首なし皇女は笑えない   作:haku728

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第47話  タカシの休日②

地下鉄帝京線《国立皇女記念館前》駅を下車した2人は9番出口から外に出た。

 

「わぁ!」

 

美枝は感嘆の声を上げた。

 

 

左に皇城が遠くにかすみ、右に皇女記念館がそそり立ち、エントランスの行列が見える。

 

彼女は首にぶら下げたカメラを構え、夢中でシャッターを切った。

 

「凄い建物だねぇ!あそこに皇女様がいらっしゃるんだね!」

 

「もう…恥ずかしいからあんまりはしゃぐなよ…」

 

「あんた…あんな立派なところで働かしてもらってるなんて… 本当にすごいじゃない!」

 

「まあね…人使いは荒いけど…」

 

「あんた何言ってるの!文句を言ったらバチが当たるよ」

 

「はいはい…判りました。さあ 早く行って入り口に並ぶよ」

 

「あ…待って…桜並木も綺麗」

 

「そんなものまで写真撮るなよ…急がないともっと混むんだから!」

 

美枝はいちいち立ち止まるため、その度に苛立ちの声を上げるタカシ。

 

 

2人がゲート前ににたどり着いた時には行列はさらに長く伸びていた。

 

『入場までの待ち時間60分』と看板に表記されている。

 

「1時間待ちか…昼前は一番混むんだよ」

 

「あんた職員なんだから特別入場とかとさせてもらえないの」

 

「今日は仕事で来てないから無理」

 

「あんた本当に役立たずね…でも 近くで見ると本当に大きい…」

 

記念館の威容に呑まれる美枝。

 

間口は100m(東大寺大仏殿の間口は57m)、奥行きは200m。

 

外装材には御影石が使用され、ヨーロピアンクラシックの彫刻や装飾が施された西洋レトロ風建築の仕様だが、三層の屋根には巨大ないぶし銀の瓦が連なっている。

 

彫刻枠の巨大な半円アーチの入口が近づいてくるにつれ言葉数が少なくなる美枝。

 

「うう…なんだか緊張してきたよ…タカシ…」

 

「こんなんでいちいち緊張するなよ…ほら、入場券を買うよ」

 

入口横の入場券発売窓口で親族割引でチケットを購入するタカシ。

 

ゲートではたかしは社員証を提示、美枝はチケットの半券をウェルカムガールにちぎってもらう。

 

「歴史と伝統の皇女記念館にようこそ!」

 

はち切れんばかりの笑顔で手を振られ、慌ててお辞儀をする美枝。

 

エントランスホールに入った2人を出迎えたのは高さ3m の青銅の皇女像。

 

軍服姿の和子が右手で天を指さしている。

 

『うふふ…ねえタカシさん…わたくし、一体何を指さしているのかしら?』

 

この像については、和子が夜の散歩をする時にふざけて毎回質問をされる。

 

その度にたかしは半泣き顔で「分かりません…」と答えるのが パターン化している。

 

 

「ちょっと!あんた!写真撮って!」

 

像の前にダッシュすると、にっこり笑って V サインをする美枝。

 

1枚で終わろうとしたらポーズを変えてもう1枚要求されるタカシ。

 

大理石の内装にシャンデリアがきらめく高い天井。

 

美枝の興奮は止まらない。

 

「母さん…はしゃいでないて…2階に上がるよ」

 

「ちょっと待って!」

 

忠国レストランの食品サンプルケースの前で立ち止まる美枝。

 

「ねえ お腹が空いたわ…何か食べましょう」

 

「ええ…まだ昼前だよ…」

 

「いいの!さあ入るわよ!」

 

(タカシスペシャル食べたばっかなのに…)

 

タカシは美枝に手を引っ張られて渋々レストランの入り口をくぐる。

 

「いらっしゃいま…あれ…山田さん!」

 

ウェイトレスの高橋 真由(たかはし まゆ)が目を丸くする。

 

「うちのせがれがいつもご迷惑をおかけしております」

 

美枝が深々と挨拶をする。

 

「へえ…今日はお母様とご一緒なのね…」

 

「はい…母にせがまれて…」

 

「ふふ…いいことじゃない。ゆっくりしていってね」

 

そう言うと真由は注文を聞いて奥に下がった。

 

「ねえ…可愛い制服ね。黒いワンピースに白エプロン。あれってメイド服っていうの?」

 

「違うよ!皇城の給仕官の職業制服を再現したものだよ」

 

「ふうん…でも可愛い子じゃない。あの子と付き合ってるの?」

 

「ばっ!んなわけないじゃん!」

 

タカシは飲みかけた水を吹き出した。

 

「隠さなくてもいいわよ!母さん応援するから」

 

「だから違うって!あの人には彼氏がいるの!」

 

「あらそうなの…あ、来た来た。美味しそう!」

 

2プレートの皇女ランチが運ばれて来た。

 

皇女が戦前に愛されていたというスズキのソテーをメインにほうれん草とかぼちゃの煮物、ピンクに着色したライスがついている。

 

タカシが箸をつけようとすると「今写真を撮るの!」と言って叱られる。

 

箸をつけてから夢中で咀嚼する美枝。

 

「美味しいよ!タカシ…美味しいよ!」

 

「ちょっと!そんなにがっつくなよ…恥ずかしい」

 

「あんたねえ!母親に恥ずかしいとは何なの!」

 

「もうちょっと静かに 食べて欲しいんだよ…」

 

「ところでタカシ…次はどんな順番なの」

 

「二階の常設展示コーナーを回ってから三階の特別観覧室、そして 2階に戻って特別展示コーナーを見てから1階のショップに行く。まあ 基本的にはこの順路かな」

 

「そうなの!さあ行くわよ!」

 

「え…もう出るの(コーヒー飲みたかったな)…」

 

 

目を白黒させながら勘定を済ませるタカシを尻目にすでに二階に心が飛んでいる美枝であった。

 

 

 

 

次回 母 皇女を拝観する

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