恋恋高校に高性能なパワプロくんが入学しました   作:肌がキレるティッシュ

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※本作品に登場するあかつき大付属高校の監督は、原作の千石監督とは異なります。ご了承ください。


2年生 夏①

〜公式戦1か月前/恋恋高校グラウンド〜

 

春が終わり、公式戦まで、あと1か月。

 

パワプロはブルペンの端で、ミットを膝に置いたまま考えていた。

パワプロ(……結局、新入部員からキャッチャー希望は出なかった)

 

部員は増えた。

でも2人目の捕手だけは、最後まで埋まらない。

 

パワプロ(このままだと、投げるのはあおいちゃん一人)

パワプロ(俺が投げれば、負担は分けられる)

パワプロ(でも、その時にキャッチャーを誰にさせる?)

 

初心者の誰かに、無理やりマスクを被せる?

――それは違う。

 

パワプロ(野球、好きになってほしいし)

パワプロ(嫌なまま、怖いまま押し付けたら、絶対に嫌いになる)

 

そんな時だった。

 

あおい「パワプロくん」

 

声がして、顔を上げる。

あおいはグラブを抱えたまま、少しだけ困ったように笑っていた。

 

あおい「ピッチャーのことだけどさ」

あおい「ボク、一人じゃ投げきれないよ」

あおい「パワプロくんも、投げられないかな?」

 

パワプロ「……うん、そうだよね」

パワプロ「俺もそれ、ずっと気にしてた」

 

パワプロは視線を落として、素直に言う。

 

パワプロ「たださ……キャッチャーを強引にさせるのは違うと思ってて」

 

パワプロ「どうすればいいのか……」

 

あおいは一瞬だけ目を丸くして、そして――

ふっと肩の力を抜いた。

 

あおい「……もう、仕方ないなぁ」

 

パワプロ「え?」

 

あおい「ボクがキャッチャーをするよ」

 

パワプロ「……!?」

 

あおい「ボクなら野球経験も長いし」

 

あおい「パワプロくんが疲れてピッチャー交代になっても、ボクがキャッチャーならそのままボクと交代するだけでしょ」

 

あおい「それに……」

 

あおいは少しだけ視線を逸らして、照れ隠しみたいに続けた。

 

あおい「……パワプロくんの球、ずっと近くで見てきたんだから」

 

パワプロ「え、いいの!?」

パワプロ「ほんとに!?あおいちゃんがやってくれるなら大助かりだよ!」

 

あおい「あはは」

あおい「勝ちたいのは、ボクも同じだからね」

 

パワプロ「よし……!」

 

パワプロは立ち上がって、勢いよく頷いた。

 

パワプロ「それなら俺、昔使ってた捕手道具、あおいちゃんにあげるよ!」

 

あおい「えっ」

 

 

〜翌日の部室〜

 

パワプロが持ってきた捕手道具は、革の色が落ち着いていて、どこか歴史があった。

 

あおい「……これが、パワプロくんが昔使ってた……」

 

あおい「少し色褪せてるけど……でも、すごく綺麗」

 

パワプロ「野球道具は毎日手入れしてたからね」

 

パワプロ「持ち主が変わるなら、なおさら綺麗じゃないと嫌でさ。特に消臭は頑張ってみたよ!」

 

あおい「あはは。たしかに消臭は助かるかも」

 

あおいは小さく笑いながら、胸当てに手を添えて、小さく息を吐く。

あおい(……なんか、重い)

 

あおい(キャッチャーの道具って、結構大変なんだな)

 

あおい「よし」

あおい「じゃあ投げてみてよ!」

 

パワプロ「おっけー!」

 

あおいがマスクを被る。

ぎこちない。けど、目だけは真剣だった。

 

パワプロ「いくよ、あおいちゃん!」

 

あおい「うん!」

 

ストレート。

 

シュッ――

ズドン!

 

あおい「……っ」

 

一瞬ミットが押される。

でも、ちゃんと止まった。

 

あおい「取れた……!」

 

パワプロ「ナイス!さすがあおいちゃん!」

 

チェンジアップ。

ふわり、と落ちる。

 

パスッ。

 

あおい「……これ、緩いのに難しいね」

 

パワプロ「でも、今のキャッチングめっちゃ上手かった!」

 

あおい「じゃんじゃん投げて!」

 

あおいは息を弾ませた。

 

パワプロ「よーし!次はジャイロいくよ!」

 

ギュルッ――!

ズドン!!

 

あおい「……っ!」

 

体が勝手に反応して、ミットが前に出る。

――けど、回転に押し負けたみたいに、芯を外す。

 

カンッ!

 

ボールがミットの先を弾いて、胸当てに当たり、足元へ転がった。

 

あおい「いっ……!」

あおい「ご、ごめん……今の、全然掴めなかった……!」

 

パワプロ「大丈夫!今のがジャイロボールだよ」

パワプロ「回転が独特で、最初は弾きやすいんだ」

 

あおい「……そっか」

あおい「じゃ、もう一回。次は取る」

 

パワプロ「おっけー!もう一度いくよ!」

 

ジャイロボール2球目。

ギュルッ――!

ズドン!!

 

あおい「……!」

 

あおいのミットにボールが収まる。

 

パワプロ「え、もう取れた!?」

パワプロ「すごいよあおいちゃん!野球センスの塊だね!」

 

あおい「そ、そうかな?」

あおい「もっと投げてよ!」

 

しかし――

 

高速スライダー。

ギュンッ――!

 

あおい「……っ!」

 

ミットが追いつかない。

ボールが逸れて、後ろのネットに跳ねる。

 

ガンッ!

 

あおい「……ごめん!」

 

パワプロ「大丈夫大丈夫!」

パワプロ「今のは普通に難しい!俺でも昔なら弾いてた!」

 

SFF。

 

ストン――と落ちるはずが、落ちる直前に揺れる。

 

あおい「うわっ!」

 

ボールが股下を抜ける。

 

あおい「……くっ」

悔しそうに歯を食いしばる。

 

パワプロ「よし、今のは一回置いとこう」

パワプロ「まずは取れる球で形を作って、徐々にだ!」

 

あおい「……うん」

 

あおいは頷く。

でも目は、絶対に逃げていなかった。

 

 

〜それから/練習の積み重ね〜

 

 

ストレート。

チェンジアップ。

そして――最初は弾いてしまったジャイロボール。

 

まずはこの3つを中心に練習し、日を追うごとに安定していった。

 

あおいのミットが、迷わなくなる。

体の軸がぶれなくなる。

捕球音が、はっきりしてくる。

 

パワプロ「いい!今の完璧!」

 

あおい「……ふふ」

 

あおい「キャッチャーもちょっと楽しいかも。パワプロくんの球はズドンと来るね」

 

パワプロ「でしょ!」

 

パワプロ「キャッチャーはチームの頭脳だよ!」

 

あおい「ボク、頭脳ってより、根性だけどね」

 

パワプロ「根性も頭脳のうち!」

 

あおい「あはは、なにそれ」

 

笑いながらも、あおいは毎日マスクを被った。

膝は痛い。指も赤い。

それでも、続けた。

 

ただ――

高速スライダーとSFFのキャッチングだけは間に合わず、最後まで形にならなかった。

 

弾く回数は減った。

でも、ゼロにはならない。

 

 

〜公式戦直前〜

 

ボールを拭きながら、パワプロは一度だけ息を吐いた。

 

パワプロ「……あおいちゃん」

 

あおい「え?」

 

パワプロ「高速スライダーとSFFは、封印する」

 

あおい「……え」

 

パワプロ「もちろん、俺も投げたいよ」

パワプロ「でもさ、試合で1回の後逸が命取りになる」

 

パワプロ「捕るのが悪いとかじゃない。キャッチャー初めて1か月の人にとっては、球が難しすぎる」

 

パワプロ「だから――」

パワプロ「ストレートと、ジャイロボールと、チェンジアップ」

パワプロ「この3つで、勝ちにいこう」

 

あおいは少し黙って、ミットを見つめた。

 

悔しい。

でも――分かる。

 

あおい「……うん」

あおい「悔しいけど……勝つためなら、それが正しいね」

 

あおいは顔を上げて、笑った。

 

あおい「ボクも、試合で後逸したくないし」

 

パワプロ「よし!」

パワプロはニッと笑って拳を握る。

 

パワプロ「じゃあ――このバッテリーで」

パワプロ「公式戦、勝ちにいこう!」

 

あおい「うん!」

 

 

〜夏/公式戦1回戦・地方予選〜

 

夏の空気は重い。

土の匂いが濃くて、スパイクの音だけがやけに響く。

 

恋恋高校野球部――公式戦、初陣。

相手はあかつき大付属高校に次ぐ強豪、パワフル高校。

 

アナウンスも実況もない地方球場。

だけど、スタンドのざわめきだけは本物だった。

 

「恋恋って……あの男女共学になったばっかりの?」

「野球部できたばっかだろ?」

「相手パワフルだぞ……」

 

その声が風に混じる中――

ベンチ前で、パワプロはスタメン表を握りしめていた。

 

すぐ後ろで、はるかがスコアブックを抱えて立っている。

 

はるか(……始まるんだ)

はるか(ここまで来たんだ)

 

パワプロ「……よし。じゃあスタメン確認ね!」

パワプロ「1番センター、矢部くん!」

 

矢部「オイラの時代でやんす!」キリッ

 

パワプロ「3番、あおいちゃん!」

 

あおい「……え?」

あおい「ボク、バッティングはあんまり得意じゃないよ?」

 

パワプロ「大丈夫!野球経験は長いし、それにバッティングは技術もあるけど気合も大事だからね!」

パワプロ「あおいちゃんの気合ならいける!」

 

あおい「そうなのかなぁ……?うーん、でも頑張るよ!」

 

パワプロ「そうそう!そして4番、俺!」

 

部員たち「おお……!」

 

あおいは一歩近づいて、小さく問い返す。

 

あおい「……先発は?」

 

パワプロは、まっすぐ言った。

パワプロ「先発ピッチャーはあおいちゃん!」

 

あおい「……!?」

あおい「ボクが……先発?」

 

パワプロ「うん」

 

あおい「……でも、パワプロくんが投げるって……」

 

パワプロは首を振る。

パワプロ「あおいちゃんは、キャッチャー経験がまだ少ない」

パワプロ「俺が投げると、捕らなきゃいけない球が増える」

パワプロ「それで試合を壊したくない。1回戦だからこそ、慎重にいこう」

 

あおい「……」

 

パワプロ「それにさ」

 

パワプロは笑って、軽く背中を押した。

パワプロ「あおいちゃんなら通じるはずだよ。絶対」

 

あおいは一瞬黙って――息を吸い込む。

 

あおい「……わかった」

あおい「任せて。勝つよ!」

 

はるかはその背中を見ながら、胸の奥で小さく頷いた。

 

はるか(うん……大丈夫)

はるか(この二人なら)

 

そして相手校。

 

パワフル高校の内野で、ショートが声を張り上げていた。

 

尾崎「いいぞ!声出せ!」

 

気持ちがいいほど熱い声。

パワフル高校キャプテン、尾崎。

 

尾崎「相手は新設の恋恋だが、油断すんな!」

 

部員たち「おう!」

 

尾崎はふと、恋恋の先発を見て眉を上げた。

 

尾崎「……女子が先発?」

尾崎「マジかよ……」

 

けど、目の熱は落ちない。

 

尾崎(面白ぇ。真っ向から叩くだけだ)

 

 

~1回表 パワフル高校の攻撃~

 

マウンドに立つあおいは、いつもより静かだった。

でも、目だけはブレない。

 

パワプロ(あおいちゃんなら大丈夫……)

パワプロ(俺が受け止める)

 

《パワプロのキャッチャー◎ 発動》

 

あおい(……やっぱり、安心する)

あおい(これなら投げられる。いや、投げきれる……!)

 

1番打者。

低めに伸びるストレート。

 

ズバン!

審判「ストライク!」

 

打者「っ……!」

 

2球目。シンカーでゴロ。

ショートが捌く――恋恋の守備はもたつくが、ギリギリでアウト。

 

尾崎(……巧打の1番がいきなり詰まらされた?)

 

2番打者。カーブでタイミングを外す。

空振り三振。

 

3番打者。

またシンカー。ゴロ。アウト。

 

――3者凡退。

 

スタンドが、ざわっと揺れた。

 

「え、今の……普通に抑えたぞ」

「ってか速くない?アンダーであれは……」

 

尾崎「……」

尾崎は口を開けたまま、内野守備につく。

 

尾崎(女子だからって甘く見てたのは俺だったか)

 

~1回裏 恋恋高校の攻撃~

 

パワフル高校の先発投手はオーバースロー。

球速は――140は出ている。

1番打者は矢部。

 

矢部「こ、これは速いでやんす……!」

矢部(でも、パワプロくんに比べれば……まだマシでやんす!)

 

カンッ……!

 

打球はショート前、ぼてぼて。

尾崎が前に出る。

 

尾崎(余裕だ)

 

……と思った瞬間。

矢部が、加速した。

 

ザッ――!

一塁へヘッドスライディング。

 

一塁手「セーフ!セーフ!」

 

尾崎「……は?」

尾崎(あの眼鏡……足、はええ!)

 

矢部「見たでやんすか!?オイラの俊足巧打を!!」

 

あおい「ボテボテの巧打……?」

 

矢部「細かいこと言わないでほしいでやんす!」

 

2番打者は凡退。

そして3番、あおい。

 

あおい(……落ち着け)

 

外の速球。空振り。

内の速球。空振り。

 

あおい「……っ」

 

三振。

 

あおい「ごめん……!」

 

パワプロ「いいよ!次で取り返せる!」

 

そして――4番、パワプロ。

打席に入った瞬間、空気が変わる。

 

《パワプロの威圧感 発動》

 

相手バッテリーが、目に見えて固くなる。

 

尾崎「おいっ!!」

尾崎はショートから叫ぶ。

尾崎「そいつには気をつけろ!!甘い球、絶対に投げるな!」

 

――でも、時すでに遅い。

投手のストレートが真ん中へ入った。

 

パワプロ「……来た!」

 

《パワプロのパワーヒッター/広角打法 発動》

 

キィィン!!

 

打球は高い。伸びる。

左中間へ一直線。

 

ドン!

ネットが揺れる。

 

パワプロ「よっしゃあ!!」

 

矢部とパワプロがホームに帰ってくる。

2-0。

 

尾崎「……マジかよ」

 

尾崎は歯を食いしばる。

でも目は、燃えていた。

 

尾崎(いいじゃねぇか)

尾崎(燃える相手だ)

 

はるかはスコアブックに、震えない字で「2」を書き込んだ。

はるか(……公式戦、初得点がホームラン……!)

 

 

~2回表 パワフル高校の攻撃~

 

この回の先頭は4番の尾崎。

あおいはセットに入り、パワプロのミットを見た。

 

パワプロ(ここから流れを作りたいはずだ)

 

1球目、ストレート。

尾崎はコンパクトに振り抜く。

 

カンッ!

センター前ヒット。

 

尾崎「よし!」

 

一塁に立ちながら、尾崎はにやっと笑う。

 

尾崎(ここからだ)

 

リードを広げる。

さらに、もう半歩。

 

尾崎(女子投手だ。クイックは――)

尾崎(二塁、狙える)

 

その時、パワプロがサインを立てていた。

あおいが、ほんの一瞬だけ頷く。

 

5番打者への1球目。

外へ外す――ピッチアウト。

 

シュッ――

 

尾崎(ちっ。警戒されているか)

 

ズドン。

ミットの乾いた音と同時に、パワプロが跳ねるように立ち上がった。

 

尾崎(……ん?)

 

そこへ。

 

尾崎(……まずい!!)

 

『パワプロの守備職人/送球◎ 発動』

シュッ!!

 

パワプロの送球が一直線に走る。

低く、速く、ベースの手前へ突き刺さる。

 

一塁手が捕る。

 

その瞬間、尾崎は反射で体を投げ出した。

 

ザッ――!

 

ヘッドスライディング。

右手をいっぱいに伸ばす。

 

尾崎(間に合え――!)

 

指先がベースをかすめる――その刹那。

 

バンッ!

 

グラブが手首を捉える。

 

審判「アウト!」

 

土煙の中、尾崎は息を荒くしながらベースに伏した。

 

尾崎「……くそっ」

 

パワプロ「俺がキャッチャーの時に、そんな大きなリード、許さないよ」

 

尾崎は悔しそうに歯を見せて笑った。

 

尾崎「……いいねぇ」

尾崎「最高だ」

 

 

……このまま、恋恋が押し切る――

誰もがそう思いかけた。

 

だが。

 

恋恋高校は、まだ新しいチームだった。

特に試合経験が少ない。

 

一つのゴロをはじく。

送球が逸れる。

カバーが遅れる。

 

あおいとパワプロのバッテリーは締めても、守備が追いつかない。

気づけば、エラー数は積み上がり、スコアがひっくり返っていた。

 

次は9回裏の恋恋の攻撃が始まるが、ベンチの空気が重くなっていた。

 

あおい「……っ」

 

はるかはスコアブックを閉じ、ベンチの端から声を出した。

 

はるか「……大丈夫です」

 

部員たち「……え?」

 

はるか「まだ、終わってません」

はるかは小さく笑って、でも目は強かった。

はるか「いつもみたいに、次を考えましょう」

 

その声で、少しだけ空気が戻る。

 

パワプロ「はるかちゃん……!」

パワプロ「よし!最後、取り返そう」

 

『パワプロのムード○/逆境○ 発動』

 

 

~最終回 恋恋の攻撃~

 

点差は1点。

負ければ終わり。

 

先頭――1番、矢部。

 

矢部(ここで出るでやんす……!)

 

四球。

 

矢部「見たでやんすか!?オイラの俊足巧打を!!」

 

あおい「さすがに四球だと、俊足も巧打も関係ないよ!」

 

矢部「細かいこと言わないでほしいでやんす!!(2回目)」

 

2番も、四球。

無死一・二塁。

 

ベンチが息を呑む。

はるかはスコアブックを開き直して、ペンを握り直した。

 

3番、あおい。

 

あおいはバットを握って、静かに一度だけ息を吐いた。

 

あおい(……ここでボクが打たないと)

あおい(恐らくパワプロくんは敬遠される)

あおい(勝負してもらえない)

あおい(ボクが決める)

 

相手投手が振りかぶる。

外角低め、速球。

 

あおい(……来い)

 

カンッ!!

 

乾いた音。

打球は一二塁間を抜けて、ライト前へ転がる。

 

矢部が三塁を回る。

二塁走者も続く。

ライトが前進。捕って投げる――

が、間に合わない。

 

審判「セーフ!」

 

ベンチが爆発した。

 

矢部「うおおおお!!サヨナラでやんす!!」

 

部員たち「うおおおおお!!」

 

はるかのペン先が、ほんの少しだけ震えた。

でも字は、ちゃんと綺麗だった。

 

あおいは一塁で拳を握りしめる。

 

あおい「……っ」

あおい「よし……!」

 

パワプロが駆け寄ってくる。

 

パワプロ「あおいちゃん!!」

 

あおい「……ふふ」

あおい「勝ったよ!」

 

パワプロ「うん!!勝った!!」

 

恋恋高校――公式戦初勝利。

 

汗と土と叫び声の中で、あおいはふと空を見上げた。

 

あおい(……甲子園)

あおい(遠いけど)

あおい(確かに、近づいた)

 

尾崎「やるじゃねぇか……」

 

パワプロ「いえ、貴方たちのチームも凄かったです!」

パワプロ「ありがとうございました!」

 

尾崎「うちに勝ったんだ。絶対に甲子園までいけよ!」

 

パワプロ「もちろんです!」

 

尾崎「……約束だぜ」

 

尾崎の視界が、にじむ。

まばたきをしても、白いベースが揺れたままだった。

 

土の匂い。

スタンドのざわめき。

 

その全部が、遠ざかっていく。

 

尾崎の、最後の夏が終わった。

 

 

―― 能力データ ――

 

尾崎

【ミート】4D

【パワー】95C

【走力】11C

【肩力】9D

【守備】11C

 

パワプロ

【ミート】12B

【パワー】150A

【走力】13B

【肩力】15A

【守備】14A

【特殊能力】青特多数

 

早川あおい

【球速】132km/h

【コントロール】140C

【スタミナ】70D

【変化球】カーブ2/シンカー2

 

矢部明雄

【ミート】4D

【パワー】70E

【走力】11C

【肩力】7E

【守備】7E

【特殊能力】ヘッドスライディング

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