廃核の海 〜魔族アバターのまま現実世界に放り出された俺と不思議な美少女の物語〜   作:織雪ジッタ

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ゲームの中のキャラクターの姿と能力のまま現実世界に出てきた他守ショウ。


サークルアンデッドとVRMMORPGファーストアドベンチャー18の正体を知ったショウ達はそれぞれの道への旅立ちへ決意を固める。


イシュタラの国
1話 約束のリヴァイアサン


ショウたちの時代よりはるか昔──時は西暦2120年、地球は氷河期に入り2125年に完全に全球凍結した。

 

 

人類は、カプセルと呼ばれるコロニーを各都市に作り、地力発電と原子力発電によって辛くも命をつないだ。

 

 

最初は小規模だったカプセルは、しだいに継ぎ接ぎで広がり、老朽化が進む度にその外側に外壁を築き、内側を取り払っていくという事を繰り返し、次第に巨大化していった。

 

 

しかし、閉鎖環境にある為に度々ウイルスの大流行に見舞われた。

 

 

これに対抗すべく、ナノマシーン研究が盛んになると人々は病気だけではなく不老不死の肉体を欲するようになった。

 

 

臨床実験を繰り返す内に、一人の女性の細胞がナノマシーンとの共生に成功した。

 

 

女性の名はイシュタル。

 

 

彼女のナノマシーンはそれから意思を持ったかのように進化を始める。

 

 

研究者は競って彼女の血液や細胞を求め、培養して動物達や時には人間をも使って亜種を作っていった。

 

 

しかし、彼女のナノマシーンは他者への適合率も低く、適合してもバランスを保つのが非常に難しかった。

 

 

多くの適合者がナノマシーンの暴走により犠牲になり、または理性を失って殺処分となった。

 

 

それでもやがて数も増え、彼女らの能力は軍を超える程になり、ついに施設からの脱出に成功した。

 

 

施設を脱出したイシュタル達は人の世界に逃亡したが人々は彼女らとの共存も独立も認めなかった。

 

 

そして逃亡を繰り返し、執拗に追い詰められた彼女らは遂に反旗を翻す。

 

 

戦いの結果大型のカプセルは全て破壊され、抵抗する者がいなくなるとイシュタル達は旅に出た。

 

 

氷の世界を流浪の末、凍結した海から突き出した火山の周辺に湧き出す温泉を見た。

 

 

その温泉は分厚い氷を溶かし海の中へと続いていた。

 

 

そこから氷の下の海に入りイシュタルは楽園を築いた。

 

 

それから約260年後。

 

 

イシュタルが通ったその氷に閉ざされた海の温泉道は今や大海原の真っ只中だ。

 

 

そして今、ここはそこから少し離れた場所。39区沖、ストロンボリ島。

 

 

直接イシュタラの国へは行かずにテレポートしてきたバアル達の姿がそこにあった。

 

 

81区とは時差が7時間。ここはもう朝だ。

 

 

剛本は気を失ったまま暴れないようにバアルの『気』でグルグル巻きの『すまき』にされている。

 

 

海風に揺れる草花はまるでここが81区程ではないとはいえ放射能に侵されているとは思えない程にのどかに見えた。

 

 

しかし、空にも陸にも動物の姿はなかった。

 

 

波音以外は何も声がなかった。

 

 

島から見た沖の方に海の中から湯煙の上がっている場所が見えている。

 

 

海底に火山活動がここ数百年続いているという場所だ。

 

 

お陰でその付近は氷河期の時代でも温泉が湧いていた。

 

 

その中にイシュタラの国があるのだ。

 

 

バアル「他守君。あの白い煙が上がっているところから先にイシュタラの国がある。」

 

 

ショウ「海の中。。ですよね?」

 

 

バアル「そうだ。でもまずはこの景色を見せたくてね。」

 

 

バアル「取り敢えずあの湯けむりの立ち込めている辺りまで飛ぼう。」

 

 

ショウ「飛ぶ?いや、俺は飛べませんけど。。?」

 

 

バアル「飛べるさ。さっきの緑色のオーラがあればね。」

 

 

ショウ「え?あ!そんな自由に出せないんで。。」

 

 

バアル「そうか。。それも君にとって克服すべき課題だね。」

 

 

ミネルバ「tamori、私を忘れてませんこと?」

 

 

そう言うとミネルバは優美な舞を舞う。

 

 

すると淡い光と周りにエメラルドグリーンの精霊の御霊の光がいくつも現れて、ミネルバの周りを回る。

 

 

すると、青い大きな魔法陣が現れてリヴァイアサンがその姿を見せる。

 

 

その魔法陣からは予測を遥かに超えた大きさの水竜のような水の化身が、魔法陣をくぐり抜け、悠然と眼前の海上に現れたのだ。

 

 

バアル「ほぉ!これは凄いね!」

 

 

ミネルバ「tamoriの豆粒みたいなラプタル(乗り物用の小型ドラゴン)じゃ海は渡れませんでしょ?」

 

 

しかしショウは即答で

 

 

ショウ「待て、リヴァイアサンはナシだ。」

 

 

ミネルバ「どうしてですの?」

 

 

ショウ「こんな泳ぐだけで海に渦潮が出来るようなので行ったら迷惑だろ?」

 

 

ショウ「それに間違って津波でも起こしたらどうするんだ?」

 

 

ミネルバ「またぁ、そんな事しませんわ。」

 

 

ショウ「じゃぁ例えばここにフナムシがいっぱいでたらお前はどうする?」

 

 

ミネルバ「もちろんリヴァイアサンのスペシャルムーブで。。」

 

 

と、言いかけるミネルバの言葉を塞ぐ様にショウは

 

 

ショウ「却下!ハイそれ津波!」

 

 

ミネルバ「えー!?」

 

 

ショウ「とにかくしまえ!何かしでかす前にすぐにしまえ!な!?」

 

 

一歩も譲らないぞという強い気迫のショウに圧倒されると

 

 

ミネルバ「わ、わかりましたわよ。。」

 

 

と、残念そうにリヴァイアサンの召喚を解こうとポーズを取る。

 

 

が、ミネルバはその足元にカサカサとミネルバの靴を這い上がるフナムシを見つけてしまった。

 

 

ミネルバ「!!!」

 

 

ミネルバ「ぎゃああああああ!!無理無理無理無理無理無理!!!」(ホラー漫画風)

 

 

ショウ「ぐわ!まさか!」

 

 

ミネルバ「リヴァイアサン!!水神の大波

!!」

 

 

リヴァイアサンの目が光る。

 

 

その巨体をくねらせて天高く雄叫びをあげると何処(いずこ)からともなくリヴァイアサンの後方から巨大な津波が押し寄せる。

 

 

ショウ「うわああぁぁぁ。。。お約束かよぉぉぉ。。。」

 

 

またたく間に成すすべもなくショウとグルグル巻にされた剛本はたった一匹のフナムシと共に大海原に消えていった。

 

 

そして何故か現れた水の影響を全く受けないミネルバだったがすぐショウに引き寄せられるかのように海へ消えていった。

 

 

ミネルバ「ちょっ!何でわたくしまでぇぇー。。。」

 

 

とっさに空へ逃れたバアルとアナトはあ然とするしかなかった。

 

 

 

 

こうして、ショウたちの『海底の国』への旅が本格的に始まった。

 




二章では、ついに舞台が地上を離れ、海の底──イシュタラの国へと移ります。
これまで断片的に語られてきたイシュタラの秘密が少しずつ明かされていきます。

ショウたちの旅を、どうかこれからも見守っていただければ嬉しいです。


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