前回(小ネタSS集③)までのあらすじ:悪を演じ仲間を守ったイノセンスてあったが、なんとアスナがついてきてしまった……彼女の意思は固く、イノセンスはアスナを連れていく事に決めたのであった。
SAOに囚われ、2ヵ月かけてようやく第一層を突破したプレイヤー達。
初見プレイヤー達は喜んでいるが、βテスター達からするとここからが本番と言う事を理解しているため、かなり気が抜けない。
第一層突破の知らせを受けて、引きこもっていたプレイヤー達の中にも、僅かな希望にすがりレベル上げを始めるプレイヤーがいたり……中には職人や商人になり、少しでも貢献しようとしたり利益を得たりしようとする者もいた。
「アスナ君、武器を変えよう……もうアイアンレイピアさんを酷使したるなや、ぶっちゃけると効率が悪いしな」
「そ、そうですよね……いちいち買い換えてたら、コルどんどん無くなっちゃいますし」
そんな最中、イノセンスとアスナの二人は今後の戦力向上のため、まだ他のプレイヤーが来ていないであろうフィールドの岩影でこそこそと会議をしていた。
イノセンスは<ナイトメアローブ>で、アスナはフード系の装備で顔を隠している……ボス攻略の時の案件で、二人は容易に顔を晒せないからである。
「でもあてはあるんですか?私は初心者ですから、良い細剣の目星なんてつきませんし……」
「もちろんあるが、多分面倒は避けられないと思うな」
「面倒、ですか?」
アスナが首を傾けると、イノセンスは頷く。
「SAO内にはある特殊条件下で出現する強いモンスター……通称NM(ノートリアスモンスター)、と言うのがいてな……無論この第二層にも存在するんだが……」
「だが?」
気になるのかグイグイと迫るアスナに苦笑しながら、イノセンスは続けた。
「そのあてである細剣が得られるNMは、第一層にも出てきたゴースト系のモンスターの女性型で、<バンシー>と言う名前だ……たまに毒やスタンを狙ってくる強敵だが……まあ俺もいるし倒せない事はないだろう」
「……でもそれくらいで、イノセンスさんは面倒とは言いませんよね?」
「そりゃそうだ」
<体術>の一件の時で学習しているアスナは、話を焦らず聞いている様だったので、イノセンスは笑ってさらに続ける。
「実は面倒な点ってのは、武器のドロップ率が高い事と出現条件が緩い事だ……さぁ、どうしてだと思う?」
「えっ?……でもそれだったら逆に……あっ、なるほど……人気があるから!」
「その通り……早い者勝ちだし、下手をうてば他者との争いは避けられないだろうな」
これは他のMMORPGにも良くある現象であり、さらにこのデスゲームの最中に起こる取り合いともなると、苛烈極まりないであろう事は、βテストをやっていなくてもイノセンスには予測がついた。
「一番の敵は人間なんですね」
「真理と言えば真理だな、こんな状況だし生き残るために争うのは、人間良くあること」
人の業を改めて噛み締めた二人は揃って頷く。
「……話が脱線したが、バンシーの出現条件は深夜に北部エリアにある<大農場>の放牧地に、プレイヤーが進入する事……出現するのは一週間あたり一体のみ」
「狭き門ですね」
条件を聞いたアスナは若干心配そうな表情を浮かべるが、イノセンスは微笑み彼女の頭を優しく撫でる。
「そんな顔するな、運が逃げていくぞ」
「むむっ、気安く撫でないでください!」
「おっとすまない、また対応を誤ったか……」
声を大にして拒否を示すアスナに、イノセンスは頭を下げる。
それにしてもこの光景、客観的に見ると一人の少女に大柄の男が頭を下げるシュールな構図だった。
「全くイノセンスさんは、髪は女の命なんですよ!私だから許しますけど、人によっては凄く嫌がるんですからね!」
「そうだったか……どうも知り合いが皆拒否しなかったもんだから大丈夫なのかと、やはり女性の機微は難しいな」
因みにイノセンスの言う知り合いとは、無論リアルフレンドのサチもそうであるが、従姉の稲生真夜の事も含まれている。
つまり、互いの距離が近い間柄な為、拒否されてなかったとも言える……イノセンスの紳士への道はまだ遠い。
「……ですけれども、個人的には嬉しかったです……よ?」
「お、おう……じゃあアスナ個人ならokと?」
「確かに心配と言うか、不安と言うかでしたから……それが少し和らいだ気がしましたので」
そう言って視線を彼から外し髪をかきあげるアスナ、わずかに赤い頬と、流れる美しい髪には、さしものイノセンスもドキリとさせられる。
「……それじゃあ、深夜までどうします?」
「ん?あ、ああ……とりあえず主街区の<ウルバス>ではなく、攻略組が少ないはじまりの街まで戻って物資調達を……ッ!」
「ちょっ!イノセンスさん!?」
アスナの質問に答えようとしたイノセンスは、突然一瞬反応を見せたあと、彼女を岩壁に押しあてた、所謂壁ドン状態。
急な接近にどぎまぎするアスナだったが、イノセンスが背後を注視している事に気づいた。
「……後ろに何か?」
「……誰かに見られていた様な感じがしたんだが……気のせいか?……っと悪い、突然変な事しちまったな」
「びっくりはしましたけど、気にはしてませんよ……本当に見られてたら怖いですしね」
「そうだな……んじゃさっさと移動するか、長居は無用そうだ」
イノセンスの言葉にアスナは同意し、二人は移動を開始した……そのあとひょこりと顔をみせた影が一つ。
「全く……あの人は怖いな、僕が読むより早く気づくんだから達が悪い」
そう言って影は<碧の輝きを放つ瞳>を細めた。
深夜になった、大半のプレイヤーが宿屋に詰めかけ眠っている時間帯……だが元々夜型だったり、目的があるならば別であろうが……基本視界が悪く、プレイヤーに不利なため狩りをするには不適当ではある。
イノセンスとアスナは、そんな時間帯にフィールド<大農場>までやって来た……かなり広く、見渡しが良い。
昼間は牛モンスターで溢れかえっているが、今は夜行性の獣型モンスターが闊歩している。
「おっ……いたいた、どうやら運が来てるみたいだな、まだフリーらしいし」
それらに紛れて、二人の視線の先では、女性物の青いローブだけがふわふわと浮いている奇妙なモンスターがいた、それこそが<バンシー>であった。
アスナは思わずレイピアをギュッと握り、喜びの表情が顔に表れる。
「よかった!なら早く行きましょう!」
「よかった!なら早く行くわよ!」
『……あれ?』
不意に言葉が被り驚いて声のした方向にアスナが目を向けると、そこには赤と黒を基調としたヒラヒラな装備をした黒髪ツインテールの少女が、ほぼ自分と同じ体勢でいた。
「ま、まさか……ライバル!?」
「ちぃっ、やっぱりそう易々とは行かないみたいね!」
少女は舌打ちをして、アスナに対して向き直り腰に手を当てる……その背後には三人程男性プレイヤーがついており、イノセンスとアスナを交互に見ている。
「貴女たちは急ぎ?そうじゃないんだったら人助けと思って……」
「残念ですけど、お断りします」
「比較的安易な条件とは言え、結構運も絡む……そこら辺はそちらも分かっているだろうに」
「まあ、ですよね~……」
どうやら少女も初めから上手くいくとは思ってはいなかった様子で、ため息をついてメニューを開き出す。
「なら、勝負といきましょう!私と、そこの貴女で一対一のデュエルをしてね!勝った方がNMを占有出来る」
そう言ってデュエル申請が送られてきた。
それを見て若干怯むアスナ、少なくとも<第一層での一件>で、デュエルに対して抵抗があった。
それを察したイノセンスは彼女に耳打ちする。
『アスナ、構う必要はない……俺が投剣スキル使って攻撃すれば、さっさとバンシーを占有出来るし、あの娘もそうなれば流石に諦めるだろ』
「…………」
その申し出はアスナにとってとても嬉しい物であった、故に彼女は同意しようとした……しかし、少女は畳み掛けてくる。
「何二人でこそこそ喋ってるのよ、まさか勝負から逃げる気?そんな覚悟で来ているならちゃんちゃらおかしいわね……あ~あ、残念だわ~」
「……何ですって?全く聞こえませんでした」
「ッ!おい、アスナ……」
「安心してください、負けませんから」
あまり煽られる事に耐性がなく、いまだに元エリートのプライドもあったアスナは、少女の言葉と不遜な態度にカチンと来てデュエルの申請をokしてしまう。
「ふふっ、そうこなくっちゃね……時間が無いし、初撃決着モードだけど構わないわね」
「ええ、異存はないわ」
「……仕方ない、一応後ろの連れと周囲を警戒しとくか」
二人は武器を抜き出し、構える……互いに細剣を抜き出し構える……その時イノセンスのみ気づき驚く。
「(あれは確か<ギフトヴェーゼ>!?第一層出たてなのに、プレイヤーメイドの一線級の細剣を持ってるとは……なら何でわざわざNMを……?)」
そう思って、それとなく後ろの三人を確認すると、正直お世辞にも良いみなりと装備とは言えなかった。
「(なるほど、<人助けと思って>とはそう言う意味か……だがこちらも譲れないしな……)」
イノセンスは三人を警戒する、もし彼らが隙をついてバンシーを占有したりしたら、目も当てられない事になる。
一方で武器を構えたまま、開始のカウントダウンを待つ二人は睨みあっている。
「私は<カグラ>、信じる物の為におしていかせて貰うわ」
「……アスナよ、貴女には絶対負けない」
互いに名乗ったと同時にカウントが終了、どちらからともなく飛び出す。
先手はアスナがとった、イノセンスと2ヵ月ともに過ごしたのは伊達ではなく、動きは既に熟練の戦士そのものだった。
鋭い突きで炎の如く一気呵成に攻める。
「くっ!貴女強いわね……だけど、攻めるだけじゃ私は倒せないわよ!」
一方で後手に回ったカグラは、アスナの苛烈な攻めを風の如くいなし、避ける……かなり拮抗しているが、僅かにアスナが押している状態だ。
「(行ける!そこっ!)」
しかしそれも長くは続かない、互いに剣が弾かれた瞬間を狙い、AGIで勝ったアスナはソードスキル<リニアー>を放つ。
「そう来るのは、読んでたわ!」
「ッ!しまっ……!」
だが、ギリギリ立て直したカグラはそれを避けて、手元を狙いアイアンレイピアを弾き飛ばす。
リアルでフェンシングでもやっていたのか、技量は僅かにカグラが勝っていたのだ。
「さあ、もう武器は飛んでっちゃったわね?どうするつも……ハアッ!?」
「そこぉ!」
勝ち誇るカグラだったが、アスナは素早くメインメニューを操作、新たなアイアンレイピアを装備して斬りかかる。
それには彼女も驚いて反応し、互いに斬り結び、鍔迫り合いになる。
アスナにとってそれは馴れたものであり、イノセンスも特に注意はしていなかったので、今の今までこの戦法を使い続けていた。
だが、それはカグラの琴線に触れた。
「貴女がそんな人だったなんて……失望したわ!」
「突然何!?」
いきなり怒りだしたカグラに、訳が分からない様子のアスナ。
ギリギリと音を発てながら段々押し出すカグラ。
「私にとってね、武器は最も信じる物の一つ!共に戦い、歩み、成長する相棒なの!それをほいほい変えて、ぞんざいに扱うなんて!許せない!!」
「ぐぅっ!?」
唐突に腹部に衝撃がきて、苦悶の声を出し、膝をつくアスナ。
それはカグラが、彼女に対して膝蹴りをかましたからだ。
「貴女には分からないでしょうね、きっとそう言う風に今まで生きてきたんだろうから」
ギフトヴェーゼをアスナの頭に構え、見下ろすカグラ。
そして彼女は、<最も言ってはならない一言を言ってしまう>。
「そうやって、いつか<そこの相棒(かれ)も捨てるつもり>なんでしょう!」
「ーーーーー」
彼を、イノセンスを捨てる……アスナが今まで投げ捨ててきたレイピア達と、イノセンスを等価とみるとそうなってしまうだろう。
武器を大切な相棒と考えるカグラにとってはそうだと言える、だがアスナにとってはそうではない……確かな価値観の違いが二人にはあった……故にすれ違う。
「……撤回しろ……」
「は?」
アスナは生まれて初めて本気で怒っていた、それは大恩があり、共に堕ちると決めたイノセンスを捨てる様な最低な女と言う烙印を押したカグラではなく、押されてしまった自分自身にだ。
「撤回しろって!言ってるのよ!!」
「なッ!?瞳が……ッ!」
アスナの瞳が白く輝きだす……彼女の頭の中では、イノセンスの動きが映像のように再生されている……そして身体にゆっくりと馴染み模写(トレース)されていく。
細剣を逆手に持ち変え、顔の前に突きつけられたギフトヴェーゼを弾き、逆手のまま凄まじい速度で突きにかかる。
「あれはまさか……<体術>の時の……?」
イノセンスは思い出した、素人同然の彼女が、自らの拳技を完璧に模写したあの瞬間を。
アスナの奇襲にカグラは上手く反応しきれず、頬を抉られる。
「ちょっ!なんて無茶苦茶な!」
立て続けに追撃をかけてくるアスナの猛攻を、必死に回避してなんとか間合いをとるカグラ。
息があがっている彼女に対して、アスナは全く息に乱れはない……細剣を逆手から元に戻し、カグラに対して構える。
「貴女の気持ち……今なら分かった気がする、自分の信じていたものが否定されたり、貶されたりするとこんなにも怒りがわくのね……だから……」
白き瞳がカグラを捉えると、瞬時に駆け出すアスナ。
「全力で貴女を倒す!」
「ちぃっ!上等よ!見せてやるわ、切り札をね!」
カグラが細剣を下段に構えると、ギフトヴェーゼが光を纏い、上中下と三連続で突くソードスキル<アヴォーブ>を放つ。
しかし、なんとアスナもまた同時に<アヴォーブ>を放つ……そう、今の彼女はカグラを瞳で捉えた時点で、その動きのトレースを行っていたのである。
<アヴォーブ>同士のぶつかり合いの果てに、二本目のアイアンレイピアが耐えきれずに折れてしまう。
「無駄よ!貴女は負けるの、アスナ!相棒への愛がない貴女じゃ、私には勝てない!」
「相棒への愛なら……ここにあるわ!!」
互いのぶつかり合いによる硬直に入った、その刹那……アスナの拳に光が宿る……。
「まさか、<体術>スキル!?じゃあ、あそこにいる彼はイノ……」
「チェストオオオオオ!!!」
アスナの<正拳突き>がカグラの顔面に突き刺さり、吹き飛ばした……二人の戦いは決着がついたのだ。
「悔しいわね……負けちゃったわ」
倒れた状態からゆっくりと起き上がるカグラ。
既に瞳が元に戻ったアスナは、彼女に近づきその手を握る。
「ありがとう、貴女のおかげで色々と大事な物に気づけたわ……良い勝負でした」
「……私こそありがとう、もっと良い言い方があったし、自分の考えを貴女に押し付け過ぎた、反省点が見つけられる実のある時間だった……バンシー戦頑張って」
「うん、ありがとうカグラ」
二人は笑って別れ、それぞれの仲間の元へ駆ける。
アスナを出迎えるイノセンスは、笑顔で手を振っていた。
「よっ、お疲れ」
「はい、でもまだまだ自分は未熟だな……と自覚しました」
「まあ、始めて2ヶ月ちょいだろ?これからこれから」
拳を自分の胸の前でギュッと握りしめ、気合いを入れ直すアスナ。
それを見て苦笑するイノセンス……髪の色合いが近い事もあり、本当に兄妹の様だ。
「ああ、そういや嬉しかったなぁ……相棒への愛ならここにあるってセリフ」
「あっ……」
ふとイノセンスに、無我夢中だった時の話題を振られ頬を染めるアスナ。
「あ、あれは親愛とか友愛的なものですから!」
「分かってる分かってる、焦るな焦るな」
必死に訴えるアスナを見て、クスクスと笑うイノセンス……以前に比べ、互いに一定の距離の様な物はない……二人は少しずつ歩みよっているのだ。
「ごめん、負けちゃったわ……だから、バンシーは来週ってことで……」
一方でカグラは、今回のNMを求めていたプレイヤー三人に頭を下げていた……それに対して三人は笑う。
「大丈夫ですよ」
「そうですよ、次回がありますからね」
「気にしないでください」
「あ、ありがとう!」
カグラは三人の言葉に笑顔を浮かべて顔を上げる、信じてよかった……そう思っていた彼女であったが、それは脆くも打ち砕かれてしまった。
「「「代わりに、貴女には役にたってもらいますから」」」
「……えっ?」
素早く縛り上げられ、剣を突きつけられるカグラ。
ニコニコと笑う三人に、彼女の鳥肌がゾワッと立つ。
「な、何するの!乱暴しないで!」
「安心してください、貴女に暴力は振るいませんよ」
そう言って、三人のリーダーらしき人物が進み出てイノセンスに声をかける。
「こちらが見えますか!お二人様!」
「はい!?な、何がどうなってるのカグラ!」
「私にも分からないわよ!」
驚愕するアスナと叫ぶカグラ。
それを見て察したのは、イノセンスだけだった。
「……人質のつもりか……」
「ご名答」
「えっ!?」
イノセンスの言葉に男はニヤリと笑い、カグラを指さし叫ぶ。
「俺はあんたを知ってるんだ、イノセンス……攻略組から話を聞いてるもんでな……色々と情報を持っていて、武器やアイテム、コルもたんまり持ってるそうじゃないか?」
「(ちっ、妙な尾ひれがついてるな……面倒くさい)」
心で舌打ちし、男を見据えるイノセンス……アスナもカグラも不安げな表情だ。
「冷酷そうなあんたも、女連れなあたり女に弱いと見た……この女に危害を加えられたくないなら、情報と手持ちを全部よこしな!」
「…………ほう」
男の言葉を聞きながら、彼の瞳が青く輝き出す……思考がクリアになり、生きるための最善の回答をだすために、思考が加速する……。
背後の茂みにうっすらと見える二色の光、会議中に感じた背後からの視線、そして<ビーター>イノセンスの姿……様々な物を統計した結果、どうするべきか決まった。
「確かにそうだな……その娘を傷つけられるのは本意ではない……」
「イノセンスさん……」
「(……<ビーター>だなんて言われてるけど、いい人じゃない……まあ、アスナの愛してる人なんだし当然だろうけど……)」
イノセンスの言葉に複雑そうなアスナと、先程の彼女の言葉を真に受け勘違いしているカグラ……人質に取っている男達は今にも笑いだしそうであった……だがその全員の思った通りに、この男はなるはずがなかった。
「だから、その娘は奪わせてもらう」
「……は?」
その瞬間、イノセンスの言葉に呼応するように茂みから人影が飛び出し、男二人を投げ飛ばし武器を突きつける。
「残念だったわね!」
「チェックメイトかな?」
「なっ!」
「えぇっ!?り、リタとシュネル君!」
そう、飛び出したのは青緑の瞳のリタと、碧の瞳のシュネルの二人であった。
そして男が驚き、そちらに目が奪われている隙に素早く駆け寄り、イノセンスは彼からカグラを颯爽と奪い取り、愛剣<ビースティンガー>を男の首に突きつける。
「ど、どうなってるんだ!?」
「知らなかったか、俺は<ビーター>なんだぜ?誰も知らない様な情報だろうが、レアで強力な武具だろうが!そしてッ!!」
鋭い目付きでニヤリと笑い、カグラを抱き寄せ言い放つ。
「<女>だろうが……俺の物だ……!」
「ふ、ふぇ……?」
「……むっ」
野性的(ワイルド)で大胆な発言、それは彼の外観に非常にマッチしていて違和感がまるでなかった……セリフだけ聞けばただの悪党なのだが。
それに対してカグラがときめいて赤面したり、アスナがむっとするのはイノセンスは考慮していない事も付け加えておく。
「くそっ!……なんて奴だ……!」
「色んな意味でこいつに勝てる気がしない……」
「リア充どもが爆発しろや!」
多勢に無勢どころか、第一層攻略メンバー四人に加えてそれに匹敵出来る人物もいるのだ……三人は泣いて武器を投げ捨てた。
あの後降参した三人を<シュネルが笑顔で>尋問したところ、こう供述した。
『コルが欲しくて、最初から彼女を利用しようとしていた……今はかなり反省している……だから許してほしい』
もしイノセンス達が居合わせなければ、カグラはバンシー攻略の生け贄になる所だったのだ。
『信じてたのに……ひどいよぉ……』
それを聞いたカグラが泣いてしまったので許されるはずもなく、シュネルが頼んでいた応援により、彼らははじまりの街の大迷宮に連行されていった……立ち直り復活したディアベルと副官のキバオウにより、騎士道を叩き込まれると言う話だ。
「シュネル、やっぱりあの時の視線はお前だったか」
「すみません、やっぱり気になったもので……でもこれで貴方に少し借りが返せたかな?」
そして今、イノセンス、アスナ、シュネル、リタ、そしてカグラの五人でバンシー攻略をしていた。
「本当ならあいつらみたいなのは、僕が鉄槌を下したかったんですが……」
「アカン」
「駄目よ!シュネル君!」
「分かってるわよね?」
「ん?皆どうしてそんなに焦ってるの?」
しゅねるくん、やめてくださいしんでしまいます(三人の男が)
知り合い三人は焦り、言葉の真意を知らないカグラは首を傾け頭に?マークを浮かべた。
「ええ、まあ、分かってますよ……それをしたらカグラが悲しみますから……はいっ、スイッチ!」
「なら大丈夫ねっとぉ!」
五人がかりな為か、話す余裕を見せながらバンシーを攻める一行。
シュネルが剣でバンシーの腕から放たれる爪を弾き、スイッチでリタが入り、ソードスキル<ソニックリープ>で切り裂く。
「カグラ!イノセンス!後少しだから削りよろしく!」
「分かった、合わせろカグラ!」
「ま、任せて!」
立て続けに紅と赤の二人が飛び出し、イノセンスはアクロバティックな動きで切りつける高速の四連撃ソードスキル<ラピッドバイト>、カグラは得意技の<アヴォーブ>でバンシーを追い詰める。
HPが赤に入ると突如バンシーが泣き叫ぶ、これはバンシーの特有スキル<嘆きのヴォイス>で一定範囲内のプレイヤーをスタンさせ、かつ毒を付与させるかなり厄介な技だ。
「うるさいっ!」
「キッツいなぁ……キリキリくるよ」
「だが、これで終わりだな……」
「やっちゃえ!アスナ!」
それか来ることを知っていたイノセンスは、途中でアスナを<嘆きのヴォイス>の範囲外に逃がしていた。
バンシーはヴォイス後の硬直で隙だらけであり、そこにアスナが駆け寄りソードスキル<リニアー>を発動する。
「皆、ありがとう!チェストオオオオオ!!」
アイアンレイピアがバンシーを切り裂き、断末魔を上げる気力も無いままゆっくりと地面に落ちたバンシーは爆散した。
そしてアスナの前にウィンドウが表れ、そこには目的の細剣<コルコンネクシォ>の名前があった。
全員が黙って見守る中、早速装備するアスナ……すると純白の剣がその姿を現した……鍔から手元を守るように剣尻まで丸く繋がっており、優しげな印象があった。
「リタ、シュネル君、カグラ……ありがとうね……これ大事にする」
「いや、まあ……アスナは私が守るんだから……」
「実はリタさんあの後から少し拗ねて「やめないか!」……どういたしまして」
「うん、もう考えを押し付けたりはしないけど……その子も大事な相棒だから、大切にして欲しいな」
三人に礼を言って、カグラの言葉を受けてからアスナは頷き、今度はイノセンスの方へ目を向ける。
「イノセンスさん……」
「うん、おめでとう……<相棒>」
「ッ!はい!」
再びイノセンスはアスナを撫でるが、今回は文句等ない……純粋に嬉しそうに笑った。
それを見ていたカグラは、迷っていたが伝える事にした。
「イノセンス!」
「ん?どうしたカグラ……」
「私……こんな融通利かない性格だから、誰とも上手くいかなくて……ずっと一人だった、だから私にはギフトヴェーゼが一番信じる事が出来る物だった……」
カグラは真剣な表情でイノセンスを見て、イノセンスはそれをしっかり受け止める……それを見て彼女は意を決する。
「だけど……貴方に出会って、誰かと一緒にいる事の楽しさ……誰かに求められる事の嬉しさ……誰かと合わせる事の大事さを知った!だから、だから……!」
「これが若s「やめないか!」」
「カグラ、貴女……」
「私の……<相棒>になってくれませんか!!」
彼女が2ヶ月この世界でさ迷い、求め続けやっと見つけた<相棒>に相応しい人……頭を下げて頼みこむ、たとえ成功率が0%に限りなく近いとしても……カグラは諦められなかった。
イノセンスは察してか、察せずか、あっさり答えた。
「悪い、<相棒>は一人なんだ」
「ーーーーッ!!そ、そっか……そうだよね……」
分かっていた、分かっていたが……カグラは悲しまずにはいられなかった……せめてもう少し早く会えればと深く後悔し、涙が出そうになる……。
その様子をアスナは申し訳なさそうに、リタは同情の目線でカグラを見ていたが……シュネルはこの後のイノセンスの言葉を読み、微笑んだ。
「だから、<友達>にならないか?」
「……え?」
顔を上げた彼女の前には、イノセンスからのフレンド申請のウィンドウが現れていた。
「<相棒>じゃなければ、側にいれない訳じゃないだろ?俺としてはカグラは強いし、戦闘も性格も相性良いと思ったし……是非フレンドに、そして<友達>になりたいんだが?」
「あ……あぁ……良いの?私と友達に?」
「もちろんだ……アスナ、リタ、シュネル……お前らも良いだろ?」
「ふふっ、私は剣を交えた仲ですし、元よりそのつもりでしたよ」
「もちろん、既に友達だと思うわよ?」
「肩を並べた時点で、<戦友>だからね」
次々に送られるフレンド申請に、カグラは思わず嬉し泣きしてしまう……涙を拭い彼女は笑った。
<コルコンネクシォ>が昇り始めた朝日に反射して、美しい輝きを放っていた。
今回登場したカグラさん……実はアプリである<SAOコードレジスタ>の登場キャラであります、武器のギフトヴェーゼも、ソードスキルのアヴォーブもそちらから拝借しております(ステマ)
ただし信じたものを貫く性格以外は私が「こんな感じかな?」と書いたものですので、プレイしてもあんな風に話し出したりはしません(笑)
っと巧妙なステマ(大嘘)はさておき、感想、質問、意見、リクエストおまちしております!お気軽に、おっさんの見える場所に書いてくだされば結構ですので~!