田端を見送った後、タカシは皇女と2人きりになった。

 

「うふふ…タカシさん…『次郎狸も出戻り嫁は三度まで』ですわよ…」

 

(あ!和子様が闇落ちされている…まずい…)

 

タカシの額に冷たい 汗が流れた。

 

「ねえ…タカシさん…降霊の御札はまだあるかしら?」

 

「え…何故ですか?」

 

「決まっているでしょう…平九郎にきつ~い説教を御見舞いしたいの…うふふ…」

 

「だ、駄目ですよ!連発したらまずいです…」

 

 

ダ―ク和子を必死になだめながらも、又明日からの変わらぬ多忙な日々を思い、げんなりするタカシであった。

 

 

 

次回  タカシに魔の手が迫る

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