廃核の海 〜魔族アバターのまま現実世界に放り出された俺と不思議な美少女の物語〜   作:織雪ジッタ

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50話 アヌ

完成したナノマシーンウイルスの血清剤を投与すると剛本はまたたく間に回復した。

 

 

そして、青の研究施設に収容されていた100人を超える被験者達も全員回復して晴れて自由の身になった。

 

 

被験者達はイシュタラの国への亡命をこぞって希望した。

 

 

しかし、その半数は女神の門の試練を通れずに人魚の里近くで住むことになる。

 

 

中にはサークルアンデッドに強い恨みを抱き外海の魔神への加入を希望する者もいた。

 

 

剛本は回復すると直ぐにショウ達に礼だけ言うと、ろくに会話もしないまま急いでイ特へと帰っていった。

 

 

そんな中、ショウはこのイシュタラの国での最後の仕事をしようとしていた。

 

 

バアルへのチカラの移譲である。

 

 

チカラを渡された者はそれに適合する為に過酷な激痛に耐えなければならず、渡した者も一度自分の血液や免疫を全部渡してしまうかの如く衰弱する。

 

 

移譲を受けるとナノマシーンはお互い激しく衝突する。

 

 

そして成功すれば共生して元の能力とプラスで新しい能力を得る。

 

 

失敗すれば強い方のナノマシーンだけが残るか、細胞や遺伝子自体が損傷して死に至る事もある。

 

 

この激しい損耗をミネルバの治癒魔法で治癒しながら負担を軽減して行うというものだ。

 

 

前回はショウの心の奥底で謎の声がした後、ショウ自身が絶命する程の事態に陥った。

 

 

そして、今回は

 

 

 

 

相変わらずイシュタラの国には入れないショウは青の研究施設でバアル達と会うことになった。

 

 

施設は今やクレピオスとオンジしか居ない寂しい場所だが防衛レベルはイシュタラの国の『壁』と『門』につぐ高さだ。

 

 

そんな施設の診察室にその日はショウとミネルバとアナト、それからクレピオスとどこからかやって来た半魚人(ビビアン)それにエルヴィンの姿があった。

 

 

前回の事もあり診察室には緊張感が漂っている。

 

 

そんな中、一番緊張感のないのがショウ自身だった。

 

 

ショウは何となく分かっていた。

 

 

自分の中には何かとてつもない大きなものがいる事を。

 

 

『それ』が起きている時に移譲をすると抵抗力のなくなった体は『それ』に耐えきれず崩壊してしまう。

 

 

しかし、『それ』は自分を入れる器としてショウを守ってもいた。

 

 

ショウは『それ』が自身の目的を果たす前にいきなり自分を消滅させたりしない事に気が付いていたのだ。

 

 

アナト「他守、本当に大丈夫なんだな?」

 

 

ショウ「あぁ。今は大丈夫だ。」

 

 

ショウ「な、エルヴィン。そう思うだろ?」

 

 

エルヴィン「ふむ。。そうだね。今なら大丈夫そうだ。」

 

 

エルヴィン「それに今回はオイラがいるからね!」

 

 

アナト「お前は前回もいただろう?」

 

 

エルヴィン「いや、他守にとってはいなかったのさ。」

 

 

エルヴィン「それはこちらからも干渉出来ない事を意味するのさ。」

 

 

アナト「一体何を言ってるんだ?」

 

 

ショウ「。。。俺もよくわからない(汗)」

 

 

ショウ「でも、今は『それ』の存在を感じない。それは確かだ。」

 

 

エルヴィン「アイツのチカラは強大だけど今はオイラと同じで存在が不安定だからね。活動周期があるのかも知れないね。」

 

 

アナト「お前たちは一体何を話している?そろそろ教えてくれないか?」

 

 

ショウ「。。。そうだな。でも実際俺もよく分からないんだ。」

 

 

ショウ「ただ、俺の中に誰かいる。」

 

 

ショウ「それが俺の強すぎるティアマトのチカラとか、こないだの暴走とかに絡んでいる事は確かだ。」

 

 

ショウ「エルヴィン、君は色々知ってそうだけど。。」

 

 

ショウ「話してくれないか?」

 

 

エルヴィン「ふむ。」

 

 

エルヴィンは少し考えこんでから

 

 

エルヴィン「少し、昔話をしよう。」

 

 

と、話始めた。

 

 

エルヴィンの話 ◇  ◇  ◇

 

 

氷河期の訪れる前の事。

 

 

これはオイラが人間だった頃の記憶だ。

 

 

かつて、世界は青い空と緑あふれる素晴らしい世界だった。

 

 

人々も豊かで夜も明かりが絶えず世界は人の為にあったと言っても過言ではなかった。

 

 

そこに世界で初めてのナノマシーン適合者が誕生した。

 

 

いや、覚醒者と言った方がいいかもしれない。

 

 

名を『アヌ』と言う。

 

 

覚醒後、彼の気性は急に荒くなったが彼自身の正義は確かにそこにあった。

 

 

しかし、強すぎるチカラを持ったアヌ、そしてその他の適合者達を世界は危険視すると、適合者全てを隔離して迫害し始めたんだ。

 

 

そしてアヌは世界を相手に一人で戦った。

 

 

激しい戦いの末、世界中の核兵器と当時の進んだ科学兵器の攻撃を一身に受けて彼の身は砕け散った。

 

 

その身にまとっていた紫色のティアマトのオーラは天に舞い上がって地球をすっぽり包みこむと太陽の光が遮られ。。

 

 

世界は長い氷河期に入ったんだ。

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

バアル「そ、そんな。。それじゃぁまるで。。」

 

 

半魚人(ビビアン)「ボソボソボソボソ」

 

 

エルヴィン「残された場所にはたまたまそこで死んでいた猫と融合してしまった存在自体が揺らいでいるオイラと。。。エンキ親子だけだったよ。」

 

 

アナト「エンキだと?」

 

 

アナト「それはいつの話だ?」

 

 

エルヴィン「もうかれこれ1000年位は経つかな?」

 

 

ショウ「その『アヌ』って言うのがあの声の主か。。。」

 

 

ショウ「今の話からしてアヌはエンキと君を守ったと言う事か?」

 

 

エルヴィン「オイラはついでみたいなものだね。」

 

 

アナト「じゃぁそのアヌって言うのはエンキの味方と言う事か?」

 

 

エルヴィン「そうさ。だからエンキはアヌを復活させようと躍起になってナノマシーン開発に没頭した。」

 

 

エルヴィン「何度も何度も。。時代を飛び越えて。。」

 

 

バアル「そんな事が。。。」

 

 

ショウ「それじゃエルヴィン、君は誰の味方なんだ?」

 

 

ショウ「今は俺たちに加勢してくれてるみたいだけど。。?」

 

 

エルヴィン「。。。そうだね。。後始末がつけたいのかもね。」

 

 

エルヴィン「オイラ、アヌをあんな風にしてしまった事を悔いているのかも知れない。」

 

 

バアル「他守ショウはこれからどうなるんだ?」

 

 

不安そうなバアル

 

 

エルヴィン「ま、手はあると思ってるよ。」

 

 

エルヴィン「他守、これが終わったら君の実家に連れて行ってくれないか?」

 

 

エルヴィン「君の出自に重要な事か隠されているはずだ。」

 

 

ショウ「そう言えばアヌもそんな事を言っていた様な。。。」

 

 

エルヴィン「さ、オイラの話はここ迄だ。アイツが起きないうちに移譲をしてしまうよ!」

 

 

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