廃核の海 〜魔族アバターのまま現実世界に放り出された俺と不思議な美少女の物語〜 作:織雪ジッタ
ゲームの中のキャラクターの姿と能力のまま現実世界に出てきた他守ショウ。
サークルアンデッドとVRMMORPGファーストアドベンチャー18の正体を知ったショウ達は打倒サークルアンデッドを胸にイシュタラの国へとやってきた。
しかし、イシュタラの国の入国で女神の門の試練に失敗、近くにある人魚の里で修行をする事になった。
一方、剛本はエルヴィンという不思議な猫に出会い街を目指してシダーの森に入り、森の守護者フワワに街へ行く事を認めて貰う事に成功した。
そしてバアル達はイシュタル神殿に来ていた。
■登場人物の紹介
◇エンキ博士 かつてイシュタルを覚醒させたナノマシーン開発者。200年以上の時を超えてコールドスリープより目覚める。サークルアンデッドを使って大量の人体実験を繰り返した。
◇イシュタル アナトとバアルの母であり、全てのイシュタラに尊敬、崇拝されるイシュタラ達の女神。イシュタラの国を作り、放射能汚染から低ランクのイシュタラと魚たちを守るために命を落とした。
オンジ アナトが名付け親となったサークルアンデッドの地下施設で捕らえられていた培養細胞から生まれた赤ん坊。ナノマシーンウイルスの耐性を持つ。
ヤム 神殿議会長。外海の魔神と呼ばれる回遊族のイシュタラ出身。バアルとは対立関係にある。
イシュタル神殿。
それは正方形の塔の周りに直線的な階段が積み上げられた巨大建築物である。
そこではこの宇宙の外側にあると言われる『海の女神ティアマト』を祀る宗教儀礼が行われると同時に、議員達による議会政治も行われていた。
イシュタルの死の直前に議長に指名された『ヤム』は実質このイシュタラの国を統治しているに等しく、バアルの神殿守護者という地位は、もはや形だけのものという辛い立場に置かれていた。
この日は81区討伐に出ていたバアルが、復活した『エンキ』の情報と、この国に連れてきた他守ショウについての追加報告をすべく議会が執り行われていた。
バアル達は礼拝堂に行く暇もなく神殿に着くやいなや議会に出席させられていた。
議事室には議長ヤムを中心に両脇にバアル、アナトを含む9人の議員が並んでいた。
一つ空席はシダーの森の守護者フワワであるが彼はこういった場所には参加する事が無かった。
参加すると神殿がフワワの胸から溢れ出る水で水浸しになってしまうというのがフワワの不参加の言い訳である。
議長のヤムはその冷徹な面持ちのまま議会を開会した。
ヤム「本日の議会を開会します。」
ヤム「バアル殿、まずは長らくの遠征ご苦労様でした。」
バアルは軽く頷く。
ヤム「皆様、今日お集まり頂いたのは他でもありません。我らが宿敵、エンキについての議題ともう一つ、かのイシュタル様に匹敵するティアマトのオーラを持つ者が現れた件にございます。」
会場がざわめく。
ヤム「お静かに。」
ヤム「周知の通り81区及び83区ではナノマシーン適合者が多数確認され、現在特別警戒地区になっております。」
ヤム「特に83区にはあのエンキが潜伏しているとの情報もあり、経過を注視する所でもあります。」
ヤム「かの偉大なる我らが女神、イシュタル様のご無念をお晴らし致すべく、エンキ討伐は我等が悲願でもあり、責務であると言って過言ではありません。」
ヤム「また、人間達の愚行により、この世界の全ての生命は今まさに未曾有の危機に瀕しております。」
ヤム「生命進化の頂点たる我等イシュタラは今のこの歪んだ生態系を正しく導く義務があります。」
ヤム「イシュタル様亡き今、我々の力は大きく損なわわれました。そんな中で世界のパワーバランスを一変させるような存在が人間の中に現れた事は看過できません。」
ヤム「幸いその者はエンキに不信感を持ち、現在我々側の管理下に置く事が出来ました。」
ヤム「バアル殿、まずは報告をお願いします。」
バアル「まず、エンキ関連についてです。今回アナトはサークルアンデッドの内部に潜入しました。」
バアル「そして、そこで非常に危険な兵器を確認しました。一つは生物機械兵器、もう一つはナノマシーンを標的にしたウイルス兵器です。」
バアル「特に注意すべき点として、このウイルスはナノマシーンを無効化し、我々を無能力化します。しかもこれは時間経過による自然治癒もしません。さらに簡単に空気感染します。」
議員達はうろたえる。
議員の一人「そ、そんな物が出回ったら戦況はひっくり返えりますぞ!」
バアル「サークルアンデッドの研究施設では大量のナノマシーン被験者が、例の如く非人道的で過酷な環境に置かれていました。」
バアル「しかし、彼らはこのウイルスによって完全に抵抗する力を失っていました。ただ生かされ続けながら拷問ともよべる人体実験を強いられていたのです。」
議員の一人「相変わらず酷い事をする。。」
バアル「被験者達は保護しましたが一人を除いて全員このウイルスに侵されている為、現在『青の研究施設』にて厳重に隔離しております。」
バアル「そして、その被験者の一人が幸いにもウイルスに対する抗体を持つ事が確認されております。そして現在、予防ワクチンあるいは抗血清剤を開発できないか調査中であります。」
バアル「ここにいるアナトもそのウイルスに侵され一時チカラを失いました。しかし、その一人からウイルスに対するチカラを移譲されて窮地を脱しています。」
議員達はざわめく。。
議員の一人「アナト様、あまり無茶はなされません様にお願いしますぞ!アナト様に何かありましたらこの爺らはイシュタル様に面目が立ちませぬ。」
議員達は皆うなずいてアナトをいつくしむように見つめながら身を乗り出す。
アナト「すまない。反省している。」
バアル「皆さん静粛に。」
バアル「今回、残念ながらエンキの情報は掴めませんでしたが一人、強力なティアマトのオーラを宿す男を連れてまいりました。」
バアル「残念ながら彼は現在、女神の門をくぐれずに人魚の里付近で待機していますがその者は緑色のオーラを宿し、無から物質を生み、かつてイシュタル様がフワワを創造したが如くティアマトの力で作られた強力な従者を従えております。」
また議員達はざわめく。
議員「み、緑のオーラじゃと。。」
議員の一人「そ、それは誠ですか?」
アナト「私は間近に見たが彼は私が放つ核融合の力の優に100倍は超えるエネルギーで地下10階以上の深さから成層圏までを一瞬で消し去った。」
アナト「しかも同時に私や被験者達、しいては近隣の街を庇いながらだ。あのチカラは本物だ。」
議員達は動揺してまたざわめく。
議会室にはかつて無い緊迫感が漂っていた。
そして議会は続く。