廃核の海 〜魔族アバターのまま現実世界に放り出された俺と不思議な美少女の物語〜   作:織雪ジッタ

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ゲームの中のキャラクターの姿のままログアウト後の世界に出てきてしまったショウ。
ゲーム運営を名乗る男達の言うまま施設へ。
施設側と交戦後地下10階へ向かうも慢心から罠にかかり能力を半減された二人を次々と刺客ロボットが襲う。
アナトがナノマシーンウイルスに侵される中、パーティー補充用のNPC『マスク』の召喚士ミネルバ姫を呼び出す事に成功。


新たな刺客、カンビに操られて次の部屋へイフリートが激闘の末カンビを倒したと思われた瞬間、地面に隠れていたカンビの本体は突然ミネルバの目の前でショウの背中を貫いた。


19話 アナト復活 ― 名前のない赤ん坊と水槽の声

少し時間を遡(さかのぼ)る。

 

 

部屋の外に残されたアナトの耳には水槽に漂う無数の被験者からの声が聞こえていた。。

 

 

それは悲痛な叫びであり、嘆願であった。

 

 

「助けて。。」

 

 

「助けてくれ。。」

 

 

「痛い!痛い!。。」

 

 

「お願い。。助けて。。」

 

 

「殺してくれ。。」

 

 

「頼む。。」

 

 

そこらじゅうの水槽から聞こえる心の声。

 

 

間違いなくそれらは、アナトに直接会話(SP)を仕掛けている。

 

 

しかし、アナトは答えない。

 

 

答えられない。

 

 

今のアナトにはじっと息を潜めて回復を待つより出来る事がなかった。

 

 

そんな絶望に満ちた水槽を見ながらアナトは思う。

 

 

アナト:母様。。母様もこんな風に。。

 

 

アナト:エンキの研究を継ぐ者は必ず私が根絶やしにします。。

 

 

そう誓いながら、アナトは気が遠くなっていく。。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「。。きて」

 

 

「。。きて」

 

 

アナト「ん?」

 

 

。。。!

 

 

アナトはハッとして目が覚めた。

 

 

アナト:眠っていた?

 

 

「起きて!」

 

 

取り分け強い思念を感じるその声にアナトはハッとした。

 

 

アナト:どこだ? 敵か?!

 

 

「こっち」

 

 

「目の前にいるよ」

 

 

見ればアナトの目の前の水槽には硫酸を注入されて溶解と再生を繰り返す、一歳いかないくらいの痛々しい姿をした赤ン坊が、水槽の縁にへばりついてじっとアナトの方を向いている。

 

 

その目は閉じているが、ハッキリと意識がアナトに向いているのが分かる。

 

 

アナト→赤ン坊:お前は。。?

 

 

赤ン坊→アナト:僕は、名前ない。ここの人達は君と同じ病気。みんなチカラ出ない。ずっと治らない。だからみんな、起きてる人もここから出られない。力でない病気、治らない。

 

 

アナト→赤ン坊:治らない?

 

 

赤ン坊→アナト:治らない。今まで治ったの僕だけ。でも僕は小さくて逃げる。できない。

 

 

赤ン坊→アナト:一緒に逃げてくれるなら。病気治るチカラ。あげる。

 

 

アナト→赤ン坊:。。。解った。取引成立だ。

 

 

その赤ン坊は頷くと額から強い電気を放ち、自ら水槽を破った。

 

 

自分の力で立つ事も出来ないその赤ン坊は水槽の溶液が溢れ出るのと一緒に床に流された。

 

 

そしてハイハイをして隣の水槽につかまり立ちをした。

 

 

水槽から出ると瞬く間に、酸で焼けただれた皮膚が治り、可愛い男の赤ちゃんになった。

 

 

見た目は普通の乳幼児だ。

 

 

だが、その表情はどうだろう?大人のような落着きさえ感じさせらる。

 

 

そしてその赤ん坊は、目を開きアナトを見た。

 

 

赤ン坊「病気に勝つチカラをあげる。」

 

 

そう言うと赤ン坊とアナトは光に包まれた。

 

 

そして、光がおさまるとアナトの熱は消えていた。

 

 

能力(チカラ)の譲渡には相当なエネルギーが必要だが一番確実に素早く能力(チカラ)を渡せる。

 

 

赤ン坊の方は逆に反動で一気に衰弱し、瀕死の状態になった。

 

 

 

 

アナトは赤ン坊を優しく抱きかかえ

 

 

アナト「しはらく辛抱しろ。必ず一緒にここを出る。」

 

 

赤ン坊は弱々しく頷いた。

 

 

アナトは立ち上がるとショウの入った扉のあったあたりを見た。

 

 

その瞬間、壁の一部が消し飛んた。

 

 

アナトは能力が戻ったことを確信した。

 

 

アナト「よし、大丈夫そうだ。」

 

 

アナト:しかし、ここに捕らえられている者達は連れていけない。。

 

 

アナト:水槽から出しても先程の私と同じで動けないだろう。。

 

 

アナト:しかし。。

 

 

アナトは両手を上にかざした。

 

 

両手から巨大な稲妻がほとばしり、八方に広がり次々と水槽を破壊した。

 

 

アナト「私に出来るのはここまでだ。。」

 

 

「ありがとう。。。」

 

 

「ありがとうございます。。」

 

 

「ありがとう。。」

 

 

無数の感謝の声にアナトは見殺しにするしかない無力さを感じていた。

 

 

『病気』であるならば自陣に転送させる事も出来ない。

 

 

仲間に『病気』が蔓延してしまう可能性があるからだ。

 

 

連れ出してもその後が無いのだ。

 

 

勿論、サークルアンデットとの戦いにこの『病気』の対策は必要だが受け入れにどうしても準備がいる。

 

 

能力の『移譲』か、あるいは『食わせる』にも数が多すぎる。

 

 

アナト:他守ならあるいは。。?

 

 

アナトは一縷(いちる)の望みをかけて、さっきバハムートが空けた壁の穴の方へ走った。

 

 

しかしそこで彼女が見たものは、ショウが突き刺され、四方から機械人形に襲われている正にその時だった。

 

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