廃核の海 〜魔族アバターのまま現実世界に放り出された俺と不思議な美少女の物語〜 作:織雪ジッタ
ショウが竹田の体に触れるとすぐにそれが無機質なものであることが分かった。
小さな機械の振動のようなものも伝わってくる。
ショウ:こ、これは。。。
ショウ「た、竹田さん。。。あ、貴方はまさか、アンドロイド?なんですか。。。?」
竹田は気まずそうに少し微笑んで答える。
竹田「恥ずかしながら、何度も不穏分子による襲撃に遭っていまして。。。今では体の半分以上を機械化して何とか生きながらえている状態です。」
ショウ「不穏分子って一体誰がそんな。。。?」
竹田は仕方がないといった様子でため息を軽くつく。
竹田「まあ、余り世間では知られていない事ですからね。。。」
竹田「失礼ですが貴方は紀元前(E.C.前)の歴史をご存知ですか?」
ショウ「いえ。。。?聞いたことあるのは神話や昔話に出てくる話ぐらいです。学校でも習わないですし。。。」
紀元前(E.C.前)とは200年程前、イシュタラの国の建国やヤムを含む外海の魔神達とエンキに扇動された人間との戦争が起こる前の事である。
肥大化した大型カプセルはその戦争の際にことごとく破壊されて今の小型カプセル群時代となり、そして新世紀へと移行した。
カプセルが小型化したのは一箇所のカプセル破損によって大きなカプセル全体が全滅してしまうのを解消する為である。
この時代にも既に一度、人間はイシュタラと戦っているのだが、その事実は隠蔽されている。
今と違いイシュタラ達も表立ってイシュタラとして戦争をした訳では無いこともあるがエンキ達や1区の対外的な事情もあって今は隕石群の飛来やウィルスの流行で大型カプセルが廃棄されていった事になっている。
そして氷河期突入後、辛うじて残っていた科学力や歴史データの大半がその戦争の時に失われる事となった。
電力のパイプラインの破壊で各地のデータセンターが長期に渡って停止し、さらに追い打ちをかけるようにそのパイプラインに外海の魔神達による放電がなされた為にデジタルデータの大半が消失してしまったのだ。
分散型クラウドに保管された各地のデータはもちろんだが世界中でそのデータの履歴を保証するブロックチェーンで保管されたデータでさえも難を逃れた情報は断片でしかなかった。
そして、そこに外海の魔神達による知識人の虐殺や焚書があった。
人間の科学力を削ぐ事で人間達の復興を阻止するためである。
魔神達は計画的に人間の知恵の元を根こそぎ削ぎ落としたのだ。
よってこの時代、氷河期以前や巨大カプセル時代の事を正確に知る者は少ない。
そんな中でも神社や宮中では歴史を神事や踊り、祭りの中で伝える風習があった為におぼろげながらおおよその出来事はこの時代でも神話として伝わっていた。
そしてその戦争の時代から生きている天皇は歴史の生き証人でもあったが立場上、外の人間とは接触できない為に天皇自身の知識も外に出ることは無かったし区の意向でそれを公にする事もなかった。
1区主導の元、世界のカプセルが再編された後にはそれまでの歴史と過去のような輝かしい科学力は見る影もなく失われていた。
各地区のカプセルの生き残りの中で伝えられた情報は断片的でまとまりが無くまた、カプセルの外は凍結して現地調査のしようもなかった為にその内容も不確かであった。
竹田「イシュタラの国の史書にも詳しい歴史が書かれている様ですがご覧にはなられなかった様ですね。」
ショウ「あ、俺はイシュタラの国の中には入れなかったので。。。」
竹田「入れなかった。。。?貴方程の人が。。。そうですか。。。」
アナトは少し苦笑いをしながら頷くとそれに気がついた竹田は何か納得した様な表情を見せる。
竹田「なるほど、それは失礼しました。」
竹田「端的に申しますと過去の誤った思想に傾倒した輩がイシュタラを夷狄とし、天子様をいたずらに祭り上げて現体制を覆そうとしているのです。」
竹田「その思想を尊皇攘夷と言います。」
ショウ「尊皇攘夷。。。?」
竹田「はい、しかし天子様はそのような事はお望みになっておりません。」
竹田「彼らは私共がバアル殿達と接触している事をどこからか嗅ぎつけて私共を目の敵にしております。」
竹田「彼らは我が同胞を襲撃せしめた現場に『天誅(てんちゅう)』と書かれた和紙を残し立ち去ってゆくのです。」
ショウ「天誅って。。。?」
竹田「既に多くの同胞の命が奪われております。」
竹田「各番地では恥ずかしながらイシュタラの国の方々にこうして常駐してもらって守って頂いているのが現状です。」
ショウ「まさかそんな事が。。。ニュースでは何も出てなかったのに。。。」
竹田「私もこのままでは長くは持ちません。」
ショウ「。。。」
ショウは言葉がでなかった。
竹田は感情や恐怖が無いかまるで他人事の様に語っている。
その言葉を聞いてショウの表情が悲しそうに変わっていくのを竹田は気にする様子もない。
竹田「ですからむしろお願いしたい。私のこの朽ちかけた体で是非お試し頂きたいのです。天子様の血縁である私なら良い判断材料になるでしょう。」
ショウ「。。。」
竹田「私の事でしたらお気になさらずに、この様な形で自然の理に反してまで生き永らえてお上に何の役にも立てない事の方が私にとっては不幸な事なのです。」
ショウ「。。。」
竹田「それに、期待もしているのです。このまま朽ち果てようとしている老人をお救いくださいませ。」
竹田は終始優しそうに微笑んでいる。
ショウ:死ぬつもりの顔じゃない。。。よな?
ショウ「。。。分かりました、やってみます。」
竹田「ありがとうございます。」
ショウ「その代わり、何かおかしいと思ったらすぐに言ってくださいね。」
竹田は深く頭を下げるとショウの手を取る。
竹田「はい、貴方は本当に優しいお方なのですね。感謝し致します。」
ショウ「いや、そんな。。。俺はただ
。。。」
ショウがそう言われて少し照れくさそうにしているのをエルヴィンは何か複雑な気持ちで眺めていた。