廃核の海 〜魔族アバターのまま現実世界に放り出された俺と不思議な美少女の物語〜   作:織雪ジッタ

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2話 ひとりぼっちのVRMMO

 

秋空の様に抜けて透き通った空の下。

 

 

眼下に広がる街の建物や道は石造りで、無機質ながらも、どこかのどかな風景だ。

 

 

そこかしこに生えている怪しげな雰囲気の植物も、なぜか街に溶け合う様に調和している。

 

 

道行く人々は魔族か獣人、ゴーレムなどで構成されており、感情のない様子でゆっくり歩いているのが見える。

 

 

まるで、感情を知らぬように無機質な動きで彷徨っているかの様だ。

 

 

そしてその人々の頭上にはそれぞれの名前がアルファベットで青く表示されている。

 

 

この青い文字で名前が表示されているキャラクター達はNPCであり、人の操作するキャラクターではない。

 

 

また、不思議なものでこの「名前」には裏表がない。

 

 

反対から見てもちゃんと読めるのだ。

 

 

そして時折、そんなNPC達とは対象的にスピーディに走り去っていく白い文字の名前のついたキャラクターがいる。

 

 

それが人の操作するアバター、つまりはプレイヤーだ。

 

 

昔はそんなプレイヤー達が大勢、所狭しと走り回っていたが、今はまばらにポツポツいる程度。

 

 

当然、ショウの操るキャラクターの頭上にもtamoriという白い文字が表示されていて、妖しく赤く目を光らせながらそんな街の風景に溶け込んでいた。

 

 

ショウはそんな辺りをキョロキョロと見渡してはみたが、やはりプレイヤーは殆どいない。

 

 

ショウ「人少な。。」

 

 

ショウ「。。。昔はよくこのデミューズ北部の北門で待ち合わせをしたよなぁ。。」

 

 

ショウはかつての仲間たちと楽しそうに走り回っていた頃を思い出していた。

 

 

寂しさからか自然と独り言も溢れでる。

 

 

ショウ「uruさん、actorさん、lespさん、、、ギルドリンクはいつも人が一杯で賑わっていたよなぁ。。」

 

 

40人ほどいたギルドリンクの仲間達の記憶が一層寂しさを誘った。

 

 

ギルドリンクとはゲーム内にプレーヤー達自身で作れるコミュニティだ。

 

 

ゲームの中ながら『音楽好き』という共通点で集まったそのギルドには毎日たくさんの仲間がいて、冒険の攻略話や音楽の話をして楽しんだり、初心者のサポートをしたりしていた。

 

 

しかし、それももう過ぎ去った日々の思いだ。

 

 

深くため息をつく。

 

 

ショウ「街の外も見てみるか」

 

 

一人そうつぶやくとショウ(tamori)はデミューズ北部北門へ向かった。

 

 

デミューズというのはこのゲームの中にある国のひとつで冒険者tamoriの故郷という設定だ。

 

 

ここはリザードマンとオーガ、その他亜人の国。そして行き場のない魔族も少数だがここを拠点としている。

 

 

この国の他にも以下のような国がゲーム内に存在する。

 

 

ヒュムリア 人間とエルフとドワーフの国

ウィザーズ 精霊と魔法使いとケットシーの国

 

 

広大なマップに広がるこの3つの国はかつてはお互いに戦争していたのだが、突如現れた『魔王』との共闘の為にそれまでの諍いをやめて連合軍を作った。

 

 

『魔王軍』対『その他の種族』で双方死力を尽くした大きな戦いの後、戦いは小康状態になる。

 

 

それから現在に至るまで、小競り合いはあるものの一応の平和が続いている。。。しかし、少しずつ確実に『魔王軍』はその支配地域を伸ばしていた。

 

 

という含みをもたせた設定だが、要はみんなで力を合わせて『魔王』を倒す、といういたって単純な目的のゲームだ。

 

 

ちなみにショウの種族は魔族だが、魔王にまつろわない異端で魔王と袂を分かった者たちで、デミューズでもあまり歓迎された存在ではない。という、ハードモードが好きなプレイヤーの為のニッチなキャラだ。

 

 

そしてここ、デミューズという国には北部、中央部、魔工房、南部がありこの北部の北門から遠出するのが色々と便が良かった。

 

 

石畳と10メートルはあろうかという高い石壁で囲まれた長方形の運動場程の空間に大きく重厚な扉が三つ開け放たれている。

 

 

それが街の外のフィールドに繋がる北門だ。

 

 

扉にはそれぞれ門番のNPCが2人左右に配置されている。

 

街の出口であるここでは、名前に同じ色の下線が入った幾人かのプレイヤー達がいた。

 

 

待ち合わせをしているのか、立ち話をしていたり寝転んだり合成スキルを磨いたりと時間を潰していた。

 

 

その光景を見て、またなんとも言えない哀愁の念が込み上げてくる。

 

 

そんなショウ(tamori)が珍しかったのか、彼らはショウ(tamori)の姿を見てなにやら珍しそうにジロジロ見ていた。

 

 

ショウ(tamori)は少し違和感を覚えたが、そんなプレイヤー達を横目にその身長の3倍はあろうかというその大きな門から街の外に出て行った。

 

 

街の外は、街の中でも見た怪しい雰囲気を持つ植物がまばらに生えた草原が見渡す限り続いていて、遠くに林がいくつか見えていた。

 

 

そしてさらに遥か遠くには大きな崖を望み、そこにある大きな滝からは一本の川が流れていた。

 

 

聞き覚えのあるBGMにそこかしこにいるレベルの低い小さな角の生えたウサギの様なモンスター。

 

 

その景色は何もかもがあの頃のまんまであった。

 

 

ただ、そこに仲間がいないという事を除いては。

 

 

見た目に同じに見えるこの景色も、かつての様な活気は感じさせてくれない。

 

 

ショウ「ちょっと散歩でもしてログアウトするか。。」

 

 

そう言うとどこからともなく笛を取り出して、ピイイー!とならした。

 

 

すると、これもどこからともなく2メートルほどの小さな移動用のラプタルと言うドラゴンが現れて、ショウはそれに跨(またが)り走り出す。

 

 

ラプタルに乗ると軽快なBGMに変わったがショウの心には何かポッカリ穴があいた様だった。

 

 

しばらく散策した後、することもなく

 

 

ショウ「やっぱこんなもんだよな。。」

 

 

と、ぼやいた後ラプタルから降りて「テレポト!」と叫んだ。

 

 

そして自動的に魔法詠唱のポーズをとると足元に魔法陣が現れる。

 

 

魔法陣から放たれた光が下からショウを怪しく照し始めるとゴォォ!という音と共に出現した黒い球体に吸い込まれてショウ(tamori)はその姿を消した。

 

 

一旦目の前が暗くなり、気付けばまたエッグハウスへと戻ってきた。

 

 

タマリン「オポオポー!ご主人様お帰りオポー!」そしてまたクルクル回る。。

 

 

ショウは回り続けるタマリンを気にする事もなくコンソール画面を開く。

 

 

しかしすぐにコンソールの異変に気がついた。

 

 

ショウ「あれ?」

 

 

コンソールの中にあるはずの『ログアウト』が『現実世界に出る』に変わっているのだ。

 

 

ショウ「な、何だこれ?ログアウト。。だよな。。?」

 

 

仕方なく恐る恐る『現実世界に出る』を選択しショウはログアウトを試みた。

 

 

するといつもの様にキャラクター選択画面へ戻り普通にログアウト出来た。

 

 

はずだった。

 

 

そして、ショウの人生はこの時から夢にも思わない方向に進み始める。

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでくださりありがとうございます。
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次回もぜひお楽しみください。
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