廃核の海 〜魔族アバターのまま現実世界に放り出された俺と不思議な美少女の物語〜   作:織雪ジッタ

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ゲームの中のキャラクターの姿のままログアウト後の世界に出てきてしまったショウ。
ゲーム運営を名乗る男達の言うまま施設へ。
施設側と交戦後地下10階へ向かうも慢心から罠にかかり能力を半減された二人を次々と刺客ロボットが襲う。
アナトがナノマシーンウイルスに侵される中、パーティー補充用のNPC『マスク』の召喚士ミネルバ姫を呼び出したショウ。


召喚獣バハムートのスペシャルムーブ(必殺技)テラフレイムが空けた大穴から隣の部屋に出たショウ達を待ち受ける男がいた。


17話 操られる者たち ― 必要悪を語る男とカンビの笑み

監視室にて

 

 

モニターには水槽の並ぶ実験室の様子が映し出されている。

 

 

明らかに倫理的に問題があるその光景に西田は動揺していた。

 

 

西田「博士。。わ、私はあの様な部屋は知りません。。」

 

 

金森「驚いたかい?」

 

 

西田「は、はい。。」

 

 

金森「あそこは幹部側近までしか知らない場所でね。」

 

 

西田「でも。。これではまるで。。」

 

 

金森「各支部で検査を受けたナノマシーン適合者のうち、ランクB以上の者がこの施設に送られて来る。それから少しここでお手伝いをしているのさ。」

 

 

金森「自力でランクA以上になれる検体は稀だからね。」

 

 

しかし、水槽に硫酸を入れられてひたすら苦しみながら自己再生をし続ける赤ん坊に西田の目は奪われる。

 

 

西田「な、なぜあんな赤ん坊までが!?」

 

 

金森「赤ん坊か。。。」

 

 

金森「君も志あって我々の計画に参加したのだろう?」

 

 

西田「ですが、これはあまりに。。」

 

 

思わず目を背けて辛そうにする西田に、金森は淡々と語りかける。

 

 

その表情に迷いはなく、むしろ自信に満ち溢れた余裕すら感じられた。

 

 

金森「あれは人ではない。適合者の細胞から作った肉の塊だよ。」

 

 

西田「に、肉。。。??博士。。私達は人類を救う研究をしているんですよね?」

 

 

西田の声は震えていた。

 

 

金森「そうだ。今、我々やらなければ遠からず人類は滅ぶ。君もそれが分かっているからここにいるのだろう?」

 

 

西田「そ、それは、そうですが。。。」

 

 

金森「西田君、これは誰かがやらなくてはならない必要悪だよ。業を背負う者がいなければ、これからもっと多くの人が死ぬ。そう、一人残らず死に絶えるだろう。」

 

 

金森のその冷たい眼差は西田の心臓を突き刺しているかの様だ。

 

 

研究に加わって6年、西田は今更ながら背筋が凍る想いをした。

 

 

金森「わかるね?」

 

 

西田「。。。はい。」

 

 

言いようのない罪悪感が西田を心を締め付けていた。

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

一方ショウ達は。。

 

 

『カンビ』はなかなか部屋に入らないショウ達にモジモジしていた。

 

 

あからさまに怪しいカンビの誘いにショウ達が乗るわけがなかった。

 

 

ショウ「ふざけるな!そっちには罠があるんだろ?」

 

 

その言葉にギクリとしたカンビは、また目だけ上を向いてとぼける。

 

 

カンビ「そんなもん、ありまへん。」

 

 

といって目玉だけを上に向けて、少し猫背で突っ立って固まっている。

 

 

ショウ:こいつ。。。ワサとやってるのか?

 

 

ミネルバ「tamori、あいつ怪しいし気持ち悪いし、ほっといてここを脱出しましょうよ!」

 

 

ショウ「ああ、さっきのもヤバかったしあんなのと関わるのはもうゴメンだよ。」

 

 

ショウ「アナト、ここを出たら俺はどうしたらいい?」

 

 

アナト「決まっている。私達の所へ来い。歓迎するぞ。」

 

 

ショウ「こんなお尋ね者をか?」

 

 

アナト「ああ、尚更だ。」

 

 

今やお尋ね者となってしまったショウには願ってもない申し出だ。

 

 

きっと、ショウやアナトの様なナノマシーンとやらの実験の被害者達の組織がどこかにあるのだろう。

 

 

同じような境遇の人達で集まって行動すれば、きっとうまくこの状況を乗り越えてゆける。

 

 

ショウはこの人体実験を見て、自然とアナトの事が信用出来るようになっていた。

 

 

ショウ「。。。よし!分かったよ。腹は決まった。」

 

 

その言葉にアナトは少し微笑んだ。

 

 

ショウ「ミネルバ!バハムートのテラフレイムでここの天井潰せるか?」

 

 

ミネルバ「知っているでしょう?スペシャルムーブ(必殺技)はさっき使ってしまったのでしばらく無理ですわ。」

 

 

ショウ:そういえば、そんな縛りあったっけ。。。

 

 

ショウ「で、一応聞くけど。。お前何でそれ最初に使ったの?」

 

 

ミネルバ「気持ち悪い汚物が高貴なわたくしの視界に入ったからですわ。」

 

 

ショウ「そうか。。」

 

 

ショウ:ダメだな。コイツは。。

 

 

カンビ「なあ?あんさんがた。早う入って貰えません?」

 

 

カンビ「後ろを見てみなはれ。あんさん方が無茶苦茶な入り方しはるよって、少なくとも20基は水槽が消し飛びましたんや。」

 

 

ショウ達は改めて自分達の入って来た穴の方を見た。

 

 

確かにバハムートの顔の高さから機械人形に向けて斜め下に向けて、壁を貫いて床を削り取り部屋の中央へ向けて水槽があったであろう場所が大きく削れて瓦礫となっている。

 

 

カンビ「あーあ、かわいそうでんなぁ。皆さん生きてはるんですえ?そんなんしたらあきまへんわ。」

 

 

カンビ「ホンマにこれ以上可愛そうな患者さんを殺すのは止めてもらえますか?」

 

 

そう言いながら『カンビ』は、初めてショウに目を合わせて来た。

 

 

カンビ「ホンマにあきまへんで。」

 

 

その目が合った瞬間ショウはギグっとした。

 

 

金縛りにかかったのである。

 

 

ショウ「うっ!なんだ!?。。クソっ。。声が出ない。。」

 

 

カンビ「さぁ!こっちへ!こっちへおいでやす!」

 

 

すると急にショウの体はショウの意志とは関係なく扉の方に向かって歩き始めた。

 

 

アナト:?!

 

 

ミネルバ「tamori!何してるの!?罠と解っててるでしょう!?」

 

 

ショウ:クソ!逆らえない。。足が勝手に動いてやがる。。?

 

 

声の出ないショウはアナトの心に直接会話(SP)で話しかけた。

 

 

ショウ→アナト:「アナト、奴の目を見るな!俺は今操られている。声も出ないし体が言う事を効かない。お前はここに残ってくれ。多分ここにいれば奴は大きな攻撃して来ない。」

 

 

アナト→ショウ:「しかし、それでは。。」

 

 

ショウ→アナト:「頼む!このまま一緒に行くよりはお前はここで休んで回復してくれ。」

 

 

アナト→ショウ:「しかし。。」

 

 

ショウ→アナト:「頼む!ミネルバもいる。俺は大丈夫だ!」

 

 

アナト→ショウ:「。。解った。」

 

 

アナトは頷くとショウの肩を離してフラフラと水槽の一つに寄りかかった。

 

 

カンビは悲しそうな表情をしてそんなアナトを見た。

 

 

カンビ「あんさんは休憩ですか?殺生ですなぁ。。薄情ですなぁ。。」

 

 

次の瞬間、扉の近くにいたハズのカンビは一瞬でアナトの真横に現れて、アナトを覗き込んで耳元でささやく。

 

 

カンビ「あきまへん。そらぁあきまへんで。」

 

 

カンビ「こんなとこおっても、あの兄さんの死ぬとこが何も見れまへんがな。」

 

 

カンビはゾットするような顔をしてアナトの顔をじっと見つめている。

 

 

アナト:早い。。どうやって移動した?

 

 

しかし、アナトは冷静だった。

 

 

色んな角度からアナトを覗き込んでも、一切カンビの目を見ないアナトにカンビは残念そうに立ち上がる。

 

 

そしてまた目玉だけを上に向けて

 

 

カンビ「なんやえらい警戒されてしもうたみたいで」

 

 

と、ため息をついてアナトの事は諦めた。

 

 

しかし、ショウに付いていくミネルバを見ると満足げにニヤリとし、二人に付いていくかのように扉の方へ歩いて行った。

 

 

カンビ「まぁ、あんさんは当分動けまへんし、後回しでよろしおす!」

 

 

カンビの足取りは軽かった。

 

 

ショウ達が扉の中に入ると、今度は直径30メートル程の丸い円筒状の部屋に出た。

 

 

同時に扉は自動的に閉ると、どう言う仕組みか扉ごと消えた。

 

 

ショウ達は閉じ込められたのだ。

 

 

カンビ「いらっしゃいませ。」

 

 

いつの間にかその円形の部屋の中央で、不気味に微笑むカンビ。

 

 

その満足気なカンビの鼻の穴には、ムカデの様な生き物が見え隠れしている。

 

 

そして時折、右の鼻の穴から左の鼻の穴へと素早く移動するのが見えた。

 

 

カンビ「ホンマにようおこしやしたな。」

 

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