恋恋高校に高性能なパワプロくんが入学しました   作:肌がキレるティッシュ

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1年生 春

俺の名前はパワプロ。野球大好きっ子だ。

今年度から男女共学になる「恋恋高校」に入学することになった。

 

……普通なら、強豪校を選ぶ?

甲子園が近い学校を選ぶ?

 

いや、それじゃ面白くない。

強豪校で優勝しても、最初から完成してるチームじゃ刺激が足りないんだ。

 

俺がやりたいのは――

 

野球弱小校を一から作り上げて、甲子園で優勝することだ!

 

 

〜入学式の朝〜

 

パワプロ「ここが恋恋高校か……」

 

校門の前に立って、周囲を見渡す。

 

パワプロ「今年度から男女共学になるだけあって……たしかに女子ばっかりだな」

 

制服姿の女の子たちが、わいわいと校門へ吸い込まれていく。

その中に混じる男子は、ほぼいない。

 

すると。

 

《パワプロの特能 モテモテ発動》

 

女子A「あの男子、カッコよくない?背も高いし顔もイケメンで……」ヒソヒソ

女子B「本当だ……ガタイもいいし、スポーツやってそう!」ヒソヒソ

 

やたら視線を感じる。

 

パワプロ「な、なんだ……?」

パワプロ「めっちゃ見られてる気がする……男子が珍しいのかな……?」

 

パワプロは首をかしげながら、校舎へ向かった。

 

 

〜入学式終了後/1年A組〜

 

ざわざわした教室。

席に着いて改めて見渡してみると――

 

パワプロ「……え、男子……二人だけ?」

 

周囲はほぼ女子。

男子の影が薄すぎる。

そんな中、前の席の男子に声をかける。

 

パワプロ「ねえ、男子2人だけだよね!俺はパワプロ!よろしく!」

 

矢部「オイラは矢部でやんす。」

 

パワプロ「矢部くんか!中学の時、部活は何やってたの?」

 

矢部「野球部でやんす」

 

パワプロ「おっ、野球仲間じゃん!」

 

矢部「女の子が多い理由でこの学校を選んだでやんすが……」

矢部「この学校に野球がないことを、入学してから初めて知ったでやんす」

 

パワプロ「えっ」

パワプロ「……マジで?」

 

矢部「マジでやんす……」

 

パワプロ「……なるほど。男女共学になったの今年からだもんね」

でも――ここで諦めるパワプロではなかった。

パワプロ「安心してよ、矢部くん」

 

矢部「……?」

 

パワプロ「俺たちで作ろう!野球部!」

 

矢部「はっ?でやんす」

 

パワプロ「今日の放課後、理事長のところへ行こう!」

 

矢部「む、無茶でやんす!!」

 

パワプロ「大丈夫!気合と根性でなんとかなる!」

 

矢部「ならないでやんすよ!?」

 

 

〜放課後〜

 

パワプロたちは理事長を説得して、どうにか――

野球部ではなく、野球同好会として認めてもらうことになった。

まだ部じゃない。

でもゼロがイチになった瞬間だ。

 

パワプロ「矢部くん、やったね!」

 

矢部「でも、まだ部活ですらないでやんすよ……」

 

その時――

ドーン!!

 

矢部「いででっ……でやんす」

 

誰かとぶつかった矢部くんが転ぶ。

 

あおい「ちょっと!どこ見て歩いてるのよ!」

 

声の主は、緑髪で三つ編みの女の子。

目つきが鋭くて、かなり気が強そう。

 

矢部「こ、こんな怖い子が恋恋の女子生徒とは信じられないでやんす……!」

 

あおい「なんか言った?」ギロリ

 

矢部「ひぃっ……でやんす……!」

 

パワプロは、その子の持っているものに目を止めた。

 

パワプロ「あれ?それ……野球道具?」

パワプロ「もしかして、野球やってたの?」

 

あおい「うん、そうだよ」

 

パワプロ「ならさ!」

パワプロ「俺たちと野球やろうよ!まだ同好会だけど、必ず野球部にしてみせるから!」

 

あおい「うーん……」

 

少し迷った顔をして――

 

あおい「……うん、いいよ!」

 

あおいは明るく返事をした。

 

パワプロ「よっし!!」

パワプロ「俺はパワプロ!君の名前とポジションは?」

 

あおい「ボクは早川あおい。ピッチャーだよ」

 

矢部「オイラは矢部明雄!俊足巧打の外野手でやんす!」キリッ

 

あおい「自画自賛って……」ジトー

 

パワプロ「俺はピッチャーとキャッチャー、どっちもできる!これからよろしくね!」

 

矢部「オイラはまだ野球同好会に入ると決めたわけではないでないでやんす」

 

あおい「男なら覚悟を決めなさい!」

 

矢部「やっぱり、めちゃくちゃ怖い子でやんす……」

 

そして、あおいちゃんは思いついたように続ける。

 

あおい「……あ、そうだ」

あおい「ボクは自分の練習に集中したいから、キャプテンは君がやってよね」

 

パワプロ「俺がキャプテン……?」

パワプロ「もちろんだよ!」

 

《パワプロの特能 闘志発動》

 

パワプロ「俺に任せて!必ず甲子園優勝してみせるから!」

ゴゴゴゴ……

 

闘志が湧き上がる。

 

あおい「ええ!?目標たかすぎ!!」

 

矢部「恋恋で甲子園とか絶対に無理でやんすよ!?」

 

パワプロ「よし!じゃあ早速グラウンドで練習しよう!」

 

あおい「しかも今から!?」

 

パワプロは駆け出した。

 

矢部「聞いてるでやんすか!?!?」

 

――こうして。

 

恋恋高校・野球同好会の

最初の一歩が踏み出された。

 

 

〜恋恋高校グラウンド〜

 

放課後。

まだ夕日が残るグラウンドに、パワプロたち3人だけが集まっていた。

 

パワプロ「じゃあ、早速だけど……実戦形式で練習しようか!」

 

矢部「早速すぎるでやんす!そもそも3人しかいないでやんすよ!?」

 

パワプロ「ま、まあ守備はなしでね!」

パワプロ「矢部くんがバッター。あおいちゃんがピッチャー。俺はキャッチャーをやるよ!」

 

矢部「仕方ないでやんすね……グランドまで出てきたでやんすし、オイラの俊足巧打を見せてやるでやんす!」キリッ

 

あおい「それはこっちのセリフだよ、矢部くん!」

あおい「ボクのピッチングの凄さ、思い知らせてあげる!」

 

パワプロ「よし、準備OKだね」

パワプロ「ストライク判定は俺がするよ」

パワプロ「あと……俺はリードしない!配球はあおいちゃんに任せるよ!」

パワプロ「好きな球種、好きなコースに投げてきて!」

 

《パワプロのキャッチャー◎ 発動》

 

あおい(……あれ?)

あおい(なんだろ……すごく安心する……)

あおい(この人のミットなら……どこ投げても受け止めてくれそう)

あおい(……よし)

 

1球目

 

あおいちゃんが、アンダーから静かに腕を振った。

 

クイッ――

スパーン!!

 

ど真ん中、低め。

ミットが気持ちよく鳴った。

 

矢部「えっでやんす」

 

パワプロ「ストライク!!」

パワプロ「あおいちゃん凄いよ!今の……130近く出てたんじゃない!?」

 

矢部「ア、アンダースローなのに速すぎるでやんす!!」

矢部「男子高校生でもこんなに出せないでやんすよ!?」

 

あおい「ふふん。驚いた?」

あおい「次、いくよ!」

 

2球目

 

クイッ――

カスッ……

 

矢部「今度はカーブでやんすか!?緩急がキツいでやんす……!」

 

パワプロ「これはファウル!」

パワプロ「ツーストライクだよ、矢部くん!」

 

矢部「もう追い込まれたでやんす……!」

 

あおい「次で終わりだよ!」

 

3球目

 

クイッ――

ブォン!!

 

矢部「うわっでやんす……!」

 

空を切るバット。

 

パワプロ「三振!!」

パワプロ「あおいちゃん、すごい!!」

 

矢部「まさかシンカーまで投げられるとはでやんす!!」

あおい「ふふん。凄いでしょ!」

 

胸を張るあおいちゃん。

でも、それに負けないくらい、俺の胸も熱くなってきた。

 

パワプロ「……これ、本当に甲子園優勝狙えるかも」

 

あおい「え!?そこまで!?照れるなぁ」

 

パワプロ「だって俺もいるからね!」

 

矢部「パワプロくんって……そんなに上手いでやんすか?」

 

パワプロ「ひどいな矢部くん……」

 

パワプロは笑う。

 

パワプロ「俺、去年までアメリカにいたんだけどさ」

パワプロ「あっちでいろんな大会出て、MVPもいっぱい取ってきたんだよ」

 

ふたり「ええええー!!!!!」

 

あおい「うそ!?ほんとに!?」

 

矢部「マンガみたいな経歴でやんす!!」

 

パワプロは二人の顔を見ながら、自然に口が動いていた。

 

パワプロ「あおいちゃんはアンダースローで130近いストレートを投げて」

パワプロ「カーブもシンカーも使える」

パワプロ「高校1年でここまで完成してる投手、なかなかいないよ!」

 

あおい「あはっ……ボクってそんなに凄いかな?」

 

パワプロ「凄いよ!」

パワプロ「矢部くんもさっき三振だったけど、あれはできる人の空振りだった」

 

矢部「できる人の空振り……?」

 

パワプロ「ちゃんと球、見えてた」

パワプロ「ミート力もたぶんあるし、そこに俊足が乗ったら……マジで武器になる」

 

矢部「そ、それほどでもでやんす……!」テレテレ

 

あおい「……空振り三振して照れるって・・・」ジトー

 

矢部「でやんす……」

 

その時。

あおいちゃんが、ぐっと前に出た。

 

あおい「よーし!」

あおい「今度はパワプロくん!ボクと勝負してよ!」

 

パワプロ「もちろん!」

パワプロ「あおいちゃんの球、打ってみたい!」

 

矢部「オイラはキャッチャーできないでやんすよ!?」

 

あおい「いいからやる!」ギロリ

 

圧。

 

矢部「こ、怖いでやんす……!」

 

〜パワプロ vs あおい〜

 

パワプロ「よし、来い!」

 

あおい「いくよ!」

 

クイッ――

 

パワプロ(シンカーか)

 

《パワプロのパワーヒッター 発動》

 

次の瞬間。

キィィン!!

乾いた音がグラウンドに響いた。

 

矢部「完璧に捉えたセンターへのホームランでやんす……」

 

あおい「え……」

 

あおい「ボクの球が……こんなにあっさり……?」

 

パワプロ「やったぁ!!」

パワプロ「いや、あおいちゃんの球は凄かったよ」

パワプロ「でもさっきと、全く同じ球種とコースだったからね!」

 

あおい「……っ」

 

悔しそうに唇を噛むあおいちゃん。

 

俺はすぐに言葉を続けた。

 

パワプロ「俺がキャッチャーをする時は、ちゃんと配球するよ」

パワプロ「あおいちゃんはコントロールもいい」

パワプロ「配球を組めば、そうそう打たれない投手になれる!」

 

《パワプロのムード○ 発動》

 

あおい「……うん」

あおい「……そうだね!」

 

矢部「なんだか……イケる気になってきたでやんす!」

 

パワプロ「よーし!」

パワプロ「少ない人数だけど、練習しながら部員も集めていこう!」

 

ふたり「おー!!」

 

《パワプロのいいやつ 発動》

 

あおいちゃんと矢部くんの評価が、ぐーんと上がった。

 

 

―― 能力データ ――

 

パワプロ

【ミート】12B

【パワー】140A

【走力】12B

【肩力】14A

【守備】13B

【特殊能力】青特多数

 

早川あおい

【球速】128km/h

【コントロール】130D

【スタミナ】65D

【変化球】カーブ1/シンカー1

 

矢部明雄

【ミート】2F

【パワー】60F

【走力】9D

【肩力】5F

【守備】5F

 

 

〜翌日・放課後/廊下〜

 

放課後の校舎。

 

明るい茶髪のロングヘアーに茶色の瞳。

七瀬はるかは教室に忘れ物を取りに戻って、廊下を歩いていた。

 

その時、手に持っていたプリントがふわっと風に煽られて落ちる。

 

はるか「あ……!」

 

床に散らばった紙を拾おうとして、しゃがみこんだ瞬間。

 

パワプロ「大丈夫?拾うよ!」

 

すぐ隣に、男子生徒がしゃがみこんでいた。

色白の肌が廊下の光を受けて、ややタレ目気味の穏やかな目元がふっとパワプロを向く。

茶色の瞳が一瞬だけ合って、どこか落ち着く印象だった。

 

パワプロ「どういたしまして!はい、これ」

 

はるか「助かりました……」

 

顔を上げると、その男子生徒はニコッと笑った。

背が高くて、スポーツやってそうな体格。

なのに、笑い方は妙に子どもっぽい。

今度は、パワプロの脇に挟んでいた書類がヒラヒラとはるかの方に落ちてきた。

 

はるか「これ、落ちましたよ」

 

パワプロ「……あ、やべ」

パワプロ「これ、急がないと!」

 

はるか「え?」

 

パワプロは、抱えていた紙束を見て焦った顔をする。

 

はるか「それは……?」

 

パワプロ「あ、これ?理事長室に提出する書類!」

 

はるか「書類……?」

 

パワプロ「野球同好会作ったんだ!」

 

はるか「……野球同好会……?」

 

パワプロ「まだ同好会だけど、絶対すぐ野球部にする!」

 

はるか「……すごいですね」

 

パワプロ「それで、甲子園で優勝するんだ!」

 

はるか「……えっ」

 

甲子園優勝という、あまりにも大きな言葉が、あまりにも当たり前みたいに出てくる。表情も真剣そのもの。

 

はるか(この人……本気で言ってる……)

 

パワプロ「じゃ、急ぐから!拾ってくれてありがと!」

 

はるか「いえ……先に私の方が拾ってもらってますから……」

 

パワプロ「え?あ、そっか俺が拾ってあげたんだっけ!でも俺も助かったし!じゃあね!」

 

そう言って、パワプロは廊下を走っていくが、すぐに先生に怒られる。

 

先生「おい、廊下は走るなよ!」

 

パワプロ「す、すみません。早歩きにします!」

 

先生「おい、ほぼ競歩だろそれ!そのスピードはだめだ!」

 

はるかの目の前でコントのようにパワプロは怒られていた。

 

はるか「……ふふ」

 

それを遠目に見て、思わず笑ってしまう。

 

はるか(変な人……でも……)

はるか(すごい人かもしれない)

 

胸の奥に、ほんの少しだけ、温かいものが残った。

 

 

〜その日の帰り道/あおいとはるか〜

 

校門を出ると、あおいが待っていた。

 

あおい「はるかー!帰ろ!」

 

はるか「うん。お待たせ」

 

並んで歩きながら、あおいがいつもの調子で話し始める。

 

あおい「ねえ聞いてよ。昨日、すごいことがあったんだ」

 

はるか「すごいこと?」

 

あおい「ボクね、野球同好会に入った!」

 

はるか「……野球」

 

あおい「うん!まだ同好会だけどね」

 

はるか「……あおい、ずっと野球やってたもんね」

 

あおい「うん、これで高校でもできるよ!」

 

はるか「……でも恋恋高校って、野球なかったのに凄いね」

 

あおい「今年からなんとか作ったんだよ。ボクたちで!」

 

はるか「ボクたち?」

 

あおい「うん。男子が二人いてさ」

 

はるか「……男の子が?」

 

あおい「一人は矢部くんっていう、なんか変な人」

 

はるか「ふふ、変な人なんだ……」

 

あおい「もう一人が……パワプロくん。パワプロくん凄いよ。野球ものすごく上手いし、この人も変なんだけど、なんか……熱いんだ」

 

はるか「……!」

 

さっきの廊下が一瞬で蘇る。

“甲子園優勝するんだ!”

 

はるか(……やっぱり、あの人……)

 

はるかは歩きながら、そっと視線を落とした。

 

はるか「……そうなんだ」

はるか(あの人も、そこにいるんだ……)

はるか(……私にも、できることあるかな)

 

少し歩いて、風が冷たく感じた時。

 

はるか「……あおい」

 

あおい「ん?」

 

はるかは、少しだけ勇気を出して言った。

 

はるか「私……野球はできないけど……」

はるか「マネージャーなら、できることがあるかもしれない」

 

あおい「……!」

 

はるか「みんなが頑張るなら、私も……支えたい」

はるか「だから……私も、手伝ってみようかな」

 

あおい「……はるか」

 

あおいの顔が、ぱっと明るくなる。

あおい「いいじゃん!」

あおい「絶対、パワプロくんも喜ぶよ!」

 

はるか「……ふふ」

 

はるか(……うん)

はるか(あの人が言った“甲子園優勝”)

はるか(それが本気なら……見てみたい)

 

静かな胸の鼓動が、少しだけ速くなっていた。

 

 

〜数日後・1年A組の教室〜

 

昼休みの教室。

パワプロが野球同好会の計画ノートを書いていると、あおいが勢いよく話してきた。

 

あおい「パワプロくん!」

 

パワプロ「お、あおいちゃん!どうしたの?」

 

あおい「連れてきたよ。ボクの親友!」

 

あおいちゃんの後ろから、女の子が一歩前に出る。

 

はるか「あ、あの……七瀬はるかです」

 

パワプロ「……えっ」

 

はるか「この前は……ありがとうございました」

 

あの時、廊下でプリント拾ってた子だ。

 

パワプロ「あ!あの時の!」

 

矢部「え!?知り合いでやんすか!?」

 

あおい「え、ボクも知り合いとは知らなかったよ!」

 

はるかは小さく息を吸って、言葉を続ける。

 

はるか「私……体が弱いので、選手としては無理です」

はるか「でも……」

はるか「マネージャーとして、野球同好会を手伝わせてください」

 

矢部「マネージャー!?でやんすか!?」

 

パワプロ「……うん!」

パワプロ「もちろん!よろしくね、はるかちゃん!」

 

はるか「……はい」

はるか「よろしくお願いします。パワプロさん」

 

矢部「青春到来の予感でやんす……!」

 

あおい「はるかに手を出したら怒るよ?」ギロリ

 

矢部「オイラの青春がすぐに消えてなくなるでやんす……!」

 

パワプロ「あはは。よーし!」

パワプロ「みんなで部員集め、頑張ろう!」

 

 

〜それから二ヶ月後〜

 

その後、あおいちゃんとはるかちゃんが中心になって勧誘を進めてくれて、

野球同好会はついに9人(マネージャー1人)になった。

 

パワプロ「部員が増えてよかったなぁ!」

パワプロ「この2ヶ月で、みんなも上手くなってきたしね!」

 

あおい「まあ、ボクとはるかが4人連れてきたからね」

あおい「パワプロくんは1人。矢部くんは0人だけど」ジトー…

 

矢部「オイラも頑張ったでやんすよ!?」

 

パワプロ「よーし!あと1人だね!」

 

はるか「それが……もう難しいと思うんです」

 

パワプロ「え?どうして?」

 

はるか「男の子は、もう全員……野球同好会に入っていますから。女子でやってくれそうな人はもう全員がソフト部に…」

 

全員「えええええ!!!」

 

パワプロ「とほほ……一年目は練習に専念するしかなさそうだなぁ……」

 

それでもパワプロたちは、ひたすら練習を積み重ねていった。

 

 

〜ある日のグラウンド〜

 

夕方。

少しずつ日が傾き始めたグラウンドには、乾いた土の匂いと、部員たちの声が響いていた。

 

パワプロ「よし!じゃあ、ここで一回休憩に入ろうか!」

 

みんな「おー!!」

 

部員たちはそれぞれ水を飲みに行ったり、芝生に座り込んだり、倒れたり。

まだ慣れない練習量に、初心者組は特に疲れている。

 

矢部「オイラの足が……足が取れそうでやんす……」

 

パワプロ「取れない取れない」

 

矢部「いや、これは取れるでやんす……!」

 

あおい「大げさだなぁ……」

 

そう言いながらも、あおいちゃんも額に汗を浮かべていた。

でも目だけは、練習中のまま真剣だ。

 

 

~休憩中~

 

あおい「ねえ、パワプロくん」

 

パワプロ「ん?どうしたの、あおいちゃん」

 

あおいは少し迷うように言葉を止めてから、口を開いた。

 

あおい「……次の練習さ」

あおい「ボク、変化球の練習していいかな?」

 

パワプロ「変化球?」

 

あおい「うん。変化球もうすこし伸ばせたらなって」

あおい「ほら、ボクの球はアンダースローで珍しいけど……」

 

あおい「パワプロくんみたいな化け物相手には、普通に打たれるじゃん」

 

パワプロ「化け物って言うなって!」

 

あおい「事実でしょ!」

 

あおいはむっとしつつも、視線だけは逸らさない。

 

あおい「……だから、もっとうまくなりたい」

あおい「来年、勝つために」

 

その言葉は、短いけどまっすぐだった。

 

パワプロ「……うん。もちろん!」

パワプロ「実はさ、次の練習は自主練にしようと思ってたんだ」

 

あおい「自主練?」

 

パワプロ「うん!」

パワプロ「人によってレベルも課題も違うからね。俺が一人一人を見て、気づいたことを短く伝えて」

パワプロ「その後は各自、自分の課題に集中する時間にしようって」

 

あおい「……なるほど」

 

あおいの目が少しだけ輝く。

 

あおい「じゃあ、ボクは変化球をやる!」

 

 

パワプロ「いいね!やろう!」

 

矢部「自主練って響きが一気に強豪校っぽいでやんす……!」

 

パワプロ「強豪校になるんだよ。俺たちで」

 

矢部(パワプロくん、目がガチでやんす…)

 

 

〜次の練習・自主練タイム〜

 

パワプロ「よし!じゃあ自主練スタート!」

 

パワプロはグラウンドをぐるっと回って、初心者組に順番にアドバイスしていった。

 

「グローブの出し方はこう!」

「捕球の時は腰を落として!」

「振り遅れてるから一歩前で!」

 

みんな最初は戸惑ってたけど、少しずつ目の色が変わっていく。

 

部員A「なるほど……そうやるのか!」

部員B「できた……!今の取れた!」

 

そして最後に、パワプロは投球ネットの方へ向かった。

 

 

〜投球ネット前〜

 

あおいちゃんは、一人で黙々と投げ込みをしていた。

フォームを崩さず、淡々と。

 

パワプロ「……あおいちゃん、やってるね!」

 

あおい「……あ、パワプロくん」

 

あおいは汗を拭いながら、ちょっとだけ笑う。

 

パワプロ「もうみんなへのアドバイス終わったし」

パワプロ「俺も混ざっていい?」

 

あおい「うん、いいよ!」

あおい「……というかさ」

あおい「パワプロくんって、変化球投げられるの?」

 

パワプロ「え?」

パワプロ「一応、俺のメインポジションはキャッチャーとピッチャーなんだけど……」

 

あおい「……そういえばそうだった」

あおい「じゃあ、ネットに投げてみてよ!」

 

パワプロ「おーけー!」

 

俺は軽く肩を回して、ボールを握り直す。

 

パワプロ「じゃあまず……高速スライダーからいくね」

 

あおい「……高速スライダー?」

 

1球目:高速スライダー

 

《パワプロのキレ◯ 発動》

 

クククッ――

ギュオッ!!

 

一直線に見えた球が、途中でギュンッと横に逃げた。

 

バスン!!

ネットが大きく揺れる。

 

あおい「……っ!!」

あおい「す、すごい……!」

あおい「今の……140kmくらい出てたんじゃない!?」

 

パワプロ「ははっ。たぶんそれくらい!」

 

あおい「超高速で……ものすごく変化した……」

 

あおいは呆然としている。

 

パワプロ「他にも投げられるよ!」

パワプロ「チェンジアップとか、SFFとか!」

 

あおい「……」

あおい「……パワプロくんってさ」

あおい「本当にアメリカのMVPだったんだね……」

 

パワプロ「え、まだ信じてなかったの!?」

 

あおい「あはは……ごめん」

あおい「でも今の見たら信じるしかないよ……」

 

そして次の瞬間、あおいは目をキッと上げた。

 

あおい「……ねえ」

あおい「ボクにも教えてよ!」

 

パワプロ「もちろん!」

パワプロ「あおいちゃんは特にシンカー、もっと良くなると思うんだよね」

 

あおい「え?」

 

パワプロ「腕の振りとリリース、ちょっとだけ変えれば」

パワプロ「もっと武器になるよ!」

 

あおい「……!」

 

あおいの表情が、悔しさじゃなく闘志に変わる。

 

あおい「……やる!」

あおい「絶対、身につける!」

 

パワプロ「よし!じゃあ、友情ダックトレーニングだ!」

 

あおい「友情ダック……?」

 

パワプロ「友情ダックは友情ダックだよ!」

 

あおい「意味わかんないけど……まあいいや!」

 

 

〜友情ダックトレーニング開始〜

 

その後は、二人で投げて、直して、また投げる。

 

パワプロ「今のは良い!もっと腕を振り切って!」

あおい「こう!?……クッ、難しい……!」

パワプロ「いい感じ!次はリリースを一瞬遅らせる!」

あおい「……っ、わかった!」

 

汗が飛ぶ。声が響く。

日が落ちても、二人の熱は冷めない。

 

矢部「……またパワプロくんの熱烈野球教室をやってるでやんす……」

 

 

―― 能力データ ――

 

パワプロ

【球速】149km/h

【コントロール】170B

【スタミナ】110B

【変化球】高速スライダー4/チェンジアップ3/SFF3

【投手特殊能力】青得多数

 

早川あおい

【球速】129km/h

【コントロール】135C

【スタミナ】70D

【変化球】カーブ1/シンカー2

 

※能力が上がったや評価が上がった系は基本的には省略します。




原作の七瀬はるかは独特な不思議っ子キャラクターですが、本作では物語展開との兼ね合いから、表現はややアレンジしています。

原作の雰囲気を尊重しつつ、本作なりの七瀬はるかとして描いていく予定ですので、その点をご理解いただければ幸いです。
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