廃核の海 〜魔族アバターのまま現実世界に放り出された俺と不思議な美少女の物語〜   作:織雪ジッタ

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じいちゃんの形見
1話 旅立ち


◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

俺には両親の記憶がない。

 

それどころか子供の頃の記憶も殆ど曖昧だ。

 

誰でもそんなものなのだろうと思っていたが俺は特別子供の頃の記憶がない事に気が付いた。

 

そう、小学校に行った記憶すらないんだ。

 

育ててくれたのはじいちゃんだ。

 

いや、じいちゃんが育てたらしいと言った方が正しいのかも知れない。

 

じいちゃんの事も本当はよく分からないんだ。

 

でも、他に身内と呼べる人がいなかったから俺の中でじいちゃんは唯一だった。

 

じいちゃんは俺と同じで少し記憶の抜けた人だった。

 

普段はいいじいちゃんだったのに時折訳のわからない事を言っては慌ててどこかへ出かけていった。

 

そして帰ってきたと思ったらいつも機嫌が悪かった。

 

そんなじいちゃんも10年前のある日、突然この世を去った。

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

イシュタラの国、女神の門前

 

そこにショウ達の姿があった。

 

旅立つ時が来たのである。

 

ショウ「それじゃあ、いくよー!」

 

アナト「ああ。」

 

すっかり優しい目になったアナト。

 

バアル「宜しく頼む。」

 

緊張の面持ちのアナトの兄、バアル。

 

ミネルバ「いつでもよろしくてよ。」

 

気高い雰囲気のミネルバ。

 

エルヴィン「魔法で移動かぁ!なんかワクワクするね!」

 

ショウの魔法に興味津々でテンションの高いエルヴィン。

 

そのアナト、バアル、ミネルバそしてエルヴィンは魔法の効果範囲であるショウの近くに寄り添うと、それを見計らってショウは魔法詠唱のポーズを取った。

 

するとテレポトの長い詠唱が始まる。

 

と言ってもショウがその長い詠唱を覚えている訳ではない。

 

ポーズさえ取れば勝手にブツブツと魔法を唱えてくれるのだ。

 

それに呼応してショウ達の足元には大きな白い魔法陣が現れてゴオオオオオッという音と共に下から白い光と風が吹き上がる。

 

これは実際に風が吹いている訳ではないのだがそういう風に見えるのだ。

 

アニメのマナとか気とかチャクラとか闘気とかそういう謎のパワーが出た時のあれだ。

 

そして30秒はあろうかという長い長い詠唱時間を待つと突然ショウの構えた手の間から明るく光る白い球体が広がってみんなを包みこむ。

 

それに合わせてタイミングよくショウは叫ぶ。

 

ショウ「テレポト!!」

 

するとギュウーーーーン!!!という効果音と共にショウ達は何処かへ消え去った。

 

後にはキラキラと光の粒の名残りを残して、やがてそれも全て消えていく。

 

因みにだが別に魔法名は叫ばなくても魔法はちゃんと発動する。

 

女神の門の外側まで見送りに来ていたアルル達10議員の面々、ヤム、そしてクレピオスとアスタルトの親子、人魚達を残してショウ達は旅立って行った。

 

アルル「行ってしまわれた。」

 

ヤム「不思議な技ですね。」

 

アルル「うむ、本当に不思議な男じゃったのう。」

 

ウンマ「テポドン。。羨ましいワン。」

 

正しくは『テレポト』である。

 

だが、相変わらずダンディな声だ。

 

しかし、すっかりたくましく成長したウンマには外見と声がマッチしていて、とても似合っている。

 

アルル「ウンマ、テポドンではなく確かテレポトとか言っておったぞ。」

 

ウンマ「アルルボケたのか?そう言ったわん。」

 

全員:言ってない。。。

 

アルルは諦め顔でウンマを見つめるがウンマはキョトンとするばかりだった。

 

ウンマ「?」

 

ヤム「それはそうと、これから忙しくなりますよ。」

 

アルル「そうだな。。。我々も人間達との休戦交渉に向けて準備をするとしよう。」

 

ヤム「ええ。剛本君もそろそろあちらに着いている筈です。先ずはイ特の方の進捗報告を聞きましょう。」

 

見送りに来ていた錚々(そうそう)たる顔ぶれはそうしてイシュタラの国に引き返した。

 

一方、テレポトの光に包まれたショウ達の方はというと魔法発動の瞬間、視界が一度真っ白になり、その後暗くなってまた明るくなると目の前にはさっきまでとまるで違う場所に全員いた。

 

ショウのホームポイントまで白魔法『テレポト』でワープしたのだ。

 

視界が白くなった瞬間、ショウは何か嫌なものを見た気がしたが気のせいかと思い、ショウはこの時なにも言わなかった。

 

ところでそもそも何故この四人とエルヴィンが一緒に旅立つ事になったのか覚えているだろうか?

 

ショウは心の奥底にいる『謎の声の主』の干渉により青いオーラを持つようになった。

 

しかし、それは同時にとても危険なものでもあった。

 

九死に一生を得たショウに『謎の声の主』は『祖父の痕跡を探れ』という言葉を残してまた心の奥底に消えていった。

 

一方、イシュタラの国で知り合ったエルヴィンは氷河期が終わったのはショウの誕生が原因だと言う。

 

エルヴィンが言うには『謎の声の主』の正体はナノマシーン最初の適合者『アヌ』だという。

 

それがどういう意味を持つのか、ショウには分からなかったがショウにとってもイシュタラにとっても『アヌ』の事や氷河期の終わりの事は無視できないものであった。

 

そして人とイシュタラとの停戦交渉の為に81区に行くバアルの意向もあってショウの出自を調べる事にバアルも同行する事になったのだ。

 

ショウの謎を紐解き、世界を平和にし、エンキとの因縁の決着をつける旅が今、始まったのだ。

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