廃核の海 〜魔族アバターのまま現実世界に放り出された俺と不思議な美少女の物語〜   作:織雪ジッタ

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ゲームの中のキャラクターの姿のままログアウト後の世界に出てきてしまったショウ。
ゲーム運営を名乗る男達の言うまま施設へ。


そこは脳内携帯とも言える『インプル』も全く使えない閉ざされた空間だった。


エアバニー警視正率いるイ特の調査も迫る中、美人看護婦の東風平(コチンダ)さんとのひとときに、オムツ姿ながらも心奪われるショウであった。


そん中、保健所に預けていたアナトがヘビに姿を変えてショウの病室に訪れていた。


10話 指名手配と謎の診断 ―担当医金森

ショウは考えていた。

 

 

アナトは一体、何者なんだろうと

 

 

考えれば考える程に不思議さが増してくる。

 

 

まず、インプル版VRMMOファーストアドベンチャー18の機能のハズの直接会話(SP)が現実世界で使える。

 

 

そして、どういう訳かある程度、今のショウの状態も把握している様だ。

 

 

しかし、彼女はこのファーストアドベンチャー18の制作会社の人間でもなさそうだ。

 

 

それともアナトも自分と同じくファーストアドベンチャー18の被害者なんだろうか?

 

 

しかし、それにしては違和感がある。

 

 

それならアナトも例の『オムツの様な下着』を知っている筈だ。

 

 

しかし、『オムツの様な下着』を見たときの彼女反応は事前に知っている感じがしなかった。

 

 

まるで始めて見る変なものを見た時の様に、蔑んだ目で眉をひそめていた。

 

 

ショウ:まぁ、実際変なものなんだけどさ。。

 

 

ショウ:だけど、サークルアンデッドがばら撒いたナノマシーンって何なんだ?それのせいでこんな事になってるってことか?

 

 

ショウ:それから、アナトはなんで変身なんて出来るんだ?アナトを食らえば俺も出来るって何だよ??意味が分からない。。。

 

 

それに、このアナトの奇跡の様な美しく完璧な容姿も変身(メタモルフォーゼ)によるものなのだろうか?

 

 

ショウはため息をつく。

 

 

そもそも味方なんだろうか?

 

 

アナトは、科学者や権力者の理不尽に対して嫌悪感を顕わにもしていた。

 

 

サークルアンデッドを使って83区が81区にやっているらしい事に対しても何か腹を立ててるみたいに見える。

 

 

81区民だから?

 

 

この人、一体何と戦ってるの??

 

 

ゲームにかこつけてナノマシーンをばら撒いたって何??

 

 

そもそもナノマシーンって何なんだよ!?

 

 

ショウ:あー怖い。なんか怖くなってきたわー。。。

 

 

ショウの頭の中をそんな思いがぐるぐるまわっていると耳元で声がする。。。

 

 

ぉぃ

 

 

ぉぃ

 

 

アナト「おい!」

 

 

ショウ「うわ!な、なに??」

 

 

アナト「だから大きな声を出すなと言っただろう?」

 

 

アナト「さっから注意が散漫な様だ。気分でも悪いのか?」

 

 

ショウ「う、うん。いや、アナトってさ。。どうやってそんな能力を手に入れたのかなって?」

 

 

ショウ「やっぱりファーストアドベンチャーで?」

 

 

アナト「違うな。もっと前の実験が関係している。私はずっと以前の研究所でナノマシーンの実験体にされていた被害者の生き残りの娘だ。」

 

 

ショウ「そ、そうなんだ。。サークルアンデッドってそんなに前からあったんだ。。?」

 

 

アナト「それも少し違う。サークルアンデッドは以前の研究成果を引き継いだに過ぎない。母にとっては忌まわしきそして私達にとっては生命線ともなったその研究をな。」

 

 

ショウ「私達?他に仲間や家族がいるのか?」

 

 

そう言われると、アナトはひと呼吸おいてガラリと目の色を優しく変えた。

 

 

アナト「あぁ。兄様と他にも仲間がいる。」

 

 

そう言うと初めて初々しい笑顔を見せた。

 

 

ショウ:うわーなんか急に嬉しそう。。。

 

 

それを見てショウは少しだけホッとした気がした。

 

 

アナトのその様子に悪い子ではない気がしたからだ。

 

 

しかしそれもつかの間、すぐにアナトの表情は険しくなり

 

 

アナト「誰が来た様だ。。」

 

 

と、今度はみるみるアナトの身体は壁一面に広がり、入り口を除く他の2面の壁と見分けのつかない真っ白い壁に擬態した。

 

 

ショウ:ホントに凄いな。。この『能力』俺も使えたらなぁ。。

 

 

と、関心しているとコンコンっとノックがして返事をする間もなく

 

 

男「失礼します。」

 

 

と今度は白衣の男性が入ってきた。

 

 

男「宜しくお願い致します。私、この度担当医になりました金森と申します。」

 

 

ショウはハッとなった。

 

 

ショウ:確かコチンダさんがさっき気を付けてって言ってた人だ。。

 

 

金森「どうかしましたか?」

 

 

ショウ「いえ、どうもご丁寧に。こちらこそ宜しくお願い致します。」

 

 

金森「早速ですが他守さん。簡易の検査結果を見ました。他守さんの外観は先に伺っていたので、もしやと思っていましたがまさかここまでの症状だとは思いませんでした。」

 

 

ショウ:あれ?コチンダさんと反応が明らかに違う。まるで病気扱いだ。。

 

 

ショウ「何かまずい状態なんですか。。?」

 

 

金森は深く頷くと

 

 

金森「ええ、申し上げにくいのですが、ゲーム内にウイルスが混入していた時期がありまして。。」

「そのウイルスの影響でゲーム内の設定等が本当の肉体に影響してしまう事象が最近になって多数報告されています。。」

 

 

ショウ「あの、一体どういったロジックでそんな事が起こるんでしょう?」

 

 

ショウ「これはちょっと普通では考えにくい状態なんですが。。」

 

 

金森「ええ、確かにそうでしょう。然し、そのウイルスはプログラムからネットワークに穴を開けてそこからゲーム機器自体とインプルシステムをハッキングしてインプルから脳内チップ付近の脳細胞を直接汚染し体全体に広がるのです。」

 

 

ショウ「インプル経由で。。?じゃぁ僕の頭の中のチップは今ウィルスにやられているんですか?」

 

 

金森「ウィルス駆除プログラムをチップに通して一旦進行を止める必要があります。その為に明日から特別集中治療室に入って頂く必要があります。どうかご了承下さい。」

 

 

淡々とした口調で金森は説明を続けた。

 

 

然し、アナトや東風平(コチンダ)のこともあってショウには全てをそのまま鵜呑みにする事も出来なかった。

 

 

そして説明が終わると金森は

 

 

金森「では、また明日。今日はしっかりお休み下さい。」

 

 

と部屋を出ていった。

 

 

硬い廊下に響く革靴のコツコツという足音が遠くに消えて行った。

 

 

そして間もなく、アナトは擬態を解いて壁から少女にその姿を戻した。

 

 

そして花を飾るくらいしか出来そうにない小さなテーブルにあったリモコンを手にとると壁に仕込まれたモニターの電源を入れた。

 

 

それから人が複数人で騒がしく討論している様なトーク番組をつけた。

 

 

アナト「一人部屋から話し声がしていたらおかしいからな。」

 

 

アナト「それに、私には外の気配が分かるからこの程度の騒音があっても外の注意には差し支えない。」

 

 

と、つけた番組をさも興味なさそうに見つつアナトは言った。

 

 

アナト「。。。特別集中治療室か、入ったら最後一生出れそうにないな。」

 

 

アナト「散々実験台にされた挙げ句、眠らされたまま内蔵一つ一つバラバラに取り出してホルマリン漬けにされるんじゃないか?」

 

 

そう言うとアナトはショウの方に目線だけ向けてニヤリとした。

 

 

ショウ「怖いこと言うなよ。。まさかそんな。。」

 

 

しかし、アナトの言うようにサークルアンデッド自身がナノマシーンだかウイルスだかをばら撒いていたのなら、このままノコノコ行けば何をされるかわからない。。

 

 

アナト「奴らの目的は81区の救世主を生むことではない。83区の利益を生むことだ。奴らが欲しいのはお前の成長ではなくデータだ。」

 

 

アナト「奴らもエアバニーの時の轍(てつ)は踏むまい。将来的に脅威になり得るお前をこのまま外の世界に野放しにするなんて事はしないだろう。」

 

 

※エアバニー警視正…特イ第1捜査課課長

 

 

ショウ「エアバニー?あのイ特の?何か秘密があるのか?」

 

 

アナト「奴もお前と同じナノマシーン適合者だ。お前程突出したものではないがな。」

 

 

ショウ「へー。。知らなかった。防衛戦の英雄とは聞いていたけど。。」

 

 

ショウ「アナトは知り合いなのか?」

 

 

アナトはショウの顔を覗き込んで目を見て一言

 

 

アナト「さぁな」

 

 

と言ってベットに腰をおろした。

 

 

ショウは、何なんだよ。。と心の中で苦笑した。

 

 

そしてひと呼吸おいて

 

 

アナト「それよりここを脱出するか?特別集中治療室とやらに入って眠らされでもしたら脱出は困難だぞ。」

 

 

ショウ「んー。。でもどうやって?俺はヘビとかなれないぞ?」

 

 

アナト「方法はいくらでもあるさ。」

 

 

その時だった。

 

 

テレビからニュースが飛び込んできた。

 

 

『ここで、臨時ニュースをお伝えします。』

 

 

『先程、警察よりイシュタラ関連の発表がありましたのでお伝えします。』

 

 

ショウ「なんだ?ついに攻めて来たのか?」

 

 

『昨夜27地区で目撃されたイシュタラと思われる生命体ですが、同区に潜伏していたイシュタラである可能性が高いと公式に発表がありました。尚も逃走中のこのイシュタラの行方を警備局イシュタラ対策部では捜索しています。また、現在行方を眩ませている同区の他守ショウ28歳の自宅から長期に渡ってイシュタラが居住した形跡が発見され、イシュタラ隠微または共謀の容疑で81区全地区指名手配に指定されました。また、政府からも先程外出を自粛するように勧告が出されました。危険ですので絶対に出歩かないようにして下さい。繰り返します。。。』

 

 

ショウ「え。。?」

 

 

一瞬時間が止まったみたいになり、ショウには何が起きたのかわからなかった。

 

 

ショウ「お、俺?指名手配??」

 

 

アナト「ナルホド。。そう来たか。」

 

 

アナト「これでお前はその姿のままでもイシュタラとして追われ、姿を元に戻せても指名手配のお尋ね者だ。」

 

 

アナト「ここの連中もこれを見てどう出るか。。」

 

 

ショウは頭を抱えた。

 

 

ショウ「つ、詰んだ。。俺はこれからどうすればいいんだ。。?」

 

 

アナト「いっそ81区を出るか?」

 

 

ショウ「指名手配なって区外へは出れないよ。。それに氷河期が終わったとはいえカプセルの外は放射能汚染が酷いし、イシュタラもいるし出たらおしまいだよ。。」

 

 

アナト「お前はイシュタラなんだろう?出ても大丈夫なんじゃないか?」

 

 

アナトは少し嬉しそうにそう言うと

 

 

ショウはムッとして

 

 

ショウ「冗談言ってる場合じゃないだろ!」

 

 

とふてくされて横になってしまった。

 

 

何か小声でブツブツ言っているショウの頭にアナトはそっと手をかけて

 

 

アナト「エアバニーレベルでも外へ出て大丈夫なんだ。お前もいけると思うがな。。」

 

 

アナトはそう言うが、ショウはそっぽを向いてしまう。

 

 

ショウ「もう、放っといてくれよ。。俺はもう立ち直れそうにない。。」

 

 

ショウ「。。。」

 

 

ふと辺りを見回すとアナトがいない。。

 

 

ショウ「アナト?あれ?。。本当に放っておかれた。。?マジかよ。。。あっさり過ぎんだろ。。。?」

 

 

ガクっとした所でショウの部屋のドアがノックされる。

 

 

コンコン

 

 

「金森です。少しお話を。」

 

 

その声に緊張が走りショウの胸はドキリとした。

 

 




読んでくださりありがとうございます。
ここまでお付き合いいただけて本当に嬉しいです。
もし物語を楽しんでいただけていましたら、評価やブックマークをいただけると今後の更新の励みになります。
次回からさらに物語が動きますので、ぜひお楽しみください。
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