廃核の海 〜魔族アバターのまま現実世界に放り出された俺と不思議な美少女の物語〜   作:織雪ジッタ

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12話 光の正体

その球体はまるで大きなシャボン玉の様にバアルを捕らえて宙に浮いている。

 

バアルは球体を破壊しようと中から電撃を試みるがその攻撃は空間ごと捻じ曲げられて空回りし、球体の中を明るく照らすぐらいの効果しかなかった。

 

叩こうにもイシュタラの国を覆うあの大きな壁のように触れれば空間が曲げられてちょうど球体の反対側から抜けてきて自身の背中の方から手が出てきてしまう。

 

それは外側からでも同じで、ヤムが球体に攻撃してもグニャリと表面を這うようにすり抜けて球体の後ろに抜けるのみである。

 

くるみ割り人形「無駄だ!」

 

くるみ割り人形はヤムを殴り倒すと頭を踏みつけて覗き込むようにヤムの顔を見た。

 

くるみ割り人形「お前はもう死ね。バアルは預からせてもらう。」

 

ヤム「そんな事はさせん!」

 

ヤムはそう言うと歯に仕込んでおいたもう一本の『薬』を噛み割った。

 

次の瞬間、ヤムの体は眩いばかりの紫色の光を放った。

 

くるみ割り人形「な、何だこれは!?紫色覚醒したというのか!?」

 

驚く暇もなくヤムの体からは、くるみ割り人形へ向けてまばゆいばかりの紫色の光が一直線に突き抜けた。

 

その光はくるみ割り人形を包みこんでそのまま空の彼方まで突き抜けて行った。

 

あたりは轟音と共に衝撃波で見渡す限りの建物と木々がなぎ倒された。

 

そしてその光と轟音が収まるとヤムの体はボロボロに朽ち果てて今にも崩れ去りそうになっていた。

 

もはや長くないのが見て取れる。

 

そしてバアルを包んでいた球体は音もなく消え去った。

 

バアルはヤムに駆け寄る。

 

バアル「ヤム!ヤム!そんな!?クソ!なぜお前がそこまで!?」

 

ヤム「何とか抜け出せたようですね。。。」

 

バアル「ヤム!すぐに連れて帰って手当てを!」

 

そんな中、そこにくるみ割り人形の姿が現れる。。。

 

とは言え、さすがのくるみ割り人形も無事ではなかった。

 

左腕を失い、その姿はこれまでに見たことのない程にボロボロだ。

 

かなりのダメージを負ってはいた。それでも『それ』はまだそこに浮いていた。

 

ヤムの決死の攻撃でも致命傷は免れていたのだ。

 

くるみ割り人形「ぐ。。。今のは危なかった。。。だが、これで終わりだ!」

 

くるみ割り人形はボロボロになったヤムに向けて右手をかざす。

 

ヤム「バアル殿、私はここまでです。どうか逃げて下さい。。。」

 

そう言うとヤムはバアルを突き放した。

 

バアル「ヤム!?」

 

次の瞬間、くるみ割り人形は無言で手から衝撃波を放った。

 

そしてヤムは跡形もなく粉々になって吹き飛んだ。

 

バアル「ヤ、ヤム。。。」

 

バアルは何もすることができなかった。

 

その頬には涙が流れていた。

 

 

くるみ割り人形「想定外のチカラだったな。だがもう終わりだ。」 

 

バアル「。。。」

 

バアル「この。。。この野郎!!!」

 

バアルはくるみ割り人形に殴りかかるがくるみ割り人形はすり抜けてバアルの首を掴んで浮き上がった。

 

くるみ割り人形「勘違いするな、お前は俺の大切な孫だ。殺したりしない。」

 

くるみ割り人形「さあ、こっちへ来い。」

 

バチバチとオーラがバアルを押さえつけている。

 

バアル:う、動けない。

 

くるみ割り人形「お前を連れて行く。」

 

バアル:このままむざむざと連れて行かれたらヤムの死が無駄になる。。。

 

バアル:それでは何のためにヤムが。。。クソ!

 

バアルがくるみ割り人形に連れて行かれそうになったその時だった。

 

そこにひょっこり一人の少女が現れた。

 

猫耳にクネクネとした長い尻尾。

 

そう、コマチンだ。

 

ヤムの放った紫色の光に引き寄せられてやって来たのだ。

 

コマチン「あら、珍しく随分ボロボロね。お人形さん。」

 

くるみ割り人形は表情を歪ませる。

 

くるみ割り人形「ウトナ。。。またお前か。。。しつこい奴だ。」

 

コマチンは猫耳をピンと立たせると不敵な笑顔を見せる。

 

コマチン「アチシ、今はコマチンって言うのよ。」 

 

コマチン「覚えておきなさい!」

 

そう言うと同時にくるみ割り人形に殴りかかる。

 

くるみ割り人形はバアルを捕まえたまま足でそれを受け止めた。

 

しかし、その足はボロボロと崩れ去る。

 

コマチン「あーら、随分もろくなってるのね。さっさとバアルを解放した方が身のためよ?」

 

くるみ割り人形の表情に余裕はなかった。

 

くるみ割り人形「クソ!仕方がないか。。。」

 

コマチン「長い長い腐れ縁だったけど、そろそろ決着にしましょうか。アヌ!」

 

そう言うとコマチンは指から白い光を放つ。するとそれは弾けるようにくるみ割り人形の胸を貫いた。

 

コマチンは手応えを感じたようだ。

 

それもそのはず、くるみ割り人形の胴体には大きな穴がポッカリと空き、全身がひび割れて今にも崩れ落ちそうになっていたのだ。

 

くるみ割り人形「ぐっはっ。。。」

 

くるみ割り人形「これは、まずい。。。」

 

チラリとバアルの方を見る。

 

くるみ割り人形「やむを得ん。。。」

 

そう呟くとくるみ割り人形は壊れたおもちゃのように地面に落下してバラバラに砕けてしまった。

 

そして、それと同時にバアルはその場で倒れ込んだ。

 

 

 

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