廃核の海 〜魔族アバターのまま現実世界に放り出された俺と不思議な美少女の物語〜 作:織雪ジッタ
施設を囲む『壁』越しに入り込む昼下がりの陽射しが優しく施設を照らしている。
施設は2階建ての外観でそう大きくはない簡素な建物だった。
建物面積は300平米ぐらいだろうか?
洞窟の出口を塞ぐ形でその壁は風船のようにぷっくりと膨れており、その中で洞窟の出口の横に施設は建っている。
外から見てもまるで洞窟の出口から透明な風船が膨らんでいるような格好だ。
その中は密閉されているが、熱がこもる訳でもなく非常に快適だ。
時おり飛んでくる虫達は外壁に触れるとそのままの勢いで来た方向と反対向きに飛び去っていく。
ショウ達はその護られた空間の中、施設の入口へ入って行った。
診察室
アナト「失礼する。」
アナトが入ると一人の白衣を着た男が立ち上がった。
この男、名をクレピオスと言う。
ナノマシーン適合者特有の様々な病状に有効な薬を開発している。
イシュタラの国の薬学者であり、薬屋のアスタルトの父でもある。
クレピオス「アナト様。ようこそおいで下さいました。」
アナト「久しいな。元気か?」
クレピオス「はい。アナト様も見違えましたな。機器たちが素晴らしいチカラを感知しています。」
アナト「この他守のお陰だ。」
アナトはショウをクレピオスに紹介する。
クレピオス「彼が。。。なるほど。。これは凄い。。」
クレピオス:計測器の値が振り切っている。。。
アナト「この男は底が知れない。しかし強すぎるチカラが、時に何か不安定になる事もある様だ。」
アナト「血清剤の事もあるが彼自身の事も診てやって欲しい。」
クレピオス「不安定。。?チカラはこれまで私が見たこともない程安定している様ですが。。。?」
クレピオス「分かりました。後ほど詳しく診てみます。」
アナト「すまない。そうしてくれ。」
アナト「ところでオンジはどうしている?」
※オンジとはサークルアンデッドの施設でアナトが助けてアナト自身が名付け親となった言葉を話す赤ん坊である。ナノマシンを無効化するウイルスへの抗体を持っていることからここで血清開発の研究に協力しているのだ。
クレピオス「オンジなら今はお昼寝の時間です。そろそろ起きてもいい頃ですが。。」
クレピオス「外のハンモックが好きでそこにいると思いますよ。」
アナト「他守、オンジを連れて来てくれないか?」
ショウ「え?あ、ああ。いいけど?」
アナト「クレピオスは私の友人の父でもあってな。少し積もる話もある。すまないが頼む。」
ショウ「そっか。分かった。起こして連れてくるよ。ゆっくり話しててくれ。」
アナト「ありがとう。」
そうしてショウはその部屋を後にした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
施設の外に出てきたショウはすぐに近くの木にハンモックが吊ってある事に気が付いた。
布とロープでできた簡素なハンモックだ。
ショウ「あー、あれだ。」
近寄ってみると木陰になったそこに気持ち良さそうに眠っている赤ん坊がいる。
オンジだ。
ショウ「あーいたいた。何か久しぶりだな。。」
次の瞬間
ショウ「えええ!?」
ショウはオンジの鼻を見て愕然とした。
ショウ「な、なんだこれは。。!?」