彼女がどうしてSAOに来て、イノセンスと知り合い、軍にはいったのか……そんな彼女の昔話を彼女の視点で追います。
見た目的に、赤いカチューシャがなく常にキリッとしてて、癖っ毛がストレートになってるユウキ、みたいな……そんなイメージなお姉ちゃん。
私は……妹を……木綿季を愛してる。
双子の私たちは、いつも考える事が近くて、互いを理解できたし、一緒にいて楽しい。
明るくて、元気なあの娘が……愛しくて堪らない。
父さんも母さんも私たちを平等に愛してくれてて……毎日が幸せだってそう思ってた……いつまでも続くんだと……思っていたのに……ッ!
「木綿季ィ!!!」
「……えっ?」
小さかった私たちには……余りに辛くて痛い事だった……。
あの娘は事故で、腰から下が動かなくなってしまった。
初めは無理して笑っていたけど……今はもうあの娘から笑顔が消えてしまった。
「木綿……季……」
「……お姉ちゃん……ボク、辛いよ……苦しいよ……」
「ッ!……ごめんね……ごめんねェ……」
泣いて謝っても、この娘が治るわけじゃない……分かっていたけどそうせずにはいられなかった……代われるなら代わってあげたいくらい……ッ!
「父さん……母さん……」
「木綿季は……諦めなさい……」
「でもっ!」
「私達も何とかしたいわよ……でも、今の医療技術では無理なの……頼むから……諦めて……」
「そん……な……」
木綿季がああなってから、両親は諦めなさいの一点張り……まるで手のひら返した様に、あの娘に触れなくなった……まるで木綿季を<腫れ物>みたいに扱う二人を、私はもう信用しない。
「私が……私が何とかしなきゃ……ッ!」
「お姉ちゃん……?」
「ん?……何?木綿季?」
「……何処か行っちゃうの?……一人にしないでよ……」
「大丈夫だよ……私が……貴女を絶対助けるんだから……私は木綿季の<お姉ちゃん>だもん……」
「お姉……ちゃん……」
そう……一人になんかさせない……たった一人の妹なんだから……だから私があの娘を救う。
「君が紺野藍子ちゃんか……妹さんを救いたいんだってねぇ……素晴らしい姉妹愛だよ」
「本当に……あの娘を……木綿季を救えるんですか!?」
「そうだよ……またあの娘が心から笑える様に、したいんだろ?なら……これを受け取ってくれ……君の力が必要だ」
今にして思えば、あれはあの男……須郷の、悪魔の誘惑だったのだろうが……小さい私には理解できなかったのだ……ただ、妹を救いたい一心で……<ナーヴギア>を受け取った。
そして、デスゲームが幕を開けた。
<SAO 第三層 アルケニーの谷>
「ハアァッ!!」
「ビイィッ!」
もう何匹倒したんだったか……覚えてないや……。
確か、クエストで蜘蛛の糸が必要だからとにかく沢山狩らないとって……一人で来て……。
「はぁ……はぁ……」
須郷には騙された……アイツは初めからこうなる事を知っていて私にあの悪魔のマシンを渡したんだッ!
私は生き残る……強くなって……出来るだけ早くこの世界を抜け出して……木綿季に会うんだッ!
そして、一人にしてごめんって言わないと行けないんだァッ!
「ウワアアアアァァァ!!!」
「ギギギギィッ!!!」
……蜘蛛の巣に覆われ、日も落ちたのか辺りは暗い……私は無我夢中で戦い続け……疲労でその場に倒れ伏しそうになる。
「ギギィッ!!」
もう少し休ませて欲しいのに……空気を読んで欲しい……そう思いながら私は立ち上がろうとしたが、そこに体当たりされバランスを崩してしまう。
「ッ!このォッ!!」
「ビィィッ!」
最後の力を振り絞り、アルケニーを串刺しにして爆散させた。
そこが……私の限界だった。
「く……そぉッ……ごめんね……木綿季ィ……」
愛しい妹に謝りながら……壁を背にしてゆっくりずり落ち、私は意識を手放した。
「?……暖……かい……?」
どれくらい眠ったのか……全く分からないが、謎の暖かさに私は目を覚ました。
起きた私には、モコモコの毛布がかけられていて……目の前には焚き火……左には……。
「ウ、ウワッ!」
「ん?起きたのか……思ったより早かったな」
<真紅のローブ>を来た謎の人物がいた。
「だ、誰?」
「ふむ……そうだな、お前の命の恩人と言っとこう」
どうやらこの……<オジサン>が助けてくれたらしい……いや、フードで顔は見えないけど声からして絶対オジサンだ。
「そうなんだ、ありがと<オジサン>」
「……一応俺はお前の兄貴くらいの年齢のつもりなんだが」
「いやいや、流石に無理があるって」
単純に声が<オジサン>なだけではない、こう、滲み出る空気とか、仕草が大人らしいし、体格もかなり良い……私の父親よりでかい。
「……まあ、良いか」
そう言って彼はアイテムストレージから、美味しそうな<ハンバーガー>を取り出す……それをみて私のお腹が鳴き出していた……自然とよだれが湧いてくる……相変わらずこのゲームは忌々しい程にリアルを追求している。
「第一層始まりの町の店売り野菜、第二層の牛系モンスターの挽き肉で作ったハンバーグ、それらをこの第三層のクエストで手にはいるパンで挟んだ……栄養満点バーガーだ……」
「……」
まさか……私の前で食べるのか……ッ……ズルいッ……大人ってズルいッ!
「……そして、これは一人で必死に頑張ってた良い子への報酬だ……」
「……えっ?」
「ほら、食べろ……腹空いてたんだろ?」
そんな……こんな……こんな贅沢なものッ……食べたいに決まってる!
私はハンバーガーを受けとると、急いで口に運ぶ。
一口あむりとかじるだけで、口の中で美味しさが迸る!
「うーまーいーぞー!!!」
後はひたすら必死にばくついていた……思い返すだけではずかしい。
「……まるでいつぞやの<バーサークフェンサー>そっくりだわ」
「……もっと頂戴……<オジサン>……欲しいの……」
「……余程腹が減ってたんだな……そら、もっと食え……流石にハンバーガーはもうないがな」
そう言って彼は、沢山のサンドイッチを取り出す……私は喜びそれを頂いた。
「ご馳走さまでした」
「おう……良く食べるな……将来絶対大きくなるぞ」
「へへっ、そうかな?」
……気がつけばすっかり馴染んでいたけど、私は完全に素で<オジサン>に接していた。
こんなに気が休まるのはいつぶりだろう……木綿季の事故以来、あの娘の為に必死で落ち着く暇も無かったから。
「<オジサン>……良い人だね……」
「……そうか?」
「だって、ずっと私に優しいもの」
私がそう言ったら、彼はこう答えた。
「そりゃ、お前みたいな娘が死に物狂いでアルケニーと戦ってるのを見てたんだ……優しくもしたくなる」
「え?」
そうか、<オジサン>は私をいつでも助けられる様にずっと見てくれていたのか。
私は感謝しながら、彼を見つめる。
「そこで、勇敢なお前に聞きたい事がある……」
「何?」
「これから……剣をとるか……置くかだ……」
その質問の意図が私には分かった……まだ戦うか、やめるか……今日みたいな事がまた会って、<オジサン>みたいな人が助けてくれなければ、私は次こそ死ぬだろう……だから剣を置き、他の人に任せれば安全にこの世界から脱する事が出来る。
「……私は……<剣をとる>」
だが嘗めないでほしい、私は自分の手であの娘を救うと決めたんだ……だから、<諦める>なんて絶対にしない!
私が覚悟を決めると彼は軽く笑い、私に紙を差し出した。
「推薦状だ……<軍>への、<アインクラッド解放軍>へのな」
「ッ!あ、あの!?何でそんな物を<オジサン>が!?」
「ま、あそこの大将とはコネがあってな……自信があるなら行ってこい……お前、根性はあるから絶対に伸びるはずだ……」
須郷の手によってこの世界に実地試験と称され落とされてから、全く知り合いのいない私は、ずっと一人で戦ってきた……彼のこの話は渡りに船だった。
「あ、ありが……と……私、絶対に強くなる!そして最前線で活躍して少しでも早くこのゲームを終わらせてみせるよ!」
「はは……そうか、なら<オジサン>はソロソロ仕事に行かないと行けないから……ここらでさよならだ」
「あっ……」
「じゃあ、元気でな……」
行ってしまう……きっとしばらく会えないと思った私は自らの名を叫ぶ。
「私は<ラン>!藍色のラン!」
「……<イノセンス>だ」
「……え?」
一瞬彼の言葉に動揺した瞬間に、彼は颯爽といなくなった。
「<イノセンス>……<真紅の怪人>……」
彼は、<イノセンス>は私も知る程の有名人だ……自らをβテスターのチーター<ビーター>と称する悪人だって、誰もが噂しているのだから。
でも、私を助けてくれた彼が……とても悪人には思えなかった。
「誰にだって……事情はあるわよね……そう、私にだって……」
彼が悪人と言われながらも戦い続けている様に、私も頑張らなければならない理由がある。
「待ってて……木綿季……」
私はその場を去り、町に戻って<軍>に志願……推薦状のお蔭でトントン拍子に進み、ソロでそれなりに経験を積んでいた私は中堅クラスのメンバーに配属されて、他者の技術を盗みながらレベル上げを必死に頑張った。
それでも私が最前線に出るまでかなり時間を要し、出れた時には第二十層まで攻略が進んでいた。
<SAO 第二十層 迷宮区>
「「あ」」
そして彼……イノセンスとの再会は、非常にあっさりとしたものだった。
「……久しぶりだな、ラン」
「え、ええ……と言うか本当に若かったんだ?」
「ああ、ナイトメアローブのエキストラ効果でな……」
「ふ、ふーん……」
……おかしい、普通もっとこう……ロマンティックはいかなくてもドラマチックな再会を期待していたはずなのに……。
これじゃ、しばらく病欠だった友人に挨拶したみたいな気楽さだよ……。
「なんでそんな不満そうなんだ……やっと最前線までやってきたんだぞ?もっと喜べよ」
「いや……そうじゃなくて……」
気持ちを表現するのって難しい……私がモタモタしていると、後ろから人がやってきた。
「どうした、イノ……って知り合いか?」
「ま、また女の子引っかけてる……」
「相っ変わらず羨ましいヤツだなぁおい」
「別に引っかけてるわけじゃないっつの、第四層攻略前に出会った知り合いだ」
初顔合わせな人しかいなかったので、少し緊張したけれども自己紹介することに。
「ランです、この世界から出るために精一杯頑張ります!」
「キリトだ……似た色同士、頑張ろうぜ」
「アスナよ、ボス攻略は厳しい物だけど負けないでね」
「俺ァクライン、あそこの連中率いてるリーダーだからよ……ま、固くならず気楽に行こうぜェ?」
彼に話しかけてきたのは、攻略組でも有数の強プレイヤーキリト、アスナ、クライン……この後も良く世話になった三人だった、特にキリトとは妹談義で良く盛り上がるくらいの仲となる。
そして……間髪いれず人が来た。
「あれ?何か盛り上がってるね、イノ君」
「マスター!新人さんですか!?」
「クラインさんは気を抜きすぎ……<稲生>君はまた……」
今度は女の子が沢山……おかしい、SAOだと女性プレイヤーの数はかなり少なく珍しいんじゃ……明らかに密度がおかしい。
そう思っていると、全員此方に……正確にはイノセンスの所までやって来た。
「いや、<東条>ちがうからそんな目で見ないで……この娘はラン……シリカに初めて出会う前に遭遇してな、俺が<軍>に推薦したプレイヤーだ」
「えーと……ら、ランです」
「サチと言います、イノ君とはリアルでフレンドだから仲は良いよ……困った事があったら言ってね?」
「シリカです!マスター……イノセンスさんは私の師匠です!多分ランさんと同い年くらいだと思いますので、一緒に仲良くしましょうね!」
「トト……彼には深い恩義がある……初めが肝心だから、その力を存分に奮って欲しい……私もそうする」
サチ、シリカ、トト……今後もイノセンスを取り巻く恋愛模様は、既にこの時から始まっていたのだ。
当時の私は、彼に恩義はあった物の……恋愛感情など持ち合わせていなかった……だから他人事ですんだ様に思う……。
<SAO 二十二層 居住区川べり>
「いよし!ヒットォ!イェア!」
「相変わらず釣りでのテンション高いよな、キリトは」
「まあ、数少ない娯楽だし仕方ないんじゃないかな?僕も楽しいし」
「なんで……」
「「「ん?」」」
「何で……私達は釣りなんかしてるんだ?」
第六十三層を既に攻略し、皆スパートをかけている中……何故か私とイノセンス、キリト……そして二人の友人である<シュネル>は娯楽も良い所の釣りに興じていた。
「いや、だってイノが良い天気って言うからさぁ……」
「それを言うならシュネルが何か暇潰ししないかと……」
「そしてキリトが最近調子良いって言って……」
「……それにたまたま近くにいた私が巻き込まれたと……はぁ……」
私は一刻も早くこの世界から抜け出したいのに……こんな事してる暇なんてないのに……。
そう思っていた時、気がついたらシュネルが私を見ていた……その瞳は普段の色と全く違う、綺麗なエメラルドの様な……碧(みどり)。
「ラン……君は……そうだったのか……ねぇ、イノセンス」
「ん?……ほう、ほうほう」
「どうした二人共?」
突然二人は内緒の相談をした後、ニコリと笑ってキリトに向かう。
「キリト……随分と、調子、良さそうだな」
「は?まあ、そうだな……今日の釣果は俺の圧勝だろうな」
「なら、賭けしない?<これから三分間の間に>僕ら三人で誰が一番釣果が多くなるかでさ……勝ったら最下位に何でも好きな命令できる……どう?」
賭け勝負、しかもその条件は圧倒的にシュネルとイノセンスが不利……キリトは少なくても30匹は釣っていた……他二人は4~5匹ぐらいだったはず……流石に三分間でこの差を覆すのは無理な気がする。
私もキリトもそう思った……。
「俺は構わないぜ、寧ろ良いのか?お前らはそれで」
「よし、言質取ったぞ」
「あ」
そう言ってローブの袖から、メッセージ録音クリスタルを取り出すイノセンス……そう言う使い方も出来るんだなぁ……って言質?
「OK……はい、装備っと」
「……あの~、シュネルさん……それは……」
「僕の真のMY竿だよ……最大三匹まで纏めて釣れるんだ」
「ガチすぎだろ!どんだけスキル上げてるんだよ!」
「僕、ソロ時代自給自足してたからさ♪」
笑顔の彼は所謂ガチ勢……はっきりそう分かんだね。
そして、その隣では瞳を青く輝かせたイノセンスがいた。
「えっ……イノセンスさん……」
「乱数調整(本能の牙)使うか……負けられないしな……」
「こっちはTASかよ!?ちくしょう!俺は絶対に屈したりしないッ!」
三分後、大差で敗北してハイライトの消えた瞳になったキリトがいた……世界は残酷なんだ。
「何が望みだ……ガチ勢……」
「最近第六十層の中華職人プレイヤーが、経験値大幅アップのレシピを売り出したらしくてさ……全員に奢って欲しいなって♪」
「あれって一食何万コルだっけか……あれ、何十万だっけ?」
「オレヴァ……」
「で、食べた後はレベル上げ……ねっラン、君も行くよね?」
「えっ……でも私は……」
勝負に参加してないし、最近装備にコルを使いすぎて余りのコルが無いから……。
私がそう言いかけて、死にかけだったキリトが思いきり立ち上がる。
「ちょっ!まさかランの分も!?」
「安心しろよ、ランの分は二位の俺が出す」
「へっ、いやそんな悪いわよ!」
私が焦って遠慮すると、イノセンスが近づいてきて私に耳打ちする。
「人の好意は素直に受けとるべきだ、シュネルと俺の頑張り無駄にしたいのか?」
……そう言われてしまうと、断りづらいじゃないか……全く……。
「分かった……一緒に行くわ」
「そう来なくちゃ」
「やれやれ……だがそいつを食う以上、少しも無駄には出来ないぞ!」
「ははっ、分かってるよ!」
皆……お人好しばっかりだ……。
でもそんな人達が一緒だったから……私は頑張れた……強くなれた。
希望を信じることが出来た。
この世界の終わりと言う希望を……。
<第七十五層 コロシアム>
「あんたの負けだ!!<茅場晶彦>!!!」
ディアベル総督から話は聞いていた……皆半信半疑だったかもしれない……でも私は、確証があったわけじゃないけど、イノセンスの事は信じていた……彼はこんな時ウソはつかない……次第に崩れゆく景色に……私は自然と涙を流していた……。
「やっと、やっとだよ……私は……木綿季に……」
会える……そう思い目を瞑った…………。
「……お姉ちゃん!」
「はっ!……」
目を開けた時……私は、団欒の中にいた……。
「お姉ちゃん、何かあったの?何で寝ながら泣いてたの?」
「食事中に寝るなんて、そんなに疲れてたのか?」
「仕方ないわよ、だって木綿季と夕べまで<元気に走り回っていたもの>」
ちがう……これは……夢だ……私の中での都合の良い夢……木綿季は事故にあわず五体満足で、両親も優しい……暖かい平和な家族……私の求めてた昔のまんまの皆……でも。
「帰る……」
「お姉ちゃん?」
「私は帰るんだ!邪魔するな!」
「待ってよ!お姉ちゃん!」
席を立ち、玄関の扉を開けたら一気に駆け出す、絶対に立ちどまらない……あれが偽物だとは分かっていても……あるは私の理想だから……負けるのが怖かった……甘い甘い夢の誘惑に。
「……はぁ……はぁ……」
ずっと走り続けた私は、やっと安心して後ろを振り返る……もう何も無い……暗闇が広がっているだけ……。
「……どうして……私はあの悪夢を抜け出したはずなのに……」
SAOは確かにクリアされたはず……なのに私は現実に戻れない……。
「……待って……」
私はいつから夢にいたんだろう……そもそも、夢と現実が今の自分にはあやふやで……。
「……誰か……教えてよ……答えてよ……」
辺りは暗闇、何も無い、誰もいない、何も答えない。
私は……また……孤独になった……あの娘を一人にしないと約束したのに……約束を破ったから……。
「罰が当たったんだ……」
……寒い……。
「ここは……どこ……私は……」
誰?藍子?ラン?どっちが私?どちらも私?
「分からない……ただ……」
あの娘に会わなきゃいけない……それだけは確か……でも……。
「<あの娘>は……ここにはいない……」
それだけ分かっても意味がない……寒い……。
『あのさ、お姉ちゃん……』
その時、僅かな暖かさと共に声が聞こえてきた。
『お姉ちゃんも知ってるあの<イノセンス>さんがね!私たちのお兄ちゃんがね!お姉ちゃん達を助けてくれるんだよ!……これ絶対だからね!』
<イノセンス>?……<イノセンス>?……あぁ、思い出してきた……私は藍子、紺野藍子だ!
SAOを抜け出した筈なのに、気がついたらこの夢の中にいて……木綿季……私の大切な妹に会いたいのに会えない……そんな状態なんだ。
「助けてくれる、イノセンスが……あのイノセンスが私を?」
思わず笑みがこぼれる、希望が心に宿る、<生きる>希望が!
『お姉ちゃん……待っててね、絶対お兄ちゃんと助けに行くから……それまで待ってて!』
木綿季の声が聞こえる、元気なあの娘の声が……リアルで何があったのかは分からない、でも私は嬉しいッ!
「ッ!道が!」
暗闇に道が、先に光が見える……それは遠いけど、走れば届きそうな距離。
「いこう!」
私は一心不乱に光に走った……。
「はっ!……」
「……どうした?……かなりうなされてたぞ?」
「……何でも……ない」
今までとは違う……この光景は……彼を<オジサン>と思い込んでいたあの時の……。
「……まあ、良いさ……それよりな」
「ん?」
「<勇敢なお前に聞きたい事がある……>」
「あっ」
ドクンと胸が脈を打つ……これは……本当にあの時の……なら……ッ!
「<……剣をとるか……置くか……>」
何故だか、以前聞かれた時とは意図違うように感じられた……それが、私の思い込みか、彼の意志かは分からない。
「<置きたい>……もう……無理だよぉ……!」
今まで散々溜め込んで来ていた物が、思いが、感情が、涙腺から止めどなく溢れる。
「私!あの娘を救いたくて!でも空回ってばっかりで……情けなくて!悔しくて!でもどうにもならなくて!!」
「……」
黙って私を抱き締めてくれる彼……その暖かさにさらに涙が止まらなくなる。
「私だって誰かに助けて欲しかった!でも私本当に信じられる人がいなくて!だからぁ……誰か……あの娘を……<私たちを>助けてよぉ!くぅっうううぅ!!」
<オジサン>は……<イノセンス>は黙って私を受け入れてくれていた、どんなに暴れても叩いてもびくともしない……まるで、そう……<お兄ちゃん>みたいな……。
少しずつ落ち着いてきた私を、彼はしばらく見つめていたが、不意に優しく私の頭に手を乗せる。
「なら、仕方ないわな……」
そして空いている手で自らのフードをとり言った。
「俺がどっちも纏めて助けてやるよ!」
満面の笑顔の彼……ただ髪は白く、羊の角が頭に生えていて、耳が尖っている。
「<イノセンス>?」
「おう……ただ、妖精の世界ALOでの姿だから……まあ、困惑するか」
「あっ、いや……そんなに気にしなくても……寧ろ少し、格好いいって思うわよ?」
「それはありがとう……さて、そろそろ……」
そう言って彼が見上げると、夢の光景が変わり……美しく広い世界に巨大な樹が見える絶景に。
「綺麗……」
「パパー!」
「お、来た来た」
「確か貴女は……」
イノセンスが、いつぞや突然娘だと連れてきた女の子……<結>って名前で弓矢の名手だったはず。
「ランさん!お待たせしました、もう少しで本当に目覚めますよ!」
「えっ……ああ、そっか……」
もう……あんな夢を見ることは無いのかな……光に向かう間、何度もイノセンスにあって……仲良くして……優しくしてもらって……。
思えば、一度も素直には甘えてはいなかったような……どうめ気恥ずかしさが優先しちゃって。
「まあ、いっか……リアルですれば……」
「はい?」
「ああ、なるほど……」
だがとりあえずだな。
「イノセンス」
「ん?」
「……ん」
……頬っぺただが……意外と恥ずかしいものなんだな……。
「な、何を突然……」
「予行演習と、さっき甘えさせてくれたお礼……貴方は本物では無いんだろうけど……」
「……バレてたか……流石に何度も俺に会ってないな……」
「でしょ?」
義理は果たした……後は、リアルで必死に恩を返さないとね……。
「ありがとう……さよなら……<オジサン>」
「ああ……またな<お嬢さん>……元気でやれよ」
私は今……<剣を置く>。
<現在 学校>
「最近お兄ちゃん……GGOにハマっちゃって帰って来ないなぁ」
「そうね……でもユウキの目標考えるとチャンスなんじゃない?」
「それとこれとは別だよぉ……あ~お兄ちゃんに会いたいぃ……やっと松葉づえありなら歩けるレベルに回復したのにデートに行けないなんて……」
全く……私の愛しい妹をここまで惚れさせちゃうのは、アイツの罪だ……。
まぁ、木綿季の気持ちが今なら分かるんだけどね……私も彼が欲しい。
だから。
「じゃあ、もっと積極的に行かなきゃね?」
「……ボクからって事?これでも結構頑張ってるよ?」
「ならそうね……次は二人で迫ってみる?」
「ふ、ふぇぇぇえッ!!?」
手段は選ぶ道理はない。
短くまとめるために、ランVSアスナのドロー戦や、光に向かっている間、ひたすらイノセンスとの夢見てたりしましたが、長くなるため今回は割愛いたしました、申し訳ありませぬ(みたい場合はリクエストを取っていただければ)
というわけでニロ様、本当にありがとう御座いました(´ω`)
感想、リクエスト、質問、意見……お待ちしてます!
リクエストは随時募集中、書き込む場所決まってないので、おっさん(私)の目に入る場所にお願い致しますm(_ _)m