廃核の海 〜魔族アバターのまま現実世界に放り出された俺と不思議な美少女の物語〜 作:織雪ジッタ
しばらく気まずい空気が流れたが剛本は気にする様子もなくただ自分を責めて立ち尽くしていた。
血清剤さえあれば全快すると思っていた小町は未だに重体だ。
ナノマシーンウィルスの感染で重症化し、その状態が長期に渡った為に重い後遺症が出てしまったのだ。
剛本にとって小町は幼馴染みでもあり、ずっと想いを伝えることの出来なかった初恋の相手でもある。
その小町に『もしも』の事があった時の事を考えると剛本の目の前が真っ暗になってしまうのも仕方のない事だった。
そんな剛本にかける言葉も見つからないまま、ただ時間だけが過ぎようとしていた。
そこに、どこからか物悲しい声で歌声が聞こえてきた。
どこか哀愁を感じさせるゆっくりとした男の歌声だ。
「山を越え〜谷を飛びぃ〜♪」
エアバニーはハッとする。
エアバニー:この声は。。。
「僕らの街へ〜やってきたぁ〜♪」
そして剛本の足元に黒い影が現れたかと思うとそこから人の影の様な形が水面から浮かび出てくるかのようにゆっくりと現れた。
「サ〜スケ君がやって来たぁ〜♪」
そして黒い人影がみるみる実体化すると一人の忍者風の男の姿となった。
エアバニー「サスケか。」
サスケ「隊長上(たいちょううえ)、お久しゅうござる。」
エアバニー「で、お前その顔はどうした?」
サスケ「はぁ、色々ありまして。。。」
サスケの顔はひどく腫れていた。
いわゆるボコボコである。
剛本もサスケのその姿に流石に驚いた。
剛本「お、お前。。。一体どうしたんだ?」
サスケ「剛本氏(ごうもとうじ)、聞かないで欲しいでござる。。。何でもないでござる。」
剛本「何でもないって事はないだろう?お前をそこまでボロボロに出来る人間はそういないぞ?まさか。。。イシュタラか?」
サスケ「いや。。。その。。。」
剛本「何だ?ハッキリ言え!」
サスケ「え?ハットリ?」
剛本「ハットリじゃない!ハッキリだ!」
サスケのわざとらしい聞き間違いに剛本は思わずイラッとしてしまう。
サスケ「き、傷に響くのでそんなに大きい声を出さないで欲しいでござるよ。。。」
剛本「お前がはぐらかすからだ!」
サスケ「何を怒っているのでござるか?ちくわでも食べて機嫌治すでござるよ。」
サスケはそっとどこからか取り出した裸のちくわを手づかみで差し出す。
剛本「ちっ!もういい!どうせ隠密行動だろ?俺はもう行く。勝手に報告でも何でもしてろ!」
サスケ「そんな、拙者と剛本氏(ごうもとうじ)の間で隠し事などといったことはござらんでござるよ。」
剛本「あーもううるさい、よくそういう事が言えるな!お前は隠し事しかねぇじゃないか!」
剛本「隊長、下がっても宜しいですよね?」
エアバニー「え?あ、あぁ。お前も余り気負うなよ!」
剛本「俺はコイツと違って大丈夫ですよ。では、失礼します。」
エアバニー「そ、そうか、ご苦労。」
そうして剛本は一礼して部屋を出ていった。
サスケは取り出したちくわをモグモグと食べている。
エアバニー→サスケ:で?何があった?
エアバニーは盗聴を警戒して直接会話(SP)で極秘任務の報告を確した。
サスケ「そんなに、モグモグ、見つめられるとモグモグ、恥しいでモグる。。。」
サスケ→エアバニー:実は、西部を調査していた所、本物の忍者に遭遇しました。
サスケも慣れたもので表面ではトボけた風を演じながら裏では同時に報告をし始めた。
エアバニー「おーい、ここでちくわを食うんじゃねーよ!どうしてそんな怪我をしたんだって聞いてんだよ!」
エアバニー→サスケ:西部?どうして西部へ?
サスケ「拙者、シャイなルミナスなんで。。。」
サスケ→エアバニー:内通者を特定しました。その者の人脈を手繰っていくと西部にいたある人物に辿り着きました。
エアバニー「何だそれ??人の話聞けよ。。。」
エアバニー「もう一度聞く、どうしてそんな怪我をしたんだ?」
エアバニー→サスケ:やはり内通者がいたか。。。間違いないんだな?
サスケ「実は、どんぐり眼にへの字口でクルクルほっぺの覆面男にやられました。。。」
サスケ→エアバニー:間違いありません。社団法人ニンナズの幹部にナノマシーンウィルスの感染者リストとカルテの写しを渡しているのを確認しました。
エアバニー「覆面してるのにそんなに顔の特徴がわかるのか?」
サスケ→エアバニー:そしてその情報の奪還を試みてそのニンナズの幹部を追跡したところ。。。
サスケ「顔丸出しの覆面でござった。」
エアバニー「。。。。それ、覆面の意味あるのか?」
サスケ→エアバニー:同じくそのニンナズの幹部を尾行する忍(しのび)らしき者と遭遇しました。
サスケ「忍者でござるから。」
エアバニー→サスケ:忍?この時代にか?お前みたいに趣味で忍者ごっこしているんじゃなく?
サスケ→エアバニー:拙者も別に趣味で忍者やっている訳ではござらん。
エアバニー:忍者ねぇ。。。
サスケ→エアバニー:その名を影丸ともうす者にござる。
エアバニー「まぁお前が忍者かどうかも怪しいもんだがな。」
サスケ「し、失礼でござるな!」
エアバニー→サスケ:ニンナズを尾行ってことはやはりイシュタラの。。。?
サスケ→エアバニー:そこまではわかりません。。。しかし、とてつもない強さでござった。恐らくランクにしてSSかそれ以上かと。
エアバニーはそれを聞いて「うーん。。。」と頭を抱え込む。
エアバニー:イシュタでそこまでの強さで、さらに忍者っていうのは聞いたことがない。SS以上って事はひょっとしてあの他守って男が絡んでるのか?
エアバニー:こりゃアナトかバアルに聞いてみるしかないな。。。
エアバニー:ヤダけど。。。
エアバニーはため息をついて気持ちを切り替える。
エアバニー→サスケ:それで?肝心のスパイ野郎の正体は?分かったって言ったよな?
エアバニー「そんなに膨れるな。別に忍者だろうがなかろうが仕事が出来れば俺は気にしない。」
サスケ→エアバニー:はい。
サスケ「そんな言葉には騙されないでござる。。。」
エアバニー→サスケ:それは誰だ?
エアバニー「そんな顔するな。」
サスケ→エアバニー:それは。。。
サスケは悲しそうな顔をやめて変顔をした。
そしてその顔のままエアバニーに内通者の正体を明かした。