廃核の海 〜魔族アバターのまま現実世界に放り出された俺と不思議な美少女の物語〜   作:織雪ジッタ

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18話 神殿議会 2

議会室

 

 

そこは11脚の椅子と豪華な白い長机があるだけの部屋だが、それにしてはかなりの広さがある。

 

 

学校の教室に例えるなら議長の席は教壇だ。

 

 

議長席の後ろ、少し離れて黒板の位置にはイシュタルの持ち物であった鎧と剣と盾が鎮座し、それを挟んで両脇にイシュタラの国の国旗と軍旗が掲げられている。

 

 

それに向かって右側に入り口があり、兵が外に二人立っているが、中からはあまり解らない。

 

 

そして左側は全面窓になっており部屋を明るく照らしている。

 

 

議長席を挟むように右にバアル、左にアナトが座りそれから他の議員達が座っている。

 

 

そして右の末席に空席があり、そこはフワワの席と言うことに一応なっている。

 

 

床にはよく手入れされた品格のある毛の長い赤絨毯(あかじゅうたん)が敷かれている。

 

 

そんな神殿議会室はこの国の重大な意思決定をする政治の中心である。

 

 

その中で議長ヤムとバアル、アナト他主だった議員達はバアル達の久々の帰還にともない、緊急で会議を行っていた。

 

 

そして今、議長ヤムが気難しい表情で話を進めてる。

 

 

ヤム「幸い、他守ショウは敵方に回らなかったものの女神の門が通さない以上は油断は出来ない存在であることに変わりないと私は判断します。」

 

 

ヤム「それに、今後いつこの様な我々を凌駕するようなチカラを有した者が、敵方に出てくるか分からない事実を憂慮して、この機会に対応を議論しておきたい。」

 

 

バアル「その件ですが、おそらく当面は大丈夫かと。」

 

 

ヤム「何故ですか?根拠があるのですか?」

 

 

バアル「今回の件は人間社会に報道され、サークルアンデッドの事は一般の81区民に知れ渡る所となりました。そしてこの後一斉にサークルアンデッドに捜査が入るでしょう。他の施設の被験者も全て保護される事になります。その者達がエンキの手に落ちる事はないと思われます。」

 

 

ヤム「バアル殿、それでは手緩いのではないですか?81区も別に味方と言う訳ではないのです。憎むべき我等が敵に変わりはありません。」

 

 

ヤム「不確定要素はあてにせずに我々自ら将来に禍根を残さぬ措置を講ずるべきです。」

 

 

バアル「しかし81区は現代におけるエンキの巨大な実験場と言えます。被験者達は、我等が女神イシュタル様のかつての忌まわしき状況と同様であります。我ら人より進化した者として、同じナノマシーン適合者と共闘すべきではないか。私はそう考えます。」

 

 

ヤムの表情は険しい。バアルの言葉に納得はしていない。

 

 

バアル「問題は人間たちは既に自らの意思で人をナノマシーンの適合者とするシステムを持っている点です。81区並びに83区を力ずくで強引に落とせば人間の中から望んで危険な適合施術を受ける者が多数出て来るでしょう。」

 

 

バアル「中には他守ショウの様な者が出てきて敵に付くとも限りません。」

 

 

ヤム「だからですよ。チカラを持つ前に全総力を挙げて人間たちを殲滅しておかないと危険なのです。」

 

 

ヤム「害虫は見つけたら早い内に駆除しなければ手に負えなくなる。と言う事です。」

 

 

バアル「。。。ですが他守ショウの事もあります。」

 

 

バアル「居場所を失ったとは言え故郷の81区を潰すのは他守ショウも見過ごせないでしょう。」

 

 

バアル「それに81区のイ特とは既に対83区で密約を結んでいます。今は83区にいる諸悪の根源、エンキのみにターゲットを絞るのが得策です。」

 

 

バアル「虫を駆除するには巣穴から。ではないですか?」

 

 

ヤム「フッ。。。バアル殿も言うようになりましたな。」

 

 

ヤム「少し81区に肩入れし過ぎではありませんか?」

 

 

バアル「私はそうは思いません。」

 

 

バアル「81区にはエンキの子エンリルがまだ眠っている可能性もあります。滅ぼすより生かしておいて、人間の数の力を利用してエンリルを捜索させた方が得策でしょう。」

 

 

ヤム「なる程、そう言う事ですか。それではバアル殿は引き続き81区にてエンリルを捜索する。と言う事で宜しいかな?」

 

 

議員の一人「そ、そんな。それではまたバアル様は長期で政務を離れる事に。。」

 

 

バアル「。。。」

 

 

バアル「いいでしょう。」

 

 

アナト:兄上。。。

 

 

ヤム「83区の対応については明日の議会にて議論したいと存じます。」

 

 

ヤム「それでは皆様、これにて本日の議会を閉会します。」

 

 

ざわめく議員達を残してヤムは颯爽(さっそう)と部屋を出ていった。

 

 

議員の一人「やれやれ、これでまた当分ヤム議長の独断状態になるな。。」

 

 

議員の一人「言葉を慎みなされ。」

 

 

議員の一人「しかし、ようやく81区のイ特とサークルアンデッドの対応に区切りが付いたというのに、今度はエンリルの捜索とは。。」

 

 

議員の一人「全くじゃ。バアル様にはご苦労をおかけしっぱなしでワシらは自分の不甲斐なさに腹が立つばかりじゃ。。」

 

 

バアル「皆、私なら大丈夫だ。」

 

 

バアル「此度(こたび)はまだ礼拝堂にも行けていないので私もこれで失礼する。」

 

 

バアル「アナト。母様にご挨拶に行こう。」

 

 

アナト「はい。。」

 

 

バアルが立つと議員達は全員起立をして礼をする。

 

 

バアルが幼少の頃より彼に仕えて来た議員達の忠誠心が手に取るように分かる光景だった。

 

 

そんな議会室を後にしてバアルとアナトは最上階にある礼拝堂へと向かった。

 

 

 

 

神殿の構造上、最上階に上がるには頂上まで一直線に伸びる外の階段を使う必要がある。

 

 

階段に向かって外側を歩いていると、そこで一人の少女が二人を待っていた。

 

 

少女「アナト!」

 

 

その声の少女の名はアスタルト。

 

 

アナトとは幼馴染だ。

 

 

体が弱く実家の薬屋で暮している。

 

 

アナト「アスタルト。久し振りだな。」

 

 

アナトはアスタルトの頭を撫でる。

 

 

アナト「うん。顔色も良さそうだ。」

 

 

アスタルトは目に涙を浮かべながら笑顔を見せた。

 

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