廃核の海 〜魔族アバターのまま現実世界に放り出された俺と不思議な美少女の物語〜   作:織雪ジッタ

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11話 決死

数ヶ月前 イシュタラの国、青の研究施設

 

ナノマシーンの研究をするクレピオスの許(もと)をヤムは訪ねた。

 

壁沿いに並べられた長机には乱雑に積み上げられた紙や何かの溶液が入ったビーカー、試験管が所狭しとひしめき合っている。

 

そんな中、白衣を着た男が難しそうな顔で紙に書いた文字や図形を眺めている。

 

彼はクレピオス。

 

イシュタルの国で薬屋をしているアスタルトの父だ。

 

彼は長年、この青の研究施設でナノマシーンの研究をしている。

 

この日も忙しく何かに没頭している様子。

 

そこにコンコンとノックの音がして、ヤムが姿を見せるとすぐに手を止めてヤムの方を向いた。

 

クレピオス「おや、そろそろ、お出でになる頃だと思っていましたよ。」

 

ヤムは軽く会釈をすると研究室に入る。

 

ヤム「例の薬が出来たとアスタルトに伺いました。」

 

少し間をあけてクレピオスは答える。

 

クレピオス「まぁ、おかけ下さい。」

 

ヤムは目の前に置かれた白い丸椅子にスッと腰をかけるとじっとクレピオスを見つめた。

 

クレピオス「。。。お渡しする前に一つ忠告したい事があります。」

 

ヤム「ええ、分かっています。」

 

クレピオス「この薬は容易にナノマシーンにかけられたリミッターを解除します。しかし本人に適正がなければティアマトのオーラの暴走を呼び、自滅してしまいます。」

 

クレピオス「もしリミッターを完全に解放してしまうと、1分後に生き残れる可能性は0.0001%にも満たない。だからこの薬は90%を限度に開放します。」

 

クレピオス「それでも、恐らく使えば遠からず命を落とすでしょう。」

 

ヤム「どのぐらい持ちますか?」

 

クレピオス「そうですね、今のヤム議長の状態ですと。。。申し上げにくいのですが、もって10分程かと。。。」

 

クレピオス「あと、開放する際には想像を絶する苦痛を伴います。」

 

ヤム「そうですか。。。分かりました。ありがとうございます、」

 

クレピオス「なるべくなら使う日が来ない事を祈ります。」

 

ヤム「そうですね。。しかしそう甘い相手ではないかと。。」

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

そして今、イシュタラ野営地

 

 

ヤムは注射針を舌に差し込むと躊躇(ちゅうちょ)なくその中の液体を自身に注入した。

 

そうしてくるみ割り人形と対峙する。

 

くるみ割り人形「何だそれは?何をした?」

 

くるみ割り人形が不信感を顕にしたのもそのはず、ヤムの異変はすぐに見て取れたのだ。

 

息遣いが荒くなり、目は血走り、体中の血管が浮き出ている。

 

ヤムの表情は苦痛に歪み苦しんでいるのが分かる。

 

ヤム「うおおおおおおおおお!!!!!!」

 

血の涙を流してヤムは絶叫する。

 

そしてすぐに体からティアマトのオーラが吹き出し始めた。

 

それは赤からオレンジ、黄色とどんどん変化していく。

 

ヤムの表情はとても苦しそうだがそれでもオーラは暴走する訳ではなく、ついには青い色にまで変わって安定したかに見えた。

 

バアル「あ、青色覚醒!?ヤム議長!?一体何を!?」

 

くるみ割り人形「こいつ、まさかリミッターを外したのか!?一体どうやって??」

 

くるみ割り人形:リミッターの制御は簡単ではない。加速度的に制御が難しくなる。それを一気に青色まで進めて止めるとは。。。

 

と、くるみ割り人形が思考をしていたその瞬間、青い閃光がくるみ割り人形を襲う。

 

ヤムの手から青い光が放たれてくるみ割り人形を直撃したのだ。

 

後方の建物は跡形もなく吹き飛び、そのまま後ろの山を削り取ってその光は彼方に消えていった。

 

しかし、くるみ割り人形はそれをまともに受けても尚、フワフワとそこに浮いていた。

 

くるみ割り人形「フン、なかなかだがやはり付け焼き刃だな。」

 

多少ダメージはあるようだが効いてはいない。

 

ヤム「バアル殿、私が時間を稼ぎます。貴方は退いて下さい。」

 

しかしバアルはそれでは納得しなかった。

 

バアル「駄目だ、加勢する!」

 

バアルはそう言うと黄色いオーラを放ちながらヤムの隣についた。

 

ヤム「貴方に死なれてはイシュタル様に申し訳が立たない。退いて下さい。」

 

バアル「貴方を見殺しにしても母様に合わせる顔がない。」

 

ヤム「。。。。」

 

ヤム「私は、正直に言うとイ特の作戦もあなたがたの作戦も賛同しかねている。今、我々は全て後手に回っているのですよ。なぜだと思いますか?」

 

ヤムはさらに青いオーラを放つ。

 

ヤム「アヌという強者の出現に対して何の手立てもなく目の前の敵と対峙してしまったからです。」

 

 

ヤム「今の敵はエンキ親子だけではない!いや、この化け物は比べ物にならない!」

 

そう言いながらヤムはくるみ割り人形に殴りかかる。

 

しかし、くるみ割り人形はひょいとそれをかわしてヤムを蹴り飛ばした。

 

ヤムは腕でそれを受け止めるがそのまま後ろに飛ばされる。

 

ヤム:強い。。。やはりこれは。。。

 

ヤム「貴方がアヌという事で間違いなさそうですね。」

 

くるみ割り人形「だったらどうする?尻尾まいて逃げるのか?」

 

ヤム「早く!一度退いて他守君と合流を!」

 

くるみ割り人形「アイツを連れてきてくれるのか?それも悪くないが。。。」

 

くるみ割り人形はバアルに手をかざす。

 

すると、バアルの周りの空間がネジ曲がって球体になる。

 

くるみ割り人形「捕まえた。」

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