廃核の海 〜魔族アバターのまま現実世界に放り出された俺と不思議な美少女の物語〜 作:織雪ジッタ
人面魚(ビビアン)はメタモルフォーゼを解いて人の姿になった。
はずだった。
しかし、極端に恥ずかしがり屋の彼女は顔だけ人面魚の顔を残したまま体だけ人になってしまっていた。
ショウ:こ、恐いよこの人。。
アナト「お前、他守がいるからってそれは無いだろう。。。」
呆れるアナト
それでもモジモジしながら半魚人(ビビアン)は
半魚人(ビビアン)「ボソボソボソボソ」
と、何か必死に呟いているが、何を言っているのか流石のアナトにも聞き取れなかった。
アナト「とにかく行くぞ!皆、チビ太につかまれ!」
そうしてアナトがチビ太の背びれの先端に左右からショウと半魚人(ビビアン)が背びれの付け根につかまった。
三人が背びれにつかまると、チビ太は勢いよく泳ぎ始めた。
それはショウの想像以上のスピードだった。
ショウ:は、早い。。。
そしてどんどんスピードを増す。
チビ太がスピードを増せば増す程水圧で3人は近づいた。
特に背びれを挟んで両サイドからバンザイの姿勢でショウと半魚人(ビビアン)は急接近する形となった。
ショウの目の前に半魚人(ビビアン)の顔面が近づく。。
ショウ:うわわわわ。。近い近い近い近い!
ウットリする半魚人(ビビアン)。
至近距離で顔を見合わせて水圧で唇がブルブルする二人。
ショウ:な、なんだこの地獄絵図は!?
そんな中、ふと上を見上げるとアナトが目を閉じて水圧に耐えている。
その姿は何とも可憐で守りたくなるものだった。
それに引き換え、目の前には歯茎をむき出しにして潰れた顔を必死に近づけて来る半魚人(ビビアン)の顔。
そしてその顔があと数センチの所まで来たときだった。
ショウ:嫌だァァァァ!!!
ショウは堪らずチビ太の背びれから手を離してしまった。
その瞬間、ショウは弾き飛ばされて海底にあった岩に叩きつけられた。
それに気が付いたチビ太は皆を引き連れて引き返してくる。
アナト「大丈夫か!?」
ショウ「ゼェゼェ。。何とか。。ね。。」
そんなショウを半魚人(ビビアン)は心配そうにボソボソ言っていた。
アナトはショウに手を差し伸べて
アナト「もう少しだ。行こう。」
と、ショウを立ち上げた。
そして今度は背びれにつかまるポジショニングをしっかりと確認して再び出発した。
そしてしばらくすると目の前に海上までそびえ立つ巨大な壁が見えてきた。
その麓(ふもと)には大きな洞窟が口を開けてショウ達を迎えていた。
直径10メートルはあろうかという大きな洞窟だ。
そしてそこに近づくにつれてショウは海水の異変に気が付く。
ショウ:あれ?どんどん水温が暖かくなって来た?
青の洞窟は海底源泉となっており、かつてマグマが通ったであろうその穴の奥底から今尚熱を放出しているのだ。
その名の通り中は青い輝きを放ち、それがまるで水の光であるかの様に幻想的な光景が広がる。
そんな洞窟に入って上へ上へとしばらく進むとやがて外からの光が満ち始める。
青く輝く水から上がり、白い砂の上を光の方に歩く。
もう出口かと思われた時、出口を塞ぐかの様に研究施設と『壁』がショウ達の前に現れた。
この壁も空間のねじれが施されており、中に入ろうとしてもそのまま同じ場所に戻ってくる仕組みだ。
そして施設と壁を挟んで前後にあの『女神の門』(2章4話)同様の門がある。
アナト「ここだ。」
門を見てショウは女神の門での嫌な思い出を思い出していた。(2章7話)
ショウ「アナト。。一つ聞いていいか?」
アナト「なんだ?」
ショウ「この門を通るにもやっぱ試練とかあるのか?」
アナト「心配するな。ここは鍵で入る。私が開けるから問題ない。」
ショウ「ホッ。。」
安心したショウを少し優しそうに眺めてからアナトは門の前に立つと手を門にかざした。
すると、何かの術式のような物が空中に現れて鍵を開けるように門の結界を解いた。
アナト「さあ、行こう。」
こうしてショウ達は青の研究施設へと入って行った。